いい加減ソーマとキアナの絡みを書きたかったので今回の編から二人の関わりが増えていきます。
運命の時はいずれ訪れ、いくら足掻こうともその呪縛からは逃れられないという結末がある。たしかにそういう運命もあるのだろう。
けど、私はそれらを簡単に諦められるほど全てを諦めている訳でもなければ、絶望に折れてしまったわけでもない...。
...しかしだからといってこんな現実の付け方はあまりにも理不尽ではないか。
沢山の仲間たちや大好きな芽衣先輩、そして幼馴染である親友のソーマ。自分自身のシーリンの復活により律者として暴走し、その代償で姫子先生は行方不明になり、ソーマは負傷、その後の芽衣先輩は私自身の命をを守るために自ら前を去り、委員長は律者化した影響で危うく識の律者とともに共倒れするところだった。
けど、みんなの命懸けの頑張りで委員長を救い出し、識の律者とも完全とはいけないが和解することもできた。
逃れられない運命の呪縛から足掻き、大切な人をひとり救い出す事に成功したのだ。だから私はどれだけ苦しくとも辛くとも諦めなければ大事なものを守り通すのも不可能じゃないと疑わなかった。
...私の目の前で彼が...ソーマが相手に心臓を刺し貫かれる光景を見るまでは...。
「...ソーマ?...ウソ...イヤ...ヤダ、ヤダヤダヤダヤダーー‼️ダメ!死なないで‼️」
胸元から溢れ出る赤黒い血が止まらず徐々に意識が遠のいていくソーマの表情を自身の服が血で汚れるのをかまわず抱き止め、必死に彼に呼びかけるが、当然助かる訳がないと理性が呼びかけてくるがそんなもの受け入れたくはなかった。
「...残念だったわね。どうやら五万年の時を超えてもアナタ達は私に打ち勝つことができなかったわね、"聖黒"」
理不尽な強さを持つ純白の律者になす術もなくやられてしまったソーマを必死に自分の体に引き寄せて絶対に奪わせないと相手を睨みつけるがソーマを刺した相手は今まで相対した律者やシーリンの意識体とぶつかり合ったときとは比べ物にならないほどの威圧感であり、まるで絶対的な上位的存在に相対したような不気味さと絶望感を感じた。
「ゴフッ...キ...ア...ナ、逃げろ...お前まで...ころ、される...ぞ」
「そんなのできない‼️ソーマが死んじゃったら...私は、もう...」
止まらない涙を流しながら私は必死に意味もなく彼の胸元の刺し傷の穴を塞ぐように手で押さえつけながら必死に抱きしめる。
この時になってようやく私は大事な幼馴染であり、常に身近にいるソーマを...死にかけている彼を見て初めて心の底から彼の事が好きだと理解した。...私はなんで今さら手遅れな恋心な感情を抱いてしまっているのだろうと思わずにはいられなかった。
...何故このようなことになってしまったのだろう。やっぱり私が選んだ道は、間違っていたのだろうか。
ーソルトレイク基地ー
太虚山での大騒動の後、ハイペリオン陣営はネゲントロピーと完全合流を果たし、しばらくの間ネゲントロピーのソルトレイク基地で滞在していくこととなった。
ちょうどその時期、ネゲントロピーでは創立60周年記念を開催するパーティーイベントが行われ、その開催期間中にハイペリオン号で待機していたキアナとソーマ、ブローニャはパーティーイベントの参加と手伝いをしていた。
ブローニャはネゲントロピーにいるゼーレとの久しぶりの再会に喜び、キアナやソーマとは新しい仲間として交流を交えた。
その後は互いにパーティーイベントの買い出しの手伝いで一旦別行動をすることになり、ソルトレイクシティにてキアナとソーマは二人組で頼まれた品物の買い出しをしていた。
「キアナ、頼まれていた品の予約は入れられそうか?」
「うん、店員さんに聞いたら在庫はあるから大丈夫だって」
「そうか。なんか思ったよりも早く用事は済んだみたいだな。思ったよりも大分時間が余っているんだから少しくらいいろんな場所を散策して見るか?」
