飛ぶ理由を探した者   作:Jr.404

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 大分遅くなりましたがひさびさに投稿します。


十九話「愚者の黄昏」

 それは唐突に始まり、世間を大いにざわつかせた。かつて永らく続く崩壊との戦いによって設立された対抗組織である天命にて、遥か昔から五百年にも及ぶ天命組織の統治と支配を私利私欲化していたはずの元大主教当主であるオットー・アポカリプスがこの日を持って突然当主の座を降りると宣言したのだ。

 

 

ー以上、このオットー・アポカリプスは本日をもって天命主教の座を退き、組織を抜けることを宣言する!ー

 

 

 天命本部は騒然となった。当主であったオットー本人は自身が抜ける代わりの間に代わりの臨時代行者であるS級戦乙女のひとりを手配するように残していたが当然事情を知らない者と一部の事情を把握している者で別れており、肝心の事情を知る者は情報統制の為かいつのまにか失踪をしてしまっており、残念ながら真相を完全に把握出来ていない者で溢れかえり、天命では現場の混乱と情報の迷走が起きていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何なのよ...コレは!」

 

 テレサがまるで信じられないものを見たような驚愕した声を放つ。明らかにただ事じゃない様子のテレサの姿を見たソーマは彼女の書類作業の手伝いを他所に心配して声をかけた。

 

「どうしたも何も...お祖父様がとんでもない事をしでかしたのよ⁈見てこれ!」

 

 テレサから見せられた液晶画面端末からはニュース番組にて現天命組織の当主であるオットー・アポカリプスが本日をもってトップの座を降りるというとんでもない話が話題になっていた。

 

「えっ...こ、これってかなり大事なんじゃ」

 

「当たり前じゃない。五百年もの間天命の大主教を務めてたお祖父様がいきなりトップを降りるなんてとんでもない事よ!」

 

 テレサがそのニュースでの話であたふたしているのを他所にソーマはオットーという人物を改めて思い返していた。

 実際の所、ソーマはほとんどオットーとの面識なんてないに等しい。...いや、性格には今ある彼の記憶上では彼とは出会った事がない(・・・・・・・・)

 しかし昔に見た聖フレイア学園内にある教会の地下室にて体験した擬似空間で確認した自身の過去では、間違いなくソーマは自身がソーマ・アストラという名をもらう前の自分とオットーが対面し、彼によって救助されていたことを間違いなく目にしていた。

 つまり、自身は過去にそれなりにオットーと認識があったはずなのだ。しかし、自分には当時の記憶がない。まるでそこだけ思い出せないように暗示がかけられたかのようにその記憶だけが欠けていた。

 なので彼はこう考えた、今回の件での出来事はある意味自身の過去とオットーの関係を知る機会が訪れたのでは?と考えた。

 テレサが彼自身、大主教の座を降りる事自体が有り得ない事態であるという事を加味してもおそらく何か大きなことをなそうとしているのではないかと思える。おそらく自分自身も無関係ではいられない事が始まるだろう。

 ソーマが考えに浸っていると先程まで騒がしくしていたテレサが静かになっており、携帯端末を片手にコチラに向いてきた。

 

「ソーマ...私の元にお祖父様からメッセージが届いたわ...。それに加えてアンタ宛て個人にも...」

 

「え...?俺宛てに?なぜ...」

 

 ほぼ全く接点の無かったはずの人物からの個人宛てのメールに驚きと不安を抱きながらもオットーからの新着メッセージを開く。

 

「コレは...⁈」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 聖フレイア学園から出発し、ヨーロッパ方面に位置する天命本部に向けて巡航飛行中のハイペリオン号の艦内にて、学園から集めてきた勢揃いの戦乙女や崩壊戦士達が集まっていた。

 そこにいる者達はかつて一年前に起きた天命空港での騒動事件での参加していた者がふたたび集まっていた。ネゲントロピー側からの参加者としてテスラ博士やアインシュタイン博士に加え、新たにネゲントロピーの盟主であったヴェルト・ヨウも参加しており、前以上の豪華なメンツの集まりとなっていた。

 その中でハイペリオン内の艦橋ブリーフィングルームではテレサやキアナ達一同が集まって作戦会議を開いていた。

 

