飛ぶ理由を探した者   作:Jr.404

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 崩壊3rdの終盤辺り以降のストーリーはかなり内容が難しいので何とかそれらしいストーリーで話をつくっていますが何とか今年中に本編一部までは書き終わらせたい。


二十一話「凡人の道、英雄としての決断」

 

 

 ...⬜︎ん...⬜︎さん...⬜︎⬜︎さん?聞いてますか?」

 

「え⁈」

 

 目を覚ますと、目の前には教員の女性の人らしき人物がこちらを見ながら困ったような顔で怒るようにこちらの名前を呼んでいた。

 

「ハァ、⬜︎⬜︎さん聞いてますか?いくらあなたが崩壊戦士の試験に落ちて後方担当員に回されたからといってやる気を無くして講習中に眠るのは感心しませんね」

 

「あ、ああ...も、申し訳ない...」

 

 どうやら講習中に寝落ちしてしまったようだ。自分としたことが、崩壊戦士の適正試験に落ちてしまったとはいえ、講習中にやる気を無くして寝てしまうなんて...。

 ...ん?崩壊戦士の試験に落ちた?

 

「あの〜先生、俺って試験に落ちたんでしたっけ?」

 

「寝ぼけすぎて、夢の中で崩壊戦士になって活躍した光景でも見ましたか?馬鹿を言ってないで講習に集中しなさい」

 

 もはや自身の違和感を夢として切り捨てられ、寝ぼけてるのかと呆れられる。...そう、だったっけ?自分は確か崩壊戦士になって仲間たちと共に聖フレイア学園で通学してて...いや、そもそも...仲間達って誰の事なんだっけ?(・・・・・・・・・)

 そんなまとまりのない曖昧なはっきりとしない気持ち悪さをよそに、講習の時間が終わり、生徒たちは教室から出ていく準備を始める。

 

「おい、⬜︎⬜︎。今日はどうしたんだよ、そんなに試験に落ちたのがショックだったのか?」

 

 声をかけてきたのは同じ同性の学友だった。何故か彼の顔元がよく見えないが不思議と元から知っているような感覚であり、違和感を抱かなかった。

 

「あ、ああ...なんかすごく、壮大な経験を何度もしたような気がするんだ...」

 

「おいおい、呑気に居眠り中にそんな冒険みたいな夢でも見ていたのかよ。ちょうど昼時だし、面白そうだから飯を食いながら聞かせてくれよ」

 

 そう言ったあと、彼らは学園の食堂で昼食をとりながら居眠りしていた⬜︎⬜︎の見た夢?の話を学友に話す。

 

「ハハハッ、なーんだそりゃ!まるでどこぞのラノベ主人公の物語みたいな活躍話だな!まぁ、崩壊戦士に憧れるのはわかるけどよ、戦士になるってことは戦乙女達と同じように崩壊エネルギーを身に宿して、崩壊獣ってバケモンと殺し合う日々を送る危険な仕事だぜ?友のよしみで悪いことは言わないからやめとけ」

 

「けど俺は...たしかにフレイア学園で崩壊戦士として戦って...キアナ達と...ん?...キアナ?...」

 

「おいおい落ち着けって、もう妄想と現実がぐっちゃぐちゃだぞ?っていうかお前、いつの間にキアナって子と知り合ったんだよ?あの子、一個上の芽衣先輩って人にゾッコンで男に全く興味がないっていうのに...。くぅー羨ましいぜ!この色男め!」

 

 学友に小突かれながらも、自身が無意識に発したキアナっていう子のことを思い出してみる。確か自分は彼女と...昔ながらのなじみだったはず...しかし、学友の反応を見ているとどうやらキアナ...彼女との関係は知られてはいないらしい。いや、そもそも自分が勝手に妄想でそう言った関係を持つ願望でも抱いているのか?。

 そう考えると、自分の妄想癖にどうしようもない嫌悪感と気持ち悪さを抱いてしまうが同時に彼女との関係を否定するなと別の感情が強く反発してくる。

 矛盾した記憶と現実の違いに精神的に混乱し自身が今いる現実と夢の内容が分からなくなって頭を抱えていると、学友は心配するように声をかけてきた。

 

