キャラメイクで始まるTS異世界生活   作:海神アリア

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第4話 初陣、エルフの剣姫!

「よっ、ほっ……と!」

 

 私は湖のほとりにそびえ立つ高い樹木に登り、辺りを見渡した。木登りなんて初めての経験だが、やはりエルフの身体だろうか? まるで遺伝子にコツが刻まれているみたいに、簡単に登る事が出来た。ルーナが『ホムンクルスの体質』を表面化させた以上、私もエルフの種族的な特徴が芽生えているかを確かめたかったのだ。ついでに、街の方向を確かめるために。

 うーむ、街は見えないが……広めの道があるな。街道だろうか? 山とは反対側に歩けば、街に着く可能性が高い。それに、馬車が通りかかったからダメ元でヒッチハイクしてみるのも良いな。私は木から降りて、心強い同行者に方針を伝える。

 

「ルーナ、道を見つけた。あの道を辿ってみよう」

 

「畏まりました、アイリス様」

 

「では、速度強化の魔法を頼む」

 

「お任せください。『聖女の祈り-風の加護』」

 

 彼女は私達二人に支援魔法をかけた。この魔法は中級の支援魔法で、消費するMPも少ない。イベント戦の様に、最上級の魔法は暫く使わない方が良いだろう。ルーナにも、中級より上の魔法は使わない様に指示している。

 

「よし、行くぞ!」

 

「はい!」

 

 私達は草原を突っ切り、街道を駆け抜けた。

 

 ◆

 魔物が野を闊歩するこの世界において、自衛の手段は何より優先すべき物である。それは優れた武器を持つ事だったり、自分を鍛える事だったり、或いは戦う手段を持たない者にとっては、優秀な護衛を雇う事だったりもする。例えばギルドに所属する冒険者や、組合に所属する傭兵などが挙げられる。

 そして、その『自衛』を怠った者に待ち受ける物は──即ち、『死』である。

 

 例えば、今まさに襲われているこちらの馬車なんかが良い例だ。

 この近辺では、普段強力な魔物は出没しない。故に、本来ならランクの低い傭兵で事足りる道のりだ。冒険者や傭兵にはランクというものが存在し、高ランクの傭兵を雇うのには費用も高額となる。ならば、魔物の少ない場所へはランクの低い傭兵を雇うのが、コストパフォーマンス的には最適である。

 一方で、その選択には当然リスクも存在する。雇用した傭兵より格段に強い魔物が、突如として出没した場合、成す術なく蹂躙される事だ。勿論、そんな出来事が発生する可能性はとても低い。だが、自分の身に起こって欲しくない不運は、時として確率を超越してやって来るのだ。

 

 馬車に乗っているのは、獣人族の少女『カグラ』だ。彼女は珍しい狐の獣人であり、茶色がかった金髪-狐色の髪と尻尾が特徴的な、行商人の少女である。そしてカグラの荷馬車を襲うのは、三体のゴブリンと、一体のトロールだ。

 

 報酬の手軽さに釣られ、低ランクの傭兵を連れてきたのは失敗だった。この土地に現れる筈のない、Bランクモンスターのトロールを前に、彼らは一目散に逃げ出してしまったのだから。

 

(わらわ)としたことが、つい欲を出してしまった……)

 

 カグラは手持ちの『護符』を用いて光の防壁(バリア)を張り、トロールの棍棒から自身と荷馬車を守っている。これは狐族が扱う『妖術』の一つであり、魔法と同じく魔力-MPを消費する。辛うじて防御は出来ているが、これではいつまで経っても先に進めない。それに、カグラの魔力とて無限ではない。いずれはジリ貧となる。事実、何度も繰り出される棍棒の攻撃で、バリアにはヒビが入っている。

 

(大事な商品がある以上、妾が戦う訳にも行かぬしな……)

 

 戦闘に移れば、当然荷馬車が無防備となる。トロールが配下にしているゴブリン達が、その隙を見逃してくれるとは思わない。その証拠に、ゴブリン達は虎視眈々と、バリアの崩壊を武器を手にしつつ待っている。

 八方塞がりなこの状況。しかし獣人族の耳は、遠くから駆けつける『福音』を見逃さなかった。

 

(……いや、妾にも『ツキ』はあった! 何者かが二人、こちらへ来る!)

