「あの、青龍様に斬られる……とは」
「なに。ただの言い伝えみてえなもんだ。まあ平たくいや……罰が当たるってことだな」
「それは……何に対してでしょうか?」
「
「……きりん君。私の格好って、そんなにえっちですか?」
「……ううん」
「ですよね。というか今思ったんですが……きりん君に『えっち』って言って欲しい感ありますね……もっと見ていいですよ?」
「……みない」
「おい」
漫才にたまらず突っ込んだお父さん。
着物の下は素肌ぴっちりの全身レオタードのせいりゅー様の格好は、たしかに見方によっては扇情的かもしれません。
しかしソレを言うならきりん君もそうです。
今の彼は、樹海で拾った葉をいい感じに斬って、いい感じに整えた
自分よりよっぽどえっちなのでは?
そう言おうとしたせいりゅー様ですが、ジト目で見られてるので口をつぐみました。
そんな二人を、娘さんは顔を真赤に染めて、努めて直視を避けています。
「ともかく……絡まれたくなけりゃ気をつけるんだな」
「気をつけるといってもこの一張羅しかないんですよねー……」
「……ふく。いっしょにする?」
「葉っぱの服はちょっと……あ。ごちそうさまでした」
「……ごちそうさま」
「おう。……おい静、おあいそ」
「だッ、おとっつぁん。ちょ、ちょっとやめて……! ああ、あんなに堂々と見せつけられて、でで、出来るわけが……っ!」
「……きりん君。やっぱり私ってえっちなんでしょうか?」
「……しらない」
何だか恥ずかしがって、中々出てこない娘の静さん。
すると、どかどかという騒がしい足音と共に、何人かが店に入り込んできました。
お客さんでしょうか?
「──おう相変わらずシケた店だな!
「おらぁ茶と
「酒もつけてくれよな!」
それは
体格は非常に大きく
その一方で、服は他の町人に比べてきらびやかで、何だかド派手。
しかも先頭の男は三振り、他二人は二振の刀を腰にさしていました。
いわゆる
まるで自分の家のように土足で畳にあがり、横柄に振る舞う彼ら。
「よぉお静、今日も可愛いじゃねえか。お酌してもらえるかい?」
「……
「とかいって前は出してくれたじゃねえかよ。前はあったのに今はないってのか?」
「それは! あなた達があまりにもしつこいから……!」
「あぁ……? おいら達が何だって言うんだ?」
「おれらぁ客だぞ?」
「聞き間違いか? しつこいって聞こえた気がしたがなぁ……」
「っ」
「いいんだぜ。静ちゃん。俺ら
「静。……いいから酒を出してやれ」
「で、でもおとっつあん!」
「静ッ!」
静さんが引き下がると三人組は「そうだそうだ」「お利口さんだ」「親子揃って形無なんざ、なりたくないよなァ!」とゲラゲラと笑います。
見ていてあまり気持ちのいい光景ではないですね。
せいりゅー様、うーん、とそれを眺めていたのですが、結局関わるのはよそうと結論づけたようです。
そそくさとその場を後にしようとして……それは起きました。
「──お? お? おおお? なんだァ、コイツ。オイ見ろよ。こんなボロ団子屋に俺らより
「は? ……ぎゃはッ、マジじゃねえか。おい嬢ちゃん。嬢ちゃん! その格好一体どーしたよ?」
「ひーふーみー……なな? 驚いたな、お前さん淫売か? それとも神をも恐れぬ大馬鹿者になりたいってか?!」
「……えぇー、私ですか?」
三人の標的は神様二人に移ってしまいました。
「丁度いい、お前さんも酌をしろ」
「そりゃあいい。まっっずい団子で盛り上がるにも盛り上がれねえからな。それに……」
「あぁ。よく見りゃ
「……旦那がた。勘弁してくれ」
「うるッッせえぞ形無の犬っころがッ!! おらァそこの嬢ちゃんに言ってるんだ!!」
「えーっと、ごめんなさい。お腹も満ちたりたので行こうかと」
きっぱりと断ったせいりゅー様。
しかしながら三人は諦めません。
わざわざせいりゅー様ときりん君を取り囲むように席に座りはじめます。
「まあまあいいじゃねえかよ。酒もあるぜ?」
「
「おうよ。俺らと楽しく過ごそうぜ?」
「せっかくですが断ります~、それでは~」
面倒臭いなぁと思うせいりゅー様。
馴れ馴れしく回された手を払いながら、びっくり居合で逃げ出そうと考えたその時でした。
彼らの一人が、その場で不意に
「──いでッ!?」
「おッ!?
「がははは! 独り相撲でもしてんのか!?」
どうやらこの男、
しかしせいりゅー様、抜かりはないと目にも止まらぬ早業で剣を反対側に移動。
触れようとした時には音もなく消え、男はスカを食らったのでした。
馬鹿を見た男がカッと顔を赤くします。
「てんッめえ……味なことしやがって!」
「はて。何のことでしょうか?」
「とぼけんじゃねえよ!」
「どうした兄弟?」
「どうしたもこうしたもねえ、この嬢ちゃんがオイラを……っ、その……小突きやがった!」
「あぁン? それは本当か?」
「事実ではないですね。勝手に転んだようです」
「白々しい女郎が……オイ、嬢ちゃん。こいつぁちいと大変なことになったぞ?」
「はぁ……そーなんですか」
せいりゅー様、もうかなり面倒臭いのか受けごたえが投げやり気味です。
そんな態度に更にイラだった
「
「ふぅん……そーなんですか」
「だが、この兄弟は滅法優しい奴でな。詫びのひとつでもありゃ許してくれるだろうよ」
「へぇ……そーなんですか」
「詫びは、その刀だ」
「ほぉ……そーなんですか」
「なーに全部とは言わねえ……そーだな、六振り貰おうか。一振りありゃ十分だろう?」
「オイオイ、するってーと俺達とうとう四刀流かよ!?」
「唖涯の兄貴なんて五刀流じゃねえか! ガハハハ!」
「わぁ……」
勝手に皮算用を初めた彼らに、せいりゅー様はため息を漏らさざるをえません。
その手には未練がましく持っていたお団子の串。
それを手元で何気なく、くるくると回しはじめたせいりゅー様。
未だ
「せいりゅー」
唐突なきりん君の言葉に、ぴくり。
せいりゅー様は動きを止めたのでした。
「えー……ダメですか?」
「……だめ」
「だって……不敬なんですよ? ナメられてるんですよ?」
「……だめ」
「迷惑なんですよ? しかも弱いんですよ!?」
「……だめ」
「ぶー……でも剣は渡せないじゃないですか」
「……なかよく」
「とは言っても……」
「おい。何をブツクサと言ってやがる」
膝上のきりん君をぐりぐりと撫で回しながら悩むせいりゅー様に、更に詰め寄る男達。
その暑苦しさを鬱陶しく思っていると……せいりゅー様、ぽむ、とその手を叩きました。
どうやらいいアイディアを思いついたようです。
「──剣士出会えば仕合わにゃ
「……あ?」
「そうですそうです、貴方がたも剣士じゃないですか……なら仕合ましょう! 私の刀を賭けて!」
急にやる気を出したせいりゅー様。
満面の笑みを向けられた三人は、得体の知れない寒気を覚えてしまうのでした。
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