「なぁ...大丈夫か?もしや意識が朦朧としてんのか?まぁ、お前の夢はえらく非現実的だか同時に妙なリアリティがあるからな。妄想と現実の区別がつかなくなってしまうのも分かる。後で保健室でしばらく休んだらどうだ?」

 

「...ああ、ごめん。そうさせてもらう...どうも意識が良くないようだ」

 

「おう、先生にいっとくよ。まぁ、ゆっくり休みな、お前、なんか今日はずっと疲れた顔してたし」

 

「ありがとう...」

 

 その後、⬜︎⬜︎は学園内の保健室に向かいながら今までの出来事を思い出す。...やはり何かおかしい。自分はたしかに崩壊戦士の試験を受けて合格し、間違いなくキアナ達と学園生活を共に過ごしていたはず。...そしてあの日を境にキアナが攫われて、彼女は空の律者に...。

 しかし、自身の記憶を思い出していく度に何かの意志が邪魔をする。

 

ーあなたはフレイア学園で過ごすただのひとりの学生であり、世界での脅威から逃れる為に将来、天命本部の後方職につくことを目指している。崩壊戦士や戦乙女のような命がけの仕事は自身には向いていない。危険な冒険はやめようー

 

 自然とその意識に飲まれ、それが普通のように感じていく。そうだ、わざわざ崩壊戦士なんて危険な仕事を目指す必要はない。安全で平和な環境で過ごしていくべきだ。

 そう意識が固まっていくと、廊下の道で偶然、特徴的な...白い髪にふたつのお下げの三つ編みヘアーをした女の子とすれ違う。

 

「っ!あっとごめんなさい」

 

「ううん、大丈夫、気にしないで」

 

 考え事をしてたことで危うくすれ違った人物にぶつかりそうになった為にすぐに謝るが、彼女の顔を見た途端に強烈なデジャヴ感と懐かしさを感じた。まるで間違いなく最初から彼女のことを知っていたかのような不思議な感覚だ。

 

「...ん?どうしたの?」

 

「え?あ、ああいや、すまない。その...自分達って以前どこかで会ったことがあったかなーなんて...」

 

「??。私、アンタのことは知らないよ。そもそもあったのも初めてだし」

 

「...そうか、いやすまないな、変な事を聞いて...」

 

「そう?私もう行くから」

 

 彼女がその場を去っていくのを眺めたあと、⬜︎⬜︎は改めて自分自身の記憶を思い起こす。

 さっきすれ違った子は間違いなくキアナ本人だった。...しかし、彼女は自身のことを全く知らないと迷いなく答えた。彼女が自分自身に出会ったことがないという事なら、そもそも自身も彼女のことを名前だけ知ってたとして夢?の意識の中で何故彼女のことをこんなに事細かく鮮明に人物像を理解し、認識できているのかと疑問を持つ。

 しかしそれらの疑問や違和感が大きくなるにつれて何かが意識に介入して認識を狂わせてくる。

 結局その違和感の正体を知る事ができないまま、その日は過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 しばらくして数日が経つと学園内や外部でも何やら大きな噂話が流れていた。

学友から例の噂話を確認すると彼はその内容を教えてくれた。

 

「なんでも、天命本部でなんらかの騒動が起きたっていうらしいぞ?噂じゃ、天命とネゲントロピーが大喧嘩をしたってよ。おお〜こわいこわい。...ただちょうどその時期にフレイア学園から出航したハイペリオンっていう戦艦が学園長達を乗せて天命本部に向かっていたタイミングだったらしいから騒動に巻き込まれたんじゃないかって話もあるぜ。...そういや、上の学年の芽衣先輩やキアナって子も見かけてないけどまさかな...」

 

 学友の話を聞いて⬜︎⬜︎は何となく学園長達大丈夫かなぁと、他人事のように考えるが同時に何か強烈な不安と前に会ったキアナという女の子の事が心配で仕方がないという感情がせめぎ合う。

