太陽が昇り、日の光が窓から差し込む。薄暗かった部屋は明るくはなったが、この部屋全体はまだ暗いままだった。
分厚い鉄格子に囲まれ、自由に動き回れる範囲が少ないこの部屋で私は今日もぼーっとソファに座り、真っ白な天井を眺めていた。
「やっほミカちゃん。いい朝だね」
そんな私のもとに明るく、気軽に朝の挨拶をして私のもとに訪れた先生。
「……今日も来たの?」
私は顔も動かさず、天井を見つめたままぶっきら棒に返した。
「約束したからね。毎日来るって」
「一方的な口約束じゃん。私はべつに来てほしいって言ってないんだけど」
「それでも来るよ」
突き放すような言葉を口にしても先生は笑顔を絶やさない。
ずっとそうだ。私がこの監獄に収監されてから一日たりとも欠かさず私と話をしに来る。
「……私と話したって時間の無駄なのに」
「そんなことないよ。私にとってミカちゃんと話が出来るのはとっても楽しいことだもの」
少なくとも、収監されてから私と先生の会話は面白いと思えるようなものはなかった。そもそも先生が一方的に話をし、私はそれに適当な相槌を打っているだけ。会話にすらなっていない。
それでも先生はここを去るとき、「楽しかった」「また来るね」と言い残して去っていく。
「――それでね、ナギサちゃん最近すごく忙しいみたいなんだけど、わざわざロールケーキを手作りしてくれてね。それが本っ当に美味しくて! スポンジがふわふわしながらもしっとりしていて! 中の濃厚なクリームも舌にのせた瞬間とろけるように甘みが口の中いっぱいに広がってね! それから――」
気が付いたら先生はナギちゃんが作ったロールケーキについて熱弁していた。
まあでも、確かにナギちゃんの手作りしたロールケーキは美味しい。そんなこと私が一番よく知っている。なにしろ今の技量まで到達するために何度も作ってきたロールケーキを食べ続けてきたのは私なんだから。
だからそんなことわざわざ話す必要なんてないのに。
「ねぇ先生」
私は今日初めて柵の向こう側にいる先生の顔を見た。その顔はどこかやつれていて、目の下にはほんのりと隈ができている。……先生の顔は日に日に少しづつ悪くなっていっていた。
「どうしたの?」
「どうしてこんな無駄なことをするの?」
……先生に放った言葉がそのまま帰ってくる。だって毎回同じことを聞いて、同じ答えが返ってきているんだから。今回だって同じ。私のことを大事な生徒だっていうんだろう。
「アリウスと手を組んでクーデターを起こした主犯は捕まった。めでたしめでたし。それでいいじゃん」
だからちょっとした抵抗というか、いじわるというか、先生が口を開こうとしているのにかぶせて続けていった。
「私以外にも先生の助けが必要な子はいっぱいいるよ。私なんかにかまっている時間があるんだったらその子たちに使ってあげたほうが良いよ」
「……」
「それにほら、先生も言っていたようにナギちゃんだって忙しいんでしょ? だったらナギちゃんを手伝ってあげなよ。ほら、ナギちゃん今一人だし」
一人にした張本人が何を言っているのだろう。
「他にも、ほら、補習授業部の子たちとか。退学は免れたとはいえいろいろ巻き込まれちゃった子たちなんだしフォローしてあげたりとか」
彼女たちも私のせいで巻き込まれただけなのに。
「それこそアズサちゃんとか。今はお友達に囲まれているとはいえあの子だってアリウス出身の子なんだし。いろいろと困ることとかもあるんじゃないかな?」
ある意味一番の被害者なのは彼女だろう。私のせいでアリウスを裏切ることになってしまったのだから。
「そんな生徒の悩みや困りごとを聞いて解決してきたほうが絶対いいよ。先生はすごいんだから」
こんな風に周りに迷惑をかけて、不幸にした私に手を差し伸べられる資格なんてない。先生の手はもっときれいで、優しくて、震えている手に差し伸べられるべきだ。断じて私なんかが触れてい訳がない。
「だから、こんなことしてないで。先生の時間を無駄にしないで」
