「今の状況は把握してる?」
『アズサちゃんから聞きました。自身が裏切り者だということも、ミカさんが二人を拉致監禁していることも』
「待ってください! アズサさんが裏切り者であることを自白したのですか? いったいどうして?」
『……詳しいことは省きますがアズサちゃんはナギサさんのヘイローを破壊するために潜入してきたそうです。ですがアリウスのやり方に納得できず、ナギサさんを守るため裏切る準備を進めていたと話してくれました。そうして私たちにお二人を助けるために協力してほしいと頼んできてくれたのです』
そっか。話せたんだアズサちゃん。よかった
「……なら私は、トリニティを守るどころか自分の首を絞めていたのですね」
『そういった後悔は後にしてください。……大方の予想はつきますが、お二人は今どこに?』
「地下の牢獄みたい。だよねナギサちゃん」
「えぇ、間違いないでしょう」
『やはりそうでしたか。となると見つからずに救出するのは少し難しいですね』
「そんなことないよ。見張りとかいないし」
『いない……? どういうことですか?』
この二日間私とナギサ、そしてミカ以外の声や足音などがしなかったことからミカの単独犯であろうことをハナコに伝えた。
『なるほど、やはりそうでしたか』
「驚かないんだね」
『えぇ。アズサちゃんがミカさんが勝手な行動をしてアリウスは混乱しているとおっしゃっていましたので』
「それならハナコちゃんも気付いているよね。この監禁に隠された目的」
「……隠された目的ですか?」
やっぱりナギサは気が付いていないよね。まぁ私だって原作を知ってるからわかったんだけどさ。
『はい。勝手にナギサさんを拉致監禁し、そして協力者であるアリウスにその場所を隠している。それはつまり、ナギサさんをアリウスの襲撃から守るため』
「!? ……私を、守るため?」
『状況から推察するにそれしか考えられません』
「ミカさん……」
ナギサの驚いた顔がどこか嬉しそうに変わっていく。出来ればもう少し感傷に浸らせてあげたいけど、今は一分一秒すら惜しい。
「それでハナコちゃん。別館の襲撃についてアズサちゃんから話は聞いてる?」
『はい。どうやら今日の夜に行われるみたいです』
まずい、思ったより時間がない。
「今すぐ救助に来れる?」
『……そうしたいのですがおそらく難しいかと』
「そもそもこの地下牢獄に入るためには鍵が必要でして。ですがその鍵はミカさんが合鍵も含めて所持しているはずです」
『ナギサさんの言う通りで、それでも救助にむかうには扉を破壊するしかありません。ですがその扉は強固なものでして。扉を破壊するための準備をするには時間が足りません』
「正義実現委員会は? ナギサちゃんがこのイヤホンを通じて連絡すれば――」
『それも難しいでしょう。確かに牢獄には見張りはいないのかもしれませんがそれ以外は別です。学園内は今パテル分派が幅を利かせていて、なにか異変があればすぐにミカさんのもとに届くようになっています。隠れて正義実現委員会と接触するのは少々難しいです』
「それにもし接触できたとしても、正義実現委員会が妙な動きをしていればパテル分派に察知されてミカさんに伝わってしまうでしょう。襲撃までに時間がないのならなおの事」
「……そっか」
どうする。どうすればいい。考えろ。考えろ。この状況を打開するためにはどうしたらいい。
まず第一に考えないといけないのはここから出る事。そうすればナギサが表に出て正義実現委員会を動かせる。けどその方法が思い浮かばない。正義実現委員会は表立って動けない。なら他の組織、それこそ原作のようにシスターフッドに救助してもらう? いや、結果は同じか。シスターフッドが動けばミカに悟られる。
……要はミカが気が付かない、対処できない時間さえあればいいってことだからどうにかしてミカを学園から引き離せれば何とかなるだろうけど。それもやっぱり難しいか。今のミカが学園から離れる事なんて、なんて……。
