おねショタ世直し珍道中   作:月兎耳のべる

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第15話「お気をつけて」

「もおおおお! どうしてこうなってるんですかぁあぁあ~!」

 

 所変わってせいりゅー様達です。

 恩智相手に大立ち回りをした結果、めでたく指名手配といった一行。

 せいりゅー様に無理矢理担がれて、民家の屋根を転々と移動中です。

 これにはお静も怒りの声を上げざるを得ません。

 

「あっはっはっは! いやー、まさか私がこんなに有名だったとは! 知ってましたけどね」

 

「知ってましたって……何してくれてるんですか!? 本当に蒼天の塔に侵入を?!」

 

「いえいえ。侵入なんて大げさな。ちょっくら外に出ただけですのに」

 

「どういう意味ですかー!」

 

「あ、ああああ……わ、私の家が……屋根が……天井がぁぁ……!」

 

「……せいりゅー」

 

「え? ほらでも。お陰で我々助かったじゃないですか。ね? あのままだとお二人は捕まって連れ去られて拷問までされて……あうあうあう、い、いたいいたい、引っ張らないでください~……ごめんなさい~……!」

 

 きりん君にぐいぐいとアホ毛を引っ張られるせいりゅー様。

 神様だからこそ向こう見ずな行動も形になりますが、褒められたものではないですね。

 

「──むごぉぉっ、ふぐむごおおぉぉぉっ!?」

 

「唖涯はうるさいです。というか三人とも、舌噛みますからしっかり口閉じててくださいねー、飛ばしますよー!」

 

「「ひいいいいいいいッ!?!?」」

 

 散歩するようなノリで屋根から屋根へと飛び移るせいりゅー様。

 四人を抱えてることすら感じさせない優雅な跳躍に、町人は口々に天狗だ! と驚きます。

 しかしソレ以上に彼らが驚くのは、そんなせいりゅー様達を追う、恩智の侍でしょう。

 

「待てぇええぇえ──ッ!!」

「あそこにいたぞおおおお──ッ!!」

「追え、追え、追ええええええッ!!」

 

 至るところからわらわらと集まってくる赤半被軍団。

 決死の表情で追うものなのですがから、祭りどころの騒ぎではなく。

 誰もがこの逃走劇が気になって仕方がありませんでした。

 

「よい……しょっと! えーっと、あと少しですかね」

 

 そんな大騒ぎの中を鼻歌交じりで飛ぶせいりゅー様は、霧に教えてもらった神社目指してぐんぐんと進み。

 その跳躍力を持って余裕で赤半被らを巻くと、その道中、火の見櫓(ひのみやぐら)を発見。

 危なげなく上部に飛び乗って、お静達を開放するのでした。

 

「うぅ……目が回った……」

「ひうぅぅぅ~~……っ」

「ぐぶむぅっ!? むーっ! むーっ!」

 

 散々空中で振り回された彼女たちは抵抗する力もないのか、ぐったりです。

 

「いやはや! 振り回してしまってすみませんでした。お静さん、霧さん。大丈夫ですか?」

 

「はぁ……はぁ……は、はい……何とか」

 

「ギリギリですよぉ……」

 

「そうですかそうですか。ソレは良かったです……では私達はこれで。道中ありがとうございまし」

 

「ちょーっと待って!?」

 

「……なんです?」

 

 お静がたまらず止めると、せいりゅー様は心底不思議そうな顔になりました。

 

「あの……助けてくれたのは感謝するんですが、私達はここに放置ですか? ソレは少し薄情じゃないですか?」

 

「? なのでここから降りて逃げて貰えれば……」

 

「それは流石にどうかと思います!」

 

「……なんででしょう?」

 

「私達、追われてるんですよ? 逃げてもまた捕まるに決まってるじゃないですか」

 

「うーむ。それはそうかもですね」

 

 言われてその通りだとうなずくせいりゅー様。

 しかし彼女はこうも続けました。

 

「しかしですね、お静さん。これは貴方が撒いた種でもあるんですよ?」

 

「は、はぁ!? なんでそうなるんですか!?」

 

「貴方が私達を隠し通そうとしたからこじれたのです。あの時は恩智の人にありのままを伝えれば良かったんですよ」

 

「よくもまあ、そんな……!」

 

「あぁうん。別に悪くは言うつもりはないです。貴方のそれは善意なのでしょう。勿論理解しています。ですが貴方が(かば)わなくてもどうにでも出来ました。貴方は自ら首を突っ込んで、自ら不利を被ったんですよ」

 

「……!」

 

「自分から首を突っ込んでおいて、危なくなったら助けろ……は、随分と虫のいい話だと思いませんか?」

 

 こてん、と首をかしげたせいりゅー様に、お静は何も言い返せませんでした。

 

