支配の律者が討ち取られたことによって今まで起きていた原因不明な失踪事件や奴等による破壊工作事件が嘘のように静まってしまった。
やはりいくら無限のような増殖が可能な彼らでも司令塔である本体を撃破されてしまえばどれだけ統制がとれていても残りは烏合の衆へと成り下がってしまうのだろう。実際に戦乙女や崩壊戦士の部隊が討伐任務で現地に向かった際、稀に崩壊獣とともにはぐれ人形として散発的に出現しているという報告もあるくらいだという。
戦闘を終えた後、ネゲントロピーとハイペリオン陣営は今回の騒動で被災した街や人々の復興支援や援助を行なっていた。デュランダル指導の天命組織からの復興支援も加わったおかげで想定よりも早く街の復興が進むことになる。
仕事を終えたことでハイペリオン陣営は自分達のやるべき事を行う事にななった。
それは...かつてのキアナやソーマ達にとっての師である塔無量姫子の葬式である。
長い間の作戦行動中の行方不明という状況と彼女が最後に手にしていた得物の大剣が発見されたことで完全ではないが彼女の戦死したということが確定され、聖フレイア学園の中央教会にて葬式が行われることになった。
葬式を終えた後、ソーマは静かに学園外に広がる荒野の野原の長椅子に腰がけて空を眺めていた。
葬式のこともあって感傷に浸っていると誰かから声をかけてきた。
「こんなところにいたの、ソーマ」
「ん?...ああ、キアナか。どうした?」
「どうしたも何もアンタの姿が見当たらないから探し回ってたの。...よいしょっと」
疲れが溜まっていたのかキアナはそのままソーマの座っている長椅子の隣にドカッと腰がけてグッタリとする。
「ハァ〜...疲れた。さすがにもうクタクタ」
「はは、まぁ葬式なんて結構長い時間その場で待機する状況が多いから身体が鈍ってしんどくなるのも無理ないな」
「それもそうだけど私達、長い事色々な騒動に巻き込まれちゃってからこうして落ち着いている暇なんてなかったんだし、体よりも精神の方が疲れちゃった」
そういう彼女は本当に疲れ切った様に体を椅子の背もたれに預けており、今までの騒動や戦いで少しは荷が降りたのか何処となくやり切ったような表情をしていた。
ただ、しばらくくつろぐとキアナはソーマに聞きたがっていたことを伝えるように静かに紡ぐ。
「...ねぇ、ソーマはさ、この戦いから逃げ出したかったりするような気持ちはなかったの?」
「うん?いきなりどうした?そんなことを聞いて」
「別にイヤなら答えなくていいの」
「別にイヤなんて言ってないだろ?ちゃんと答えるさ」
ソーマはまるで何かを考え込むように遠くを見つめた後、自身の本心をキアナに話す。
「...正直、俺は今までの戦いで逃げたいっていう感情を抱いたというより、今いる居場所を失いたくないっていう感情の方が強かった...」
「失いたくない...?」
「ああ、たしかに怖かったり、逃げ出したいって気持ちもあったけど、俺にとっては自分が今まで過ごしていた場所や日常、仲間達を失ってしまうのがとてつもなく怖かった...」
「...」
「そもそも俺は別に崩壊を倒して世界平和に貢献するとかいうような正義感あふれる考えなんてなかった。ただ、自分の周りの大事な人達が自分の生きる世界が死んでしまうことが嫌だったから崩壊戦士になることを選んだ。それともうひとつはキアナが戦乙女になる道を選んだからついて行ったってのもある。俺にとってはキアナも自分が生きる日常にとって欠かせない大事な存在だから...だな」
「...そっか」
キアナはソーマの本心を聞いた後、ソーマに体を近づけるとそのまま座っていたソーマの太腿の上に頭を預けて横になる。いわゆる膝枕である。
「うおっと⁈...ハァ...キアナ、さすがに何も言わずに寝転んできたらびっくりするぞ?一言くらいってくれても...」
