「――ん、んぅ。……ここは?」
気が付くと私は見知らぬベッドの上で目を覚ました。首を動かして周りを見てみると病室のようで奥の方で何かしているセリナの背中が見えた。
「あいたたっ」
体を起こそうとしたら全身に軽い痛みが走り思わず声がもれる。その声が聞こえたのか、奥で作業をしていたセリナがこっちに気付いて小走りで近づいてきた。
「目が覚めたんですね先生!」
「おはよう、でいいのかな? 私どれくらい眠ってたの?」
この状況から察するに私の身に何かがあったのは確実だろう。けど思い出せる最後の記憶はアリウスの子たちと戦っているところまででどうして病室のベッドで寝るようなことになったのかは思い出せなかった。
「5日間くらいです」
5日間か。かなりの間眠ってたんだ。
「そっか、ありがとね教えてくれて。それに看病もしてくれてたんだよね」
「いえっ、このくらい大したことではありません。救護騎士団の一員として、そして先生の生徒として当然です」
体を起こして見てみるが特に目立った外傷はなさそうだ。
「なにがあったのかって教えてもらえる?」
「すみません。私は先生が倒壊した体育館の下敷きになったことしか――」
「そのことについては私から説明いたします」
病室の扉の方から声がかけられ、見てみるとそこにはナギサが立っていた。
「ナギサ様!」
「ナギサちゃん、無事だったんだね」
「はい。先生の方こそお目覚めになられて本当に安心しました」
5日間も眠ったままだったらしいし、みんなに心配かけちゃったな。
「先生にはしばらく私が付き添います。セリナさんはほかの方々を」
「すみませんナギサ様、助かります。先生、またあとでお伺いしますね」
そういってセリナは病室から出て行ってしまった。
「…………本当に、ご無事で何よりです」
「あはは、ずっと眠ってたから体はまあまあ鈍っちゃってるみたいだけどね」
上手く体を動かせない感覚が長期間眠っていたことを主張してきている。正直なところ今すぐにでも休みたいけれど、事の顛末を聞かない限り心は休まらないだろう。
「……ナギサちゃん。何があったのか聞いてもいい?」
「もちろんです」
ナギサは椅子を近くまで持ってきて私のベッドのすぐ横に置き、ゆっくりと腰を掛けた。
「まず先生はどこまで覚えていらっしゃいますか?」
「えーっと、確かミカちゃんとツルギちゃんが体育館の外で戦い始めた後、アリウスの子たちと銃撃戦になったことは覚えてるよ」
「はい、最初のうちはお互いに激しく銃撃戦を行っていました」
「うん」
「しばらくするとアリウス側は戦力の差を察したのか防衛線に切り替え、私たちはこれ幸いと思い攻撃の手を激化させてしまいました。……忠告を聞かずに」
「させてしまった……? それに忠告って?」
「先生はその状況に違和感を持ち周りを警戒すべきだとおっしゃってくださったのです」
「私が……?」
えっ、全然覚えてない。
「先生は何かがおかしい、警戒すべきだと忠告してくださっておりましたが、激化した攻撃がその忠告をかき消してしまいました」
「そうなんだ……?」
「激化した攻撃でしたがそれでもアリウス側の防衛をなかなか突破出来ず、全体に焦りが生じてきたころです。いきなり体育館のいたるところの壁が爆破されました」
「壁が……?」
「はい。そしてその爆発が合図だったようで防衛に徹していたアリウス生が同時に手榴弾や閃光弾を投げつけてきました。その結果体育館は崩れ、さらには火炎瓶なんかも投げつけられていたようで炎上してしまい――」
「私はそれに巻き込まれて意識不明になった」
「……はい」
炎上し崩壊した体育館の下敷きになってよく無事だったな私。きっとアロナのおかげだろう。あとでいっぱい褒めてあげないと。
「あの時先生の忠告をきちんと聞いておけば……」
「気にしなくていいよ。覚えてないけどそれは多分勘で言っていただけだろうから」
私に戦況を読む力がないのは私が一番よく知ってる。本当にただ嫌な予感だとかで言っていたんだろう。
「それよりもアリウスの子たちは?」
「アリウス側はその混乱に乗じて全員逃走してしまいました」
「全員か……。あれ、牢獄を襲撃してきた子たちは? 確か捕縛してたよね?」
「そちらもです。事が終わってから確認しに行ったところすでにもぬけの殻だったと」
「そっか」
たぶん戦況の悪さを察して時間稼ぎのために撤退戦に移行し別動隊が救出に向かったのだろう。いやもしかすると私とナギサの確保が失敗した時点でかもしれないけど。……こんな事今更考えても仕方がないか。
「幸いなことに怪我人も少なく、軽傷ですんだのでよかったのですが……」
「……ですが?」
「……いろいろと後始末が」
あぁ、まあそうだよね。キヴォトス三大学園の一つであるトリニティでそんなことが起きたらいろいろと問題になるよね。それにエデン条約が近いんだし。
「ですのでこの事件での一番の重傷者は今まで目覚めなかった先生ということになります」
「そっか、みんな無事ならよかったよ」
目立った外傷も、激しく痛む場所もないから体育館崩壊の衝撃で意識を失っていただけなのだろう。それよりも……。
「…………」
「先生……?」
最後にこれだけは聞いておかないと。
「……ミカちゃんは?」
「……それは」
ナギサは口をつむぐ。言いづらそうに、何から話したらいいかわからないかのように。
「とりあえず今は監獄で監禁しています」
状況を聞いた感じメインストーリー通りに進んではいそう。だけど、ミカの心情はきっとメインストーリーとは違ってきているし、たぶんより酷くなっている気がする。
「ナギサちゃん。お願いがあるんだ」
「なんでしょうか?」
「私を、ミカちゃんのところに連れて行って」
「! それは駄目です! まだ安静にしていないと!」
「お願い」
頭を下げてナギサにお願いする。
「――わかりました」
「ありがとう、ナギサちゃん」
「ですが、無理は禁物ですよ」
「大丈夫。話をするだけだから」
メチャクチャ馬鹿みたいな設定の小説を思いついたのに書く暇がねぇ。
5000兆円ほしい。
もしくは分身したい。
そしたら書けるのに。
ということで来年はこの作品のほかにもう一つの作品を更新することを目標にします。
それでは皆様、良いお年を。