飛ぶ理由を探した者   作:Jr.404

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 さっそく識の律者が登場する回になりますが原作ではフカの過去を掘り下げる話が入ってくるので結構話が長くなっています。けっこう内容を端折っているので話の内容も微妙に違います。
 詳しい内容を知りたい場合は原作をプレイしてみた方が話の全貌をある程度知れるのでおすすめです。まぁ2次創作品なので話の内容が違っているのは同然なんですが。


十二話「華の覚醒」

 雷電芽衣がハイペリオン陣営を脱退するという出来事が過ぎ去った後、しばらくしてこちらとは他所に天命側の方では表向きにヨルムンガント陣営と同盟を結ぶ形で今後の運営方針が固まって行くこととなり、その第一共同任務作戦として太平洋に位置する人工の珊瑚島にて確認された崩壊現象と第五律者の捕縛作戦が行われていた。

 天命とヨルムンガントによる共同作戦が行われている真っ只中、一方のハイペリオン陣営はというとその状況をただ静かに静観している事しかできなかった。

 そもそもの話、ハイペリオン側は今までの作戦で度重なる天命側による陰謀や破壊工作に巻き込まれ、自分達の人員にまで被害を受けていることで不信感が募りだし結果的にテレサ自身が代表して直々に天命組織を脱退するといった宣言をする程に関係が悪化していたのだ。

 その為、現在のハイペリオンは天命を脱退してからはアインシュタイン博士やテスラ博士達を主とするネゲントロピー陣営と完全なる同盟を結んで足並みを合わせていく形となっていた。

 

 ハイペリオン艦内ではこの場にはいない芽衣を除いていつも通りの三人組が集まっていた。ただ自分達の元から芽衣が去ってしまった影響なのかいつもより静かでどんよりとした空気に包まれていた。

 

「...ほらキアナ。お前の大好きな菓子を焼いてきたぞ。...ブローニャもいるか?」

 

「ありがとうございます兄さん。いただきます」

 

「...」

 

 ソーマがキアナとブローニャのふたりに焼き菓子を提供するが、いつもならすぐにガッつくはずのキアナはいつもと違って静かに俯いていた。芽衣と対立し、去ってしまったことに余程心に堪えたのだろう、食べることも忘れて悩み苦しんでいるようだった。

 

「...キアナ、辛い気持ちは分かるがだからといってずっと俯いても時間だけが過ぎてしまうだけだぞ。...それに心配しなくとも芽衣は後先考えずにこんな選択をしたわけじゃない。お前の身に関わる命の危機を救う為に自身の力でお前の律者の力を分散させたんだ」

 

「...」

 

「芽衣も苦渋の決断でお前を助ける為にその手段を取らざるを得なかった。...けど安心しろ、芽衣のことは止める事ができなかったが絶対に生きて帰って来いと約束させた。そうそう下手な真似はしないはずだ」

 

「...兄さん」

 

「...」

 

 これだけ話してもなかなか返事をしないキアナに剛を煮やしたソーマはいい加減にしろと思わず口に出しそうになる。

 

「...あのなぁ、キアナ。いい加減にしないとそろそろ怒るぞ。芽衣が去ってから以降ずっとダンマリだし...」

 

「あの、ソーマ兄さん...」

 

「何だブローニャ?」

 

「キアナのバカは多分、ショックで俯いているわけじゃなくて...」

 

「え?違うのか?」

 

 ソーマとブローニャの会話の声に気づいたのか俯いたままのキアナが顔をあげ出す。その顔はどちらかというとショックを受けている顔というより、明らかに寝落ちした後の寝ぼけた顔そのものだった。

 

「Zzz......はッ⁈いけない集中してたら寝ちゃってた」

 

「ああやっぱり...」

 

「えっ?キアナ?お前、さっきまで寝てたのか?」

 

「バカキアナはさっきまで瞑想の修行をしてたんです。だから周りに無反応だったんです」

 

「ふあぁ〜、あれ?ソーマじゃん。...って、ああ!私の分のマカロンが⁈」

 

 ショックで俯いていると思ったらまさかのただの寝落ちでしたというしょうもない事実についさっきまで寝落ちしてたキアナに説教垂れていたソーマはどうしようもなく恥ずかしくなってきた。

 

「アレ?そういえば寝落ちしてた時にソーマの声が聞こえたような気がしたけどなんかいいたいことでもあったの?」

 

「...なんでもない、忘れろ」

 

