「もおおおお! どうしてこうなってるんですかぁあぁあ~!」
所変わってせいりゅー様達です。
恩智相手に大立ち回りをした結果、めでたく指名手配といった一行。
せいりゅー様に無理矢理担がれて、民家の屋根を転々と移動中です。
これにはお静も怒りの声を上げざるを得ません。
「あっはっはっは! いやー、まさか私がこんなに有名だったとは! 知ってましたけどね」
「知ってましたって……何してくれてるんですか!? 本当に蒼天の塔に侵入を?!」
「いえいえ。侵入なんて大げさな。ちょっくら外に出ただけですのに」
「どういう意味ですかー!」
「あ、ああああ……わ、私の家が……屋根が……天井がぁぁ……!」
「……せいりゅー」
「え? ほらでも。お陰で我々助かったじゃないですか。ね? あのままだとお二人は捕まって連れ去られて拷問までされて……あうあうあう、い、いたいいたい、引っ張らないでください~……ごめんなさい~……!」
きりん君にぐいぐいとアホ毛を引っ張られるせいりゅー様。
神様だからこそ向こう見ずな行動も形になりますが、褒められたものではないですね。
「──むごぉぉっ、ふぐむごおおぉぉぉっ!?」
「唖涯はうるさいです。というか三人とも、舌噛みますからしっかり口閉じててくださいねー、飛ばしますよー!」
「「ひいいいいいいいッ!?!?」」
散歩するようなノリで屋根から屋根へと飛び移るせいりゅー様。
四人を抱えてることすら感じさせない優雅な跳躍に、町人は口々に天狗だ! と驚きます。
しかしソレ以上に彼らが驚くのは、そんなせいりゅー様達を追う、恩智の侍でしょう。
「待てぇええぇえ──ッ!!」
「あそこにいたぞおおおお──ッ!!」
「追え、追え、追ええええええッ!!」
至るところからわらわらと集まってくる赤半被軍団。
決死の表情で追うものなのですがから、祭りどころの騒ぎではなく。
誰もがこの逃走劇が気になって仕方がありませんでした。
「よい……しょっと! えーっと、あと少しですかね」
そんな大騒ぎの中を鼻歌交じりで飛ぶせいりゅー様は、霧に教えてもらった神社目指してぐんぐんと進み。
その跳躍力を持って余裕で赤半被らを巻くと、その道中、
危なげなく上部に飛び乗って、お静達を開放するのでした。
「うぅ……目が回った……」
「ひうぅぅぅ~~……っ」
「ぐぶむぅっ!? むーっ! むーっ!」
散々空中で振り回された彼女たちは抵抗する力もないのか、ぐったりです。
「いやはや! 振り回してしまってすみませんでした。お静さん、霧さん。大丈夫ですか?」
「はぁ……はぁ……は、はい……何とか」
「ギリギリですよぉ……」
「そうですかそうですか。ソレは良かったです……では私達はこれで。道中ありがとうございまし」
「ちょーっと待って!?」
「……なんです?」
お静がたまらず止めると、せいりゅー様は心底不思議そうな顔になりました。
「あの……助けてくれたのは感謝するんですが、私達はここに放置ですか? ソレは少し薄情じゃないですか?」
「? なのでここから降りて逃げて貰えれば……」
「それは流石にどうかと思います!」
「……なんででしょう?」
「私達、追われてるんですよ? 逃げてもまた捕まるに決まってるじゃないですか」
「うーむ。それはそうかもですね」
言われてその通りだとうなずくせいりゅー様。
しかし彼女はこうも続けました。
「しかしですね、お静さん。これは貴方が撒いた種でもあるんですよ?」
「は、はぁ!? なんでそうなるんですか!?」
「貴方が私達を隠し通そうとしたからこじれたのです。あの時は恩智の人にありのままを伝えれば良かったんですよ」
「よくもまあ、そんな……!」
「あぁうん。別に悪くは言うつもりはないです。貴方のそれは善意なのでしょう。勿論理解しています。ですが貴方が
「……!」
「自分から首を突っ込んでおいて、危なくなったら助けろ……は、随分と虫のいい話だと思いませんか?」
こてん、と首をかしげたせいりゅー様に、お静は何も言い返せませんでした。
