はじまり
とうとうこの時が来てしまった。
私が手に持っているのはとある生徒からの手紙。その内容は廃校の危機にあるから助けてほしいというもの。そしてその送り主は奥空アヤネという生徒。
つまり、メインストーリーが始まったのだ。
少し、体が震える。今まではそれなりにやってこれた。いろんな学園に赴き、たくさんの生徒と知り合い、少しずつ信頼を獲得し、シャーレの名を広めてきた。大変ではあったもののそれなりに楽しい日々だったと振り返る事ができる。
けど、この先は違う。もし、少しでも失敗しようものなら何が起こるかわからない。むしろ、ハッピーエンドまでの道のりを知っているせいで『先生』をなぞる事しか考えられない。自分で道を決める事が出来ない。……いや、出来ないんじゃない。怖いんだ。怖くて怖くて仕方がない。失敗して生徒たちに見捨てられたら、見限られたら……。そして、このキヴォトスを終わらせることになったら。
想像するだけで吐き気がする。イヤでイヤで、怖くて辛くて吐きたくて逃げたくて……。
その全てを押し殺し、私は準備を始めた。
「…………しぬ」
どうしてこうなったのだろう。確かに私は準備をした。水を多めに持って、地図も持って、コンパスをしっかりと見ながらアビドスへと向かっていたはずなのに。
結果的に私は今、『先生』と同じように道半ばで倒れていた。
甘く見ていたつもりはなかった。むしろ最大限に準備をしたはずなのに。それでも辿り着けなかった。
まぁ、こうなるのも当然かもしれない。なにしろ私の最大限はこのキヴォトスでは最低限のラインだったのだろう。だって私はまだ、このキヴォトスを全く知らないのだから。
そんな事を考えている間に意識が朦朧としてきた。どうやらブルーアーカイブはこれにて完らしい。
あぁ、ごめんまだ見ぬ生徒たちよ。許してくれ知り合った生徒たちよ。どうやら私の命はここで尽きるらしい。
…………さら、ば。
「あの、大丈夫?」
…………こえが、聞こえた。
「とりあえず、これ、飲んで」
あぁ、この美しくも綺麗な声はァバババババァァ!!!???
「ん、もっと飲んで」
「ちょばばばっ! まっぁぁあでぇぇ!!」
しぬ! 呼吸できなくて死ぬ! どうにか呼吸しようとしても水が流れ落ちてくる!
「ん、なくなった」
「ぶぉはッ! ハァ、ハァ、ゲフォ!」
「意識ある?」
「う、うん。大丈夫。助かったよ。……けどもうちょっと優しくして欲しかったかな」
「ん、次は気を付ける」
とりあえず立ち上がり、助けてくれた相手を見る。そこにはやはりメインヒロインの砂狼シロコが立っていた。
…………ところで、私の記憶が正しければシロコの水筒を『先生』が口づけ、間接キスに照れるシロコがいたはずなんだけど。
アオイちゃん、新年あけましておめでとう。
去年に続き今年も新年早々に総決算しに来てくれて先生うれしいな。
今年もいっぱい総決算しようね。
先生、いつでも待ってるから、ね。