「ソーマ兄さんはキアナが相変わらずまだくよくよしていると思って励まそうとしてましたよ」

 

「ちょっ、ブローニャ!余計な事を言わなくていいから!」

 

「...大丈夫だよ。さすがにもう立ち直ったから」

 

 自分はもう大丈夫だというキアナではあるがあれだけのことがあってそう簡単に立ち直れるものなのかとソーマとブローニャのふたりはキアナの心情を心配する。

 

「...ここでいつまでも悔やんでも仕方ないし、だったら少しでも私の体に宿っている律者の力を自分でコントロールしてシーリンの自我にも押し負けないようにしないと」

 

「それでさっきまで瞑想の修行をしてたと?」

 

「うん、そうだよ」

 

「ハァ...とりあえず事態は理解した。けどキアナ、お前いつの間に修行僧みたいな真似を覚えたんだ?」

 

「えーとね、実は...」

 

 キアナの話によると、どうやら律者の力が覚醒して暴走したあとしばらくして成り行きで天穹市に迷い込んでいたときにフカが事前に渡世の羽?という神の鍵というアイテムでキアナの身に羽を宿らせておいたことで自身の意識にフカらしき人物の声が聞こえできたという。

 フカ本人には肉体がなく、キアナが律者として暴走してた騒動のときに大主教のオットーによって撃たれたことで咄嗟に肉体から意識?を飛ばして逃げ延びたことで半端幽霊みたいな存在になったらしい。ただ、本当に死んだわけではないということだったが、天穹市での爆弾解除の後にキアナがまた天命に拐われた後、脱出を図るときにそこでまさかのヨルムンガントのリーダーであるケビンと遭遇し、狙われていたキアナを逃す為にフカが実体化して現れて時間稼ぎをしてくれたらしい。

 ただ、その場を脱してから以降フカ本人がどうなったかは分からないらしい。実際にキアナの意識からもフカの思念体を感じ取れなかったので、もうその場にはいないのだろう。

 

「うーん、なんかフカの存在が無茶苦茶過ぎてわけがわからん。とりあえず、俺が天穹市にいたときにフカの声が聴こえてきたのは幻聴じゃなかったんだな...ほんとに幽霊じゃなくて?」

 

「さっきも言ったけど肉体から離脱しただけだから別に死んでないみたい。生き霊みたいな感じかな?」

 

「なんだか委員長の謎さが増してきて訳がわからなくなって来ました。委員長はブローニャ達にいろいろと秘密を抱えてそうですね」

 

「フカの行方が分からなくなったのは心配だけどまさかさっきの話でケビンが登場してくるとはな」

 

「え?ソーマはケビンに出会ったことあるの?」

 

「ああ、長空市でお前と芽衣の行方が分からなくなって捜索をしてたときに道端でその男に出会ったよ。なんだか俺に対し、君には先代の律者の力を受け継いでいて他の存在から狙われているからまともに対抗できるか見極めてやるっていって攻撃された。あの時はほんとにヒヤヒヤしたな」

 

 ソーマが話したケビンに関する内容が気になったのかブローニャはさらに詳しく聞いてきた。

 

「そのソーマ兄さん、ケビンって人がいっていた先代の律者の力というのはなんでしょうか?ブローニャがデザイアジェムの回収作戦に向かったときに成り行きで理の律者の力を継承することになったので兄さんの律者の力が気になります」

 

「私も気になってた。...狙われているっているのもけっこう不穏だし」

 

「そういえばブローニャはデザイアジェムを回収しに行ったときに成り行きで律者の力を継承することになったんだったっけ?なら俺がケビンに対面した時のことを話すか...」

 

 ソーマの話では、彼がケビンと接触し戦闘に入ったときの会話でケビンがソーマに宿っている律者の力が先代の者が継承してたものであり、その律者の力の名は対極の律者といい、実はこの律者はソーマ含めてもう一体いるらしく、ソーマ側の方が"聖黒"と呼び、対するもう一体が"聖白"と呼ぶらしい。そしてその片割れ側がソーマを狙っているという話であるという。その為にソーマ本人がどれだけ戦えるか見極める為に決闘を挑んできたのだ。

 

「何というかソーマもソーマで面倒な存在に目をつけられていたんだね...なんだか私達ってやたらと狙われたり巻き込まれたりばっかりね。ホントにイヤになっちゃう」

 

「ブローニャ達も身を守るだけでもいっぱいいっぱいです。日に日に戦う相手の脅威が増すのが厄介ですね」

 

