「シロコちゃんはカイザー理事の気を引いて! アヤネちゃんはそのフォロー! セリカちゃんとノノミちゃんは周りの兵士を倒して!」
「ん!」
「わかりました!」
「了解!」
「任せてください!」
アビドスのみんなが私の指示を聞きはじかれたように動き始める。私も戦闘に巻き込まれないように遮蔽物に隠れた。
『アロナ、周囲のマップ情報を!』
『はい!』
頭の中に地図が広がる。アビドスのみんな、カイザーPMCの兵士たち、カイザー理事、そして使える遮蔽物。まさしくブルアカのゲーム画面だ。
(とはいってもさすがにEXスキルなんかは使えないよね……)
体力バーも存在せず誰がどこにいるかしかわからない。とはいえ使う人が違えばこれだけでも十分な情報アドバンテージだろう。
(とりあえず私にできることはどこに兵士が隠れているのかを伝えることぐらい)
マップを確認したところ早急に対処しなければならないのは障害物に隠れ手りゅう弾を構えている兵士と、気づかれないように隠れながら回り込もうとしている兵士。
「セリカちゃん! 真正面の車とその左後ろの遮蔽物に兵士が隠れてる! ノノミちゃん! 三人の兵士が物陰に隠れながら大きく右回りで回り込んできてる!」
「おっけー!」
「確認しました!」
セリカは車の下の隙間を狙い発砲する。飛んでいった銃弾は今まさに手りゅう弾を投げようとしていた兵士の足に当たり、体勢を崩した兵士はピンが抜かれた手りゅう弾を落としてしまう。そしてそのまま数人の兵士を巻き込んで爆発した。
一方回り込んでいた兵士たちは遮蔽物に隠れ次に移動する場所を探していた。そんなとき隠れていた障害物が銃撃されてしまう。バレたことを悟った兵士たちはこのまま攻撃を始めようとするが、障害物が壊されそのままがれきの下に潰されてしまう。
「ふんっ、どんなもんよ!」
「悪い子はお仕置きです☆」
(よし! 少しずつだけど確実に兵士の数が減ってきている。このまま兵士を倒してセリカちゃんとノノミちゃんの二人をシロコちゃんに加勢させないと……!)
シロコとカイザー理事の方に視線を向ける。
「フハハハハハ! 捻り潰してくれるわ!」
カイザー理事のガトリング砲から無数の銃弾が放たれていた。シロコは自身の俊敏さを活かし建物の影から影へと移動しながらカイザー理事の攻撃をしのぎつつ近づいて行く。アヤネもドローンを操作しカイザー理事の邪魔をして隙を作り、その隙をついてシロコがカイザー理事に攻撃を仕掛けるが重厚な装甲にはじかれてしまう。
「チッ……! 硬い!」
「当然だ! このゴリアテは我々の技術の粋を集めた超強化外骨格! 最高純度の素材で組成した装甲とアクチュエーターを搭載した究極の最新兵器! 貴様らなんぞの豆鉄砲などで傷つけられるわけがなかろうがぁ!」
ゴリアテの両手から放たれるガトリング砲は遮蔽物を壊していき、隠れる場所がなくなるのは時間の問題だ。
このままいくとシロコは追い詰められ、いずれはその銃弾の雨にあたってしまうだろう。
「シロコ先輩……!」
アヤネが操るドローンの一つが爆弾を持ちゴリアテに突っ込んでいった。
「ヌッ……!」
ドローンが運んだ爆弾はそのままゴリアテの至近距離で爆発し、ゴリアテは爆煙に飲み込まれる。
「これなら少しくらいは……」
「効かぬわァー!!」
爆煙を吹き飛ばしゴリアテが姿を現す。その真っ黒な装甲には多少の傷はついていたがたいしたダメージは入っていないだろう。
「この程度の爆弾で倒せると思ったか! 間抜けがァ――!!」
再びゴリアテのガトリング砲が火を噴く。今のところは回避できているがシロコもこれ以上は厳しいのか顔には余裕が一切なかった。
「フハハハハハッ! どうした! 逃げてばっかじゃないか!」
(まずい! 思った以上にカイザー理事が強い! これじゃあセリカちゃんとノノミちゃんが加勢するまでシロコちゃんが持たない……っ!)
セリカとノノミの方に目を向けるが兵士の全滅にはまだ時間がかかりそうだ。このままだとカイザーに負けてしまうだろう。
(私が何とかしないと……! 何か、何か使えるものは……!)
周りに目を向ける。この状況を打破するためにあらゆるものを視界に入れる。
(車、兵士たち、アビドスのみんな、看板、爆弾、銃、カイザー理事、倒壊しかけている建物、戦車、ドローン、標識、線路、砂…………砂?)
