私に先生は荷が重すぎます!   作:朱汰清家

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会議

 目覚めてから一か月がたち、腕を固定していたギブスも取れた私は現在何の問題もなく過ごすことが出来ている。体重が軽くなって不便になったことだとか、ミネとセリナ以外の子にばれたりだとかそういったことは起きず、平和な日々だった。

 とはいえシッテムの箱をベアトリーチェに奪われている今、銃撃戦が日常茶飯事なこのキヴォトスで暮らすのはかなり不安ではあるけれど。

 そんなことを考えながら私はナギサに呼ばれティーパーティーのテラスに訪れていた。

「お越しいただきありがとうございます、先生」

「ごめんね、待たせちゃったかな?」

「そんなことはないさ。なにしろ君の到着を心待ちにしていた時間は我々にとってとても有意義なものだったからね」

「セイアちゃん、その言い方だとあんまりフォローになってないよ?」

「おや、異なことを。少し前までそわそわしていた君を観察するのは意外と面白かったのだがね。

まるで動物園にいたみたいだったよ」

「なにそれー。セイアちゃんだって普段の身だしなみに比べたら今日はやけに気合入ってるじゃん」

「当然だろう。なにしろ今日は来客者を招いているわけだからね」

 そこにはナギサ、セイア、ミカの三人が揃っていて、それなりに穏やかな雰囲気を出している。少なくともミカとセイアの間に気まずさは見受けられない。

「仲睦まじくて羨ましいね」

「先生、いったい今のどこが仲睦まじく見えたのかいささか興味があるのだが?」

「そうだよ先生、ちょっと口喧嘩してただけだよ?」

「喧嘩するほど仲がいいって言うじゃん?」

「本当に仲がいいのなら喧嘩する前に話し合うことが出来るだろうとも」

「そうそう、セイアちゃんはただ屁理屈を並べてるだけなんだから」

「お二人とも、その辺に。今日は私たちの醜態を披露するために先生をお呼びしたわけではないのですから」

 やいのやいのとミカとセイアの口論がヒートアップしそうになったのを見かねていたナギサが止めた。

「はーい、ごめんなさーい」

「すまないねナギサ。ミカにつられて私も少々熱くなっていた」

「セーイ―アーちゃーん?」

「オホンっ!」

 わざとらしい咳払いをして強引に話を打ち切らせたナギサ。

「話をしたいのですがその前に……」

 ナギサはミカの後ろに控えている生徒に目を向けた。

「――すみませんが少々外していてください」

「え?」

 その生徒はミカを監視する任についている生徒で、そう告げられた生徒は困惑した表情を浮かべている。

「これから話すことはトリニティの、ひいてはキヴォトス全土の未来を決めかねない事案ですので」

「ならばその、ミカ様はむしろ……」

 口を濁しながら気まずそうにミカの方を見る生徒。

「言いたいことはわかります。ですがこの事案はミカさんにとっても無関係ではありませんので」

「…………わかりました。失礼いたします」

 しぶしぶといった様子でその場を後にする生徒を見送り、テラスには私たち4人だけが残った。

「これで役者は揃ったようだね」

「それでは始めましょうか」

「これから起きる未来のこと、だよね」

 すでにミカにも私が未来を知っていることは話していて、どうしてミカとアリウスが繋がっていたのかを私が知っていたのかについては納得してもらった。

 とはいえヒナと会話している時にそういったことを口にしていていたらしく、ミカにはすでに気付かれていたみたいだったけれど。

 とりあえず憶えている限りの本編での出来事をナギサたちに話した。

「――つまりベアトリーチェはアツコさんを生贄にささげようとして、アツコさんを助けたいがなすすべのないサオリさんたちは先生を頼り、協力してベアトリーチェの計画を阻止した、という事ですか?」

「うん、その通りだよ」

 流石に細かいところ、それこそベアトリーチェがどういった方法でどういった存在になろうとしていたかだとか、ウイやハナコがどうやってアリウス自治区やカタコンベの地図を見つけ解読したかとかはわからないけれど。

「なるほど。それでアリウススクワッドを見つけ保護してほしいとおっしゃったわけですね」

「ごめんね、あの時はまだいろいろバタバタしてたし。それに私もちゃんと説明出来る状態じゃなかったから」

 目覚めた後、私はナギサにアリウススクワッドの保護を頼んだ。突然ことだったし理由も説明できなかったけど、なにも聞かずに私の頼みを聞いてくれたナギサには感謝しかない。