 お互いが己に降りかかる脅威に辟易してたとき、フリールームの通信端末からテレサからの通信が繋がる。

 

【三人ともいるかしら?緊急速報よ!すぐにハイペリオンの艦橋に来てちょうだい!詳しくは端末でデータを送って説明するわ】

 

 いきなりのテレサからの緊急な通信にに三人とも呼び出され、言われた通りに艦橋に入り通信端末からテレサの情報データを目に通して通じて話を聞く。

 話によると今現在、天命本部にて大混乱が発生しており、ヨルムンガントとの作戦任務を終えた数日後に何者かによる襲撃を受け、天命本部の施設は今までのなかで過去最高レベルの被害に遭っており、大主教であるオットー・アポカリプスは生死不明という状態であり、今は臨時でS級戦乙女の一人であるデュランダルが取り仕切っているというらしい。

 

「想像以上に深刻ね。今まで過去にも天命で何度も脅威に晒された事はあったけどここまでケース今までにないことよ」

 

「にわかには信じられません。陰謀論と言われた方が納得できます」

 

【...彼がこの程度でやられるとは思えないけど、状況はますます混乱してきてるわあなた達も気をつけなさい。こっちも博士達と全力でサポートするから】

 

 テレサからの緊急通信の話を聞き終えた後、通信が切れる。

 

「今現在はどうやら天命本部が大混乱状態らしいですね」

 

「そうみたいだな。けど天命を脱退した俺達にはもう関係ない事になるか」

 

「そうだね。いまの私には他のことを考えてる暇はない。自分の力を制御できるようにすることを第一に考えないと...そういえばもうそろそろ着きそう?」

 

「はい、後数時間で太虚山に着きそうです」

 

「なぁ、キアナほんとにあそこにフカ委員長が残した宝物があるっていうのか?もうかなり長い事フカは太虚山に帰ってないって聞くし」

 

「ううん、きっとあるよ。委員長が教えてくれた、太虚山で長く長く暮らしてたって...委員長の家も、門派も、秘蔵も、全部そこにある。きっと私だけじゃなく、ソーマも自分の律者の力をより自分でうまくコントロールできる秘訣が得られると思うよ」

 

「...確か"太虚剣気"っていうんだっけ?少しでも早く力を自分のものにしないとな時間は待ってくれないか...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハイペリオンはキアナやソーマ達の律者の力をコントロールする秘術を得る為にフカがキアナの意識体にいたときに聞いたとされる彼女が昔住んでいた神州に存在する太虚山と呼ばれる場所へ向かっていた。

 太虚山を登りながら探索しているとその道中にて"林朝雨"という名の女性に会う。フカがかつて精衛仙人を名乗って活動していたときに教えていた弟子だったようで彼女からフカの秘術を知る事ができないかと情報を求めて見た。

 しかし、彼女は自分達の門派の決まり事の為、教えられないうえに、関係者かどうかすら怪しい為、話を受け入れられないと断られてしまう。

 そこで証明の為に道中にて見つけたフカの秘術で生み出された渡世の羽を見せたことで、秘術の事については教えてもらえなかったが代わりに彼女がその羽根に宿っている精衛仙人の記憶を見せてあげると導かれ、フカの人生の追体験を眺める事になった。

 林朝雨によって渡世の羽に秘められたフカの記憶を見せられ、その内容は見せられた時代背景こそバラバラではあったものの、確かにフカが過ごしていたその時代の世界が見えていた。

 ひとつは彼女自身が学生として聖フレイア学園の時とは全く異なる学園で過ごしていた思い出、二つめは自身の住む都市が崩壊に襲われて、廃墟していく光景、ソーマやキアナが出会ったことのあるケビンという男とフカがかつて崩壊と戦う為に共に同じ時代に活動してたシーンもあったりと、彼女が自分達が想像してるよりも遥か昔の前文明に生きてた人間だったということを知る。

 前文明での戦いで人類は崩壊に壊滅させられた後、フカはゴールドスリープによって眠りにつき、再び眠りから復活した後、フカは崩壊に勝つ使命のために新たに再創生された時代で彼女は新たな人生を歩むことになった。

 崩壊と戦う為にフカは融合戦士として体を改造されていた為、長い時間の中様々な人々と出会い、いろんな人達に戦いの術等を教え、新たな戦士を生み出し続けた。

 神州の原初時代のはじまりの記憶では女カと伏儀と呼ばれる少女達と共に新しく文明を作り始めた出来事も再現されており、神話や武術という形で前時代の知識を再編集して伝えると言った時代再現をしていたりと建国時代でもフカが深く関わっていたりと驚かされる話ばかりであった。