ソーマが注意するも、キアナは何も言わずに静かに目を瞑りながらソーマの膝枕で横になっていた。彼女の行動に訝しむも、此方も静かに眺めていると周りから静かな穏やかなそよ風が吹くだけの中で直接身体が触れている膝枕元から彼女の心臓の鼓動が静かドクンドクンと一定のリズムで波打つように聴こえてくる。
「...ねぇ、聴こえてくるでしょ?私の心臓の鼓動...」
「ああ...しっかりと膝元からでも感じるよ」
「...支配劇場のときの戦いはまだ覚えてる?」
「忘れる訳ないだろう?つい最近までの出来事だったし...」
「...私ね、ソーマが支配劇場に連れ去られて行方が分からなくなった事を博士達から聞いたときどうしようもなく不安になったの。芽衣先輩だけじゃなく、ソーマも私の前からいなくなっちゃうんじゃないかって...前に見た悪夢のときみたいなことが現実になるんじゃないかって...」
「おいおい...心配してくれているのはすごく嬉しいけどあの時は俺だけじゃなくゼーレも一緒にいたんだから流石にあの子のことも気にかけてやりなよ。新しくできた友達なんだろう?」
「それはそうだけど...私にとっては付き合いの長いソーマのほうが一番大事なの」
「そ、そうか...」
ここまではっきりと自分の事が大事だとキアナから言われたことに感情が追いつかず、むず痒い嬉しいような恥ずかしいような落ち着かないけど悪くない感情を抱きながら彼女の話に耳を傾ける。
「...ソーマが攫われた後、私は博士達と作戦を立てて私を囮に支配の律者を誘き出す方法を取ったの。実際にその方法が成功して私自身は支配劇場に誘き出されたけどこれで自分からソーマを探し出すことが出来ると思って片っ端から探し回った。まぁ、道中で成り行きで私の中にいるシーリンと戦うことになったけど」
「大丈夫...だったのか?」
「うん大丈夫、私は迷わなかったから彼女に打ち勝つ事ができた。シーリンも私の事を認めて力を明け渡したの...でも、私にとってはそんなことよりももっと無視できないことがあるの...」
キアナの顔が少し強張ったように悲しげな顔をし、ソーマの膝元を手で掴んで離さないように握りしめていた。まるで何か大事なものを無くしたくないかのような危機迫ったような様子を見せていた。
「私...私ね...あなたが聖白って子に心臓を刺し貫かれて倒れてしまったあなたを見たとき...私の生きる世界が死んだように心から悲鳴を上げたの。...姫子が本当に死んでしまった時もとても辛かったし苦しかったけど、それ以上に...ソーマがその場で命を落としてしまう瞬間を見たときの絶望の方がはるかに耐えられなかった...!」
「キアナ...」
気がつくと自身が経験したことを話すキアナの目元からは涙が流れ出ていた。
「必死に彼女からあなたを近づけさせないようにあなたに触れたとき、ソーマから感じる心臓の鼓動があまりにも弱々しかった...心臓あたりから血が溢れ出して止まらなくなってしまったとき私の理性が嫌でも理解してしまったの...もう手遅れだ...って。...受け入れたくなかった、いつも一緒にいてくれてるあなたが、よく芽衣先輩と世話を焼いているあなたが、私のことを一番理解してくれているあなたが二度と会えなくなることがたまらなく地獄だった...」
キアナからの本心を聞いたソーマは静かに想像した。...もし、自分が彼女と似た立場だったら...自分の目の前でキアナが命を落としてしまう光景を目にしてしまったとき、果たしてまともでいられるだろうか...。悲しみと絶望に打ちのめされた自分がキアナを手にかけた相手を復讐心で殺すか、それとも彼女を失ったことで自身も後を追うのか...。はっきりとは断定出来ないが自分がその立場ならあるいは...
