「きえぇぇぇええええ!!」
両者にらみ合う中で最初に動いたのはツルギだった。
ツルギははじかれたかのようにその場を飛び出しミカとの距離を一瞬で詰める。そして愛銃である二丁のショットガンをミカの眼前へ突きつけ、引き金を引く。
ミカは反射的に頭を傾けることでギリギリでかわし、お返しといわんばかりに自身のサブマシンガンでツルギに向かって引き金を引いた。けれどその場にはもうすでにツルギはおらず、放たれた弾丸は地面に穴をあけるだけだった。
「――こっちだァァあああ!!!」
「――ッ!?」
ツルギの叫び声が背後から聞こえたミカはとっさに後ろに振り返ろうとするが、その前に背中を襲う銃撃に中断させられた。
「いったー!」
抗議の意として背後にいるツルギに向かい腕を振るうがまたもやツルギはその場を離れていて空を切る。ツルギは足を止めることなく縦横無尽にあたりを素早く駆け回り、ミカを翻弄する。
「きえぇぇぇええええ!!!」
ツルギのスピードに追い付けないミカは先読みをして攻撃を仕掛けるが、それでもツルギを捕らえることは出来ず、何度も銃撃を喰らってしまう。
「もー! うざったいな!」
翻弄され続け、いら立ちが溜まったミカはその鬱憤を晴らすかのように足元の地面を思いっきり殴った。瞬間地面が振動し、崩壊し、轟音を発しながら窪んでいく。その様はまさに隕石が落ちたクレーターのようだった。
「――っ!」
ミカが拳をふるう瞬間に危険を感じていたツルギは後方へ逃げ距離を取っていたがそれでも地面を揺らす衝撃に少し足を取られ、立ち止まってしまう。その隙をミカが見逃すはずもなくツルギへと銃撃を喰らわせる。
「――ちぃ!」
銃撃を喰らいよろめいたツルギが体勢を立て直そうとするがすでにツルギの眼前にはミカの右拳が迫っていた。無理矢理体をひねることでミカの拳が目の前を通過する。瞬間目を一瞬で乾かしてしまうほどの暴風がツルギを襲う。もし当たっていれば無事では済まなかったであろうとツルギは内心冷や汗を流した。
ミカが右腕を引き戻すのと同時に今度は左拳がツルギめがけて放たれる。ツルギは後方へと飛びミカの拳を避け、そのまま空中で二丁の愛銃をミカに向けてぶっ放した衝撃を利用することで両者の間に再び距離が出来た。
流石のミカも真正面のさらに至近距離から放たれた銃撃にさすがによろめいてしまう。ふらついたミカから意識をそらさずツルギはあたりを注意深く探る。先ほどミカは両拳で殴り掛かってきた。ならその前まで持っていた銃はいったいどこに? その疑問はすぐに解消された。
ミカがその場で右手を開き空に掲げると、くるくると空からおちてきたミカの愛銃がその中に納まる。
わずか数分にも満たない応酬だが、二人にはそれだけで十分だった。
(うーん。やっぱり強いなーツルギちゃん。動きも速いし、息ひとつ上がる気配もない。先読みしてもそれすら読まれる。こればっかりは戦闘経験の差かな。とはいえ攻撃は通じているしそこまで防御力があるわけじゃない。異常な治癒能力があるとはいえ治される前に倒しちゃえば関係ないしね)
ミカは冷静に現状を分析し自身と相手の長所、短所を確認する。そしてそれはツルギも同様に。
(さすがはミカ様だ、尋常じゃないぐらい硬い。数発ぶち込んだだけじゃ大したダメージにもなっていない。それにあの破壊力も危険だ。一撃で私の防御を突破し、腕を壊したあの威力。再生にも少しだけかかってしまった。直接攻撃を喰らうのはまずいが、当たらなければ問題はない)
先ほどまで響き渡っていた戦闘音が嘘のように静まり返った運動場で二人はにらみ合う。油断なく、気を張り詰めて。
(とはいえ実力はほぼ互角。私が先に倒れるかツルギちゃんの体力が先に底をつくかの消耗戦)
(ならこの勝負の決着は体育館内の戦いでどちらが勝ち増援に来るかで決まる。けど……)
お互いに愛銃を握る握力が自然と強くなり、口元がゆがむ。
((そんな決着面白くない!))