「う〜ん、いいのかなぁ?」
「いいんじゃないか?アインシュタイン博士達もパーティーイベント開催までまだ時間があるから買い出しのついでに気分転換でもしてくれって言ってたし」
「それなら...」
二人はソルトレイクシティ内の街並みを散策しながら周りを見渡す。ネゲントロピーの独立記念日のお祭りで賑わっているのか、街中で等身大のホムの着ぐるみやタイタン機甲達が動き回っていた。
シティの人々は皆開催されているお祭りに楽しそうに騒いでおり、周りのスタッフ達も客寄せに着ぐるみを利用して親子連れの家族と交流をしていた。
「本当ににぎやかだな〜。等身大のホムもいるなんてな、これはブローニャも連れてくるべきだったかな?」
「ほんとだ。あとでブローニャに伝えたら悔しがるかもね〜」
「ハハ、ブローニャのそういう表情が想像つくな」
街並みを眺めながら少し小腹が空いたのかソーマはキアナに喫茶店に寄ってみないかと提案する。
「キアナ、どうせなら喫茶店に寄ってみないか?少しお腹が空いてきたし」
「え?それはいいけど...その、ソーマのお腹の傷は大丈夫なの?」
「ソレなんだが...なんと、普通の食事ができるような段階まで回復したんだ!...まぁ流石にあまりたくさんは食べられないが日常的に生活する分には問題ないってお医者さんが言ってくれたんだ。だから大丈夫だ」
「それなら...私もそうしようかな。それじゃあ、いこ?」
ソーマの提案通りに街にある人気のありそうな喫茶店へ行き、そこでいくつかのスイーツの味を楽しんでいた。
「全く...あの店員さんめ...俺達のことをカップルか何かと勘違いしてカップル限定メニューを勧めてくるなんて。...キアナ?大丈夫か?」
「へっ⁈あっう、うん、そ、そうだよね〜」
「おいおい大丈夫か?なんか今日はやたら初々しい反応ばかりだな」
「ほ、本当に大丈夫だから!そ、それより早く食べようよ!」
「?へんなキアナ...」
ソーマに気にかけられてる中、当のキアナ本人の心情の中はいままで感じていなかった感情にあたふたしてなんとか落ち着かせようと必死だった。
(な、なんだか今日の私、いつもより落ち着きがないかも...いつもならソーマと一緒にいるときなんてよくあることだから別に意識してなかったけど店員さんに可愛らしいカップルだと褒められたとき、先に否定よりも恥ずかしさやドキドキの方が先走って否定どころじゃなかった...芽衣先輩といたときはここまで感情が乱れたことはあまりなかったのに。私、どこかおかしいのかな...?)
今まで感じたことがない未知の感情に悩まされ、彼の目線を合わせるだけで恥ずかしさで慌ててそらしてしまう。
彼が自分以外の異性と話していたときも時々、知り合い以外で必要以上に仲良くなっていると少しモヤモヤ感を感じてしまっているし、ブローニャはともかく、最近知り合ったばかりのゼーレという子がソーマとの話の息が合うのか楽しそうに話し合っていたのを見て少しだけ不安やわずかなイライラ感を感じてしまったりもした。
正直に言って、最近の私はソーマに対する感情が安定していないと言ってもいい。ただ私はこの感情を目の前の親友に見せないように話題をなんとか変えて誤魔化すように会話を進める。
「そ、そういえば、委員長は元気そうにしてた?」
「フカか?あの人は大丈夫そうだぞ。まぁ...彼女もいろんな事を抱え込んできたからな、今回の太虚山での出来事で腹の内のことを吐き出せるよになってからいつもより目に光が灯ってきた感じだったな。ことが落ち着いたら"久々に貴方に稽古つけてあげます"って言われたよ。ハァ〜帰ってきたらスパルタ修行が始まりそうでイヤになる...」
「あ、あはは...ソーマも委員長に目をつけられたね」
「多分、俺たちが太虚山で識の律者...
