私に先生は荷が重すぎます!   作:朱汰清家

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試験前

 まさかあそこまでメンタルが追い詰められているなんて。……いや、追い詰めてしまったのは私なのだろう。けれどほかにどんな方法があったのだろうか。どうやって話をすればよかったのだろうか。『先生』ならどんな話をしたのだろう。

 そういえばエデン条約3章で直接ミカと話したのは『先生』が意識を取り戻した後だったっけ。その時はどんな会話をしていたんだっけ? 上手く思い出せない。コハルがカッコよかったことだけは覚えているんだけど……。

「――先生、大丈夫ですか?」

「……え?」

 そんな風に考え事をしていると横にいるナギサから声をかけられた。

「難しい顔をしていたので」

「そう、かな。そんな顔してた?」

「……はい」

 どうやら少し思い悩みすぎていたらしい。

「……ミカさんの事ですか?」

「……うん。どうすればよかったのかなって」

「どうすれば、ですか」

「私がもっとうまく立ち回れていたらこんなことにならなくて済んだんじゃないかって思って……」

「先生はご自身にできることを最大限になされていましたよ」

「……そうだといいんだけどね」

 会話が途切れ空気が重苦しくなる。 

「そういえばナギサちゃん。補習授業部の事なんだけど」

 そんな空気を変えようと補習授業部について尋ねてみる。

「第三次特別学力試験ってどうなったの?」

「あぁ、そういえば今日でしたね」

「え? 今日なの?」

「はい、これから試験が始まりますし、先生さえよろしければ補習授業部の皆さんに顔を見せに行くのもよいかもしれませんね。どうします? お辛いのでしたら試験が終わった後補習授業部の皆さんを病室までお連れいたしますが――」

「会いに行くよ。『先生』として激励の言葉を一つくらいかけてあげないと」

「わかりました。それではご案内しますね」

 正直なところ、結構体に負担がかかっている。けど、出来るなら皆の顔を見て応援したい。その思いから体に鞭をうって先導するナギサの後を追った。

 

 

「こちらです」

 扉の窓越しに見える四人の姿。教室の隅で机を合わせて試験前最後の勉強をしているみんなの顔は真剣で、とてもまぶしく見える。

 みんなの集中を乱したら悪いかななんて考えが頭によぎったけれど、ナギサが扉を開けたためみんなと視線が合う。瞬間パァと顔をほころばせたみんなが席を立ち急いで駆け寄ってくる。

「「「「先生!!」」」」

「おはようみんな。心配かけてごめんね」

「ホントよ! このエリートが心配してたんだから感謝しなさい!」

「心配してくれてありがとうねコハルちゃん」

 少し涙目になっているコハルの頭を撫でるとふわりとした心地よさを感じた。

「怪我とかはしていないか? 病み上がりこそ気を付けないといけないからな」

「気遣ってくれてありがとうアズサちゃん。平気だよ」

 いえーいとピースをしてアズサを安心させる。

「試験が終わったら私がつきっきりで看病してあげますね。汗を拭くのも得意なんですよ、全身くまなく♡」

「気持ちだけ受け取っておくねハナコちゃん」

 なんだか貞操の危機を感じるからきっぱりと断るね。

「先生のおかげで無事試験を受けることが出来ました。ありがとうございます!」

「ヒフミちゃんたちが頑張ったからだよ」

 まっすぐな感謝の気持ちを受け取り、うれしくなる。

「――みんな」

 ヒフミ、アズサ、コハル、ハナコ。目の前に立っている全員を私は両手いっぱいに広げてまとめて抱きしめる。

「うわっぷ!」

「っ!」

「ひゃあ!」

「あら~」

「みんな、本当によく頑張ったね」

 私が補習授業部のみんなにしたことなんてたいしたことじゃない。『先生』の真似事をしただけだ。

 アビドス編は多少の差異はあったもののほとんどストーリー通りに進んでいた。異なっていた部分は私が何とか軌道修正できた。けど、今回はちがう。ミカにさらわれ、私はなんの手出しもできなかった。むしろ状況を悪化させただけだった。

 それでもこうして今回の事件は解決できた。それはみんなが頑張ってくれたおかげだ。

「みんななら大丈夫。応援してるよ」

「ありがとうございます! 先生!」

 このままみんなの体温を感じていたかったけれど、そういうわけにもいかないから名残惜しさをおぼえつつもみんなを解放した。

「私は病室に戻るね。試験頑張って」

「はい!」

 みんなのやる気に満ちた顔を見て教室を後にする。そのままナギサに連れられ病室に戻る途中にチャイムが鳴った。

「試験が始まりましたね」

「うん」

「不安ですか?」

「……いや、そんなことはないよ」

 確かに多少の不安はある。なにしろ途中からみんなの頑張りを見ることが出来なかったから。けど、さっき教室で見たみんなの顔は自信に満ち溢れていた。だから大丈夫だろう。

「実のところ、試験については無しにしてもいいのではないかと考えていました。もともと裏切り者を見つけられなかった時の最終手段でしたので」

「そういえばそうだったね」

「ですがそのことを補習授業部の皆さんにお伝えしたところ、全員試験を受けることを望んでいました。合格ラインも引き上げられた90点で構わないと」

「そうなんだ? どうして……?」

「目を覚ました先生に見せたかったんだと思います。自分たちがどれほど成長したのかを」

「――!」

 その言葉を聞いて思った。なんていい子たちなのだろうかと。

「ナギサちゃん、連れてきてくれてありがとうね」

 本当に今日、みんなに会えとよかったと心から思う。

「いえ、お礼を言われるようなことではありません」

「それとごめん、病室までちょっと肩かしてくれるかな?」

 流石に無理をしすぎたようで足に力が入らなくなってきている。

「もちろんです。なんでしたら私が直接運びましょうか?」

「流石にそこまでは……」

「ふふっ、残念です」

 ナギサに支えてもらいながら病室へと戻った。




目前に迫ったブルアカフェス。
メチャクチャ楽しみで夜しか眠れません。

それはそれとして土曜、日曜ともにフェスに参加してくるのでもしかしたら来週更新できないかもしれません。
……いや、やっぱ更新します。
絶対に更新します。
しなかったらレッドウィンター連邦学園の雪原に埋めてもらって構いませんよ。
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