同じ結論にたどり着いた二人は再び銃口を突きつけ合う。
「それじゃあ第二ラウンド、始めよっか!」
「きひゃひゃひゃひゃ! 望むところだ!」
激しさを増した二人の戦闘は時間すら置き去りにし、どれほどの時間が経ったのか二人は気にすることはなかった。いや、目の前の相手との攻防について考えている方が楽しくそんなことを気にする余裕がなかったというほうが正しいのだろう。
あちこちが崩れ、壊され、荒れ、運動場の様相はなく、すでに戦地へと変えられてしまっている。
「それじゃあこんなのはどうかな?」
そういってミカはかつてこの運動場を照らしていたであろう外灯の支柱に片手で触れる。そしてギリギリミチミチと音をたて、笑顔のままねじ切った。
唖然としたツルギだったが、驚き思考停止する暇すらなくその場から飛び避ける。そしてツルギが飛び避けた刹那の後、さっきまでツルギが立っていた場所に外灯が叩きつけられた。地面がへこみ、砂埃が舞い、轟音が空気を揺らす。先ほどミカが直接地面を殴った威力と比べるとかなり威力は落ちているがそれでも十分すぎるほどの破壊力を持っている上、リーチが伸びそして攻撃範囲も広がっている。
「逃がさないよー!」
叩きつけた外灯をそのままひょいっと持ち上げ、今度はバッドの素振りをするかの如く外灯を振り回す。
「どこまで逃げ切れるかなー?」
ゴオンッ! ゴオンッ! と空気を切り裂く鉄の棒に邪魔されツルギはなかなか近づくことが出来ずにいた。
「ありゃ?」
何度も何度も振り回していた外灯だったが、握りしめていたところの支柱が握りつぶされ細くなり、思わず手の中からすっぽ抜けあらぬ方向へ飛んで行ってしまう。
これ幸いとツルギはミカに向かって突撃するがミカも愛銃で迎撃する。けれどツルギは回避行動すらとらずその身に銃弾の嵐を受けながら突貫を続ける。
「うっそ!?」
怯むことなく近づいてくるツルギに驚きつつもタイミングを合わせて拳を繰り出す。しかしツルギはぴょんと空中へ飛びあがりミカの拳を回避し、ミカの頭上から愛銃をぶっ放そうとした。
「――なんちゃって♪」
「!?」
ミカとツルギの間、一メートルにも満たない二人の空間に一つの物体が挟み込まれていた。それは自爆覚悟の手榴弾。ピンはすでに抜かれ、今すぐにでも爆発する寸前だ。
「――きゃは!」
ツルギはそんな手榴弾を見て反射的に逃げようとするのではなく、むしろ手榴弾めがけて引き金を引いた。そしてツルギの愛銃に打ち抜かれた手榴弾はそのまま爆発する。
爆発に巻き込まれた二人はお互いの反対方向へ吹き飛び、二人は地面を転がり制服が汚れていく。
ミカの制服はここまでの戦闘ですでにボロボロになっていて、晒されている肌にはいくつもの傷口があり血をたらしている。しかしツルギも同様に制服がボロボロになってはいるものの見えるかぎりの肌には傷などなく白い肌がのぞいていた。
無論一切傷を負っていないというわけではない。この戦闘で何度も傷は負っている。けれどそのすべてが治癒してしまっているだけの話。
パッと見はツルギの優勢に見える戦況だが、ミカの闘志はさらに燃え上がり、戦いに没頭し、心を弾ませていく。そしてそれはツルギも同様に。
「あははっ! まだまだ楽しませてよツルギちゃん!」
「けけけけっ! きえぇぇぇええええ!!!」
さらに戦いのボルテージが上がろうとした時だった。
「「――っ!?」」
突如体育館の方向から大きな爆発音が響き渡り、思わず視線を向けると崩れ落ち燃えていく体育館が目に映った。
書類の束や領収書の山ですらカードになってるのに。
連邦生徒会長になったことのあるカヤがどこにもいないのマジで笑う。