「みんな、天命からの声明の話をニュース等で確認したかしら?今現在、天命は現トップ大主教であるオットー・アポカリプスが座を降りたことにより組織は混乱状態に陥っているわ。天命本部の協力者からも情報を確認したけれども厳重な情報規制がかかっているのか残念ながらお祖父様の行方が全く掴めてないわ」

 

 天命組織のトップであるオットー・アポカリプスが座を降り、そして組織の混乱の中本人の安否も確認出来てないという話に周り一同はざわはづき始めるがテレサは話を続ける。

 

「...続けるわよ。今回の件とは別に私達から宛てにお祖父様からメッセージが届いたわ。内容は、お祖父様がこれから行う計画内容とその場所についてよ」

 

 テレサから話された計画の内容はとんでもない荒唐無稽なものであった。彼が企んでいる目的は簡単にいえば今現在まで生きる時代の時間を物理的に概念的に巻き戻すという無茶苦茶なものだ。その手段として虚数の樹と呼ばれる空間に介入して直接的に概念に干渉する事で人類史を五百年以上も昔に巻き戻すというものらしく、実際にソーマも少し前まで支配劇場での戦いで聖白の律者であるヘレナからそれらに似たような話を聞いた事があるのを思い出す。

 律者であるヘレナしか知らなかった事を人間であるはずのオットーがそのことを知っているのだ。はっきり言ってまずい話である。しかも彼はその居場所としてかつて旧天命本部が存在してた所であるカロスタンの地にて既に準備を整えてるというのだ。

 あとは彼が出した招待状で自分達が此方へ来るのを待っているという状態であり、自分達は今まさにそのカロスタンの地へ向かっている最中なのである。

 

「前々から何かを企んでいたのは予想できましたが、ついに本性を表しましたね...」

 

「なぁフカ、以前までオットーの元で行動してたときにそういった計画を匂わせる話は無かったか?」

 

「...全てを把握できているわけではないのですが、彼は...かつての最強の戦乙女のひとりであったカレン・カスラナのいる時代まで巻き戻すことが目的だとも言っていました」

 

「カレン・カスラナってたしかキアナやジークおじさんの御先祖様に当たる人じゃ無かったか?なぜ彼女を...」

 

「...それは...分かりません。その目的事態は最後まで話してはくれませんでした。ただ...彼は彼女に対して唯ならぬ感情を抱いているの確かだ」

 

 その後もお互いに作戦内容の情報のやり取りを伝える中、先程オットーがカレン・カスラナに対してかなりの執着を抱いているという話を理解したソーマはそれとは別に自身に送られたオットーからの個人からのメッセージを思い返し、この場にいる全員に伝える。

 

「そのさ...皆んなに伝えたいことがあるんだ。...実はテレサの話とは別に俺宛てにオットー本人から直接招待メールを送られてきたんだ...」

 

「え?ソーマに直接メールを?な、なんで...まさかアイツ、私だけじゃなくソーマの事まで狙って...!」

 

 ただでさえ怪しいうえに大きな騒動を起こそうとしているオットーに対して自分達が今まで彼の陰謀に巻き込まれ、沢山の悲劇を遭わされたことのあるキアナは今度は彼のことも狙っているのかと憤るが、ソーマに慌てて止められる。

 

「あ、いや待ってくれ!実はそのオットーって言う人が俺の...昔の俺の育て親かもしれないんだ」

 

「そ、育ての親⁈で、でもソーマの育て親ってテレサのはずじゃ...」

 

「それは俺が記憶を無くした後の話だ...キアナに出会うよりも前の...かつて研究施設にて過ごしていた俺をそこから連れ出した張本人がオットーなんだ...」

 

「...兄さん...ブローニャ達にソーマ兄さんの過去を話してくれませんか?」

 

 ブローニャからの要望に頷き、ソーマは自身の過去の出来事を断片的ではあるが話せる範囲で伝える。

 

「俺の過去を話すにはまず俺がいた場所について話そう...」

 

 彼から語られた過去話の内容はとても悲惨なものだった。崩壊災害によって孤児になった彼は孤児院という名の適合体確保場にて預けられ、その後は研究施設へと送られる。研究施設にいた頃から体を弄られ、周りの同年代の子供達は実験で次々と死に絶え、まともな教育もされない、まさに彼ら彼女らを一種の生体部品のように扱われず人としての尊厳もないと言った有様であった。そんな絶望的な中で当時のソーマはオットーによって結果的に救い出される事になったのだ。