 しかし、過去の追体験をしていくうちに先程までいたはずの林朝雨が遥か昔五百年前の人間だということを知り、明らかにここが太虚山じゃないことに勘づいた。

 いくつかの記憶の追体験を辿ったあと、記憶の中にいる弟子達に精衛が待っていると案内され、精衛仙人がいる屋敷の中へと訪れる。

 

 

 渡世の羽根によって見せられた幻影を眺め続け、案内された先で辿り着いた屋敷部屋の奥底に座ってただずんでいたのは、自分達がよく知るフカらしき人物だった。

しかし、ソーマ達がよく知る彼女とは明らかに雰囲気が違っており、そこにいるのは生真面目な委員長のフカではなく獰猛で好戦的な笑みを浮かべたフカ?だった。

 

「アハハッ、随分と時間がかかりましたね?全く、待ちくたびれましたよ?」

 

 目の前にいるフカ?はどうやら記憶の羽を巻きながら意図的にこちらをここまで誘導してきたらしい。わざわざ過去の弟子達のひとりを案内役にさせてまでここまで自身の過去の記憶を追体験させながらである。しかし、当然三人とも目の前にいるフカらしき人物が本物とは思わず、本物のフカを返せと訴え武器を向ける。

 

「そんなに私のことが認められないのですか?...へぇ?私と敵対するので?面白い、もう一人の私とどちらが相応しいか審判する良い機会です。いいでしょう、かかってきなさい!」

 

 三人がかりで律者の力を解放しながら戦いに挑み掛かるも、偽者らしきフカはあまりにも強くまだ上手く律者の力を制御仕切れていないキアナやブローニャはともかく、比較的に安定しているソーマでさえ、太刀打ち出来ずにいた。

 そんな最中に戦闘中でタイミングを見計らってキアナの意識の中から渡世の羽の方のフカ、つまり本物の方が語りかけてきた。

 

ーキアナ、この際ソーマでも構いません、貴方達に伝えます。いまあなた達が対面している者の正体は律者です。生まれたばかりの彼女は自身が私だと思い込んでいます。今の彼女は私の全盛期の力も持っている、力だけでは勝てない。だからこそまだ未熟な彼女の精神を揺さぶり、油断を誘うのです。間違っても崩壊の深淵に落としてはいけないー

 

 フカの意識からの提案を聞き入れ、三人とも対応を変える為にソーマとブローニャが時間稼ぎをするがフカ?はなんらかの秘術で空間意識を創り上げ、お互いを分断させ、孤立させてしまう。完全に孤立してしまった状態での戦闘を余儀なくされたソーマは当然苦戦を強いられる。

 

「クソッ‼︎ブローニャ!キアナ!」

 

「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ?彼女達には私達のどちらが本物かを審判してもらう為に私の分身を手配してます」

 

「...此方をどうするつもりだ?倒せるならさっさとやればいいものを」

 

「フフ、そんなに急かさないで。...確か、あなたがソーマだったよね?どうやら今までの私が結構気にかけてたみたいですから。あなたには私の事をもっと知ってもらう為に私との過去の追体験を振り返ってもらいましょう!」

 

 フカ?の記憶の再現の力で周りの背景が大きく変わりだし当時の記憶を呼び起こされる。そこには聖フレイア学園にいたときにフカとともに鍛錬をしていたときのものだった。たしかに当時、あのときの自分はうまく崩壊エネルギーの力を制御出来ずに四苦八苦し、落ちこぼれた自分を姫子先生やフカが手助けをしてくれていた。

 よくよく思えばこの時からまともに戦えなかった大きな原因は自身の身に宿していた律者の力のせいだったんだと改めて理解する。

 

「懐かしいでしょう?あなたに鍛錬をさせていた時の私ですよ?まったくあのときのあなたはどうしようもなく落ちこぼれでダメダメでしたねえ?私が助けてなかったらどうなってたことやら...」

 

 うまく戦うことも出来ない過去の自分に対してフカ?は容赦ない物言いであったが少なくともフカはそんなことは言わないし、口よりも手を動かせと行動するタイプだったと思うので明らかに彼女はフカじゃないと思い知る。

 

「容赦ないな。そもそもあのときの俺は自身に律者の力があることすら理解してなかったんだからさすがに無理があるだろ?」

 

「あれ、そうなの?...それはごめん。私が無神経だったようですね」

 