 

ーもしかすると彼女も学園長達と共に行動していたのかもしれない。しかし、自分には彼女を手助けする力はないし、ほとんど赤の他人なのだからそこまで入り浸るほどのものではない。危険なことには首を突っ込まないことが懸命だー

 

 また何かの意識に認識を変えられ、焦りがなくなり出す。

 

 

 また別の日を過ごしていくと今度はキアナという子が完全に行方不明になり、実は彼女の正体が律者だったことに皆が戦慄する。

 学生達は皆、身近にそんな危険な人物が居たなんてと恐怖や嫌悪感を露わにするが、⬜︎⬜︎にはそれらがとてつもなく苛立たしく思えた。

 何も知らないお前達に彼女の何が分かると。接点のないはずのキアナの事を自分のことのように怒った。

 

 

 その後も学園の委員長であるフカもいなくなり、飛び級で進学してきたブローニャという子も見当たらなくなり、学園の教官である姫子先生すら居なくなってしまった。しかし、学園側は依然として平和であり、天命が不在の学園長に代わって学園を管理してくれていた。

 だか日に日に⬜︎⬜︎は違和感が強くなり、精神的にも苦しさやもどかしさを感じる日々が続くようになった。

 

(絶対に何かがおかしい)

 

ー学園は今日も平和だー

 

(そもそも何故彼女達がいなくなったのに誰も、いや俺自身が焦らない?)

 

ー少しだけ変わったこともあったが、特に問題はない。またいつものように学園生活を送りながら学友達と平和にすごそうー

 

(ちがう!問題だらけだ!外は今なお崩壊と戦っている...そして彼女たちも...)

 

ーここは平和だ。危険な事に首を突っ込むべきではない。冒険する必要はないのだー

 

「うるさい‼️」

 

 いきなりの大声に驚いたのか周りの生徒達が驚く。慌てて学友が⬜︎⬜︎を宥めようとする。

 

「ど、どうしたんだよ⬜︎⬜︎?どこか具合が悪いのか?なら...」

 

「ッ...ちがう、そうじゃない!そもそも俺自身がおかしいんじゃない、お前達が...この世界がどこかおかしいんだ!」

 

「おいおい...⬜︎⬜︎、さすがに被害妄想がすぎ...」

 

「うるさい‼︎そもそも俺の名は⬜︎⬜︎じゃない!俺の名は...俺は...俺は、ソーマ!ソーマ・アストラだ!聖フレイア学園の崩壊戦士としてキアナ達と共に戦ってきた仲間だ‼️」

 

 ソーマが自身をそう宣言すると今までの一件普通そうな学園内の教室の雰囲気がガラリと変わり出す。周りにいた生徒達や教員から生気がなくなり無機質な人形のように立ち並びだし、彼の道先を塞いできた。

 

「「「あなたはただの学園の一生徒。ただ平和に暮らしているだけの人間だ」」」

 

 ソーマは彼らからの包囲網から逃れる為に学園内窓から脱出し校内を移動する。目標は学園長室...テレサがいたはずの場所である。あそこならあるいはこのおかしな空間から脱出する手がかりが...。

 

「「「外は危険だ...崩壊戦士を目指してもすぐに戦いで命を落としてしまう」」」

 

 問いかけてくる無数の声と人壁のバリケードを避けながらソーマは必死に学園長室に向かう。

 

(あともう少し...!)

 

「「「いくら運良く生き残っても次はない」」」

 

 包囲網が厳しくなり、通り道が限られてくるが、彼の足並みは立ち止まる事なく徐々に目的地に辿り着く。

 しかし、その目前には沢山の学園にいた学生や職員たちが学園長室の前を塞いでいた。先頭にまさかのキアナ本人らしき人物もおり、周りの人達に同調して引き返すように訴えかけてくる。

 

「「「ここに居ればあなたは身の危険に晒されることはない。引き換えそう」」」

 

「⬜︎⬜︎...ここは安全だよ。...だから戻ろう?アンタの代わりに私が戦乙女として戦ってみせるから」

 

