“神隠し”と呼ばれる不可解な現象の正体を突き止める為に“カルラ山”へ向かうことを決意したA2たち。
「あそこに見える小高い山が見えるよね?アレがカルラ山だよ。」
クリオの視線の先に目を向けると、うっすらと小高い山が見える。
「アレがカルラ山ねぇ・・。しかし、なんか違和感あるな・・。」
四号はすこし目を鋭くする。
十六号は腕を組み目を細めながら
「山頂の部分だけが不自然に木が生えてないぞ?」
彼女の言う通り、その山は異様だった。
周囲の山々はすべて緑で覆われているというのに、カルラ山の頂上だけがまるで何かに抉られたかのように剥き出しになっていことに。
二十一号は山に向けてスキャニングを開始
「カルラ山・・標高は約500mの小山ですね。しかし・・山頂の部分だけが木々がクッキリと生えてないのが異常かもしれません・・。大規模な崩落や土砂流出の痕跡は見られませんし、自然の要因とは考えにくいです。」
A2はじっと“カルラ山”を見つめる。山全体から漂う雰囲気がどこか異質だった。普通の山なら、ここまでの違和感を覚えることはない。
—— やっぱり、この山には何かある••••• ———
地球へ降下してから今日まで5日間、機械生命体の存在が確認出来てない事実。非戦闘地域であっても、少なからず機械生命体の影響はあるはず。しかし、この地域に住むクリオ含むクリボーたちは「機械生命体が空想上の存在」と認識している。
村の長であるクリ爺でさえ、生まれてから255年間、機械生命体の姿を見たこともないと言ってたくらい。彼女の違和感はある仮説に辿り着く。
“その答えがこの『カルラ山』に有るのでは無いかと”
A2の顔が少しずつ険しくなるっていくのをクリオは見過ごさなかった。
「姉ちゃん?どうしたの?急に顔が硬くなってるよう見えるけど?」
「い・・いいえ、何でもありません・・。ただ・・なんて言うのか・・何かあの山からタダならぬ感じがすると言うか・・。」
この違和感の答えは件の山にあるのは分かってるけど、それが上手く言葉に出して言うことが中々出来ない。
恐怖と言う感情なのか、それとも自身に元々人格プログラムされている「弱気で自信がない内気」という情動からのものなのか、それでは測れないものがあの山にある。
四号は両手剣を肩に乗せながら、軽快に口を開く。
「よーし♩こんな場所でモゴモゴマゴマゴしても進展しないから、早く山に行こうよ。」
十六号がライフルを握り直し、ニヤリと笑う。
「だな。早くしねーと日が暮れるし。」
しかし、クリオは何かしら気まずい顔をしており、顔からは躊躇いの色が濃く浮かんでる。
「どうしたんだよ?クリオ。不安そうな顔してよぉ?早く山まで案内してくれ。」
十六号が急かすように声をかけるが、クリオは山から目を逸らすように返す。
「い・・いや・・その・・ちょっと怖くて・・・。本当にあの山に行くのかと思うと・・足が・・。」
「ここまで来て、何怖気付いてるんだよクリオ。」
彼の戸惑いに語気を強める十六号に対してA2は間に入る。
「待って・・!!クリオがここまで迷いがあるって事は、何か事情があるはずです。」
A2は彼に視線を合わせるように話す。
「クリオ、あの山は何かアナタにとって何か特別な場所なんでしょうか?」
彼女の優しい寄り添うような声に、クリオは少し目を泳がせながら呼吸を少し整えた。
「あ・・あ・・あの山に踏み入れた者は“呪われて祟られる”と昔から言われてるんだ・・・。カルラ様の眠る山は“聖域”とされてるから・・。オイラはそれが怖くて・・。」
「聖域・・ですか?」
二十一号が首を傾げる。
「私たちアンドロイドからしたら“機密情報”のサーバーのようなものでしょうか。」
「長老のクリ爺ですらあの山には一度も立ち入ってないんだよ。山にはカルラ様が結界を張ってる。その結界を超えた者は“聖域を侵した”と見なされて罰が当たる・・。」
しかし、十六号はそんなのを気にも止めなかったかのように、腕を組んだ。
「オイ!?そんな“呪い”とか“聖域”とか抜かしてんじゃねーよ。そんな迷信みたいなのを信じて、消えたクリボー達を放ったらかしにしてたんかよ⁉︎ふざけんなし‼︎」
「う・・っ!!そ・・そうだよね・・。」
言葉を詰まらせたクリオの様子を見て、二十一号が冷静に割って入った。
「クリオ、今はその様な現実かどうかも不明瞭な憶測に近い事象に対して、私達ヨルハは歩みを止める理由は有りません。少なくとも消えた村のクリボーたちはカルラ山へ向かう道中で消息を絶った。これが事実ですよね?」
丁寧な口調でありながらも、クリオが言う“迷信”に対して切り捨てるように言葉を続ける。
「でしたら、山へ行って“神隠し”の正体を突き止めるのが最も最善な案です。山へ行かずに、そのまま有耶無耶にして時が経てば次の失踪者が出てしまいます。それでは何の解決になりません。」
