私に先生は荷が重すぎます!   作:朱汰清家

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一縷の望み

「先生!?」

「目が覚めたのですね!?」

 ミカに抱きかかえられたままシスターフッドの会議室に入ると中にいた生徒たちが驚いて駆け寄ってきてくれた。その中にマリーやハナコの姿もあったが、みんなどこか憔悴した顔をしてる。

「みんな、心配してくれてありがとうね」

 ミカに下ろしてもらい両足で立つけど、それだけでもやっぱり体に痛みが走る。とはいえそんな姿を見せたらここにいる子たちに余計な心配をさせてしまうし、意地でもそんなそぶりは見せないようにしないと。

「お待ちしておりました先生」

 そんなことを考えていたらナギサが近づいてきてた。

「うん、待たせてごめんねナギサちゃん」

 ナギサも服がボロボロで、至る所に包帯がまかれている。

「……私が言うのもなんだけど、大丈夫?」

「本当に先生が言うべき言葉ではないですね。えぇ大丈夫です。少なくともこの事態を収めるまでは寝ているわけにはいきませんから」

 ミカに支えられながら椅子に座って思う。一人だと椅子に座ることもままならないのかと。

 これはどうやら、短期決着しないと私の体がもたなさそうだ。

「時間もないし今の状況を教えて」

 ナギサとハナコがそれぞれ情報を補いながら今の状況について話してくれた。

「――と、現状はこのようになっています」

 ナギサたちから今の状況を聞いたがやはりというかあまり、いやかなり悪い状況だった。

「救助活動も全く進んでおらず、行方がわかっていない生徒も数が多くて人手が全く足りてません」

「ユスティナ聖徒会にもこちらの攻撃があまり効いておりませんし――」

「――え? そうなの?」

 ミカが驚いたようにこぼした言葉がみんなの視線を集める。

「確かにミカさんならなんとかなるでしょうけど――」

「いや別に私あのよくわからないのと戦ってないよ?」

「……では何に疑問を持ったのですか?」

「それは、あー、えっとー」

 ちらっちらっとナギサの方に視線を向けるミカ。

「大丈夫ですミカさん、話してください」

「……うん、わかったよナギちゃん。えっとね、みんなも知ってると思うけど私はナギちゃんに頼まれて先生の救出に行ったの。とある生徒4人と」

「とある生徒とは?」

「それに関しては言えないかな。そういう約束だから。言えるのはトリニティ生でもゲヘナ生でもないってこと」

「……わかりました。続けて下さい」

「うん、それでね、私は先生を運んでいたから学園に戻ってくるまでは戦闘出来なくってさ。その4人に護衛してもらいながら戻ってきたんだけど、道中現れたそのユスティナ聖徒会? はその4人が攻撃したら簡単に消えちゃったよ」

 ミカの話を一通り聞き終えたナギサとハナコは少しの間だけ思案し、お互いに出した結論を確かめ合うために話し始める。

「……それはつまり、ユスティナ聖徒会は私たちトリニティとゲヘナに特化した存在という事でしょうか?」

「おそらくそうでしょう。アズサちゃんから聞いたアリウススクワッドのリーダーの話と整合しても矛盾する点はありません」

「ですがそれがわかったところでどうこうできる存在ではありません」

「……それは、そうですね。他学園の救援は望めませんし、もし救援が来たとしても無限に現れるユスティナ聖徒会に並大抵の戦力では太刀打ちできません」

「ユスティナ聖徒会の謎が少しとけたとしても、現状が変わることはないということですか」

「えぇ、結論から言えばエデン条約機構、これをアリウススクワッドの手から取り返さない限りこの事態が収束することはありません」

「「…………」」

 ハナコの出した結論に異論は出ず、重苦しい空気が場を支配してしまう。

 落ち着いて情報を整理しよう。なぜエデン条約機構はアリウスに渡った?

 かつての権力が残っていたから。

 トリニティとゲヘナ、両方を憎んでいるというある意味中立の立場だから。

 アリウスがエデン条約に「自分たちがエデン条約機構を担う」と書き加えたから。

 思い当たる理由はこのくらい。それ以外にもロイヤルブラッドがどうとかそういった理由もあるんだろうけど、そのあたりはまるで解らなかったし解ろうとしなかった。

 まさかこんな風に考察勢になっておけばよかったと思うことになるなんて。

 いや、こんなことで後悔してもしょうがない。もっと考えろ。

 次に考えるのはなぜ『先生』がエデン条約機構を取り戻すことが出来たのか。

 そもそもエデン条約は連邦生徒会長が作りかけていたものだ。彼女が失踪してしまい空中分解してしまいそうになるのをナギサが何とか拾い上げ形にしたのが今のエデン条約ではあるものの、その本質は連邦生徒会長が作ったものだ。

 だからその連邦生徒会長が設立した超法規的機関シャーレの主であり彼女自らが呼び寄せた『先生』が連邦生徒会長のかわりを務めることが出来た。

 それに先生は学園問わず数多の生徒からの信頼を得ている。その中には当然トリニティとゲヘナ両陣営の中心組織である生徒たちも含まれているし、両陣営の生徒たちから『先生』になら任せられるという信頼があったから。

 そしてそのすべてをひっくるめてエデン条約の中心にいるティーパーティー、正義実現委員、風紀委員会を古聖堂に集め、調印式を再現したから。

 再現できたからこそエデン条約機構は混乱し、力を失っていった。

 なら同じように再現する?

