ユウカとノアに挟まれ、コユキと一緒に花火をシャーレのオフィスから眺めていたんだ。
カズサとイチャイチャし、放課後スイーツ部のみんなとシュークリームを食べたんだ。
セイア、ナギサ、ミカと一緒に海で夜空と流れ星を眺めていたんだ。
あれは夢じゃなかった。夢なんかじゃなかったんだ!
確かにそこにいたんだ!
手の届く距離に!
愛しの生徒たちが!
なのになぜ!!
……なぜ今私の目の前には誰もいないんだ。
……なんで。
……どうして。
どうしてなんだ。
答えてくれ、ユウカ。
教えてくれ、ノア。
はしゃいでくれ、コユキ。
寄り添ってくれ、カズサ。
からかってくれ、ナツ。
突っ込んでくれ、ヨシミ。
みんなの輪になってくれ、アイリ。
ささやいてくれ、セイア。
楽しんでくれ、ナギサ。
幸せな顔を見せてくれ、ミカ。
……うぅ。
寂しい、辛い。
もう一度、君たちと触れ合いたいよ。
数刻前に大きな爆発音が聞こえ、窓から外を覗けば調印式が行われる古聖堂付近から火の手が立ち上るのが見えた。
その次に聞こえてきたのは戦闘音と怒声。ありとあらゆるところから銃撃音が鳴り響き、ゲヘナを憎む声が立ち上る。
「……なにがあったんだろう?」
状況からしてエデン条約が締結されることはなく、戦争になってしまっているのはわかる。けれど、この監獄の中ではそれ以上のことはわからなかった。
「…………ナギちゃん」
思わずこぼれた心配する気持ち。それは決して誰にも届くことはなく、私はただ幼馴染の無事を祈ることしかできない。
両手を胸の前で合わせ、指を絡ませ、目を閉じ、頭を伏せ、自身の無力感に苛まれながらただただ祈り続けた。
「……?」
そんな時、ドタバタと走る二人分の足音が聞こえた。その足音は迷いなく進み続け、やがてその主は私の部屋の扉を開けた。
「ミカ様! お待たせいたしました!」
「今鍵をお開け致しますね!」
中に入ってきたのはパテル分派の子たち。その顔はどこか期待に満ちていて、それだけで彼女たちが今何を望んでいるのかわかってしまった。
「……ふーん、そっか」
「ミカ様ならお気づきだと思いますが今トリニティは――」
「うん、大丈夫。だいたいわかってるから」
「流石です! では今すぐティーパーティーのホストに戻ってゲヘナに宣戦布告を!!」
やっぱりそういうことだった。この子たちが私を持ち上げようとするってことはつまり、今ナギちゃんの安否は確認できていないってことなんだろう。
「今こそ奴らを消し去るチャンスかと!」
「ミカ様が望んだ未来をつかむためトリニティ全土に戦闘命令を!」
確かにいまならゲヘナを叩き潰せるかもしれない。けれど……。
「……好きにすれば?」
「ミカ様……?」
私はもうそんなことをする気なんてないし、誰かの思惑で動かされるなんてことはしたくなかった。それに私はもう、私のせいで誰かが傷つく姿なんて見たくない。
「ゲヘナが嫌いなのはあなたたちの意思なんだよね? だったら好きにすればいいじゃん。自分たちで銃を手に取って、引き金を引いて、それだけの話でしょ?」
「なにを……」
「確かに私はゲヘナが嫌いだけど、でも今はそんなことをする気分じゃないの」
「気分だなんてっ! そんな理由で絶好の機会を逃すおつもりですか!」
「なに言ってるの? それが一番大事でしょ。私は私の気分とか気持ちでゲヘナが嫌いなの。ゲヘナを潰して利益を得ようだとか、支配しようだとか、理由だとか目的だとかそんなものはないの。ただ嫌い。だから滅ぼしたかった。それだけ。それはあなたたちも大体同じでしょ?」
「それは――」
「なら別にいいじゃん好きにやれば。ナギちゃんもセイアちゃんもいない。この混乱の中ならだれもあなたたちを咎めないよ。……それとも、誰かの命令がないと自分で何も決められない子供なのかな?」
「言わせておけばっ……!」
激情に駆られた子たちが檻を開け中に入ってくる。そして、力いっぱい殴ってきた。
「立場をわきまえなさい! アナタはすでにティーパーティーから解任直前の身なのですよ!」
「この監獄から出してやると言っているんだ! おとなしく従え!」
普段なら大して痛くないはずのその暴力も、今はとても痛く感じる。
何度も何度も殴られ、床に転がればお腹を思いっきり蹴られ、頭をつかまれ床に頭を打ち付けられる。暴言を投げつけられ、どうでもいい言葉のはずでも心が傷ついていく。