「う・・・・・。そ・・そうなのかな・・。」
その様子を見てA2は、二十一号の前に手を広げて制した。クリオの黙り込んだ姿勢と仕草に、何かを察したのだろうか。
ここまで“カルラ山”へ行く事に対して、かなりの戸惑いと迷いがあるように見えるのは、きっと自分たち“
「クリオ・・」
A2は柔らかく、しかし力強く語りかける
「私たちには“呪い”や“祟り”と言われる概念は情報にはありません。ただ、これらが貴方たちに対して何か規則というのがあるのでしたら・・・わ・・私たち4人だけでカルラ山の調査へ向かいます。」
クリオの瞳が揺れる。A2は続ける。
「なので、クリオは山の入り口付近まで案内してくれるだけで大丈夫です。村の皆には昨日からずっとお世話になってましたし、安全のためにも先に村へ戻ってください。」
目隠しのような黒いゴーグルからでも、彼女の優しい視線と少し上がった口角がクリオの迷いと恐怖と悩みを安心させる。
四号は肩をすくめて、軽い調子で言う。
「ん〜、まぁ危険に立ち向かうのが私たちヨルハの仕事だからねぇ。君を危険な目に合わせるわけにも行かないわ。何かあったらあったらで、ヨルハ部隊の名に泥塗るし、村人から後ろ指差されるのもゴメンだし。」
十六号はライフルを腰に下げて、呆れたかのように笑う。
「二号・・テメェはお人好しすぎだぞ。だけど、あの山に機械生命体が居るんだったら、クリオを危険に晒す訳にもいかねーよな。と言うか、山に近寄らねーなら情報すら持ってねーもんなwww」
二十一号は反論はせずに、A2の決断が効率的では無いと感じたものの、心のどこかでは何かが腑に落ちたように軽くなった気がした。
A2は自信を少しだけ込めた口調で
「クリオ、入り口まで案内お願いします。後は私たちに任せてください。」
A2の姿を見てクリオの迷う心は動かされたのか
「姉ちゃんたち、ごめんね・・カッコ悪い所見せちゃって、案内人なるって言っておきながら、ダサい言い訳ばかりしちゃって・・・。」
「いやいやwwww謝る事ないって‼︎」
四号が両手を振って笑う。
「むしろ私たちの方がクリオに謝るようなモノよ!?森の調査だって、これから山の調査だって機械生命体によるものと判断しての行動なんだから、平和に暮らしてたキミを巻き込んでるじゃないかって思ってるのよ!!」
そして、A2は元気よく、山の方へ人差し指を向けて
「さぁ!!これより“カルラ山”へ‼︎いざっ‼︎」
十六号は両手を腰に当てがら笑う。、
「ははは!!随分と乗ってきたじゃねーかよ!!まぁ攻撃能力だけならアタシの方が上だけどな!!」
二十一号はボソッと
「二号が急に勢いよく声張るって・・何か不穏な予兆しかしませんね・・。」
四号は二十一号を軽く小突きながら
「おいおい!!二十一号!!それやめろってwwwフラグじゃねーかよwww」
彼女たちの掛け合いを見てクリオの表情が徐々に晴れてきた。そして、山の方へ進もうとした足を動かした瞬間・・・!!
ズズーんっ‼︎‼︎と大きな音が響く!!
即座に全員が反応し、音の方へ全身を向ける。
「「「「「 ⁉︎ 」」」」」
大きな音の正体が直ぐに分かった。
クリオ
「う・・・嘘だ‼️そ・・そんなぁ‼️」
十六号はライフルを強く握りながら語気を荒げる
「くたばって無かったのかよ‼️デカ花野郎・・‼️」
5人の視線の先には、先ほどの戦闘で打ち倒した巨大植物型モンスターの“ボスパックン”だ。
A2、四号、十六号が身構えるが、二十一号は冷静にホログラムスクリーンに表示されてるデータを確認
「待ってください・・。奴は確かに立ち上がりましたが、」
立ち上がったボスパックンは大きな口から苦しそうに息を吐いてる。腹部から紫色の体液がボトボトと垂れ落ちて地面を変色させてる。
二十一号は続ける
「呼吸も心拍数も全て乱れてます。奴は弱りきってます。」
ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ
ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ
ハー ハー ハー ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ ハァハー
ボスパックンは立ち上がっても、すぐに体勢を崩して自身の巨体を支えるのに精一杯。
戦うどころか大きな動きすらも出来るかどうかも怪しい状態である。
「だったら、トドメささないとね。」
四号が両手剣「白の約定」を強く握り、ゆっくり歩き出す。笑顔だが、目は敵の命を断つ決意で鋭く光る。
クリオが慌てて声を上げる
「ちょっ・・・四号姉ちゃん・・!?アイツはもう弱ってるよ⁉︎」