「え?っあ、ああ...うん、別に気にしてないぞ?」

 

 意外と素直に自分の非を認めたことに思わず呆気に取られる。こいつ、律者のくせに以外と素直なんだななんて思いに浸っていると、次は学園での光景から変わってフカが天命にいたときの記憶が現れる。そこではフカがオットーと向かい合っているときの光景だった。

 

「...チッ、またあの男か。殺してやったのに改めて過去の姿を見るとまたイライラがするッ」

 

「何だ?あの男に何かされたのか?」

 

「ええ、アイツは私を一度拳銃で撃ち殺した。けど何のつもりか私の肉体を治療して蘇らせた...だからタイミングを見計らって殺してやったのさ!それを理由にお互いに一度殺されて蘇っている身だからお互い様だとかふざけた事をぬかしてきたんですよ?」

 

「そうか...俺はあの男、オットーに昔保護された過去があるから正直何を企んでいるのかよく分からない。何故か俺達を騒動に巻き込んだりキアナを攫ったりと、はっきり言って何をしたいのかよく分からないし、正直...気味が悪い」

 

「そうでしょそうでしょ!あなたはよく分かってますね♪そういえばあなたは時々、人の相談事を聞いてくれる事が多いんでしたね?あなたならあんな頑固者なんかよりも私の方を受け入れてくれますよね?」

 

「...悪いけど、それはもう少し様子を見てからだ」

 

「ふーん?...ま、別に構いませんけどね」

 

 記憶の中でのオットーと対面していたフカはとある話をしていた。話の内容はどうやらソーマの律者の力についての事で話し合っているようである。

 

ー学園にいる彼の身体と精神状態はどうかなフカ?ー

 

ー今のところ問題はありません。ただ...ソーマ...彼の律者の力の活性化が進んでおり表面化するのも時間の問題です。崩壊中和剤で押さえつけてるとはいえ...そこまでして空の律者を相手にぶつけるのは無茶なのでは?ー

 

ー大丈夫さ、ソーマに宿っている対極の律者の力は強大だ。下手をすれば空の律者の力すら上回るほどのものだ。ここまで抑えなければ下手すると彼女の方を殺しかねない。だから彼の力を空の律者と同等にまで抑える必要があるのさー

 

ーしかしそのせいで彼はまともに崩壊エネルギーの力をコントロール出来ずにまわりから落ちこぼれの烙印を押され、同学年の者達からはいじめの対象になっています。...あなたが養子に向かい入れてまて育てた我が子同然な彼をほっといて良いのですか?ー

 

ー......分かっている。だかこれも計画の為だ。...辛いかもしれないがソーマには耐えてもらうしかない...ー

 

 彼らの会話を聞いた後ソーマは自身が聖フレイア学園にいたときの過去を思い出す。入学してしばらくの彼は最初こそ、キアナ達と同じくらいに食らいつき悪くない成績を収めていたが、そこから境に崩壊エネルギーがうまく制御出来ずに成績はガタ落ちし始め、学園内で数少ない異性の人間ということもあり、いじめと迫害の対象にされてきた。...酷い時には私物を壊される事も日常茶飯事だった。

 テレサや姫子先生が助けてくれなきゃどうなっていたことやらと自身の思い出を思い返す。

 

「...まったくあの頃の私は不満を言うだけ言って結局あなたには手を差し向ける事もしなかった。ま、もうひとりの私はそれを後悔してみたいですけど?私だったら遠慮なくあの男を叩きのめしてあなたを助けてあげましたけどね?」

 

「あー、うん何というか...あり、がとう?なんていうかアンタって、思ってよりいい奴なんだな」

 

「ふふ〜ん、そうでしょ?あんな頑固者より私だったらあなたをいつでも助けられますよ。律者の力だって私がいれば安定させる事も可能です!あなたは見た感じ他の律者と違って暴走する事がほとんどないみたいだし、ほんとならあんな奴らに管理されなくてもあなただけでもやっていけたんじゃないですか?」

 

「...それはどうだろう。いくら自力でどうにか出来てもいずれは自分の力を狙ってくる輩がいる以上、身の安全を守るためにもどのみち学園にいるしかなかったと思う」

 

「それだったら私があなたを直接、太虚山で匿ってあげますよ?そこであなたに修行をつけて自力で身を守れる術を与えますし、ここは比較的に平和なので崩壊からの脅威とは無縁な生活を送る事もできますよ♪」

 

