「お前の先祖は、北畠具教という立派な武将だったんだよ。」
幼い頃から祖父がよく話してくれたその言葉は、ずっと心のどこかに引っかかっていた。歴史の本を読み、資料館に足を運ぶたび、具教という名の武将がいかに非業の最後を遂げたか知るたびに胸が締め付けられるような思いがした。
「早く帰らないと…」
薄暗い帰り道、俺は自転車を漕ぎながらため息をついた。今日も部活が長引いて、すっかり遅くなってしまった。家で待つ母親の夕飯を思い浮かべながら、慌ただしくペダルを踏む。
そのときだった--交差点に差し掛かった瞬間、強烈なクラクションが耳を裂き、視界いっぱいにヘッドライトの光が広がった。
「え……?」
反射的にブレーキをかけるも、間に合わない。次の瞬間、激しい衝撃とともに体か宙に舞い全身に鋭い痛みが走った。だんだん視界がぼんやりと曇ってきた。
これが…死ぬってことか…
地面に叩きつけられた瞬間、全ての感覚が消えていった。
だが完全な闇が訪れることはなかった。
薄ぼんやりとした光に包まれた意識が戻る。最初に感じたのは、体を覆う柔らかな布と、どこか暖かい空気。梅の薫りがほんのりと漂っている。畳の上に寝かされているのに気づいた。周りを見渡してみるとかなり豪華な造りというのが分かる。金や、象牙で装飾された鏡台。美しい絵が描かれている襖。庭の外は梅の花で咲き乱れている。
(ここは天国か…?)
あまりに綺麗な光景に言葉が漏れる。
そのとき女性の声が聞こえてきた。すると、ダダッと音がして何人もの巨大な人々が雪崩こんできた。
「おめでとうございます!立派な男の子ですよ!!」
「次のお世継ぎの誕生ですね!!」
「北畠家はこれからも安泰ですな!!」
様々な声が響いた。
(な…なんなんだ…一体?)
声を発しようとしても、喉が詰まったよう動かない。
それどころか、体全体が異様に小さく、動かそうとするたびにぎこちない感覚が広がる。まるで自分の体ではないようだ。
(これって…俺が赤ん坊に!?)
混乱してる間にも、別の声が聞こえてきた。低く力強い声だった。
「お前が我が北畠家、そして伊勢国の未来を担っていくのだ。梅千代。」
そこには、強面でありながらどこか品のある美丈夫が立っていた。そして、俺は気づく「梅千代」という名は、北畠具教に名付けられた名前だということに
(もしかしなくとも北畠具教に転生してしまったのか!!)
ここに北畠具教としての俺の生き残りを賭けた第2の人生が始まった。
こうしたらいいもっとよくなるなどの意見がありましたら是非、ご意見ください!!