………………ある。ミカが学園を離れる時間帯が。たった少しだけど。
なら後はどうやって救助するか。鍵を盗むのは実質不可能だと考えると破壊するしかない。けど、鍵がかかった扉を破壊するための準備をする時間は用意できない。すぐにでも扉を破壊できる物資を持っている人物、用意できている団体。それもトリニティのなかで。
……いる。そうだ。いる。かなり危険な賭けになるけど、それでも可能性はある。
「ハナコちゃん。バレずにシスターフッドと接触することは出来る?」
『? えぇ、一応。そもそもこうしてイヤホンを仕込んだのもマリーちゃんに協力してもらったおかげですので』
「よかった。それなら何とかなるかもしれない」
『何か思いついたんですか先生?』
「うん。一か八かの危険な賭けだけど」
上手くいくかはわからない。でもやるしかない。
「――アリウスにここを襲撃させる」
「『!?』」
私の発言に二人が息をのみ、ナギサが慌てて私に詰め寄ってくる。
「先生! それはいったいどういう事ですか!?」
「落ち着いて。まずこの地下牢獄に入るには扉を破壊しなきゃいけない。そうだよね?」
『はい。ですがそのためには準備が……。いえ、なるほど。確かにアリウスならそのための物資は用意できるでしょう。何しろ襲撃するための準備をしていたのですから』
「うん。だからアリウスに扉を破壊してもらうんだ」
「……アズサさんならアリウスに私たちの居場所を知らせることが出来る。ですが知らせたとてアリウスが私たちを襲撃しに来るとは思えませんが」
「いや、たぶんくるよ」
正直この部分が一番の賭けになる。
「だってここにナギサちゃんがいるから」
「え? 私ですか?」
『――! そういう事ですか!』
これだけで気付くなんてハナコはやっぱりすごいな。
「この監禁はナギサちゃんをアリウスの襲撃から守るために単独で行った。なぜそんなことをしたのか。どうして私たちに二人の居場所を伝えないのか。アリウスはそう考え、ミカちゃんにとってナギサちゃんが大事な存在だと気が付いたはず」
『アリウスはミカさんと協力関係を結び、最終目的はわかりませんがミカさんをティーパーティーのホストにしようとしている。けれど今回ミカさんは勝手に行動してしまった。制御できない神輿ほど危険なものはない。だからどうにかして首輪をつけたいとアリウスは考えるでしょう。そしてその首輪として最も最適なのが――』
「……私ということですか」
「だからナギサちゃんの居場所がわかればアリウスはナギサちゃんを確保しようと動くはず」
「理屈はわかりました。ですがいつ襲撃されるかが問題に……いえ、なるほど」
『ナギサさんも気付いたようですね。そう、別館を襲撃する今日の夜ほど最適なタイミングはない。別館襲撃時にミカさんを呼び寄せておいて別動隊を使ってお二人を確保し、人質にする』
「そうならないためにアリウスが牢獄の扉を破壊した瞬間、シスターフッドにアリウスを襲撃させ、私たちを助けてもらう」
「そして私が表に出て正義実現委員会を動かし、アリウスとミカさんを確保する。確かにこれならなんとかなるかもしれません。ですが……これでは補習授業部の皆さんが危険すぎます。私たちが向かうまでミカさんとアリウスを相手に持ちこたえれるかどうか」
『その点でしたら心配ありません。別館は今、籠城戦するのに最適化されていますので♡』
「……それはそれで問題なのですが」
「まぁまぁナギサちゃん。そのおかげで何とかなりそうなんだし」
頭に手を当てため息をつくナギサをなだめる。
「えぇ、わかっています。今回は目をつむりましょう」
「それじゃあ準備は任せたよハナコちゃん」
『お任せください先生。必ずお二人を助け出して見せます』
「あはは……えっと、それなりに楽しかったですよ。ナギサ様とのお友達ごっこ」がキャンセルされたことでナギサ様の脳は守られた!
良かったね!
そのかわりに大切な存在を自分の手で捕らえさせてあげるからね♡