 

 カグラは懐から取り出した妖術の鏡で、駆けつける者を確認する。

 

(武器を持ったエルフに、メイド……? しかも、速度強化の魔法を使っている! ひょっとしてこやつら、冒険者か!?)

 

 渡りに船とはこの事である。そして今まさに、バリアが限界を迎えて砕け散った。ゴブリン達はチャンスとばかりに、カグラへ襲いかかる。

 

 その攻撃は、一人の少女の手で防がれた。彼女は炎を纏ったの一振りで、ゴブリンを全滅させた。

 行商人の少女は、その光景に目を見張る。

 金髪のポニーテール、青と緑色のオッドアイ、切長の目から放たれる凛々しい眼差し。剣士の戦う姿は、同性であるカグラも目を見張る程の美しさだったのだ。

 

(妾ともあろう者が、幸運の女神に助けられるとはの……。そんで持って、こんな別嬪さんを見逃したあの傭兵共と来たら……あやつらは『持っていない側』の人間じゃったか)

 

 ◆

 まさかこんな長閑な場所で、魔物の襲撃現場に出くわすとは思わなかった。魔物ってヤツは本当に何処にでも湧き出てくるな……。

 

「大丈夫か!?」

 

 私は馬車に乗っていた少女の安否を確認する。

 

「妾は大丈夫じゃ! 旅の方、良ければ手を貸してくれぬか? 礼は弾む! 妾と大事な商品を守ってくれ!」

 

「無論だ」

 

 私は短く答える。そうだ、気高きエルフの剣姫であれば、この人達を必ず助けるだろう。

 残りはトロール一体。その巨体から繰り出す棍棒の一撃は、中々に侮れない威力を持つ。だが、私は接近戦に秀でた魔法剣士。力任せの一撃など、華麗に躱して反撃に出れば……。

 

(いや、コレはダメだ、避けられない! 避けたら後ろの女の子がやられる!)

 

「ルーナ、強化魔法を!」

 

「はい! 『聖女の祈り-剛健なる(いわお)』!」

 

 防御力強化の魔法を貰い、私はトロールの攻撃を真正面から受け止める。

 

(うぐッ……!! 想像以上に攻撃が重い!)

 

 剣から腕にかけて伝わってくる衝撃、ゲームとは異なり正真正銘の痛み(ダメージ)だ。幾ら前衛職の魔法剣士とはいえ、エルフの私が強力な攻撃を受け止めるのは至難の業だ。しかも『誰かを守りながら戦う』なんて経験は、ソロプレイ勢の私には今まで縁が無かった。正にぶっつけ本番の大仕事だ。

 

(だが、まだ何とかなる魔物で良かった)

 

 棍棒の一撃を耐え切られたトロールは、再度攻撃を繰り出すべく、腕を大きく振り上げる。

 私は、その隙を逃さない。

 

「『エンチャント・ウィンド』!」

 

 風属性の魔法を剣に宿らせ、私は大地を蹴り跳躍する。相手は巨体故に動きが遅い。ならば素早い攻撃で仕留めるまで! 

 

「『スラスト・ガスト』!」

 

 風属性付与時のみ扱える、最速の突攻撃。トロールは武器を振り下ろす間もなく、心臓を貫かれて生き絶えた。

 周囲を見渡したが、魔物はこれで終わりの様だ

 

「おお、なんと言う手際の良さ! お主らのお陰で、大事な商品が傷付かずに済んだわ。ありがとう、エルフ殿」

 

「商品……? もしや、貴女は行商人か何か……でしょうか?」

 

 私は今一度、少女の格好を確認し、口調を改めた。高級そうな着物を身につけ、扇子で口を覆う優雅な仕草。もしや、貴族や豪商の娘さんといった、やんごとなき身分の方ではなかろうか? だとしたら、ただの少女だと思って接したのは不味かったか……? 