しかし、今このようにしてソーマ自身は生きている。間違いなくキアナの力で奇跡が起き、あの絶望的な状況を回避したのだ。ならやるべきことはひとつである。
「キアナ...本当に心配をかけたな。お前をここまで悲しませた俺は本当にどうしようもない無責任なヤツだよ」
「別に...ソーマは悪くないよ...でも本当に悲しかった...苦しかったよ。...ねぇ...あたま、撫でて」
「ああ、お前の辛さが和らぐならお安い御用だ」
キアナからの要望を受けて膝元で横になっている彼女の白く美しい白髪の頭を
優しく撫でる。まるで大事なものを扱うように優しく触りながら彼女を慰める。
ソーマに撫でられたことで安心したのか先程まで昂ってた感情が収まり、彼女から感じる心臓の鼓動も落ち着いたような音を立てていた。
第三者から見れば彼らの姿はどう見ても恋人がするそれだが、二人からすれば初めて出会ったときから今まで幾度もなく共に過ごし、危険事や苦楽をも共にした間には幼馴染や恋人などいう言葉では片付かないほどの特別なものになっていた。
(...ソーマからの温もりを感じる...芽衣先輩のときとはまた違う特別な感じ。...絶対にソーマを失いたくない...もう...誰にも彼を奪わせはしない。...私の...ソーマ...を)
少し危ない思考をし始めたキアナを他所にソーマはキアナに気になっていたことを話す。
「なぁ...キアナ、俺もお前の戦う理由を聞いてみたい。お前はよく昔から困った人に差し伸べたり、わざわざ手を貸したりしてたな。...戦乙女になってからはより顕著になってきて危険を顧みずに戦うようになってきたな。お前のお人好しさは芽衣を救ったときから相変わらずわかっていたが、やっぱりどうしても気になるんだ...。教えて欲しい、なぜキアナはそこまで人のために戦えるんだ?」
自身の本心を伝えたあと、ソーマは改めてキアナの戦う理由を知りたかった。いくら幼馴染だからといってテレパシーのように完全に心のうちを理解し切れるわけではないのだからこそ、知りたかった。彼女はこの世界に対してどのような想いを抱いてるのかを。
キアナは横向きになっていた身体を仰向きにし、ソーマに真っ直ぐと目線を合わす。泣き止んだその目は覚悟を決めてるも、優しく見届けるような慈愛に満ちた柔らかな目付きだった。
「私が戦う理由は...それは私がこの世界を愛してるから。...共に戦ってきたみんなが選んだ選択が間違ってないことをみんなに知って欲しいから、何よりもみんなが愛する全てを愛してるから。ソーマだってそんな私を肯定して肩を並べて戦ってくれてるでしょ?だから私は愛するみんながいるこの世界を守る為に戦うの」
「...はは、そうか。...全くすごいヤツだよお前は。みんなの想いを育んでまで戦おうとすることが出来るんだから。正に...英雄かヒーローだな」
「そんなことないよ。私がそれをやりたいからやっただけでそこまで崇高な考えを抱いている訳じゃない。...私達の愛するものを守る為に、私は戦い続ける。...でも私ひとりだけじゃいつかは倒れてしまう...だから」
「言わなくても分かってる。お前が戦い続けるかぎり、俺もお前のことを守り続けるさ。...勿論今はここに居ない芽衣も裏側で俺たちの事を守ってくれてるはずだ」
「...実は芽衣先輩には支配劇場に迷い込んだ時にもう出会ったんだ」
「え?芽衣も支配劇場で戦っていたのか?」
まさか自分の預かり知らぬ所でキアナが芽衣に出会っていたことに驚く。しかし、それと同時に納得もする。彼女の所属するヨルムンガントが今回の支配劇場の件を見逃すはずがない。
「まさかキアナが芽衣と出会っていたとはな。もしタイミングが良かったら俺も芽衣に出会えていたか...ハァ、運が悪いな」
「芽衣先輩とは色々とお互いに自分達の経験したことを話し合っていたよ。ただ芽衣先輩ったらソーマのことをすごく気にしてたよ。やれ、ちゃんと食べてるかとか、傷はもう大丈夫なのかとかね」
「やれやれ、芽衣のヤツいったいいつから俺の母親になったんだか...」
「ふふ、安心して。ちゃんとソーマは元気にしてるって伝えたから。ただ出来れば直接会いたかったって不満を漏らしてたけどね」