 これらの話だけを聞けばオットー・アポカリプスはそんな危機的状況から救い出した救世主にも見えてくる。

 しかし、オットーはソーマを救い出した後、しばらくして何を考えたのかソーマに記憶処理を施し、彼の身柄をテレサに預けたのだ。以前、擬似空間でその過去の事実のぞいていなければ一ミリたりともオットーの存在にたどり着けなかった可能性は高い。

 しかし今回送ってきたオットーからのソーマ宛てメールの内容にはまるであたかも久しぶりに自分の我が子に会うような親しみを込めたような内容で語られており、ぜひ君の成長した姿をみたいと招待を招いていた。

 

「ひ、酷い...。ソーマお兄ちゃんにそんな辛い過去があったなんて...」

 

 元々、共感性が高いのか、ソーマの過去話を聞いたゼーレは泣きそうな顔で悲しむ。同じく聞いていたフカは何を言わずとも、顰めた顔で彼の話を聞き続けていた。オットーの元で勤めていた過去があった彼女にとってはなんとも複雑な感情を抱いてしまう話である。

 

「だとしたら尚更分かりません。なぜ彼は兄さんに記憶処理をしてまで自身のことを悟られないようにしたのにも関わらずわざわざ兄さん宛てにメッセージを送ったのでしょう?」

 

「今更になってお祖父様はソーマの顔を観たくなったなんて、なんだかまるで今世が最後のお別れって感じみたいで不気味ね。...けどソーマ、これでアンタがお祖父様に会わなければいけない理由が出来てしまったわね。アンタの封じられた記憶を取り戻す為にも...」

 

「それは...そうなんだけど」

 

 ソーマが横を振り向くと不満げな顔で納得してないキアナがいた。

 

「私は...私はソーマをオットーに合わせるのは反対だよ。たしかに昔ソーマの事を助けてくれたのかもしれない...けどアイツは今まで沢山の人々を不幸にしてきた。記憶処理されているのだってもしかするとソーマに対して体を弄ったり実験したりしたことを隠す為に隠蔽した可能性だって否定できない...ソーマが記憶を取り戻した時がどうなるかわからない。...怖いの。ソーマが...ソーマで無くなりそうで」

 

「キアナ...」

 

 自分にとって大事な人を失いたくないという感情が溢れ出て行動に現れたのか無意識のうちに隣にいたソーマの手を掴んでいた。

 キアナの言うことも一理ある。いくら万が一にもオットー・アポカリプスが本当はそんなに悪い人ではなかったとしても彼の過去の企みや陰謀による出来事で多くの人々を不幸にしてきた。そして今なお自身の目的の為にとんでもない計画を実行してきたのだ。これで彼を疑うななどと到底無理な話である。

 だからこそソーマは自身の記憶を取り戻す為、オットーの計画を止める為にキアナにお願いをする。

 

「...なら、キアナ。...お前がいざという時に俺を守ってほしい。俺はどの道、自分の記憶を取り戻す事になると思う。いや...自分の記憶を取り戻さないといけない。俺という存在を知る為にも...だからキアナ、俺を守ってほしいんだ。その分、俺もお前の背中を守ろう」

 

「ソーマ...まだ納得はしてないけど...うん、分かった。...でも約束して、絶対に無茶はしないって」

 

「ああ、約束する。それにキアナのことを信頼してるから」

 

「なら決まったわね。それじゃあキアナ、ソーマの事はしっかりとお願いね...支配劇場のときみたいな事にならないでよ。...アンタが死にかけたときは本当気が気じゃ無かったわよ、全く...」

 

「ごめん、心配かけたテレサ」

 

「反省してるならこれ以上言う事はないわ。...これにて会議を終えるけど、最後に一つ皆んなに伝える事があるわ。今回のカロスタンの地への突入作戦にて大多数の敵とぶつかり合いになるから新たに戦乙女をひとり追加で増員したわ。...それじゃあ入ってきてちょうだい!」

 

「え?追加の戦乙女?いったい誰が...」

 

「ふふん、アンタ達が昔知り合って命を救われたひとりね。絶対に知ってるはずの子よ?」

 

