私に先生は荷が重すぎます!   作:朱汰清家

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開戦の合図

 セイアが倒れたと連絡を受け急いでトリニティ総合学園に訪れると、大勢のトリニティ生徒たちが抗議活動をしていた。いや、抗議というよりただの誹謗中傷だ。そしてその相手はもちろん決まっている。

 ミカへの暴言や戯言。聞くに堪えない言葉の数々。この場にいるだけで心が傷ついてしまいそうになる。いや、実際に傷ついている。

 これらの悪意を一身に受けるミカのことを思うとどうしようもないほど心がギュっとなる。

 そんな悪意から逃げるように足早で校舎の中へ急ぎ、そこでナギサと合流しセイアの病室へと足を運んだ。

「……セイアちゃん」

 そこには苦し気に顔を歪ませながら目を閉じているセイアの姿があった。

「……なにがあったかわかる?」

「いいえ。今朝セイアさんの姿がなく、気になって様子を見にいったらすでにこの状態でした」

「そっか」

 まさかセイアが眠りに囚われたままになるとは思ってもみなかった。

 どうしてセイアは目覚めないのだろうか? まるで情報がない。

 忠告を無視してベアトリーチェと接触してしまったのだろうか?

 いや危険性は話したし、もし勝手に接触しようとしたんだとしたら書置きぐらいの情報は残すはずだ……と思う。

 完全にただの予想だが事故なのだろう。セイアは運悪くベアトリーチェと接触してしまい本編と同じように捕らわれてしまったのだと。今はそう考えるしかない。

「……ミカちゃんはこのことを?」

「はい。知っております」

 幸いなのはセイアのあの言葉をミカが聞かなくてすんだことぐらいか。あの言葉を聞いてしまったせいでミカは自分を責め、罪の重さに耐えきれずに暴走してしまった。

「すでにセイアさんが倒れたことは噂となっておりまして。それだけならまだよかったのですがセイアさんが倒れた原因をミカさんに擦り付けるような声も多くなっていく一方でして……」

「聞いてきたよ」

「……そうでしたか」

「……ミカちゃんの様子はどう?」

「あまり、よくはありません」

 昨日の時点ではそれなりに元気に見えてはいたけれど、やっぱり無理していたんだろうか。

「ナギサちゃん、忙しいとは思うんだけど……」

「わかっています」

「え?」

「ミカさんが私たちに心配をかけないように明るく振る舞っていたことくらい」

「そうなの?」

「もちろんです。私たち、幼馴染ですので」

 それはそっか。私なんかよりずっと長く付き合ってきたんだから、友達の考えていることぐらい気が付くよね。

「おそらく今のミカさんは私たちのためならなんでもするでしょう。それこそ、命を捨てる事すらいとわないほどに」

「っ!? そんなに思い詰めてたの?」

 ナギサは何も言わず顔だけをしかめた。

「セイアさんのヘイローを破壊しかけてしまったこと、私を騙し裏切ったこと、トリニティを滅亡の危機に追いやったこと、そして先生の手を取らず、先生を巻き込んで傷つけてしまったこと。このすべての罪を抱え込み、そして償おうとしています。……どんな方法を使ってでも」

 それは、かなり危うい状況だ。むしろ罪の重さに耐えきれず暴走してしまったほうが良かったんじゃないかって思うほどに。

「今はまだ原因不明ですからおとなしくしていますけれど、もしセイアさんをこんな風にした元凶がわかれば今すぐにでも飛び出していくでしょう」

 そんな状況じゃ安易にミカに頼ることは出来ない。

 そもそも私はどうすればいいのだろうか?

 すべてを解決するためにはベアトリーチェを倒さなければいけない。

 けれど、私に何が出来るのだろうか?

 失敗して。

 間違えて。

 後手に回り続ける私に。

 ベアトリーチェに勝てるのだろうか?

 そんな風に悩んでいるとモモトークの通知音がなった。

「……?」

 気になって見てみれば、内用はとても簡素なものだった。それはただ一つの場所を示す住所。そして――。

『トリニティが狙われている』

 この一文のみ。

 けれどそれだけで誰が送ってきているのか、なにを意味しているのかは理解できた。

「……先生?」

「ナギサちゃん。ここは任せるね」

「!? それは一体どういう!?」

「ここがアリウスに……いや、ベアトリーチェに狙われている」

 なぜ今更トリニティを狙おうとするのか、目的はわからない。

 けれど、すでに原作とは違ってきているんだ。ならこういったことが起きたって不思議じゃない。

「それでは先生は一体どちらへいかれるつもりですか!」

「サオリちゃんたちにあってくる」

「いけません先生! いくらなんでも一人で行くだなんて!」

「ベアトリーチェの戦力が読めない以上、こっちの戦力を減らすわけにはいかないでしょ」

「ですが……っ!」

「それに私がトリニティの子たちを連れていったらサオリちゃんたちに警戒されちゃうかもだし、そもそも顔を出してくれないかもしれない」

 それにこれは私の失態だ。私が何とかしないと。

「頼んだよナギサちゃん」

 

 

 一人残されたナギサはセイアの病室で思考にふける。

 内容はもちろん一人で行ってしまった先生の事。

 先生を信じていないわけではない。

 むしろ先生ならなんとかしてくれる、そう考えている。

 実際、今までの出来事も先生が何とかしてきた。

 けれど、だからといって今回も同じように大丈夫、だなんてまったく思えなかった。

 むしろ先のエデン条約事件でベアトリーチェの狡猾さや恐ろしさを知ったからこそナギサは不安に駆られている。

 このまま先生を失ってしまうのではないかと恐れている。

 今すぐにでも先生を追いかけたい。

 力になりたい。

 守りたい。

 そう思うもティーパーティーのホストとしてトリニティを守らなくてはいけない責任がある。

 それに、先生が任せてくれたのだ。

 それを裏切りたくはない。

 とはいえ心配なのは事実。

 どうすべきか悩み、電話をかけた。

 数度のコールの後、相手が電話に出る。

「お願いしたいことがあります」

 ナギサは現状を簡潔に電話の主へ伝えた。

「先生の護衛を、命を、お守りください」

『――お任せください』





ホシノやリオと同じことしてるな。
ホシノみたいに強くなければリオみたいに頭がいいわけでもないのに。
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