転生先は貞操観念逆転世界の陵辱系エロゲー世界ってマジですか? 作:葱ラーメン大盛A定食セット(旧竜騎兵)
私たちがカスパールの街へと戻ってくる頃には太陽が傾き、夕日が街を照らしていました。
所属している冒険者ギルドに戻ると、赤や青などの色とりどりの家屋が出迎えてくれました。
茜色に染まったこの地方特有の建物からは美味しそうな夕食の香りが漂ってきます。
思わず私のお腹も小さくなってしまって、優しい笑みを浮かべるアークさんの視線に耐えきれずに目を逸らしてしまって。
愛しい人にこんな音を聞かれるなんて顔から火が出ちゃいそうです。
ギルドに到着した後、アークさんは私たちに休むようにと言ってギルドマスターへと報告へと向かいました。
そんなアークさんから目を反らし、戦友たちの方をちらり。
私と同じように、アークさんを狙っている恋敵ですが、それ以上に死線をくぐり抜けた戦友たちです。
「ヒィロ、お腹空いてるなら新メニューの触手パエリアがおすすめ。海鮮の風味を楽しむことができる」
「あんなゲテモノをまだ十五の少女に勧めるんじゃあない、あたしたちの仕事は肉体労働だし」
確か、メイさんの身長はアークさんと同じぐらいだったと思いますので、とても肉体労働できる体には思えません。
ですけどもこのパーティーの中では一番力持ちなんですよね、ドワーフという種族特性によるものでしょうか?
「精がつくように肉がいいと思うぞ、パンも添えればバランスがいい」
「野菜要素皆無」
賑やかな人たちなので私は好きです、お姉ちゃんがまだ生きてた頃を思い出しますね」
「あはは……食事するよりも先に、ちょっとやらなくちゃいけないことがありましてね、それではまた」
「そう。なら、私は甲虫採取に向かう、昨日の夜から仕掛けておいたから、かなり集まってるはず」
「……採取するのは構わないがまた食べてお腹下したなんてことにはならないようにな」
こうしてメイさんやレヴィさんが並んでいると親子ほどの身長差と、発育の差があります。
ですが、この会話を聞いてるとメイさんの方がお母さんみたいですね。
発育の方は圧倒的な大差でレヴィさんが上ですね、私も形と大きさには自信はありました、が。
私の顔よりも大きいあの母性の象徴には初見で見た時はびっくりしちゃいました。
そんなことを考えながら私は街で借りている部屋へと戻ります。
冒険者の中には冒険者ギルドに併設された宿で暮らしてる人もいますが、アークさんもその一人ですね。
が、とある事情があって部屋を借りざるをえませんでした。
部屋へと入り、扉を閉めて灯りをつけるよりも先に、葉書ほどの用紙に手を伸ばす。
今日のアークさんの勇姿を思い浮かべてゆきながら、、魔力を使いとある
【写実】とも称される魔法、この魔法を使える者は極めて稀だそうです。
これへの適性があると先生が知った時は大変喜んでいただけました。
この技術を物にした当初は、何のためにこの魔法の適性があるのか、疑問に思いました。
なぜこの魔法の適性が私にあったのか、今ならば分かります。
「あぁ……♡アークさん、今日もとっても格好良かったですよ♡」
写実魔法によって、掴んでいた紙に私の思い浮かべていた光景が紙に写し出されていきます。
敵陣へと勇敢にも飛び込む
神が私にこの魔法への適正を与えてくださったのは、きっとアークさんの姿を後世に残すためだったんですね♡
おっと、灯りが無いせいでよく見えませんね、はやる気持ちを抑えられませんでした。
何時ものようにランタンに火魔法によって灯りをつけてゆく。
すると、部屋中に貼られたアークさんの姿が写し出された紙が照らされてゆきます。
他の人たちもアークさんの勇姿を見るかもしれません。
でも、記憶としてではなくて、形として残すことができるのは私の特権です。
「ふふ♪ またコレクションが増えましたね、どんどんコレクションを増やしていきましょう」
気持ちが昂っているのが自分でも分かります、ついつい独り言が増えてるのが、その証拠。
きっと今の私の姿を、お姉ちゃんが見ていたら咎めるか、あるいは呆れるでしょうが、仕方ありませんよね。
止めてくれるお姉ちゃんは、死んでしまったんですから。