 目の前にいるキアナがソーマに引き返すように訴えかけるがソーマは彼女の気遣いを肯定しつつも、その願いを否定する。

 

「...ありがとう、お前は俺の身を気遣ってくれてるんだな。...けど俺は⬜︎⬜︎じゃない。俺はソーマ...ソーマ・アストラ、崩壊戦士として仲間たちと共に生き、戦う者だ...ここは俺の居場所じゃない。⬜︎⬜︎という人間はここには居ない、通してくれ!」

 

「ダメだよ!もうこれ以上アンタは闘うべきじゃない。大人たちに利用されて、そしてまた崩壊との戦いで命を落としてしまうかもしれないんだよ?」

 

「そんな事は百も承知だ。だか俺には仲間がいる、ひとりじゃない」

 

「...その仲間達の為に命を落としかけたのよ?私ならそんなことよりにさせないから...だからソーマ、お願いだから」

 

「なんだ...ようやく俺の名前を呼んでくれたか」

 

「...」

 

 ここで一度も呼ばれなかった名前を口にしてしまい、ボロが出たキアナらしき少女は押し黙ってしまう。しかし次の瞬間、キアナ空の律者へと姿を変え、対面するソーマに牙を向ける。

 

「小癪な人類め、大人しくしていれば良いものを...お前のそのひ弱な身体で何が出来る?私に殺されたいか」

 

 ソーマはその場で空の律者に拘束され、喉元に崩壊の槍を突きつけられるがそれでも彼は動じることはなく、真っ直ぐと空の律者を見据えていた。すべてを受け入れたような、あるいは覚悟を受け入れたような顔だった。

 

「それでもだ。...俺は律者に選ばれた、そしてキアナにも出会った。芽衣やブローニャ、姫子先生にフカにも出会い、共に苦楽を過ごした。その記憶と思い出は消すことは出来ない。...ソーマ・アストラという人間は生まれてこの人生を歩んだときから自身でこの道を選んだ」

 

「...それが凡人とは程遠い英雄のようなすぐに燃え尽きてしまう生き方でもか」

 

「そう思うのならそうなんだろう。どう人生が変わろうとも俺はそのような生き方をしたんだと思う」

 

「そうか...ならばすぐにその生き方をここで終わらせてやろう!」

 

 ただの人間に過ぎないソーマは何も出来ずに静かに目を瞑るが、不思議と彼には諦めはなかった。まるでこのようなことをしても無駄だというように。

 

「俺は...絶対に死なない」

 

 ソーマの首元に崩壊の槍が差し迫るが彼の背後から回り込むように黒い影素早く電撃の如くソーマの前に現れ、崩壊の槍を切り裂く。その姿が露わになり、第三者が現れる。

 

「...ええ、そうよ。貴方はここでは死なない」

 

 久しぶりに聞いた聞き覚えのある懐かしくも親しいもうひとりの親友の声が聞こえ、迫り来る脅威からソーマを守り抜く。

 

「ッ⁈お前はッ‼︎」

 

 驚愕する空の律者に追撃をさせる暇もなく神速の雷刃に斬り裂かれ、空の律者は砕けた鏡のように散らばり幻影のように霧散する。

 

「何故なら...ソーマ君は、私が守るからよ」

 

 彼の前に現れたのはかつてあの時、長空市でキアナとぶつかり合い、キアナを脅威から守る為に最後には自分達の元を去ったかつての仲間であり、ソーマのもうひとりの親友である、雷電芽衣本人で見間違いなかった。

 

「...芽衣、なのか?」

 

「ええ、本当に久しぶりねソーマ君。貴方とこうして再会するのは長空市以来ね」

 

「ホントの本当に...芽衣...なん、だよな。でもどうして...」

 

「簡単にいうと私は量子の海から直接、虚数空間を渡ってきたの。キアナちゃんに力を貸す為にきたのだけど同時に貴方からの力の残滓を感じとったの。そしたらキアナちゃんにそっくりな女の子が現れてソーマ君を救い出してほしいと言われたの」

 