「なら絶対に会わないとな。...果たしていつ彼女に会えるんだろうな」
「会えると思うよ...そう遠くないうちに。何故かそう思えちゃうの」
「何だそりゃ。未来予知ってやつか?」
「ふふ、そうかもね♪」
ソーマが改めて周りを見渡すと黄金色に輝く草原が広がっていた。教会の外の一部では広い草原の庭があり、秋を迎えて肌寒くなってきた影響か小麦畑のように黄金色に染まっている。そこから先には自分達が住み慣れた都市の街並みが見え、まだまだ元気に活気ついていた。
自分達が必死に戦い守り続けた世界はまだ生きていた。崩壊による理不尽な破壊と壊滅を受けてもなお今を生きる人々は決して諦めてはいなかった。
彼自身、見知らぬ人々を守りたいというようなヒーロー的な願望を抱いているわけではないが今回の戦いで結果的に被害を受けるはずだった人々の人命を救ったことに対して誰かを守る戦いも決して悪くはないなと思いを抱いた。
物思いに耽っていると、ソーマに膝枕されていたキアナが起き上がりソーマの隣に座ったまま、何かを決したように彼女は言葉を発しようとした。
「そ、その、私、ソーマにもうひとつ伝えないといけない事があるの」
「ど、どうした急に?まだ何かあるのか?」
「そんなに難しい話じゃないの。...ただ私のソーマに対する思いをつ、伝えたくて...」
「あ、ああ分かった。ぜひ教えてくれ」
キアナが目をつぶって深呼吸したあと、真剣な顔で顔を赤らめながらソーマに向かい合って本心を伝える。
「私、その膝枕してもらって今さらこんな事言うのもおかしいけど...私、ソーマのことが...す」
キアナが言い終える前に強めの風がなびいてくる。風に揺らされた彼女のポニーテールの美しい白髪が揺れ動くが理不尽に彼女の言葉を掻き消してしまう。
「ぐっ、いきなりの突風だな...ごめん聞き取れなかった今なんて?」
「あっいや、その...や、やっぱり何でもないや。あ、あはは...」
「えぇ、何だそりゃ勿体ぶっちゃって」
「ほ、本当に何でもないの!ハイこの話はおしまい!」
「はぁ、何だったんだ全く...」
キアナからのはっきりしない返答に困惑してると、よそから第三者の声が聞こえてきた。
「あの...お話は終わりましたか?」
第三者からの声に驚いたキアナとソーマがそちらに振り向くとそこにはしばらくの間、待たされていたのか不満げな顔をしたブローニャの姿があった。
「ブ、ブローニャちゃん?い、いつの間に...いつからいたの?」
「キアナがソーマ兄さんに膝枕をしてもらっていた所からです」
「かなり最初からじゃん!」
「な、なんか悪いなそんな長いこと待たされて」
「全くです。兄さんに膝枕してもらうとかなんてうらやま...けしからんとしかいいようがありません。と言う事でブローニャも兄さんに膝枕してもらうことを所望します」
「ちょ、ちょっとブローニャちゃん何しれっとソーマに要望を出してるの⁈」
「まぁまぁ落ち着きなって...あれ?そういえばブローニャは何のようで俺たちに会いにきたんだ?なんか用事でもあった?」
「あ、そうでした。式を終えたので片付けと撤収作業の手伝いをお願いしたいって学園長から伝言がありました。サボってないで早く帰ってこいともいっています」
そういえば式を終えて休憩に入ったっきり途中から来たキアナと長い事話し込んでいて時間が過ぎていたのをすっかり忘れていたことを思い出す。
「不味いな、さっさと帰らないとテレサにしばかれる。 キアナ、ブローニャすぐに戻るぞ。モタモタしてたら今晩の夕飯にテレサ特製のゴーヤジュースとゴーヤ料理を提供されてしまう!」
「うわぁ...私、食べるのは好きだけどテレサのゴーヤジュースだけは無理なんだよね」
「ブローニャ、長い事兄さん達の長話に待たされてクタクタなので兄さんに運んでもらうのを所望します」
「はいはい分かったよ。それにしても今日はやけに要望を出してくるな。...もしかしてキアナに嫉妬した?」
「...何でもないです。さぁ早く、可愛い妹分からの要望を聞き入れてください兄さん」
「自分で言うんかい。はいはいそれじゃあ運びますよ、お嬢様」