お姉ちゃん、サンゴ・アーガスがアークさんを自宅に連れて来たのはまだ私が魔術学院に入学する前でした。
あの頃の私はお姉ちゃんが大好きで、どこに行く時も一緒でしたね。
だからお姉ちゃんが冒険者になって、家から離れる、と聞いた時はとてもショックを受けたという記憶は残ってます。
そんな私に紹介してくれたのが、アークさんでした。
第一印象は率直に言ってあまり良くなかったと思います、双方共に。
お姉ちゃんを取られたと勘違いしてしまった私の態度はよくなかったですからね。
アークさんを睨む私に『君の姉が無事に戻って来れるように最善を尽くすよ』と、仰りましたね。
どうせ都合のいいことばかり言ってるに違いないとその時の私は思っていました。
そもそも冒険者という職業自体に対して、あまりいい感情は抱いていませんでした。
特に下級冒険者はその日暮らしを続ける方ばかりですし、文字も読める人の割合も少ないですし、野蛮ですし。
魔族や魔物と戦う人たちではあるんですが、人を害することも多い方々です。
そんな蛮族一歩手前の人たちの中へと姉の事を誑かして引き込んだんだと当時の私は感じました。
世にも珍しい男性冒険者の毒男が、姉を連れ去った、そう思ったんです。
「ですけど、本当に最善を尽くしてくれたんですよね、アークさんは、自分の、死さえも厭わず」
壁に貼られている写実魔法による成果物、写真の一枚に触れる。
純白のペガサスと、その隣に彼が立っていました。
普段はまとまりのない魔族をまとめ上げた魔王の登場。
冒険者ギルドは連邦帝国軍管轄に。
私のお姉ちゃんも、そしてアークさんも魔族との戦いの前線に駆り出されました。
そしてとある戦闘で、お姉ちゃんは瀕死の重傷を負ったそうです。
そもそも、その戦闘は最初から勝ち目のない戦いであったと聞いてます。
少しでも戦場において敵を釘付けにして、民間人が安全な場所まで逃げるまでの時間を稼ぐための捨て石。
それが、アークさんとお姉ちゃんに与えられた役割だったそうです。
戦い自体は人類側の奮戦もあり、民間人の避難の時間を稼ぐことには成功し、後は味方の撤退だけ。
一瞬の気のゆるみだったのかもしれません、撤退しようとする際に、お姉ちゃんは敵の銃撃を足と腕に受けることになりました。
足を負傷し、逃げられなくなった味方を回収するという余裕は当時、戦場にいた人たちには残されてなかったそうです。
味方から見捨てられて戦場に取り残され、そのまま魔軍によって痛めつけられた後に、殺されるという運命をたどるはずでした。
ですが、そんな中アークさんは愛馬のペガサスを駆り、重傷を負ったお姉ちゃんの元へと駆けつけました。
それだけではなくて、お姉ちゃんのことを救出して戦場から撤退することにも成功したんです。
お姉ちゃんは、左足と右腕を失う重傷を負いました。
ですが、そんなお姉ちゃんが話してくれたことは、いつ聞いても現実離れしてます。
囚われの男性を助け出す白馬の女性騎士の話は劇の題材になるほどありふれたものです。
が、逆はアークさんしか実現した人はいないと思います。
「ですけど、お姉ちゃんは死んでしまった。アークさんが、助けてくれた恩に報いるために」
真新しいマナ駆動式の義手と義足を身に着けたお姉ちゃんの写真を、私は少し震えた指先で撫でました。
兵士、騎士、冒険者、そしてギフトを持つ皆さんの中から志願、もしくは選抜された三百名の決死隊の一人としてお姉ちゃんは決戦へと向かいました。
決死隊に与えられた任務は、魔王城に突入し、魔王を打ち取るというもの。
魔王を打ち取ったものには、勇者の称号が与えられます。
今まで生きて勇者の称号を得られたものは二人しかいません。
それほどまでに、魔王を打ち取るのは困難なことで、ほぼ不可能とも言っていいものです。
魔王にはもちろん、護衛も存在していますし、魔王城の内部も防備が固められていたでしょうから。
お姉ちゃんはアークさんを敵の攻撃から庇い、見事に死んだと聞きました。
突入した決死隊のうち、戻ってきたのはアークさん含めて十数人ほど、しかも五体満足だったのはアークさんと他二名のみ。
しかしながらも、お姉ちゃんを含む尊い犠牲を払った価値はあり、魔王の封印に成功しました。