 追加の増員である戦乙女が知人であるということを聞き、果たして誰なのかと思い起こしていたらブリーフィングルームの自動ドアが開き、テレサに呼ばれてきた戦乙女が入室してくた。

 

「あ、あの〜、し、失礼します!」

 

 初めて見慣れない部屋に入った所為なのか緊張した感じの慣れないオドオドした口調をしながら声の主の姿が現れる。

 その姿を見た途端、その場にいたテレサやゼーレ、フカ等の一部の人を除いて全員が目を丸くして驚いた顔をする。そこにいるのは間違いなく顔を合わせた事のある...当時の自分達が苦労して助けた例の風の律者の少女であった。

 

「「「う、ウェンディ⁉️」」」

 

「あ、アレ?キアナにブローニャお姉ちゃん!あ、ソーマお兄ちゃんも‼︎」

 

 以前出会ったときはデザイアジェムを埋め込まれた事でかなり弱っており、目の生気もなかったが今の彼女は血行が良くなり、目には光が宿っており、服装もかなり変わっていた。そしてなによりも車椅子で過ごしていた彼女が元気に自分の足で立って歩いていたのだ。

 

「う、ウェンディだったのか⁈追加の戦乙女っていうのは」

 

「会いたかったよ!ソーマお兄ちゃん!」

 

 彼に久しぶりに会えたことに感情が昂ったのかそのままソーマに抱きつき、ハグしてくる。予備動作なしのいきなりの飛び込みに驚きながらもウェンディを受け止める。

 

「うおっとっと!...あ、ああ、俺も会えて嬉しいよウェンディ。...ただそれにしても...君ってこんなに積極的な感じだったっけ?」

 

 以前は弱っていたとはいえ、あのウェンディが今はソーマと目があった瞬間に躊躇いなく飛び込んできたのだ。ものすごい変わりようである。

 

「あ、ご、ごめんなさい!ち、ちょっと感情が昂ってしまって...え、えへへ」

 

「ウェンディ、また会えて本当によかったです。まさか戦乙女に復帰するなんて」

 

「ブローニャお姉ちゃんも!私また会えて嬉しいよ!」

 

 ブローニャともお互いに両手をつなぎ合って喜び合う。その光景はとても微笑ましく、自分自身が命懸けで助けた子がこのような形で再び巡り合うとはと感深い気持ちに浸っていると、キアナに声をかけられる。

 

「なんかウェンディちゃんが元気になってて戦乙女に戻って来れた事は私も嬉しく感じるけど...なんか、ソーマとの距離、近すぎない?」

 

「うーん、気のせいじゃない?久々の再会に気が昂ってたって言ってたし...」

 

「むぅ...だと良いんだけど」

 

 ソーマとウェンディとの再会のスキンシップにキアナが不貞腐れたように少し不満を漏らしているのを他所にウェンディに声をかけられる。

 

「ねぇねぇ!ブローニャお姉ちゃんやソーマお兄ちゃん達ともっとお話ししたいの!」

 

「ははは、そうか。ならまだ時間もあるし、皆んなで親睦を深め合うか。構わないかテレサ?」

 

「そうね、これから連携も必要になってくるから親睦は必要ね。構わないわ。ただし、目的地に着くまでには準備も怠らないように!」

 

「「「了解!」」」

 

 天命主教のオットーとの対面に乗り出す戦いが控えていたが、真剣な状況とは別に彼らの雰囲気ムードは悪くは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カロスタンの地にある旧天命本部の地にて空高くそびえ立つ巨大な建造物がいくつもそびえ立ち、その光景はまさに神の神殿の総本山とも思わせる威圧感を放っていた。

 

巨大な天命本部の神殿内でオットーは静かに玉座に居座り片手にワインの入ったグラスをゆらしながらわざとらしくこの地の支配者のような風格を見せびらかしていた。その隣には天命最強のS級戦乙女であるビアンカ・デュランダル・アタジナが彼の右腕のように規律正しく立っていた。

 

「ふむ、そろそろテレサ達が来る予定みたいだね」

 

 オットーがそう呟くと遅れて通信から報告が届く。カロスタンの地にて十二時方向にて正体不明の飛行船が接近中との通信と共に夕焼けの空の太陽の中心を遮るように何かの飛行体がこの地へと向かってきていた。その姿は間違いなくテレサ達の乗船するハイペリオン号そのものであった。