いたいなぁとぼんやり考えて、目をつむりながらただただ自身を襲う暴力に耐え続けた。
「――ダメ!!」
そんな時、誰かの声が聞こえた。それは二人の声ではなく、けれどどこか聞き覚えのある声だった。
目を開けて見てみれば、そこには小さな背中があった。
正義実現委員会の制服を身にまとい、体を震わせながら私を守るように小さな両手を目一杯広げ、パタパタと背中の羽がせわしなく動いている。
「だ、誰だお前は!」
「いじめは駄目! こんな寄ってたかって! そんなの私が許さないんだから!」
「どきなさい! 今がどんな状況なのかわからないの! 今は一刻を争う事態なのよ!」
「わ、私はバカだから、なにがどうなっているのか全然わからないけど……けどこれは違う! こんなの絶対正しくない!」
「何も知らないなら引っ込んでいろ!」
「正しさなんて今は必要ないのよ! いいえ! 勝たなければ正しくないのよ!」
「そんなの違う! 誰かを傷つけることが正しいわけない!」
「――いい加減にしろ!」
「!?」
コハルちゃんが殴られた。
「これ以上痛い目に遭いたくなかったらさっさと退け!」
コハルちゃんの体の震えが一段と強くなっていく。息は荒く、脚はがくがく震え、それでも両手を目一杯広げる。
「絶対どかない!」
「チッ!」
またコハルちゃんが殴られる。今度は一発だけではなく、二発、三発と続けて、何度も。
「………………だ、め……」
そう呟いたか細い声は彼女たちの罵声にかき消され、コハルちゃんが傷ついていく。
私にはそれを止められるだけの力があるはずなのに、それでも私の体は動かなかった。……動けなかった。
私はただただコハルちゃんが傷付くのを眺めているだけ。
「さっさと退きなさい!」
コハルちゃんが殴り飛ばされる。血を流し、あざが浮かび上がり、何度も床を転がる。
「……いや、だ」
それでもコハルちゃんは私を守ろうとまた立ち上がった。
体はもうボロボロで、まっすぐと立つことすらできていない。声もかすれ、はっきりと聞き取ることもできない。
けれど、コハルちゃんは確かに私を守るために立ち続けていた。
「しつこいんだよっ!!」
銃床で思いっきり頭を殴られ横に吹っ飛び壁に激突してしまう。そのまま力なく崩れ、とうとうコハルちゃんも気を失ってしまう。
「やっと静かになった」
「さぁ、さっさと行きますよ!」
それを見て、私の中で何かが一つ壊れた音がした。
意識は遠のき、ぼんやりとした世界に囚われる。
誰かが何かを言っている。
叫んでいる、怒っている、わめいている、暴れている。
抵抗している反撃している攻撃している殴っている蹴っている銃を撃っている。
泣いている怯えている後ずさっている怖がっている謝っている。
――――命乞いをしている。
気が付いたら辺りは血に塗れていた。
壁に、床に、天井に、そして私自身に。
コハルちゃんを傷付けた二人はなんとか人の形をとどめているに過ぎなかった。
腕はちぎれ、脚はあらぬ方向へ曲がり、顔はひしゃげ、腹はつぶれている。
冷たく殺風景だったこの監獄が凄惨な部屋へ早変わりし、掃除が大変だろうなだなんて考えが浮かんできた。
鼻につく血の匂い、目が焼け切れていまいそうな赤い部屋、一歩歩けばぴちゃり、もう一歩歩けばぴちゃりとまるで雨上がりの水たまりの上を歩いているかのような軽い音が静かな部屋で反響する。
ふと、自身の拳を見ればわずかばかりに皮がむけ、指には何本か誰かの髪の毛が絡まっていた。その髪色からしてそこで倒れている二人のものだろうかと考えて、ようやく今の惨状に心が追いついてきた。
私がやったんだ、この惨劇を。
ゆっくりと倒れている一人の胸に耳を当ててみると――何も聞こえなかった。
もう一人にも一応当ててみるが、結果は同じだった。
「こわしたんだ……わたしが……」
声が、体が震える。自身の罪を自覚して。
「ヘイロー……こわしちゃった……」
瞳がせわしなく動き、あたりを見渡す。押し付ける理由を探して。
「わたしが、やったんだ……」
誰が何と言おうと、私がどれだけ目を逸らそうとしても、逸らした先にあるのは私がやったという証拠だけ。
私が動いた結果、みんなが傷ついた。
私が動かなかった結果、コハルちゃんが傷ついた。
私の行動は、必ず誰かを傷つける。
私の周りには不幸しか起きない。
私は――魔女だ。
「……あはは」
乾いた笑いが溢れる。
「あはは、あはははははは」
止まらない。
なんでだろう?