魔王の封印に成功したギフテッドの方の墓石には、『勇者として勇敢に死んだ者、ここに眠る』と刻まれたそうです。
魔王城での決戦や、お姉ちゃんの話をするとき、毎回、アークさんはとても苦しそうな表情を浮かべます。
サンゴ・アーガスはきっと、満足して死んだというのに。
でも、そこが、彼のいい所なのかもしれません、人間性という今のご時世では不要と切り捨てられがちなものを失ってませんし。
魔王との決戦の際に、お姉ちゃんは私にこんな言葉も残しましたね。
『アーク君は、無茶しがちな所があるから、私が死んだとしても、彼の事を無理しないように、見張っておいて欲しい』と。
そこからです、私が彼を追い、そしてその姿を写真として残すようになったのは。
「最初は、お姉ちゃんの言いつけを守るため、でした、ですけど……段々と、アークさんに惹かれていって」
次に触れた写真は、私にとっても思い出深い写真。
私の人生の方向性が決定づけられた、その瞬間の写真。
現像されることになった想い出には、私の方へとハンカチを差し出しながら申し訳なさそうな表情を浮かべている彼の姿が。
「今でも、あの時の事は夢に見ます、とても、怖かったですから」
魔王軍残党による魔術学院立てこもり事件。
王都内に潜伏していた下級魔族によって学院の中央講堂が占拠され、学生が人質となった事件。
人質の解放と引き換えに、王城内で保護されている種保存用の男性数人と引き換えに人質の解放を要求。
したものの、学院内に潜入したギフテッドによる魔族は討伐され事件は解決されました。
私はその事件に当事者の一人として、現場に居ましたがあの時の事は今でも鮮明に思い出すことができます。
当時の学生でしかなかった私は、ゴブリンなどの下級の魔物ならばともかく、魔族と戦うことなどできるはずもありませんでした。
突然現れた魔物、そして魔族たちによって瞬く間に先生や、私たちは制圧されて、中央講堂に集められました。
当然の事ながら、魔法を使うために必要な杖などの触媒は取り上げられ、武装解除された状態で、です。
後から聞いた話ですが、王国軍は、魔族側の要求を聞くつもりは最初からありませんでした。
砲兵隊の砲撃によって魔族を学院ごと更地にするつもりであったそうです。
そんな中、アークさんは単身、学園内に突入し、下級とは言え魔族を一撃で仕留めたのです。
王国側からの返答が遅れ、イラついて近くに縛られて転がっていた私の腹部を蹴りつけていた魔族に後ろから近付き、後頭部に鉄針をぐさり。
次の瞬間に、彼女の脳漿は宙を舞う事になりました。
その時の私の顔は、きっと鳩が豆鉄砲を食らったかのような間抜けな表情を浮かべていたに違いありません。
指揮官が一瞬で打ち取られて、統制が取れなくなったゴブリンたちはある者は恐慌に駆られて講堂内から脱出を図り。
またある者は縛られた学生を人間の壁にしようとしました、が、瞬く間にアークさんによって制圧されていきました。
呆然としている私の、敵の脳漿がぶちまけられた顔を見ながら、ハンカチを差し出して、涙や肉片が付着した顔を拭ってくれましたね。
その時から、私の人生は、お姉ちゃんと同じように私の命を救ってくれたアークさんのために捧げると誓ったのです。
あるいは、私が彼に惹かれているからそのような選択を取ると決めたのかもしれませんね。
今となってはどちらでもいいことです、少し抜けている彼が愛らしい。
戦闘では常に先陣を切る勇敢な彼が美しい、少女にしか見えないあの見た目が可愛らしい。
もしかしたら、お姉ちゃんも私と同じようなことを考えていたのかもしれません。
彼を狙うライバルは多い、少なくとも私が知る限りでは二人いますし。
ですけども、彼の隣に最終的に立っているのはこの私です、お姉ちゃんも私と同じように彼の隣を狙っていたのかもしれません、が。
そのチャンスをつかむことができたのは、私だったという事です、薄情者だと言われるかもしれませんが、それはそれ。
これはこれです。
アークさんの姿を映した写真を壁に貼って、彼の愛しい頬にキスをしてギルドへと戻ることにしました。
寝る前にもう一度だけ、彼に会ってお話ししたいですね、えへへ。
誤字脱字報告をお待ちしてます。
※一部修正しました。