 

「フフフ、ちゃんと招待状の通り来てくれてお祖父様は嬉しいよテレサ。もし無視されたらどうしようかと思ったが杞憂のようだ」

 

「流石にこれだけの大騒動に加え計画の内容を伝えたのですから来ないことはないはずでは?」

 

「ただのジョークだよ。なにしろこの計画が僕にとって長年の悲願が叶う瞬間だからね気が高まってしまうのさ。もう何が起きても楽しみでしょうがないんだ」

 

 いつもより随分と威勢と機嫌のいい彼に少し呆れと困惑を感じるが、それとは別にビアンカはオットーに一番聞きたかった事を確認する。

 

「オットー、やはり...彼は...ソーマはここへ来るのでしょうか?」

 

「ああ...勿論来るとも。テレサの元にいるk423と共に手を組んでやってくるさ。勿論、彼が来たときは長年の記憶封印の制約を解除するつもりだ。そこで君の生き別れた義弟との再会を楽しんでくれ...君にも彼とは赤の他人として過ごす役回りをやらせたのを本当に申し訳ないと思っているよ」

 

「そうですか。それならば構いません」

 

 ビアンカは少しだけ過去を思い出す。まだ自身が幼く、オットーとリタ、そして今現在ハイペリオン号にいるソーマの四人が共に暮らしていた頃を思い出す。日々の鍛錬に加え、未知の世界での冒険、義弟であるソーマとのケンカや鍛錬のしのぎ合いや遊びをしていたりと懐かしい思い出を思い返す。我ながら大部分が鍛錬などの修行だらけでちょっと脳筋過ぎたなと思い、彼に脳筋姉さんと呼ばれるの無理はないと思った。

 しかし、唐突なオットーからの計画の為に義弟を...ソーマを自分達の元から引き離さないといけないという話を聞いた時はとてもショックを受けた。

 ビアンカ自身を助け、育ててくれたオットーに大きな恩を感じてるとはいえ、オットーの目的の為にソーマを引き離し、記憶処理を施して赤の他人として生活させる...必要なこととはいえ、今の彼はビアンカ達との思い出も記憶もない状態である。立場的にはソーマとは出会うことはほとんどないがそれでも久しぶりに顔を合わせた彼に貴方は誰と言われたら泣いてしまう自信がある。

 けどオットーの計画も終盤に差し抱え、ようやくソーマの記憶封印が解除するという話を聞いて安心感のあまり隣にいたオットーに感情を見抜かれてしまう。

 

「フフフ、すごく嬉しそうだね。...まぁ、君には申し訳ないことをしたと思っている。計画のために必要とはいえ、君達との関係性を引き裂いたんだ。これくらいの対応をして当然だと思ってるそれに...」

 

 オットーは少し顔に影を差して手にしたワインを眺めながら静かに呟く。

 

「彼は...僕の愛するカレンと同じ志の精神を持つ数少ない存在だ。そんな彼を...僕の計画の為に犠牲にするわけにはいかない」

 

 計画の時間が迫ったのかオットーは通信端末で状況を確認するとビアンカに向けて指示を告げる。

 

「そろそろ時間だ。リタにも指示を出してあるが、君にもこれから突撃してくるテレサ達を迎え撃つ為にも指定するエリアの守備をお願いしたい。間違いなく彼らはここを通る以上迎撃が必要だ。頼んだよ」

 

「はい、お任せを...」

 

 ビアンカが作戦場所へ移動したのを見届けた後、オットーは自身の計画を実行する為に場所を移動する。

 そこはかつての旧天命本部の大きな教会型の建造物の屋敷内であり、昔ながらの置物や大きな十字架の建造物が建てられていた。まるでかつて儀式のために建てられたような場の内装と言った光景である。

 

「これで誰も邪魔するものはいない...情報封鎖後はさっそく自分の用事を始めようか。...さぁ古き友よ約束を果たしてもらうぞ」

 

 オットーは目に見えない何かに問いかけるようにいい聞かせるように語りながら黄金のキューブ状のアイテムを取り出す。

 それは無機物でありながら生き物のように自分から光続け、浮遊していた。

 

「さぁ、それじゃあ始めようか"虚空万象"」

 

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