「まさかソーマも太虚剣技を使えたなんて...ていうか識の律者のこと、
「え?ど、どうしたキアナ。なんか不機嫌そう?」
「...別に、なんでもない...」
「あーゴホン、...そのキアナ、あまり言いたくないなら言わなくてもいいんだかその...お前の体内にある空の律者...シーリンの人格からは何か影響は出ていないか?」
「...うん、大丈夫。いまでもシーリンの意思がしつこく乗っ取ろうとしてるけど今の私なら十分に押さえつけられるから。...念の為に発信器のついたリストバンドをつけて万が一暴走した場合はすぐにネゲントロピーへ通信が届いてすぐに対処してくれるように手配してるんだ。まぁ最悪何かあった時は人気のない所に対比して対応してもらうしかないけど...私の意識があればだけど」
「...お前だけには背負わせないさ。その為にも俺の律者の力はカウンターになる。暴走しようがあのとき芽衣がお前を助けるためにしたように絶対に止めて見せる。約束をしたからな」
「...ありがとう、ソーマ。でももう、これ以上はアンタに傷ついて欲しくないの。だから...」
「バカをいうな。...俺にとっては身も知らない赤の他人の命なんかよりもお前の方が遥かに大事だ」
「...ソーマも芽衣先輩と同じようなことをいうんだね」
「当たり前だ、いったい何年共に過ごしてきたと思ってるんだ。まぁ先に芽衣にセリフを言われちゃったのはちょっとくやしいが...」
「なんだか私、二人の気持ちを考えずに先走ってしまっていたみたい...」
「ようやく気付いたか?この無鉄砲さんめ」
お互いが気になっている事で話し合っているとふと外周りから騒がしい悲鳴声が聞こえてくる。
「なんだか外が騒がしいな...」
「ねぇソーマ。さっき外から助けを求める声がしなかった?」
ーまずい!戦術機甲が暴れている!みなさん、はやくこの場から離れて隠れてください!ー
ー誰か避難の誘導をお願いします‼︎大至急ネゲントロピーの運営委員会に連絡を‼︎ー
「キアナ、悪いけど話はここまでだ。救援を急ぐぞ」
「分かった!暴れている機甲達を止めないと!」
イベント祭の会場内で暴れ回るネゲントロピーの戦術機甲をソーマとキアナは協力して鎮圧を図る。戦術機甲を倒したときに襲われていた幼い少女を助けるが、キアナは自身が空の律者として顔を知られている為、接するのが気まずく感じたが少女からは"助けてくれてありがとう"と言われ、お姉ちゃんはの目がまるで魔法使いみたいに見えると褒めてくれた。
道中他にも何人か人助けをしていたが、やはり助けた人々からは感謝の言葉ばかりであり、キアナのことをひどく恐る者は誰一人といなかった。
「...よかったなキアナ。ここの人達はみなお前のことを本当に心の底から命の恩人として感謝してくれてる。俺たち以外にもお前のことを受け入れ、認めてくれてる人がいるんだ」
「うん...ちょっと怖かったけど、まさか天穹市から避難してきた人もいたなんて...」
「キアナの頑張りを周りで見ていてくれた人がいたんだな。決して無駄じゃなかった」
「それを言ったらソーマもでしょ?アンタがあのとき共に力を貸してくれたから私も前を進んで危険を未然に防げたの。...でもみんなあまりソーマのことを知らない人が多くてちょっとそれだけが納得いかないかな。あのときソーマも一緒に爆弾解除に必死に止めてたのに...」