 

「ご名答。妾は行商人の『カグラ』と申す者じゃ。よろしくお願いするぞ、別嬪さん方」

 

 面と向かって容姿を褒められると、なんだか照れ臭くなるな……。しかも目の前にいる狐の少女も、かなりの美少女である。

 ……おっと、相手が自己紹介をしてくれた以上、コチラも自己紹介をした方が良いだろう。

 

「コホン、褒め言葉は素直に受け取るとしましょう。それと、自己紹介がまだでしたね。私の名はアイリス。旅の魔法剣士をしている、しがないエルフです。そして、彼女が私の同行者。名はルーナと言います」

 

「ふむ、アイリス殿に、ルーナ殿じゃな? よし、覚えた。それと、この身なりで勘違いさせておる様じゃが、別に妾は貴族の類ではないぞ? 普通に接するが良い、苦しゅうないぞ」

 

「それはそれは……では、お言葉に甘えるとしよう」

 

「しかしまぁ……そんな重そうなモノをぶら下げながら、よくあそこまで飛んだり跳ねたり出来るのう……」

 

 カグラと名乗った少女は、品定めをするかの様に私の乳房を観察する。それだけでなく、レザーアーマーの上から、私の胸部を指で推して弾力を確かめている。『他人に胸を触られる』のは初めての経験だ……コチラにも押し返す弾力が伝わってきて、とてもこそばゆい……

 

「うんうん、眼福、眼福♪ そして至福の感触じゃ♪」

 

 アイリス山脈を前に、狐の少女はニマニマとした笑みを浮かべてご機嫌の様だ。うん、それは大いに理解できる。なんせ凝りに凝った造形(キャライク)、やはりおっぱいには人々を幸せにする力があるのだ。

 ……しかし、私の背後ではルーナが不機嫌そうに頬を膨らましている。何故だろう……? 

 

(……そういう事か!?)

 

 私はルーナをカグラの前に出し、頼れる同行者を紹介する。

 

「カグラ、先程貴女は私に礼を言ったが、ルーナの働きも労って頂きたい。トロールを撃破出来たのも、彼女の支援魔法あっての物だからな!」

 

 私だけが褒められているこの状況、ルーナが不機嫌になるのも当然ではないか! 後方支援だって立派な役割、ルーナの事もちゃんと褒めて頂きたい。

 

「おお、すまぬ。無論、ルーナ殿にも感謝しておるとも」

 

 カグラはあどけない笑みを浮かべ、ルーナに感謝を述べた。

 

「いえ、別にそう言う訳ではなく……アイリス様の胸へ悪戯に触れるのは、良くない事では?」

 

 ああ、そっちか……。

 

「同性に軽く触れる程度、私は気にしていないさ。容姿を褒められて、悪い気はしない。それに触りたくなる気持ちは、私にも理解できる。

 ただ……ルーナへのボディタッチは止めて頂けるな?」

 

 ルーナ山脈へ身を寄せつつあった狐の少女は、身体をビクッと震えさせた。まぁ、気持ちは大いに理解できるし、私とて人の事を言えた立場では無いが……。本人の許可や歓迎が無いなら止めた方が良いだろう。

 

「む、無論だとも。少々、戯れが過ぎた。

 それと、まだ謝礼を渡していなかった! これは商人に有るまじき失態だ、本当に申し訳ない」

 

 カグラは一旦馬車に入り、小さな皮袋を取ってきた。

 

「傭兵共に渡す予定だった成功報酬じゃ。無論、逃げ出した腰抜け共と同額では余りに申し訳ない。少々、色を付けさせて貰うぞ?」

 

 カグラが袋の口を開けると、中にはぎっしりと詰まった銀貨が顔を覗かせる。そして狐の少女は懐から金貨を5枚程取り出すと、銀貨の上に乗せて此方に渡してきた。

 思わぬ臨時収入、そしてゲーム内の通貨とは別物の様だ。なけなしの路銀が唯の金属メダルになった以上、やはり街へ行ってアイテムを売るしかないか……。

 

「さて、モノは相談なのじゃが……このまま近くの街、『グリーン・ブリーズ』まで、妾の護衛をしてくれる気は無いか? 当然、街へ着いたら追加で報酬を払う。魔物が出るまでは、馬車の空いてる所へ乗ってくれて良い」

 

 これは思ってもいない話だ! 目的地への道のりと、移動手段が手に入った。勿論、私は依頼を引き受けた。異世界生活、幸先の良いスタートを切れたみたいだ。

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