私に先生は荷が重すぎます!   作:朱汰清家

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救出作戦

「どうでしたか先生、ホシノ先輩」

「結論から言うとやっぱりセリカちゃんは攫われたっぽいね」

「私の権限を使って連邦生徒会のセントラルネットワークで調べてみたんだけど……」

「え!? そんな権限まで持ってるんですか!?」

「お願いして何とかね」

「すごかったよー。初手土下座かましてお願いする姿に相手側もちょっと引いてたし」

 本当にありがとうリンちゃん。今度お礼するね。

「とりあえずセリカちゃんの最後の端末情報はここみたい」

 情報をみんなの端末に送る。どうやらその場所にみんな何かしらの心当たりがあるみたい。

「ここって……確か砂漠化が進んでいる市街地の端っこのところですよね?」

「ん、住民が一切いなくて不良たちがいっぱいたむろしている場所」

「カタカタヘルメット団もそのあたりでよく確認されます。ということは……」

「セリカちゃんを攫ってこの間の仕返しってことかな。どう思うみんな?」

「それで間違いないかと」

「それじゃあこれからそこに乗り込むわけだ。そんなみんなに良いお知らせが一つあるよ」

「いいお知らせ、ですか?」

「そう。支援物資をこれでもかと詰め込んで運んできたから」

「わぁー。本当ですか!」

「ん。ありがとう、先生」

「それじゃあみんな、出撃だー!」

「「「「おおーー!!」」」」

 

「…………ん、んぅ」

 ガタンガタンと体を揺らす振動に意識が呼び覚まされた。

「ここは……いったい……いッた!」

 体に走る鈍い痛みに顔をしかめる。

「そっか、アタシ、あいつらにやられて……」

 意識を失う直前の出来事を思い出し自分がカタカタヘルメット団に攫われたのだと理解した。

「……あれ、ここって」

 暗い車内の窓から見えた外の景色は辺り一面砂漠になっていた。

「……もしかしてあれって、線路!? じゃあここアビドス郊外の砂漠!?」

 いったいどれほどの時間気を失っていたのだろう。

「どうしよう、連絡手段もないし、脱出出来たとしても街には戻れない」

 どの方向に行けばアビドスに戻れるのかわからないし、そもそも体力が持たない。途中で力尽きてしまうだろう。どうしよもない現実に目の前が暗くなっていく。

「私、これからどうなっちゃうのかな。砂漠に埋められて誰にも見つからずに行方不明になっちゃって、みんなに逃げ出したとか思われちゃうのかな。……イヤだなぁ」

 一度はいた弱音は消えることなく心身をむしばんでいく。これからのことを考えれば考えるほど嫌な思いをし、考えないようにしても心の奥底から浮かび上がってくる。

 膝を抱え、顔を足にうずめる。最後の防波堤も今すぐに壊れてしまいそうだった。

 思い浮かぶのはアビドスのみんな。今日まで一緒に頑張って力を合わせてきた思い出。辛いことも苦しいこともあったがそんなときは必ず誰かがそばにいた。そんななんてことのない日々。

 そんな時に現れた先生という存在。今までの日常が壊れてしまうんじゃないかって怖くてひどいことを言ったが、先生が悪い大人じゃないことはわかっている。

 確証はなかった。根拠だってない。それでも確信していた。会って、話して、そう思った。先生は信じれる大人だと。

 だから、今度会ったら謝ろうと思っていた……のに。その機会はもう訪れないのだろう。

「……ごめんなさい、先生」

 口にした言葉は震えていて、ひどく耳に残った。

「……………………助けて、みんな」

 消えてしまいそうなほど小さくつぶやいた願いは、天には届かない。

 突如衝撃が車を襲い、横転する。

「なっ!? なに!?」

 外から聞こえるのは激しい銃撃音。そして横転する前に聞こえた爆発音。状況から察するに何者かに襲われたのだろうか。

 そして銃撃戦の中で聞こえるいくつもの声。ほとんどが知らない声だったが、小さいながらも知っている声が聞こえた。なじみのある声の数は次第に増えていき、大きくなっていく。

 私は知っている、この声を。この人たちを――!