 無理だ。ティーパーティー、正義実現委員は集められても風紀委員長のヒナが意識を失っている。そんな状態で風紀委員会をまとめることは出来ないし、そもそもゲヘナの主要人物が一人もいない状態じゃあ再現とは言えない。

 だから原作と同じ手は使えない。原作とは違う手を使ってエデン条約機構を取り返す、取り返すまではいかなくても弱体化させなければいけない。

 そしてその解決策としてサオリを殺そうとしているアズサも止めなければならない。

 ……時間が足りない。アズサとサオリの戦いの結果がどうなるかはわからないけどそう長くはかからないはずだ。だから一発逆転できるような、そんな策が必要だ。

 エデン条約機構を取り返し、トリニティとゲヘナの争いを止めるような策を。

 だけど、まったく思いつかない。どうすればいいのかわからない。

 一度結果から考えよう。最終目的はアリウスを退けること。そのためにはトリニティとゲヘナが協力することが必要だ。ならそのためには、どうすればいい? どうすれば両陣営は協力関係を結べる?

 まず間に入る仲介役は必要だ。それは『先生』が適任だ。つまり私が仲を取り持つ必要がある。

 どうやって仲を取り持つ? 私になにができる?

 真っ先に思いつくのはメリットを提示すること。

 トリニティとゲヘナが協力すればエデン条約機構を取り戻せると説明する?

 無理だ。

 そもそもその両陣営が争っているから手詰まりなわけであって……あれ?

 ………………もしかして、逆か?

 エデン条約機構を取り戻すことを最優先にしていたけれど、もしかして順番が違うのか?

「…………ねえナギサちゃん、ハナコちゃん。もし、もしだよ。もし私がトリニティとゲヘナの争いを止めることが出来たら、それは私がエデン条約機構ということになるんじゃないかな」

「「!?」」

 そうだ。もしそれが成功すればすべてが解決する。

「可能性は確かにあります。……ありますがわずかな可能性です」

「ナギサさんの言う通りです。先生が戦争を止めたとしても、それだけでエデン条約機構とみなされるとはさすがに思えません」

「確かにそうかもしれない。でも、トリニティとゲヘナの争いを止めた私がエデン条約機構だと生徒みんなにそう思ってもらえれば、可能性は十分にあると思うんだ」

 希望的観測だ。この策はそうなったらいいなが大部分を含んでいる大博打だ。

「ようは認めさせればいいんだ。私とアリウス、どっちがエデン条約機構にふさわしいか。……少し違うね、みんなに支持されるのはどっちなのか」

「武力で戦争を止める事と言葉で戦争を止める事、どちらが多くの支持を集められるかですか。平時であれば多くの人は後者を選ぶでしょうが今の状況では……支持されたとしてもごく限られた少数だけでしょう。大半の生徒にはそんな風に支持する余裕なんてないのですから」

「そもそもトリニティとゲヘナの軋轢は長く言葉を尽くしたとて耳を傾ける生徒など――」

「違うよ、二人とも。これはトリニティとかゲヘナとか関係ない。これは子供たちが自分たちの居場所を守るために争っているに過ぎない。つまりはケンカだよ」

「ケンカ、ですか?」

「そう。だから大人の私が子供たちのケンカを止めるのは当然のことだよ」

 子供のケンカを止める。そう思えばなんとかできる気がする。……気がするだけだけど……でも、やる。

「この状況をただのケンカだと言い切ってしまう精神力には感服します。ですが、どうやって? わざわざケンカしている場所すべてに赴いて仲直りでもさせるつもりですか?」

「時間がないのは先生もわかっていらっしゃるはず。そんなことをしている暇なんてありません。一度にすべての生徒たちの間に入って仲裁でもしない限り――」

「うん。だからやるよ」

「え?」

「一回だ。一回で子供たちのケンカをすべて止めて見せる」

 なんて虚勢を張って言い切ってみるけど、正直不可能だと私でも思う。

 でも、これ以外に方法はない。思いつかない。

 だから、賭けるしかない。

 私の言葉と思いがみんなに届くことを。

「いったいどうやって……?」

「――クロノス報道部につないで」




楽しく更新されたメインストーリー2部読んでたらよくわかんない夢の語り手に急に刺されたんだけど。
致命傷負わされたんだけど。


それでも私は元気です。
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