「美味しいお団子と、案内をしてくれたからせめてここまでしてあげたのです。……理解しましたか? さぁ、家に帰りなさい。あの人達がここに辿り着くまで、まだ時間はかかるでしょうから」
「……ッ」
「……せいりゅー」
「むぅ。きりん君。私はコレでも譲歩したんですよ? 貴方が優しいのは知っていますが、これ以上なんとかするというのは……」
「……あ、あの……!」
そこに声をあげたのは……霧でした。
「……に、逃がしてくれてありがとうございました」
「いえいえ。斬り抜くのは私、得意なので」
「ですが……あの、虫のいい話なのは承知ですが。私共を助けて貰えませんか?」
「え。嫌ですけど」
「あうぅぅぅ……!」
霧の嘆願をバッサリ切り捨てたせいりゅー様。
「ど、どうしてもダメですかぁ……?」
「どうしてもダメですねー」
「あの、考え直してくれたりは……?」
「ないですねー」
「き、霧ちょっと……! 貴方がそんな事しなくても……!」
「あ、あたいに任せて……静ちゃん……!」
無視して飛び立とうとすると、霧がぼそりと呟きました。
「……じゃ、じゃあ……私の家、直してください」
「う゛」
せいりゅー様、動けません。
「静は……首を突っ込んだのは確か、だと思います。でも私は、巻き込まれただけですよね……?」
「……い、いえ。あれはー……助けようとした弾みといいますかー……」
「青龍さんがすごいお強い方なのは分かります……あ、唖涯さんを、二人羽織みたいにして……あの安謝さんを圧倒したんです……から……」
「い、いやーそれほどでも……?」
「でもソレくらい強いなら……別に、屋根は壊す必要、ありませんでしたよね……?」
「……」
「……ありませんでしたよね?」
じぃっと、見つめてくる霧と、思わずのけ反るせいりゅー様。
視線を合わせられないのか、気まずそうに顔を背けてます。
確かにせいりゅー様の力をすれば、あの程度の相手は無傷で倒すことも容易。
しかして神様というのはえてして、身勝手です。
特にバトルジャンキーせいりゅー様、物事は楽しく、そして愉快であったほうが良いと考えた結果、このような大捕物めいた騒ぎを起こしてしまったのも、事実でした。
「……せいりゅー。なおせる?」
「き、斬れはしますが……」
「……じゃあ、ダメ。てつだってあげて」
「えぇ~……そんなぁ……!」
肩車したきりん君に頭をてしてしされてショボくれるせいりゅー様。
しばらく葛藤をした後……ぱん!
両手を叩くと、振り返ります。
「はぁ……分かりました。では霧さん、貴方がたは恩智に
「は、はい……それでいいです」
「……では」
自然に腰の刀……ひよこ丸に手をかけたせいりゅー様。
それにお静も、そして唖涯も目を見開いたと同時に、
チン。
……と澄んだ音が響きわたりました。
斬られた!
身構えた二人でしたが、二秒経っても、三秒経っても変化はありません。
恐る恐るかえりみると……唖涯の
「お、ぇ……お、おおぉ?」
「唖涯。貴方に仕事ができました、お静さんと霧さんを無事に家まで送り迎えしなさい。そしてその後、親玉さんにこう伝えなさい。私が貴方がたを脅して連れ去ったのだ、と。脅した理由はなんでもいいです。でっちあげてください」
「……お、おぉ」
唖涯は呆気にとられ、文句を忘れてうなずきます。
「……! そ、その方法だと今度は青龍さんが……危なくは……!」
「大丈夫ですよー、私はこういうの慣れてますから。ねーきりん君」
「……ふつう」
二人は頷き合いますが、また納得できなくなったのはお静です。
自分の要求は確かに通るかもしれませんが、これではせいりゅー様の二人が一方的な悪者になってしまいます。
他にやり方はないのか、そう聞こうとして、せいりゅー様が見ていることに気が付きます。
「お静さん。善意は美徳ですが……その方法によっては悪徳にもなりえます。お気をつけて」
「……ッ!」
「では今度こそこれで。あ。唖涯、見てますからねー。しっかり仕事するんですよ」
「……へい」
そして、せいりゅー様ときりん君は、空を舞い。
急ぎ蒼天の塔に近づいていくのでした。
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