 バンッ! と車のドアが開かれる。光とともに誰かが入ってくる。

「あ! セリカちゃん見つけました!」

「の……ノノミ、せんぱい」

「みなさーん! こちらでーす!」

 ノノミ先輩の呼び声とともに見知った顔が現れてくる。

「ん、セリカ発見」

「うへー、よかったよー。間に合ったー」

「セリカちゃん! 大丈夫でしたか!?」

「……みんな」

「ん、先生も早く」

「セリカちゃん!」

 息切れしながらみんなの後ろから現れた先生は、私を見た瞬間血相を変えて駆け寄ってきた。そして……。

「遅くなってごめんね。怖い思いさせちゃってごめんね」

 そう、私以上に泣きながらやさしく抱きしめてくれた。

 

 

 私は本当に馬鹿だ。

 なんだかんだ言って楽観的に考えていた。ゲーム通りセリカはちゃんと救出されるから大丈夫だと、そうどこかで考えていた。

 ふざけるな。ここはゲームの世界じゃない。誰もが感情を持って生きている世界なんだ。うれしいことがあれば笑うし、悲しいことがあれば涙を流す。そんな簡単なことをわかっていなかった。

 セリカの涙を見るまで、理解できていなかった。とりあえずゲーム通りになってよかった、なんて考えは一瞬で消え去った。

 私は頭が真っ白になって、気が付いたらセリカを抱きしめていた。

「本当に、無事でよかった」

「あ……えっ、と……」

 ぎゅっと今以上に抱き寄せる。耳にはセリカの息遣いがとどき、全身にはセリカの体温を感じとれた。

「せ!? 先生!?」

「わぁー! とっても熱烈なハグですねー!」

「情熱的」

「セリカちゃんってば、いつの間に先生をたぶらかしていたの?」

「ちょ! ちょっとみんな! からかわないでくれる!? というか先生もいつまで抱きしめてるのよ! 変態! セクハラ教師!」

 セリカは乱雑に私を振りほどく。距離がはなれて見えた顔は真っ赤に染まっていて、そっぽを向いていた。

「……ありがと、先生。あと……ひどいこと言ってごめんなさい」

 ……驚いた。私はまだそこまでセリカと関われていない。それなのに……。いや、驚くようなことじゃないのかも。そもそもセリカは優しい子だ。余裕がなく、急に現れた大人を警戒していただけなんだ。

「セリカちゃんがデレちゃいました!?」

「セリカちゃんを堕とすとは、やるねー先生」

「デレてないッ!!!」

 セリカはもうみんなと言い争いをしていた。その光景を目にして私は思う。

 これから私は、この光景を守っていかなければならないのだと。

 ……私にできるのだろうか。『先生』ではない私に。

 それでもやらなくてはならないんだ。『先生』の代わりに。

 私には『先生』のような力も、責任感も、信念も、何もかもが足りない。荷が重すぎることなど重々承知だ。だから、文字通り死力を尽くそう。そうでもしない限り『先生』の足元にも及ばないのだから。

 




いやー、4周年イベスト楽しかったですね。
とくに予期してないリオネルの絡みがよすぎた。
関係性オタクとしては新たな供給に心躍りましたよ。
それはそれとしてセイアちゃんわんぱく過ぎない?
先生びっくりしちゃった。
そりゃあストライカーになるのも納得だわ。
それにやっぱりセイアちゃんもまだ子供なんだなって思いました。
思い返せば当然ですよね。
エデン条約なんて目が覚めないのも嫌なことから目を背けてただけなんだし。
イベント後のティーパーティーの絡みが超みてぇ。

まだ後日談的なのが残ってるのでみんなで楽しみましょう!
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