「あはは...まぁ、俺の場合あまり世間から知られていない律者の力を持っていたし、それらで秘匿されてたからあまり目立たなかったのかもな」
戦術機甲の鎮圧と救助をしている間に同じように行動していたゼーレと接触する。
「あ、キアナにソーマお兄ちゃん!二人とも大丈夫だったの⁈」
「ああ、こっちは大丈夫。」
「私も無事だよゼーレ」
「はぁ〜、良かったです。その、二人には少し協力して欲しいんだけど、この騒動で逃げた人で鍵を落としていった人がいて...持ち主に返してあげたいの」
「そうなの?それなら協力するよ。けどその前にネゲントロピーにこの状況を報告しないと」
「なら俺が代わりにゼーレの鍵の持ち主探しを手伝うぞ。何かあったらキアナに通信で伝えるから」
「ソーマがやってくれるの?ちょっと心配だけど...」
「おいおい、俺を迷子になるような奴だと思ってるのか?」
「ハイペリオンに乗り始めたとき、ソーマが何時間も迷子になりかけて捜索する羽目になったのをもう忘れたの?」
「うぐ...」
「あ、あはは、大丈夫だよゼーレが道案内するからソーマお兄ちゃんはいっしょについてきてくれたらいいよ」
「あ...うん、まあその、悪いけど頼むゼーレ」
「えへへ、任せて」
「それじゃあ、ゼーレ、ソーマと一緒に探索をお願いね」
キアナが状況報告の為に持ち場を離れたあとゼーレとソーマは鍵の持ち主探しを始めることになる。
持ち主探しを進める二人だったが、結果をいうと持ち主のいた場所は特定できた。しかし、聞き込み調査をしたところ、持ち主のことを知らないまたはかなり前から行方を知らないという話がよく出ていた。
なんとか持ち主の名前がジョン・ドゥで学生であることを知れたために彼の住んでいたマンションルームを突き止めるが最悪なことにその持ち主はかなり前に亡くなっていたという真実を知ることになる。
「まさか持ち主がもうすでに亡くなっていたなんて...つまりあの場のホムの着ぐるみを着て活動していた奴は成りすましをしていた誰かだという事か...」
「ソーマお兄ちゃん、持ち主の部屋から謎のチケットと人形が...」
「どれどれ...なんか書いてるな。なになに..."愚か者のジャック、パンプキンに目がないジャック。彼の大好きなパンプキンを持ち上げると、パンプキンは彼の頭に
ガブリと噛みついた"...なんだこれ?ちょっと趣味が悪いな...」
もうひとつ手にした手足が千切れかけた小さな人形を目にする。シンプルな装飾をしたアイマスクをした少女の人形を眺めていると何かが自身に囁きかけてくる声がした。
ーああ...見つけタ...見つけタ見つけタ見つけタ!ボクたちの今宵のイケニエ...はやくコッチにおいデー
囁きかけてくる言葉にソーマは思わず手にした人形を手放して床に落としてしまう。
「そ、ソーマお兄ちゃん⁈大丈夫?」
「なぁ...今、声がしなかったか...?」
「え?何も聞こえないよ?」
「そんなはず...」
しかし、周りを見渡しながら耳を澄ませても底が冷え込むような不気味な声は聞こえなかった。改めて落としてしまった人形を掬い上げても何も感じ取ることはなかった。
(この人形を手にしたときに囁きかけるような声がした...でも今は何も聞こえないし不気味な感じもない...何なんだいったい...?)