「キアナにそっくりな子...その子って聖白とか...ヘレナとかって名乗らなかったか?」

 

「いえ、名乗っていなかったわね。知り合いなの?」

 

 ソーマはその少女の正体や自身が体験した事を芽衣に話した。ヘレナとの戦いに打ち勝ち、彼女から聖白のコアと意思を託され、新たな力を持ってキアナと共に戦った事を伝える。そして今は天命のリーダーであるオットーの企みを阻止する為に戦っている。

 

「そう...そんな事が...」

 

 芽衣は静かに話を聞いた後、ソーマに近付くと彼を優しく抱きしめる。頭を撫でる様に抱き止め、彼に対し今までよく頑張ったと宥めた。

 

「ソーマ君...貴方はよく頑張ったわ。...貴方も孤独な戦いの中でよく耐えてくれた。本当なら私が貴方を助けたかった...けどキアナちゃんが貴方の命を救ってくれたのね。それに比べて...私は」

 

「芽衣...ありがとう、でも大丈夫だ。だって今こうして戦えない自分に変わって戦って守ってくれただろ?」

 

「ソーマ君...」

 

「芽衣がとても優しい性格だって事も知っているし、すごく人の気持ちに共感してくれる子だって事も知っているから...ただ、その...このまま抱きしめ続けられるのは...ちょっと恥ずかしい...かな」

 

 お互いに同じくらいの身長の差な為か、側から見るとまるで恋人同士のハグにしか見えなかった。負傷した頃もそうだが彼女はどうにも距離感がバグっているのか、なんの恥ずかしげもなくスキンシップをしてくる事が稀にある。(キアナも同じく。)その為、不意打ちの如く大胆な行動にソーマの方が逆に羞恥心を感じてしまう。

 

「ふふ...そうかしら?私は別にソーマ君とこうしてハグするのは嫌いじゃないわ。それに...」

 

「それに?」

 

「...いえ、なんでもないわ。それよりも...はやくここを脱出しましょう、どうやらこの場所は貴方を逃さないようにしようとしているみたいだから」

 

「ああ、再度閉じ込められてループするなんてごめんだからな」

 

 芽衣による助けと再会を喜んだ後、改めて目指していた例の学園長室の扉を開き、中に入る。そこには普通の事務部屋の机前に黒曜石のように光り、白銀のようにも光る美しい結晶が浮かんでいた。

 

「アレは...もしかして律者コアかしら?ということは元々ソーマ君に宿っていた...」

 

「ああ、間違いなく聖黒のコアだな。本能的に分かってしまうんだ。しばらくの間、主人が不在で帰ってくるのを待っていたかのようにおかえりなさいって聴こえてくるんだ...」

 

 ソーマは机の上にある聖黒のコアを手にするとコアが光り、さっきまで学園の制服姿だったソーマの外観が代わりだし、蒼炎の律者の姿へと変わる。

 

「キアナちゃんもそうだけど貴方も昔と比べて大分変わったのね」

 

「その...似合ってるか?」

 

「ええ、とってもよく似合ってるわ。まるで竜騎士の勇者様みたいね」

 

 ソーマが律者の姿になったのと同時にさっきまでの学園長室がなくなり、赤い砂浜の大地に崩れ落ちた遺跡のような残骸が突き刺さり、と宇宙のような天空が見える空間の道が現れる。そしてその先にはソーマが愛用している武器、対極の陰月の槍が地面に突き立てられていた。

 ソーマはそのまま武器のある場所まで近付くと外部からまた自分の意識に干渉してきた声が響いてくる。

 

ーこの武器を手に取れば貴方は普通の人の生活には戻れないー

 

「ああ...分かっている」

 

ー人ではなくなり、周りの者達とは別の時間を生き続けることになるー

 

「それでもだ」

 

ーまた苦しい思いや絶望を味わうことにもなる、死ぬ事もあるかもしれないー

 

「だからどうした」

 

ーなぜ凡人の人生をすてる?なぜ危険な人生を歩む?なぜ...英雄のような生き方を目指す?ー

 