私と話す時間を減らすだけでも十分に休めるはず。私なんかに無駄な体力を使わないで。そう思っても、それでも先生はきっとそんなことはないと否定するんだろうなとどこか諦めのような感情を抱いていた。
「……私は、ミカちゃんが思っているほど大した大人じゃないよ」
けれど予想に反して先生から出てきた言葉はどこか弱々しいものだった。
「私は『先生』として生徒たちを守りたい。子供たちの笑顔を見ていたい。そのためならなんだってするって思っていた……けれど実際にそうすることは出来なかった」
なにを言っているのだろうか。先生はちゃんと生徒たちを守ったというのに。今も守っているというのに。
「だって、私は選択できなかったから」
……選択? いったい何を選択しなかったというのだろうか。どうしてそんなに苦しそうな顔をしているというのだろうか。
「私が逃げなければもしかしたらミカちゃんはこんなことにはなっていなかったかもしれない」
「どういうこと?」
そう訊ねれば先生の顔が一層苦々しいものに変わっていった。
「…………」
ずっと私を見てきた目と視線が合わない。ずっと話し続けてきた口が開かれない。
ぎゅっと先生の手が握られる。プルプルと先生の体が揺れている。その弱々しい姿はまるで隠していた罪を懺悔する罪人のようで、初めて見る先生の弱い部分だった。
「……私はね……知っていたんだ。最初から」
重々しい口から紡がれた言葉は覚悟を決めて話したというよりも、耐えきれずにこぼれ落ちた言葉のようで、先生はどこか諦めたような雰囲気だった。
「知っていたって、なにを?」
「…………」
再び閉ざされた口は先ほどとは違い、使う言葉を慎重に選んでいるかのようだった。
「……ミカちゃんがアリウスと手を組んでいたことを」
「…………え?」
頭の中が真っ白になった。
先生は今、何と言ったのだろうか。
知っていた?
私がアリウスと手を組んでいたことを?
どこから? 最初からとは?
私がそのことをプールで打ち明けた時にはすでに知っていた?
どうして? いやそもそもどうやって?
先生がトリニティに訪れてから私は別にボロは出していなかった。いや、そもそも私がアリウスとつながっていたと調べる時間なんてなかったはずだ。
なら先生はトリニティに来る前から私がアリウスとつながっていることを知っていた?
最初からとは、いったいどこから?
「……そろそろ時間だね。また明日来るから」
「……まって!」
そう言って先生は私から逃げるようにここを後にした。
先生がいなくなったこの部屋に静寂が訪れる。それはいつもの事だったし、そのことについて気にしたことはなかった。
けれど今日は、今は、この静寂がなぜだかすごく恐ろしい。それにこの狭いはずの部屋も広く感じる。今すぐ目の前の柵を壊して先生を追いかけたい。そう心の奥底からそんな思いが湧き出してくる。
私は鉄格子に手をかけ――手を離す。
今私が勝手な行動をとったら立場が悪くなるのは私だけじゃない。私のために動いている先生とナギちゃんの立場も危ういことになってしまう。それだけは駄目だ。また私のせいで誰かが不幸になることだけは、そんなことだけは起こしちゃいけない。
それに先生はまた明日といった。今までずっと私の下へ会いに来てくれてたんだ。
先生がどうして知っていたのか、先生が話した言葉の真意はなんなのか、疑問に思うことはたくさんあるけれど、そういった疑問も不安も明日解消するだろう。
…………そう、軽く考えていた。
次の日、先生は現れなかった。
ブルアカDJフェス最高でした。
叫びすぎて喉は痛いし、肩も痛い。なんならお腹も痛いです。
全身がボロボロです。
だけど後悔はないです。
だって本当に楽しかったので。
これで次のDJは次のブルアカふぇすですね。
その時が今から楽しみです。
また来年もブルアカDJフェスツアー開催してほしいな。
取り合えず次はブルアカVRですね。
私は31日の昼と午後の二回当選しているので思いっきり楽しんでこようと思います。
皆さんも一緒に楽しみましょう。