「うむ、苦しゅうない、です」
「むう...なーんかブローニャちゃんだけずるいんだけど?」
ソーマはブローニャを姫様抱っこしながらキアナと共にテレサのいる教会の片付け作業に向かうことになった。
聖フレイア学園の郊外にて丘の上で眺めていた二人組の姿が見えていた。その姿はソーマ達なら見間違うことのないよく見知った人物がひとりいた。
「師とのお別れは済んだか?」
「えぇ、終わったわ」
「...せめてあの子らにもこっそり会ってあげても良かったんじゃないか?ソーマっていう奴はお前に会いたがっていたみたいだぞ?」
芽衣のそばにいるナターシャは彼女にそう伝えるが芽衣はそれを否定する。
「いえ、大丈夫よ、キアナちゃんから無事を確認したから。...それにまだやるべきことが終わるまではまだ...」
「ハァ...仕事熱心なのはいいことだが、会えるうちに会っとかないと後で後悔することになるかもしれないぞ。これは先人からのアドバイスだ。助言は素直に受け取っておくものだそ?」
「大丈夫よ。...それに今はまだ会えなくても、近いうちにすぐ会えるって何故か確信できるの」
「何だそれ。未来予知でもしてるのかい?アンタらしくないな」
何故か近いうちに会えると謎の予言発言じみたことをいう自身の相方にナターシャは呆れるが、まぁ、彼女なりの考えがあるのだろうと深く追求はしなかった。
「...大丈夫、絶対にいずれ、近いうちに会いに行くからキアナちゃんと待っててソーマ君...」
フレイア学園の様子をしばらく眺めた後、芽衣とナターシャはその場を後にした。
複数のデータ画面に溢れた観測室にて天命組織の大主教であるオットー・アポカリプスはとあるデータ画面を眺めていた。そこにはつい最近まで存在し、ネゲントロピーやハイペリオンの者達によって打ち取られたはずの支配の律者が管理する支配劇場が映っていた。
「ふむ、ここまで来たか。...ありがとう、みんなお陰でこれからそう遠くない未来に天命は崩壊と対抗してきた人類の歴史に、決定的な一歩を踏み出せるだろう」
オットーが見渡す周りには何人かの研究員がいた。そして彼はある計画の為に最終段階へと工程を移行させる。
「僕はこの計画と共に主教の座を降りることになる。その僕自身が座を降りる間にあるS級戦乙女に代行し、計画を実行してもらう」
一通り説明と指示を終えたオットーは計画の為にその場を後にし、天命組織で会場にて大きな集会と式を準備させる。これからすることは世界を大きく揺るがす大きな騒動と歴史の転換である。大々的に宣伝する必要があるのだ。
「遂に、この時が来た。本当に長かったよ...実に五百年以上に及ぶ成果が実る。そして僕はその代価を精算する時が来た。...テレサの所にいる僕の養い子、ソーマにも挨拶をしないとね。彼にも大変な思いをさせた分幸せになってもらわないと」
オットーは過去の思い出を思い返す。偶発的とはいえ、ビアンカと共に育てたソーマとの日々の暮らし、彼にとっては短い間であっても悪くない充実した日々だった。
しかし、オットーの長年の悲願の為にはソーマという律者の力を宿す少年を手元に置くにはリスクが高すぎる。だからこそ意図的にそれなり自立してきたテレサの元へ送り、彼女に彼の面倒を任せ、計画中にK423を連れ去って脱走したジークフリートの元に成り行きでソーマを接触させ、K423からキアナという名を授かった彼女に人間性と自身にとっての大事な存在を認識させるように仕込んでいた。それもソーマ自身に己の存在を知られないように
「さぁ...ソーマ、僕達との...最後の親子の対面だ...」
そう呟く彼の顔は覚悟を決めているのにも関わらず、まるで成長した我が息子にウキウキで対面する父親のような華やかな表情が含まれていた。
支配劇場編が終わり、ついにオットーとの対面が始まります。実は意外とソーマはオットーとはほとんど対面したことがない為、彼にとってはほとんど赤の他人に等しかったりします。テレサのひいお爺様であると言うことをテレサから聞いているだけでほとんど知りません。まぁオットーによって記憶操作されちゃっているので思い出せってのも無理な話なんですが。