 フカ?からのお人好しな態度が現れ、やっぱり元の彼女の性格の良さが現れているのだろうと思った。

 実際のフカも何気に体の事を気にかけてきたり、勉学のことも面倒を見てくれたりといろいろとお人好しな行動がよく見られていた。実際にソーマもよくお世話になってたし、武術の一部だってフカ直伝であったりする。

 ただ律者である彼女を見ていると彼女自身がそこまでしてフカであることに拘らなくてもいいのではと考えが過ぎる。実際にフカに似ている所はあるのは当然だかそれとは別に彼女らしい割り切りの良さと素直な優しさが彼女がフカでありながらフカではないという部分を強調させているとも言える。

 

「でもそのときのアンタはまだ生まれてきてすらいないんだから流石に無理じゃないか?」

 

「‼︎ああ、いけない...確かにそうだった。はぁ...全く、運の悪い」

 

「なぁ、もうひとりのフカ。思ったんだが何故そんなに気にかけてくれるんだ?わざわざこんな赤の他人の為に」

 

「何故って?そりゃあ気に入らないからですよ!あなたの記憶を見せてもらいましたけど、ホントに自分勝手な奴らばかり!あなたの事を考えもせず無理矢理律者の力を埋め込んで実験台にし、その後あの男に拾われたと思えば結局利用されてばっかり、そのせいで学園でも苦しい思いをしたりと...全く、学園長や姫子教官、キアナ達に助けられなかったらどうなっていたことやら...」

 

 そう言いながらフカ?はソーマの経験した苦労をまるで自分のことのように怒ってくれていた。彼女の素直な性格について渡世の羽のフカから話された内容で彼女はまだ生まれてまもなく、感性が素直であるという事を思い出す。

 その後もフカが体験した出来事を振り返り続け、最終的にソーマにどちらがフカに相応しいか問いてきた。

 

「さぁ、どうですか?私こそがフカに相応しいでしょう?」

 

 フカ?にそう答えを求められた後、ソーマは静かに深呼吸して覚悟したかのように彼女を見つめながら答える。

 

「分かった、答えるよ。......悪いけどやっぱりアンタはフカじゃない。俺の知るフカ委員長とはやはり違う...だから俺はアンタをフカとは認める事はできない」

 

「ッ、...何故ですか?何が気に入らない?なぜ?...なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜ⁈何故あなたもあの頑固者の役立たずを求める⁈」

 

 否定されたことに狂った人形のように取り乱したフカ?は赤い瞳の目を見開かせてソーマに問い詰めてくる。まるで病んでしまった人間が血迷って詰め寄る様に言葉を吐きながら喚き出す彼女はまるで癇癪を起こした子供の様に錯乱する。

 

「ま、待ってくれ、まだ話は終わってない!べつにお前のことを全て否定してるわけじゃないんだ話を最後まできいくれ!」

 

「うるさい‼︎あなたの話なんて聞きたくない!...あぁそうさ、そうですよ。私は本当のフカじゃない...私は律者、識の律者です!私はただ強いフカに...彼女で有りたかった!認めてさえくれれば他はどうでもよかった!けど私の事に関心を抱いてくれたあなたですら私を否定した!そんなに気に入らないのなら力づくで...お望み通りに力でねじ伏せてやる‼︎」

 

 まわりの風景が変わりだし、それに伴ってフカ?の姿が赤黒い炎と風で吹き荒れて周りを包んでいき、識の律者が真なる姿に変わる。長い灰色の髪をたなびかせ、特徴的な華服と着物を掛け合わせたような装飾のついた衣装を纏い、まわりに多種多様な武器を携えて赤い瞳を光らせ、狂気的な笑みを浮かべてコチラを睨んでくる。

 

「さぁ...来なさいソーマ。私は...すべてを変えます‼︎」

 

「っ!...あぁもう、やるしかないのか。今の俺がいったいどこまで耐えれるか...」

 

 戦闘態勢に入った識の律者を迎撃する為にソーマは律者の力を解放し、手にした大槍を構える。

 お互いを睨み合い対峙する二人の律者、識の律者と対極の律者との戦いが今まさに始まった。

 




 ソーマ視点で識の律者と対面してますが実はキアナの方でも同じようにお互いに識の律者と対面しており、ソーマ側の方は分身体ですが、どちらとも識の律者であり、意識も共有されています。なので識の律者はソーマに興味を持ってもらう為に、彼のことを気にかける様な話し方をしてますが、実は割と本心で彼の事を真摯になって気にかけてくれていたりしています。
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