「──うおおおおおッ!?」
「いやおでれーた! あのお嬢ちゃん本当にやっつけちまいやがった!」
「青紫様より凄いんじゃないか!?」
「すげえものを見た」
「破廉恥な姉ちゃんだと思ったがその強さなら納得だ!」
やんややんや!
せいりゅー様の周りにあっという間にできた人だかり。
あれほど冷たかった
四方八方から投げかけられる称賛に、せいりゅー様もご機嫌です。
どーも、どーもと照れくさそうに頭を下げています。
「……嬢ちゃん」
「おや団子屋の。心配かけてしまいましたか?」
人の群れをかき分けて現れたのは、ギラついた様子の団子屋の主人。
そして、その腰辺りにしがみつくように同伴するその娘、静さんでした。
せいりゅー様が主人を見上げて微笑むと、彼はその緊張を解き、言いづらそうに頬をかくのでした。
「……おみそれした。まさかあれほどまでの使い手だったとは」
「ふふん」
「嬢ちゃんに助けられちまったな。あいつらには散々煮え湯を飲まされていたんだ……感謝しかねえ」
「あの……私からもありがとうございました。あいつらにはほとほと困らされていたんです……!」
「お気になさらず。降りかかる火の粉を払ったまでですから……っと、きりん君お待たせしました」
「……ん」
せいりゅー様が地べたに座り込んでいたきりん君を抱きかかえると、ぷちぷちと何か千切れる音がします。
それはきりん君にまとわりついていた草を引きちぎる音でした。
よくよく見ると座っていた場所だけ、草花がぼうぼうに生い茂っています。
土で舗装された大通り、そのど真ん中で緑が
不思議なこともあるものです。
「え……!?」
「……おい、そいつぁ……どうしたんだ?」
「きりん君ですか? ……まあまあ。それは良いじゃないですか……それよりも、えーっと……かたなし……さん?」
「……弁慶だ」
バツが悪そうにする武蔵さんに、せいりゅー様は微笑みかけます。
「
「あぁ。お前さんがたは俺らを助けてくれた。可能な限り応えよう」
「助かります。実は今さっき気付いたのですが……無銭だったので、奢りにして欲しいというのがひとつです」
「えぇー……」
お静も弁慶も呆れかえりましたが、その程度なら……とうなずきました。
「もう一つは……この国で一番強い剣士さんと仕合──」
「……せいりゅー」
「ごほん。……何やら、この国には神をも殺す刀があると聞いておりまして……その
「神をも……」
「殺す……?」
武蔵さんと静さんが顔を見合わせます。
「おや、存じ上げませんか? 御神体として
「……静、知ってるか?」
「おとっつぁんが知らないなら私が知るわけないでしょ……うーん、あ。ニジロクさんはどう? 刀鍛冶だし。なにか知ってるかも」
「二字録か……あいつぁ、
「ほら。娘の霧さんがいるじゃない」
「……あぁ。確かに。だが……あの娘ぁ……なんつーか……」
「何? あの子の知識と熱意は間違いないじゃない」
「いや、腕はいいんだが……うーん」
「あーもう、刀打たせる訳じゃないんだから別にいいでしょ。何渋ってるの!」
「……」
何やら揉めていますが、どうやら結論は出たようです。
「えっと、北の商屋通りに『
「そうですか。情報ありがとうございます。ではでは」
「あっ、ちょ、ちょっと待って! 道は分かるんですか? お二人共外から来たんですよね?」
「……そういえばそうでしたね」
「そうでしたね……って」
きりん君はもとより、せいりゅー様のどこか浮世離れした雰囲気に、静さんは困惑を隠せません。
「それなら……私で良ければ案内しましょうか?」
「いいんですか?」
「はい。霧さんとは私、友達なんです。そろそろ顔見せしようと思ってたんで丁度いいです──おとっつぁん、いいよね?」
「……好きにしろ」
「おぉ。助かります」
「……ありがとう」
「とんでもないです。えっと、青龍……さんには助けられちゃいましたからね」
あなたにもね、ときりん君を優しく撫でようとした静さん。
それをサッとせいりゅー様にインターセプトされて、ちょっとびっくりしましたが……大事にしてるんだなぁ、ぐらいにしか思わないのでした。
「じゃあ早速行きますか?」
「えぇ。時間も有限ですからね是非に……と、その前に」
不意に、せいりゅー様がとことこ、と移動し始めます。
その先にいるのは団子状態で伸びている黒三連。
せいりゅー様はおもむろに、団子の一番上の唖涯に蹴りを入れました。
どすん!
くぐもった音と共に地面に落ちた鎧亜は、うめき声のあとに目を覚まします。
「……ぐ、ぁ……!? お、俺ぁ……一体……! ッ!?」
覗き込んでくるせいりゅー様を見て、一気に後ずさる唖涯。
顔は真っ青になっており、まるで化け物みるような態度でした。
「傷つきますねえ。そんな目で見なくてもいいじゃないですか」
「……ッ、見るに決まってるだろ、バケモンが……! あんだけ俺達をコケにして……!」
「それは貴方達の腕前不足ですー。剣の道はひたすらに続くのですよ?
「うるせえ! 剣の道どうこうじゃねえだろ、あれは異常だ! 串で剣と鍔迫り合いだ!?
「純度100%の剣技なんですけどねえ」
ヤレ卑怯だぞ、とかヤレ馬鹿にしやがって、とかギャーギャーがなり立てる唖涯。
何をいってもあーだこーだと騒ぐので、ばちこんッ!
せいりゅー様の目にも止まらぬビンタで、右斜下の方向で地面にめりこんでしまいました。
「~~~~~ッ!?!?!?!?!」
「うるさいですねー。お互い納得しての仕合だったんです。今になって白を黒だと言うつもりなんですか? いい加減認めてください」
「……せいりゅー」
「え? 今のダメですか? ちょっと撫でただけじゃないですか……ぁぅ。そんな目で見ないでくださいよぉ~……!」
きゅんきゅん、と捨てられた子犬のようにきりん君にすがるせいりゅー様。
そんなやり取りを見て困った様子なのは団子屋の二人。
一体全体、せいりゅー様は唖涯に何の用があるのでしょう?
「最初に言ったじゃないですか。彼の生殺与奪は貰ったので活用しようかと」
「ほっ、本当に……!? そ、それって奴隷みたいな?」
「いやいやいや~、そこまでではないですよ。せいぜい買い出しとか道案内とか、いろんな雑用をやってもらったり……あとはえーっと、剣の練習台とか……身代わりにするとか?」
それって奴隷とどう違うんですか?
と、聞こうか迷った静さんでしたが、相手はあの半グレです。
まあ自業自得だし、いっかぁ……とあっさり追求を放棄するのでした。
「……あの。もしよかったらなんですけど……次迷惑行為したらこの人、叩き斬って貰っていいですか?」
「いいですよー」
「お、ぉぉ……おおいちょっと待て!? 何勝手に決めてやがる!?」
「あ。叩き斬るんじゃなくてなます斬りの方がいいですか?」
「そういう意味じゃねえよ!?」
「じゃあ、早速ですが霧のところに向かいますね」
「お願いします~」
「……おねがい」
「テメェ、シカトしてんじゃ……!」
「うるさいです」
「ひでぶっ!?」
「……せいりゅー」
こうして四人は騒がしくも、神殺しの刀を求めて鍛冶屋を目指すのでした。
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