頭の中で急速にピースが揃っていく。不確定要素も多いし、何よりこれは私自身の技量が必要になってくる。けれどうまくいけば現状を変える一手になる。
震えながら息を吐き、力強く息を吸う。
「みんな、そのまま聞いて。作戦を伝える」
通信機を使いみんなに話しかける。
「まずはアヤネちゃん。ドローンを使って周囲に爆弾を落として砂埃をまき散らすんだ」
「はい!」
「ちょっと待って先生! そんなことをしたら私たちも周囲の状況がわからなくなっちゃう!」
「大丈夫。私の指示に従って移動して、私が言った方向に発砲して」
「先生……?」
「私のことを、信じてほしい」
「……わかったわ! 信じてるわよ先生!」
「アヤネちゃん!」
「いきます!」
いくつものドローンが爆弾を投下した。投下された爆弾は地面につくとそのまま爆発する。あたりには爆煙と砂埃が巻き起こり周囲一帯を包み込む。
「! 目くらましか……! だが貴様らも同じ……なにッ!?」
ゴリアテに銃弾が当たる。それは決してダメージにはならなかったが間違いなく狙って放たれたものだと確信が出来た。なぜなら――。
「ぐわぁ……!」
「こいつら! どうやって俺たちの位置を……!」
――通信機越しに次々にやられていく兵士たちの声がとどいたからだった。
次々とやられていく兵士たちの声を聞くたびにカイザー理事に焦りが生まれたが、決して取り乱したりはしなかった。むしろこの状況に対応するための手を考える。そして大人としての経験からか対応策をすぐに思いついた。
「チィ……! どんな手を使い我々の位置を把握しているのかは知らないが、攻撃したのは悪手だったな! 攻撃するということはつまり、その方向に自身がいることを教えているに過ぎない!」
ゴリアテの背中部分に銃弾が当たる。
「そこかァ!」
カイザー理事はアビドスの生徒の悲鳴を期待し、勢いよく振り返り薙ぎ払うようにガトリング砲を放つ。けれど聞こえてきたのは兵士たちの悲鳴だった。
「なに!?」
「外れです☆」
突如耳元でささやかれた女子高生の声。両腕をふるうが手ごたえはなく、また別の方向から銃弾が当たる。
「今度こそ!」
もう一度同じように攻撃を仕掛けるが聞こえた悲鳴はまたもや兵士たちのものだった。
「どこ狙ってるのよこのへっぽこ!」
「――! ふざけるなあぁ!!!」
バカにする声が聞こえ、カイザー理事は完全に理性を失い腕を振り回す。目星もつけずにやたらめったらにガトリング砲を放つ。
「なぜだ! なぜ当たらん!」
しばらくの間あてもなく攻撃と続けていたが体力か持たず動きを止めてしまう。
「ハァ、ハァ、ハァ……これで……」
「最新兵器って意外とたいしたことないね」
「な!?」
いつの間にか目の前には青いマフラーを巻いた生徒が銃を構えて立っていた。
「舐めるな――っ!!」
右腕を振り下ろす。目の前の生徒はその攻撃をひらりとかわし砂埃の中に逃げこもうとするが、カイザー理事は逃すまいとかすかに見える揺れるマフラーを頼りにがむしゃらに生徒を追いかけた。
「絶対に逃がさんぞ――!!」
しばらく追いかけていると砂埃も少しずつ治まってきて、先のほうまで見えるようになってきた。
マフラーの少女は完全に視界内にとらえ、さらに先には車が止まっていた。
(しめた! 車を超えるにしろ、避けるにしろその瞬間に動きは鈍る!)
勝利を確信したカイザー理事は数秒先に訪れる結末に心を躍らせる。
そしてついにその時がやってきた。
目の前の少女がジャンプする。/カイザー理事が右腕を振り上げる。
空中に飛んだ少女が車のボンネットに着地しようとする。/カイザー理事が振り上げた右腕を振り下ろそうとする。
ボンネットに着地した少女はまたジャンプをしようとする。/突如足元が爆発しカイザー理事は体勢を崩してしまう。
空中へと飛びあがった少女はそのまま先の大地に着地する。/体勢を崩したまま振り下ろした手は車の真横に激突した。
「――先生!」
「今だよ! みんな!」
体勢を立て直そうと立ち上がったカイザー理事に待ち受けていたのはいくつもの強烈な砲撃だった。
(バカな! 奴らにはこんな攻撃手段などなかったはずだ! いったいどうやって!?)
砲撃によって周辺の砂埃が吹き飛ばされていき、砲撃の正体が戦車から放たれているものだと視認した。
(そうか! 我々の戦車を奪って……!)
立て続けに放たれる戦車の攻撃によろめき、背中に壁が当たる。見上げてみればそれは壁ではなく今にも倒壊しそうなほどぼろぼろになった建物だった。
「トドメだよ!」
忌々しい女の声とともに戦車の砲撃音が聞こえた。その砲撃はカイザー理事には当たらず、背後の建物に当たる。その衝撃で建物は大きな音を立てながら崩れ落ち、カイザー理事はその下敷きなった。
良かった。
とても良いイベントでした。
これでまた百花繚乱紛争調停委員会のことが好きになりました。
どこまで私の好感度を稼げば気が済むんだよ君たち。
私の好感度メーターはとっくに限界突破してるのによ。
アヤメも早く起きてみんなと一緒にバカやってほしいなぁああ!
それにしても今イベントのナグサの言動には驚かされたよ。
どこまでおもしれー女になるつもりだよナグサ。
最高だな。