キャラメイクで始まるTS異世界生活   作:海神アリア

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第2話 美少女銀髪聖女(メイド)、ルーナの秘密

 兎に角、直面しているこの現象が全て現実(リアル)なら、解決すべき事が沢山ある。今はまだ日が出ているが、夜になったら危険だ。もしここがファンタジーの世界なら、いつゴブリンや灰色オオカミといった魔物に襲われるか分からない。それに食料や寝床の確保が必要になる。

 水は最悪、ここの湖の水を飲めば……煮沸消毒とかしないで平気かなぁ? あとこれ、ちゃんと水だよな? 実は擬態した原生生物とかで、飲んだ人間に寄生するとかは流石に無いよね? 

 

(あ〜、ダメだ。サバイバル知識皆無の一般サラリーマンがあれこれ考えても、良い案が浮かばない)

 

 俺が本当に『剣姫アイリス』だったら、凛々しさと優しさを兼ね備えた美少女エルフなら、きっと見知らぬ世界でも逞しく生きていけるんだろうな……。

 

 頭を抱えながら悩んでいると、顔にふわり、とした感触があった。蹲る俺の顔を、ルーナが包み込む様に抱きしめていたのだ。

 

「ッ!? ル、ルーナ?」

 

 顔に柔らかい乳房を押し当てられ、狼狽の声を上げてしまう。

 

「私は、貴女様を支える為に存在します。そしてこの見知らぬ世界においても、です」

 

 銀髪の美少女は、優しい手付きで俺の頭を撫でてくれた。

 

「先程の話、この土地に来た際の話には続きがあります。マスターが眠りについた後、普段の私であれば傍らにてお仕えするのみでした。

 ですが草原に転移したあの時、私は貴女様に『膝枕をしてあげたい』と考えました。今までもそうした、『何かをしたい』という考えはありましたが、『行動に移す』という事が出来ませんでした。

 ですが私は今回、初めて貴女様に『何かをして差し上げる』事が出来たのです。それが私には、とても嬉しゅうございました」

 

「ルーナ……」

 

 そうか……彼女はこの世界に転移した事で、プレイヤーによる命令(コマンド)ではなく、『自分の意思で』行動する事が出来たのか。

 

「どうでしたか、私の太ももの枕心地は?」

 

「それは……勿論、最高だったとも。正直に言うと、少し罪悪感はあったけど……」

 

「それはようございました♪」

 

 ルーナは俺の顔をおっぱいに埋めるように、更に強く抱きしめた。

 

「むぐっ!?」

 

「私のこの身体……アイリス様好みに仕立て上げたこの身体を、貴女様の為に使えたのならば本望です。胸も太ももも、肉付きが良い方が好みでしたのでしょう? ホムンクルスの『仕上げの素材』に、わざわざサキュバスの『ラブリーエキス』を用いられたのですから♡」

 

「ゔぁぁぁぁッ!!」

 

 己が黒歴史を暴露され、俺はルーナの乳房の中で叫んだ。

 そう、ホムンクルスを起動させるには幾つかの手順が必要だったのだ。その中で最も重要なのが、『人間の体液』である。("人間"というのは言葉の綾で、要はホムンクルスの主人となる生き物の体液である。エルフならエルフの体液、獣人なら獣人の体液になる。が、便宜上一律で『人間の体液』という表現をゲーム内では使用していた)

 

 例えば普通のファンタジー世界なら、ナイフで指を傷つけたり、注射器で採血したりした自身の血をホムンクルスに与えるのだろう。だが、ゲームの世界ではそう言った事は出来ない。

 故に、特定の魔物を倒した際のドロップアイテムで賄う手筈となっている。例えばプレイヤーのHP(体力)を吸収する『人喰い草』や、MP(魔力)を吸収する『サキュバス 』なんかは、プレイヤーの力を吸収した状態でのみ特殊な素材をドロップする。その素材こそが、ホムンクルスの完成に必須のアイテムというわけだ。

 

 因みにHPを吸収した素材は物理ステータスを、MPを吸収した素材は魔法ステータスを伸ばしてくれる。そして該当する素材は何種類かあるが、MPを吸収したサキュバスのアイテム、『ラブリーエキス』にはオマケ要素がある。それは、『キャラメイク時に選択できる見た目の幅が増える』というものだ。

 

 ……つまり、早い話が『おっぱい』である。ラブリーエキスを用いた場合、設定できるバストの上限が増えるのだ。所謂『ネタビルド』という者で、強さよりも個人の趣味を優先した結果である。そしてその結果、美少女メイドは異世界にて生を得て、創造主である俺は『無垢な少女の体型を、自分の欲望の為に弄った』という罪を背負う事になったのだ。

 

 ……いや、これはしょうがないだろう! だって、あくまで俺は『ゲーム』のつもりで、遊びのつもりでキャラメイクをしたんだ! 決して『異世界の同行者』を得るつもりで、ルーナの見た目を設定した訳ではない! 純粋に趣味のゲームを、運営が許した範囲で遊んでいただけだ! それ自体には何ら罪は無いだろう!? 無い筈だ! 

 

「如何されましたか、マスター!?」

 

 ルーナ山脈の谷間で絶叫染みた山彦をかました主人を、銀髪のメイドは心配している。

 

「……ふぅ、叫んだら少し落ち着いたよ。ありがとう」

 

「本当に大丈夫ですか? 顔色が優れない様ですが?」

 

「ははは……少し己の罪と向き合っただけさ。大丈夫、過去の話よりこれからの事を建設的に考えれば、きっと神も許してくれる筈だ」

 

 そう、大事なのはこれからの事だ。これからは、立派な『エルフの剣姫-アイリス』として生きるとしよう。

 

(そう、俺……いや、私はエルフの剣姫、アイリス! 異世界に転移したと言うのなら、この世界で生き抜くとしよう!)

 

 元の世界に戻る方法も分からないし、そもそも存在するか否かさえ不明なのだ。先ずは手が届く範囲の事から始めるべきだろう。差し当たっては、自分達に身を守る術があるのか、この世界で生きていく力があるのかを検証してみようじゃないか!

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