「ソーマお兄ちゃん、本当に大丈夫?顔色が悪いよ?」
「...いや、大丈夫。ちょっとこの部屋の匂いにくらんだだけだと思う」
「そうなの?なら、一旦ここを出よう?ソーマお兄ちゃんの体調も心配だし...」
「そうだな...とりあえず、この押収品をネゲントロピーへ持ち帰って博士達に調査して貰おう。...もしかすると俺たちは想像以上に厄介な事件に遭遇してるかも知れない...」
ソーマはマンション内の証拠品の人形とチケットを回収した後、ゼーレと共に部屋を出ていき、マンションの大家に調査を終えたことを伝えたあと、ネゲントロピーのソルトレイク基地へ撤収することにした。
ーゼーレ視点ー
ゼーレとソーマお兄ちゃんは今回ネゲントロピーのパーティーイベントで暴れ出した戦術機甲の鎮圧の後、偶然見つけた持ち主不明の鍵を見つけて持ち主に返すために聞き込み調査をしていた。
ネゲントロピーに合流してきたハイペリオンの人員の一人であるソーマお兄ちゃんはブローニャお姉ちゃんからよく聞いたことのある人だ。面倒見が良くてブローニャお姉ちゃんともよく息が合ってたびたび戦闘コンビを何度か組んだこともあり、すごく頼りになる兄のような人だと言っていた。
ゼーレも孤児院やネゲントロピーで兄のような存在を目にしたことがないから彼と合って話し合ってみたらとても息が合った。たしかにブローニャお姉ちゃんが彼のことを兄よわばりしているのも納得である。
話して接して見るとソーマお兄ちゃんは文武両道で優秀そうに見えて意外と抜けていたり、実は結構な方向音痴だったりと以外と可愛い所もあるんだなと思った。
同じく知り合って仲良くなったキアナとは古くからの幼馴染であるという事もあり、お互いに性格がよく似ていた。なんだか二人とも人を引き寄せるような魅力のある人柄だった為にゼーレもいつのまにか二人との友達関係を築いていた。
でも、だからだろうか、ゼーレの中にいるもうひとりの私である(黒)ゼーレはなんだか終始機嫌が悪そうな感じだった。うーん、なんでだろう?悪い人達じゃないのに...。
その後は持ち主の居場所を見つけて確認したけど、悲しいことにマンションの部屋の主はもう亡くなっていて、すでに回収作業が終えた後だった。
「ソーマお兄ちゃん、持ち主の部屋から謎のチケットと人形を見つけたよ」
「ああ、ありがとう。ちょっと見せてくれる?」
「はいどうぞ」
ゼーレは部屋の中を調査したときに見つけた怪しげなチケットと壊れかけの人形をソーマお兄ちゃんに手渡し、確認をしてもらった。
「え〜と、どれどれ...なんか書いてるな。なになに..."愚か者のジャック、パンプキンに目がないジャック。彼の大好きなパンプキンを持ち上げると、パンプキンは彼の頭にガブリと噛みついた"...なんだこれ?ちょっと趣味が悪いな...」
チケットに書かれている内容を確認した彼はそのチケットの内容に不快感を感じながらもうひとつのアイテムである壊れかけの人形を観察していた。
すると本人は観察中にしばらく黙って沈黙した後、突然ビクッとしたように手元から人形を落としてしまう。
突然の不自然な動きに心配してゼーレはソーマお兄ちゃんに声をかけた。するとソーマお兄ちゃんはさっきまで声が聞こえてなかったか?と確認してきた。でもここにはゼーレとソーマお兄ちゃん、外で待機してる大家さんの人しかいない。
さすが大家さんの声なんてしなかったし、ゼーレも確認してる間は何も声を発していないはず。
ー...ゼーレ、あなた本当に声が聞こえなかったの?私にも聞こえたわよ?ー
(え?そうなの?ゼーレには聞こえなかったよ?)
もうひとりの私もなぜかゼーレには聞こえないはずの声を聞き取ったといっていて二人とも何が聞こえてるんだろうと不安になってきた。ソーマお兄ちゃんの顔色も悪そうだし、ここは一旦終わりにしてネゲントロピーの基地に戻ろうと伝え、一緒に帰還することにした。
...けどまさかこれがきっかけであんな恐ろしい敵に出会うことになるなんて思わなかった...。
...もうひとりの私...ソーマお兄ちゃん...キアナ...ブローニャお姉ちゃん...助けて...