なにがそんなにおかしいのだろう?
面白いことなんてなに一つないはずなのに。
ううん、違う。
とっても面白い。
最高の気分。
だって。
「あはははははははははははははははははははははははははは」
コハルちゃんを傷つけた悪い子を懲らしめられたんだから。
悪いことをしたんだから、悪いことをされても文句は言えないよね。
あっ、あっても言えないのか。
私が殺しちゃったんだから。
「……どうしよう、これから」
私は何をしたらいいんだろう。
なにをしても結果が同じなら、私はなにをしたいんだろう。
「……そうだ、ナギちゃん」
今もまだ見つかってないなら、見つけてあげないと。
「それに先生も……」
先生だってこのエデン条約に関わっていたんだ。なら会場のどこかにいるかも。
「とりあえず、ここを出よう」
部屋を出て、隣の部屋に保管されてあった愛銃を手に取り、廊下を進む。
途中誰かが騒いだりしていたが、すぐに声は聞こえなくなった。
外に出て、古聖堂の方へ向かえばトリニティとゲヘナのほかに何かよくわからない人たちが襲い掛かってきた気がするが、正直何も覚えていない。
だって私の頭の中はナギちゃんと先生を助ける事しかなかったから。
許されないことをした私だけど、それでも二人を助けないと。
理由なんて決まっている。
私と違って二人は救われなければいけない命なんだから。
イベストめっちゃよかったですよね。
いいところがありすぎて語り切れないけど、ネクソンの「安心してついてこい」っていう本気の覚悟を感じました。
あとさぁ、EDのヒフアズのシーンなにあれ。
なんでアズサ発情してるの?
これはヒフアズは公式ってことでOK?
大会の敗退が決まり、壊れた戦車の簡易的な修理を終わらせ、ゆっくりと大会本部横の第二駐車場へと走るクルセイダーちゃん。
その中には当然というべきかヒフミ、アズサ、ハナコ、コハルの四人が乗っていた。
冷房機能が壊れたままの車内では当然熱気がこもり、皆薄着のまま汗が止まらない。
「ふぅ、熱いですねぇ~」
ヒフミが胸元の服の裾をつかみパタパタとわずかな風を作り出す。そのたびちらちらと覗くヒフミの胸元にアズサの目は釘付けになる。
(なんだ……っ? 体の奥がドキドキして、熱い……っ)
汗にまみれ、車体の隙間から入り込む日の光で煌めく肌、困ったように、それでいて楽しそうにほがらかに笑う顔、汗で濡れた服がピタッとヒフミの肌に張り付き浮き彫りになる体のライン、太ももと太ももの間の先にある隠された暗闇。
(ヒフミから目が離せない……!)
異常なほどに動悸が早くなる。異様に体温が上昇する。心がむずむずと騒ぎ出す。
初めての経験にアズサは戸惑う。最初は自身の体調不良を疑うが、けれどこの感覚は不快ではなく、むしろ心地よささえ覚えることに疑問が尽きない。
(この気持ちは一体……?)
