体育館で水着パーティーをしていた私たちは楽しい時間を過ごしていた。いつもとは違う状況、ちょっとした非現実的な体験に心が踊るのは人として当然の感情だろう。
くだらない話、面白い話、興味がある話、中身がない話。いかにも女子学生といった話をする補習授業部のみんなを見ているとどこか一歩引いた場所に立ってしまう。
…………幸せだ。
青春を謳歌している生徒たちを見ているだけでこんなにも心があたたかくなるものなのか。
きっと『先生』もこんな気持ちだったんだろう。そう思うとどこか憧れた『先生』に近づけた気がしてうれしくなる。
「――せい」
だからこそこの先の出来事に彼女たちを巻き込みたくないと思ってしまう。出来る事なら平和な日常を過ごしてほしいと。
けれど、あの出来事も彼女たちを成長させる大事なものだとも思う。辛く、苦しい現実。折れてしまいそうになる心。そしてそこから立ち直らせてくれる仲間の大切さ。それをあの出来事で彼女たちは知ったのだから。
そもそも私一人で何とか出来る出来事じゃない。彼女たちの力は必ず必要になってくる。
……いつまでこんなことで悩んでいるのだろうか。優柔不断で決断力がない。私が行動を起こしたからもうとっくに原作からは外れているのに。いまだに覚悟が決まらない情けない自分が嫌になる。
「先生――!」
「!?」
急に耳元で叫ばれ驚いてしまう。
「あれ? どうしたのみんな?」
「それはこっちのセリフですよ!」
「呼びかけても反応がなかったので心配しました」
しまったな。みんなに心配させちゃった。
「ごめんごめん、ちょっとぼーっとしちゃってて」
「大丈夫ですか? もしかして体調が悪かったり――」
「なに。それはいけない。体調不良は戦場では命取りになる」
「いやいや、そんなんじゃないよ。ただ――なんだろうな」
少しだけ言葉に詰まる。
「こうやって楽しんでいるみんなを見ていたら若いっていいなって思っちゃって。……歳かな?」
「? 先生も十分若いと思うが?」
「そうですよ! 私たちと大して変わらな……あれ? そういえば先生って何歳なんですか?」
「えー? 女性にその質問は禁句だよヒフミちゃん」
「あっ! す、すみません!」
「女性に歳を聞いてはいけないものなのか?」
「いや、べつに女性同士なんだしいいじゃない」
「そんなに知りたいの? コハルちゃんのエッチ」
「なぁ――!? なんでそうなるのよ!」
「そうですよ。もし知りたいならこちらも同等の情報を開示するべきです。例えばそう、コハルちゃんのスリーサイズとか♡」
「あんたはどさくさに紛れて何言ってるの!」
……何とか誤魔化せた。記憶をなくした私は自分が何歳かなんてわからない。
ワイワイきゃあきゃと体育館にみんなの声が響く。その光景を眺めていると体育館に明かりがともった。
「あら? どうやら停電が直ったみたいですね」
「はぁ、やっと着替えられる」
「早く乾かしちゃいましょう」
体育館を後にしドライヤーを使って洗濯物を乾かす。結構な量があったから時間がかかり、終わった頃には夜になっていた。
みんなはお休みモードに入っていたがハナコが突然叫び出す。
「あ! いいことを思いつきました!」
「? いいことって?」
「それはですね――」
「……どうして」
夜の街に照らされながら制服をまとった五人の女性が道を歩く。
「あ、あはは。似合ってますよ?」
「少しだけ丈が大きいかもしれないが気になるほどでもない」
「むしろそのダボついた感じが可愛らしさを引き出しています♡」
「……なんだかいけないものを見てる気がする」
なんでこの歳で制服を着なきゃ――いや、自分の年齢わからないんだけどさ! それでも制服を着るのはなんだかメチャクチャ恥ずかしい!
「それにしてもヒフミちゃんの制服は可愛いですね」
「そ、そうですか?」
「はい。前々から思っていたのですがこうしてみるとなかなか」
「いや、そんなことよりも私まだ納得いってないんだけど! なんでヒフミちゃんの制服を着せられてるの私!?」
「年寄りみたいなことを言った先生のことを思ってのことですよ」
「それでどうして制服を着ることになるのかな!?」
「心より先にまず形から。つまり生徒の恰好をして若い心を取り戻してもらおうという私なりの気遣いです♡」
「うーん! 生徒の気遣いはうれしいけどこの気遣いはちょっとなー!」
「というわけで今の先生は私たちの学友です。ですから制服を着るのは何ら不思議なことではありませんよ♡」
無茶苦茶すぎる理論で言いくるめようとしてくるハナコ。
「大丈夫です先生! 全然違和感ありません!」
「私からしたらあるんだよね!」
「なぜ生徒の服を着ることに問題があるんだ?」
「ん~! 大人には大人の事情ってものがあってね!」
「……えっち」
「なんでかな。気遣われるよりもそういった反応のほうがちょっと安心するよ」
いつもは気にならない周りからの視線がやけに気になってしまう。
「それでは生徒五人で夜の街を探索しましょう!」
「それにしても深夜の街がこんなに活気づいているなんて知らなかった」
「もう少し先に行ったところにはモモフレンズグッズショップがあるんですよ!」
「本当か! 是非とも行ってみたい!」
「……うぅ。ハスミ先輩に見つかったら怒られる」
「ちょっと! おいてかないで!」
先に進んでいるみんなを追いかけ小走りで駆け寄る。ひらひらと揺れるスカートが気になって落ち着かない。
というかこんな姿をしているところ見られたくないんだけど!
……あれ? 確かこの後の展開でハスミや美食研究会、それにヒナとも会うんじゃなかったっけ?
…………なんでいつもヒナと会う時、変なところしか見せられないんだろう。
ポケモン楽しー!
書くのなんてサボっちまえ!
という悪魔のささやきを振り切ってきました。
危ないところでした。
もしこの作品を書き始めたころに発売していたら確実にサボっているところでした。
これが継続は力なりという事なんですね。