薄暗い空間内に佇む巨大な建造物の劇場でガシャガシャと木製の関節が動き回る音と共に沢山の人形達が劇場を法廷の場のように着席しながら意見を交えていた。
ー私達は空の律者達の居場所を特定した。これで本格的に計画を実行できるぞー
ー見つけたのはいいが計画を移すのは早すぎるのではないかね?ー
ーそうだそうだ!まだ我々は水面化で動かせる操り人形の数がまだ足りない!被害を与えてはいるがまだまだ足りないのだー
ーまぁ、そんなことをしなくてもヤツらが勝手にお互いつぶし合ってくれているんだからいいんじゃない?ー
ーだか周りの律者共が厄介ですな?...特に"対極の律者"は危険だ。ヤツが健在だと私達の頑張りと計画がひっくり返されかねん。ことは慎重にだね...ー
ーなんだ貴様、奴らに我々が負けるとでも?やはり貴様は敗北者だな!ー
ーはあ?...取り消せよ、今の言葉!ー
ー何だ怖いのか?ならこいよ。机をタイピングしてないでかかってこい!ー
ーへっお前なんて怖かねえ!ヤロウ、ブッ殺してやる‼︎‼︎ー
ーハイハイ、静粛に!静粛に!...つーか誰だこんなヤツ読んできたの?ー
ーただのカカシですな〜ー
ーカカシって、いや君も大して変わらんだろ?ー
支配劇場の会議会場は正に混沌と化していた。大勢の人形達がお互いに言葉を飛ばして罵声を飛ばすこの滑稽な場を作っている張本人達、"支配の律者"達はお互いに今後の方針をどうするかを揉めていた。彼らが騒がしく言葉と罵詈雑言を飛ばしている最中、支配劇場の巨大な門から甲高い靴音を立てて会場の場に入ってくる人物がいた。
ー⁈...おやおや、これはこれは、もうひとりの"対極の律者「聖白」様"ではありませんか。もうこちらへ着いたのですか?ー
「...相変わらず気持ち悪い喋り方ね。もう少し普通にできないの?」
ー我々はいくつもの自我の集合体なのでコレでもまだマシな方ですよ?元になった人間の方に文句を言ってくださいなー
「そう...つまりまともなヤツがいないってことね」
ーありがとうございます♪「褒めてないのだけど?」
支配の律者達の前に現れたのは対極の律者、聖白と呼ばれた少女であり、白く純白なドレスに白い角と尻尾を生やし、見るものを魅了するほどの美貌をしていた陶磁器のような白い肌から見える顔元はどこか見覚えのある人物の顔付きを見せていた。その顔はキアナのようにも...またはソーマの様にも見える瓜二つの顔付きをしていた。
彼女は静かに己の手にした武器をなぞりながら支配の律者に尋ねる。
「それで?あの子達の居場所は突き止めたの?」
ーもちろんだとも。空の律者...キアナ達の居場所はとうに突き詰めた。あなた様の目標である"聖黒"...今はソーマ、という子が継承してるみたいですね。人形のカケラを握らせたのでいつでも支配劇場に引き寄せることは可能ですよ♪ー
「ふーん?ならもう計画を実行に移すの?」
ーあなた様のお力があればスムーズに事が進みます♪そのときはぜひともお願いしますよ?聖白様?あなた様のお母様の計画の為にも...ー
「あなたみたいなロクデナシが母の事を語らないでくれるかしら?消されたい?」
ーおお、こわいこわい♪ー
支配の律者と対極の律者の二体はお互いに剣呑な雰囲気を漂わせながらも、彼ら彼女らは自身の計画の為に行動を実行に移す。
(...待っていなさい、ソーマ。あなたを見つけ出して...あなたを殺すから。...あるいは、私を...殺して見せなさい...)
ネゲントロピーでのパーティーイベントでの騒動事件のその後、にいくつもの人が失踪する事件が発生することになる。
失踪した人物の捜索の中、キアナは衝撃的な人物名を発見してしまう。
最悪なことに失踪者の名の中には彼女の幼馴染であった...ソーマ・アストラの名があった。
「そんな...ソーマ、まで...」
親友の突然の失踪にキアナは言いようのない不安と孤独感に襲われてしまう。
・対極の律者(聖白)
ソーマ・アストラが継承した対極の律者(聖黒)に対するもう一体存在するとされる律者。前文明の文献では最終決戦時に月面で現れたらしく、終焉の律者の次に次いでの強さを誇り、前文明での崩壊での戦いで同じ対極の律者である聖黒の前任者と相打ちになり撃破されたと思われたがなぜか復活を遂げている。
顔付きがキアナやソーマにそっくりであり、何らかの関係があるようだが...