アズサの中に芽生えたのは性愛。愛し愛されるだけではなくさらにその先を求める人の根源。相手と一つになりたいという独占的な愛。歪みながらも正常で、純真であるからこそ今のアズサでは持て余してしまう愛。
だがピュアなアズサはそれを知らない。発散方法も、向き合い方も、目のそらし方も。性教育はしっかりしてくれヒフミ。
「……あらあら♡」
そうだ。この女がいた。ハナコならそれとなくアズサの芽生えた気持ちを説明できるかもしれない!
「うふふ♡」
だが残念! ハナコはアズサに芽生えた瑞々しい性愛に野暮な言葉をかけるようなことはしなかった! ここでその性知識を発揮しなかったらいつ発揮するんだ?
このままでは一向にアズサの性知識が育たないどころか妙な方向へ伸びてしまう!
誰かがちゃんと教えてやらねば!
「……? どうかしましたかアズサちゃん?」
「! い、いや、なんでもない」
「? 本当ですか?」
そういってアズサの頬に手を当て体を近づけるヒフミ。
「――!?」
アズサの鼻腔に甘い香りが侵入し、脳を直接刺激する。その刺激は初めて食べた甘いショートケーキよりも衝撃的で思わずくらっとしてしまう。
「だ! 大丈夫ですかアズサちゃん!?」
ふらついたアズサをとっさに抱き寄せ、ヒフミとアズサの肩と肩がぴったりと触れ合う。お互いの顔が近づき、至近距離でヒフミのすべてを全身で感じてしまうアズサ。罪深いぞヒフミ。
「~~~~っ!?」
急速に沸騰する顔、まるで爆発したかのような衝撃を受けた頭、速まった鼓動で血液の循環が倍に荒くなった息すら熱を帯びている。
もし作者にイラストを描く能力があれば目の奥にハートを浮かべ、半開きになった口から涎をたらし、ドエッチなヒフミさんに抱きかかえられているアズサの絵がSNSの海をさまよっていた事だろう。
だが悲しいかな。この作者にそんな能力はない。無力だね。ごめんね。だから誰か描いて♡
「アズサちゃん……?」
アズサの中で暴れ回る性愛は急速に膨れ上がり、その正体を知らないアズサは知らない衝動が全身を駆け巡るこの体をどうしたらいいのか回らない頭で考えた。
「きゃっ!? どうしたんですかアズサちゃん!?」
その結果、アズサはギュッと衝動的にヒフミに抱き着いた。まるで子供が「これ僕のぉ!」と叫んでいるみたいだね。可愛いね。
「……すまないヒフミ。もう少しこのままで」
「いいですよ」
抱き着かれ、驚きながらもまるで聖母のようにアズサを抱きしめ返すヒフミ。
きっとアズサちゃんは初めての大会で疲れてしまったのでしょう、と見当違いな思い違いを起こしている。まるでラブコメ鈍感主人公みたいだなヒフミ。アズサは今、お前の匂いや体温を堪能しているというのに。
とはいえヒフミは見逃してもこの子がそれを見逃すわけがなく……。
「なっ! なにしてるの! エッチなのはダメ! 死刑!」
エッチ判定裁判長コハルからエッチ判定出ました! やったね! つまりヒフアズはエッチ!
「こんな密室で抱き合うなんて――きゃっ!?」
だけどさすがのコハルといえどもヒフアズの邪魔はさせないと言わんばかりにあの女が行動を開始する!
「私たちも負けてられませんね♡」
違った! こいつヒフアズの波動に充てられて発情&対抗心が湧いてやがる!
「急に抱き着かないでよっ!」
「急じゃなければいいんですか?」
「そういうことじゃ――むぐぐ!」
なんてことだ! コハルが豊満なハナコの体に埋もれていく! 可哀そう! そこを変われハナコ! 私がコハルを抱きしめる!
それはそれとしてヒフアズはどうなったのだろうか?
「……ヒフミ♡ ……っん♡」
まるで猫のマーキングみたいにヒフミの体に自分の体をこすりつけているなアズサ。……なんかちょっと気持ちよくなってない?
「っあ♡ もうアズサちゃんったら♡」
こっちもこっちで気持ちよくなってるんじゃねえよ。ラブホですらないんだぞ。
もう駄目かもしれないねこの淫乱補習授業部。