「美味しいお団子と、案内をしてくれたからせめてここまでしてあげたのです。……理解しましたか? さぁ、家に帰りなさい。あの人達がここに辿り着くまで、まだ時間はかかるでしょうから」

 

「……ッ」

 

「……せいりゅー」

 

「むぅ。きりん君。私はコレでも譲歩したんですよ? 貴方が優しいのは知っていますが、これ以上なんとかするというのは……」

 

「……あ、あの……!」

 

 そこに声をあげたのは……霧でした。

 

「……に、逃がしてくれてありがとうございました」

 

「いえいえ。斬り抜くのは私、得意なので」

 

「ですが……あの、虫のいい話なのは承知ですが。私共を助けて貰えませんか?」

 

「え。嫌ですけど」

 

「あうぅぅぅ……!」

 

 霧の嘆願をバッサリ切り捨てたせいりゅー様。

 

「ど、どうしてもダメですかぁ……?」

 

「どうしてもダメですねー」

 

「あの、考え直してくれたりは……?」

 

「ないですねー」

 

「き、霧ちょっと……! 貴方がそんな事しなくても……!」

 

「あ、あたいに任せて……静ちゃん……!」

 

 無視して飛び立とうとすると、霧がぼそりと呟きました。

 

「……じゃ、じゃあ……私の家、直してください」

 

「う゛」

 

 せいりゅー様、動けません。

 

「静は……首を突っ込んだのは確か、だと思います。でも私は、巻き込まれただけですよね……?」

 

「……い、いえ。あれはー……助けようとした弾みといいますかー……」

 

「青龍さんがすごいお強い方なのは分かります……あ、唖涯さんを、二人羽織みたいにして……あの安謝さんを圧倒したんです……から……」

 

「い、いやーそれほどでも……?」

 

「でもソレくらい強いなら……別に、屋根は壊す必要、ありませんでしたよね……?」

 

「……」

 

「……ありませんでしたよね?」

 

 じぃっと、見つめてくる霧と、思わずのけ反るせいりゅー様。

 

 視線を合わせられないのか、気まずそうに顔を背けてます。

 確かにせいりゅー様の力をすれば、あの程度の相手は無傷で倒すことも容易。

 しかして神様というのはえてして、身勝手です。

 特にバトルジャンキーせいりゅー様、物事は楽しく、そして愉快であったほうが良いと考えた結果、このような大捕物めいた騒ぎを起こしてしまったのも、事実でした。

 

「……せいりゅー。なおせる?」

 

「き、斬れはしますが……」

 

「……じゃあ、ダメ。てつだってあげて」

 

「えぇ~……そんなぁ……!」

 

 肩車したきりん君に頭をてしてしされてショボくれるせいりゅー様。

 しばらく葛藤をした後……ぱん!

 両手を叩くと、振り返ります。

 

「はぁ……分かりました。では霧さん、貴方がたは恩智に()()()()()()()()()()()()()?」

 

「は、はい……それでいいです」

 

「……では」

 

 自然に腰の刀……ひよこ丸に手をかけたせいりゅー様。

 それにお静も、そして唖涯も目を見開いたと同時に、

 

 チン。

 

 ……と澄んだ音が響きわたりました。

 

 斬られた!

 身構えた二人でしたが、二秒経っても、三秒経っても変化はありません。

 恐る恐るかえりみると……唖涯の猿轡(さるぐつわ)と、縄が断ち切られていました。

 

「お、ぇ……お、おおぉ?」

 

「唖涯。貴方に仕事ができました、お静さんと霧さんを無事に家まで送り迎えしなさい。そしてその後、親玉さんにこう伝えなさい。私が貴方がたを脅して連れ去ったのだ、と。脅した理由はなんでもいいです。でっちあげてください」

 

「……お、おぉ」

 

 唖涯は呆気にとられ、文句を忘れてうなずきます。

 

「……! そ、その方法だと今度は青龍さんが……危なくは……!」

 

「大丈夫ですよー、私はこういうの慣れてますから。ねーきりん君」

 

「……ふつう」

 

 二人は頷き合いますが、また納得できなくなったのはお静です。

 自分の要求は確かに通るかもしれませんが、これではせいりゅー様の二人が一方的な悪者になってしまいます。

 他にやり方はないのか、そう聞こうとして、せいりゅー様が見ていることに気が付きます。

 

「お静さん。善意は美徳ですが……その方法によっては悪徳にもなりえます。お気をつけて」

 

「……ッ!」

 

「では今度こそこれで。あ。唖涯、見てますからねー。しっかり仕事するんですよ」

 

「……へい」

 

 そして、せいりゅー様ときりん君は、空を舞い。

 急ぎ蒼天の塔に近づいていくのでした。

 




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