しかしA2は彼を制するように右手を前に出した。
「クリオ・・・。」
彼女の声は低く、何かを悟った響き。
その言葉はA2が何かを悟ったような感じに思えた。彼女自身もこれ以上の事を口にする事が出来きずに義体が反応してしまったのだ。
ーヨルハのプログラムが、敵の排除を優先させるー
「奴は私達に対して容赦ない攻撃をした。“先に”攻撃をしたのは奴。私たちは危険に晒されたの・・。」
四号が“白の約定”の片手でブンブンと振り回しながらボスパックンへ着々と近づく。まるで瀕死の動物に近寄る捕食者のように。
振り向かずにクリオに言葉を投げかける
「アタシたちね、敵である“機械生命体”を殺す為に造られた存在なのよ。コイツは機械生命体では無いけど、アタシたちに対して“明確な敵意”を向けて攻撃をしてきた。」
クリオは戸惑いながらも
「・・・!?でも・・!?奴は・・もう・・」
四号は彼の声を遮るかのように
「戦いを知らないキミたちには無縁な事だと思う。だけどね、戦いと言うものは“攻撃してきた敵”に情けなねんて御法度なのよ。でないと・・復讐とか報復とか言い出して反撃してくる。」
彼女たちは地球へ降りるまで、バンカーでひたすら機械生命体との戦闘シミュレーションの日々を過ごしてきた。
その中で敵に対する考え方も各々出来上がってた。
戦意のない個体を逃した場合、共闘を選んだ場合、あらゆる想定されるパターン。20機の異なる人格プログラムを持つヨルハたちが、全員一致で導いた結論はただ一つ。
“敵を倒す”
「四号、油断しちゃならねーぞ。」
十六号はライフルを構えてボスパックンの頭部に標準を合わせてる。いつでも引金を引く事は可能な体勢となってる。
A2は二十一号に視線を向けた
「二十一号・・・クリオを連れて木陰のある場所へ。彼にこれからの光景を見せるわけには・・・。」
そう言うと、彼女は白い刀を握りボスパックンの方へ歩いていく。
二十一号は一瞬だけ目を見開いたが、A2の言葉の意図を即理解できた。
「了解致しました。隊長命令に従います。」
彼に両手を差し出し、穏やかだが断固として言う。
「クリオさん、私と共にあちらの方へ移動しましょう。」
「えっ!?で・・でもアイツはどうなっちゃうの!?」
クリオは直感で何か良からぬ事を察したが
二十一号は唇をすこし震えながらも、前に立ち塞がるよう
彼に言葉を向けた
「ここから先は我々“ヨルハ”による機密行動になります・・・。外部の貴方が触れてはならない事です・・。」
ゴーグル越しでも分かる見下ろすような視線。
今までの雰囲気とは異なる彼女たち。
冷たく厳しくも微かに優しさが含まれてた。
クリオは彼女の言葉に納得せざるを得なかった。
直感的にこれ以上踏み込んではいけないと察したのだったから。
「分かったよ・・。姉ちゃんの言う通りにする・・。」
彼女に押されるようにクリオは少し離れた大木の裏の方へ足を進める。
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花の化け物“ボスパックン”を取り囲むように武器を構えた3機のアンドロイド。
四号は両手剣を片手で軽々と振り回し、十六号はライフルを構えて常に引き金を引ける体勢。
そして、白い刀を力強く握りしめるA2。
十六号
「2人とも、いつでも撃てるぞ。早くヤろうぜ?」
四号は口角を上げつつも、目は笑ってない。
「待ちなよ、コイツは機械と違って会話できるみてーだし、遺言と言うのを聞いてやってもいいでしょう?」
A2の手は震えてた。自分たちは感情も何もない機械の敵と戦うために設計された存在。目の前にいる奴は言葉を話す事の出来る生命体。クリボーのように喜怒哀楽の感情や思考があり、姿形は違えど人間のようにも思えてくる。
“機械ではない奴を殺すべきなのだろうか?”
彼女たちの足が近づくにつれて、ボスパックンの息は浅くなる。その息だけで生命の灯火が消えかかると分かってる。
四号が剣を構え、一振りで命脈を断てる距離に
「さぁ、アタシ達を敵に回した事を後悔して逝きなさい♫」
剣を振り上げた瞬間・・・!!
ドン!!ドン‼︎ドン‼︎ドン‼︎ドン‼︎ドン‼︎
ドン!!ドン‼︎ドン‼︎ドン‼︎ドン‼︎ドン‼︎
ドン!!ドン‼︎ドン‼︎ドン‼︎ドン‼︎ドン‼︎
ボスパックンが勢いよく頭を地面に叩きつけ、地響きを起こす土下座! 木陰へ移動してるクリオと二十一号も振り向き、足を止める。
「ヒィィィィイイイイイィィィィィィィィ‼️ごめんなさい‼️ごめんなさい‼️申し訳ありませんでしたぁぉぉぁぁっ‼️もう悪い事は一切しませぇぇぇん‼️許してくださぁぁぁぁぁぁさぁぁいいい‼️」
今までと打って変わった、あり得ない弱気態度に全員ポカン。四号の剣が止まり、森に沈黙が落ちたのだった。