東京の廃墟と化した区域。
瓦礫が積み重なり、かつての生活の痕跡が静寂に埋もれている中で、陽翔は廃ビルの屋上からその一帯を見渡していた。
「……ここも変わらないな」
彼の目に映るのは、瓦礫の下で蠢く影。
喰種同士が狩り合い、わずかな生存のために争う姿だった。
陽翔はわずかに目を細めると、そのまま廃ビルを降りて、地上の影へと歩み寄った。
瓦礫の中で何かを捕食している喰種を見つけた陽翔は、静かに足を止めた。
その喰種は高身長で筋骨隆々としており、赫眼を輝かせながら、獲物を貪るように食べていた。
「……人間か?」
陽翔が尋ねると、喰種は血塗れの顔をゆっくりとこちらに向けた。
「いや、喰種だ。こいつは弱かったから、喰っただけさ。」
その喰種は低い声で答え、陽翔を見定めるように目を細めた。
「お前も喰いたいな……お前を食えたなら、しばらく飢えずに済むだろう」
その言葉に、陽翔は冷ややかな視線を向けた。
「俺を喰うつもりか。やってみろ。」
そう言うと、陽翔は背中から赫子を展開する。
喰種が笑い声を上げると同時に、背中から巨大な甲赫が展開された。
それは盾のように広がる防御形態と、鋭い刃のように変形する攻撃形態を兼ね備えた特異な赫子だった。
「どうだ、いくらお前の赫子だろうと、この硬さには通らない」
喰種は不敵な笑みを浮かべながら、赫子を構える。
陽翔は冷静にその動きを観察しながら、青白い赫子を輝かせた。
「強い防御か。だが、それだけで勝てると思うなよ」
陽翔が一気に間合いを詰め、赫子を刃のように振り下ろす。
だが、相手の甲赫がその攻撃を完全に受け止め、火花を散らす。
「ほらな、言っただろう?」
喰種が陽翔を押し返すように甲赫を振り払うと、その衝撃で陽翔は数メートル後退する。
「……硬いな」
陽翔は無表情でそう呟き、再び体勢を整えた。
相手の喰種は甲赫を鋭い槍状に変形させ、一気に突進してくる。
その動きは大型の体躯に似合わず素早く、陽翔はギリギリでその一撃を避けた。
「速い……」
陽翔は目を細めながら、さらに相手の動きを見極める。
喰種は甲赫を振り回し、周囲の瓦礫を粉々に砕きながら陽翔を追い詰めていく。
「どうした?その綺麗な赫子は見せ物か?」
挑発する喰種に対し、陽翔は静かに息を整えた。
陽翔は一歩踏み出し、背中から赫子を翼のように広げる。
青白い光が瓦礫に反射し、廃墟全体を照らした。
「じゃあ見せてやるよ。俺の赫子がどれだけ“綺麗”か」
陽翔は翼の赫子を使い、相手の甲赫の隙間を狙って高速で斬撃を加える。
相手の喰種は甲赫で防御を試みるが、その防御を貫く鋭い一撃が肩口に突き刺さる。
「ぐあっ……!」
喰種が苦しそうに呻き、後退する。
「まだだ!」
喰種が再び反撃を試みるが、陽翔はすでに動きを見切っていた。
翼の赫子が空を切り裂き、相手の甲赫を砕きながら胸元を貫いた。
喰種は地面に崩れ落ち、息絶えたように動かなくなる。
陽翔はその上に立ち、無感情な表情で赫包を引き抜いた。
「……生きるためだ。仕方ないだろう」
彼は血塗れの赫包を口に運び、捕食を終えると、静かにその場を立ち去った。
だが、その背中にはどこか重たい罪悪感が滲んでいた。