「ですが申し訳ありません。捜索は続けているのですが未だ何一つ痕跡は見つかっておらず。もう一件の方も手掛かりはつかめておりません」

「ううん、気にしないで。こうして頼みを聞いてもらっただけで助かってるから」

 それにそれだけじゃなくカタコンベについてのことも調べてほしいとも頼んでしまっている。私はこれから先ナギサには頭が上がらないだろう。

「それでは本題に入りますが、これから起きる事柄についてどう対応するかについて話をしましょう」

「先の事件では先手を打たれたからね。出来れば今度はこちらから手を打ちたいところなのだが……」

「正直、難しいでしょう。アリウス分校の位置はミカさんが知っているとはいえ、そのことは向こうも承知のことです」

「それにあそこのカタコンベは一定周期で内部構造が変わるから奇襲をかけようといても無理だしね」

「そういえばミカさんはどうやってカタコンベを通ってアリウスと接触できたのですか?」

「あー。そのことなんだけど……」

 確かにそのことについては私も疑問に思っていた。読んでいる時はティーパーティーの一人だから優れている部分があったのだろうと思ってたし、直接本編には関係なかったからそこを詳しく説明する必要はなかっただろうと納得していた。

 だからこそ今の状況ではミカがどうやってアリウスと接触したのか興味がある。そしてそれはナギサとセイアも同じなのだろう。

 私たち三人に視線を向けられたミカは、どこか気まずそうにしながら口を開いた。

「……正直に言うとね、わからないんだ」

「わからないとはずいぶんな答えだね」

「しょうがないじゃん! わからないものはわからないんだから!」

「落ち着いてミカちゃん、とりあえずわかる範囲でいいから聞かせてもらっていいかな?」

「うん。えっとね、カタコンベの入り口を見つけた時、なんか直感的に進むべき道がわかったの」

「直感的に?」

「そう。なんていうか、デジャブ? ていうのかな? この道を通っていけばアリウス自治区にたどり着けるっていうか、まるでこっちだよって感じで誘われているみたいな……」

 うーんと頭を悩ませながら話すミカは決して嘘をついているようには見えない。きっと本当の事なんだろう。

「困りましたね。これでは打つ手なしですか」

「ならば先生が言っていたルートについて心当たりはあるかい?」

「うん、あるけど……。でもそのことは向こうもわかってるはずだし下手に突かないほうが良いと思うよ?」

「そうだね。この間の事件でもいろいろとしてやられたし、そのことを考えるとかなり危険な罠があるはず」

 あれこれと話し合うがこれといったアイディアは思いつかず、時間だけが過ぎていく。

「そういえば、私は夢でベアトリーチェと接触したほうが良いのかな?」

「いや、それは……しなくて大丈夫だよ」

 正直なところ、それはやめてほしいと思う。なにしろすでに本編とは乖離しているのだからなにが起きるかわかったものじゃない。

 それに夢から目覚めるためにセイアは取引をして予知夢を失った。でもベアトリーチェと接触しなければ予知夢は失われずに済む。それは大きな武器になる。

 ……なんて考えてしまった自分がイヤになる。ただ生徒が危険な目に合わなくて済む、それだけでいいはずなのに。打算的に考えてしまう自分が許せない。『先生』ならそんな風に考えないはずなのだから。

「少なくとも私が知っている未来通りには進まないから、下手に接触すると目覚める事も出来ないかもしれない」

「……そうか。それなら探りを入れるのはやめよう」

「とりあえずはカタコンベ内の構造を徹底的に調べ上げるしかないですね」

「それと同時にアリウススクワッドの捜索だね。こっちについては私が担当しよう」

「アツコちゃんがベアトリーチェに囚われる前に保護することが出来たらそれだけでベアトリーチェの目論見を砕くことが出来るからね」

 今後の方針が決まり一度解散することとなった私は一度シャーレに戻り、仕事を片付けてその日を終えた。

 翌朝、シャーレで目を覚ました私のもとにナギサから電話がかかってきた。

『先生! セイアさんが目を覚ましません!』

 私はまた、ベアトリーチェに先手を取られしまった。








まーた同じ失敗しているよ。
学ばないなこいつ。
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