「目指したいんじゃない。俺が...ソーマ・アストラという人間が大事に思えた人達や過ごしてきたその世界を失いたくないから闘うんだよ。それにこういうだろ?平和は与えられるものじゃなくて自分達で勝ち取ってこその平和だって事を。平和に生きたいから戦うんだ、成りたくて英雄になるんじゃない」

 

 ソーマはそういうと地面に突き立てられた対極の陰月を引き抜く。初めから彼の行動原理は決まっていた。

 

ーならばいくといい..."未来を繋ぐ英雄"ー

 

 彼の揺るぎない信念と決断を聞き入れた声の意思は最後に彼の行動を肯定した後、ソーマの意識から離れていった。気がつくと芽衣もソーマの側にきており、少し心配そうな顔をみせるもしばらくして受け入れた様に伝える。

 

「そう...やっぱり貴方もキアナちゃんと同じように戦う道を選ぶのね。まぁ分かっていたわ、貴方はこんな所で諦める様な性格じゃないって...」

 

「ごめん、芽衣。...でも俺は別にひとりで戦うわけじゃない、皆で共に足りない所を補って共に戦う道を歩むつもりだ。...キアナやブローニャ、フカやビアンカ姉さんも...そして芽衣、お前のことも同じく手を取り合って戦ってくれる大事な仲間であり親友でもある」

 

「ええ、そうね。私も絶対に貴方の戦いの歩みを終わらせない為にも、私も戦うわ。今はちょっとした短い間の顔合わせでしかなかったけど近いうちに貴方達に会いに行くわ」

 

「もうお別れなのか。...いや大丈夫だ、芽衣が本当に帰ってくるのをキアナ達とずっと待ち続けるさ。...でも、さすがに次からは絶対にどんな理由があっても勝手に去るのは許さないからな...大事な芽衣がいなくなるのは...悲しいし」

 

「え、も、もしかして...」

 

「え?あっいや、ち、違うぞ!べ、別にそんなつもりで行ったわけじゃなくてだな!コレは〜そう!キアナ達の為にだ‼︎」

 

 無意識に芽衣に対して告白まがいなセリフをぼそっと吐いてしまい、慌てて誤解を正すが恥ずかしさのあまり、顔面が赤くなり続け、なかなか羞恥心が治らない。

 

「そ、そう。...別にそこまで必死に否定しなくても...私ならソーマ君のことを受け入れるのに...

 

「ど、どうしたんだ?も、もしかして怒ったか?」

 

「いえ、大丈夫よ。...ちょっと自分の心の整理をしてただけだから」

 

 ソーマが武器を手にした後、しばらくして空間の亀裂が入り、現実世界への帰還が始まる。そろそろ時間がきたと悟り、芽衣はソーマに別れを告げる。

 

「...もうお別れの時間ね。でも大丈夫よ、貴方ならキアナちゃん達と戦っていけるはずよ。私が貴方達を見守っているから」

 

「ああ...また絶対に会おう芽衣」

 

「ええ、またねソーマ君」

 

 芽衣とのお別れと共にソーマは虚数空間から現実世界に戻り、キアナ達がいた場所への帰還を果たす。そこにはキアナにビアンカ、ブローニャまで集まっていた。彼女達の近くには律者コアのエネルギー体があり、おそらくオットーが仕掛けた虚数の壁のバリアを突破する為に何かを仕掛けていたのだろうと理解した。

 空の上空から開いた虚数の裂け目からソーマが空から落ちてくるのに気が付いたキアナ達は素早く崩壊エネルギーを利用しながらクッション代わりにして全員で彼を受け止める。

 

「悪い、時間がかかったけどなんとか戻って来れた」

 

「ホントだよ!どうやってソーマを虚数空間から助け出そうかと苦労したんだから!」

 

「私もなんとかいろいろあって虚数空間から帰還できましたが一番戻ってくるのがかかったのはソーマ、貴方だけでしたよ?」

 

「ごめん、ビアンカ姉さん...それにしても姉さんその馬?は一体?それに姿も...」

 

「ええ...虚数空間に飲み込まれた時に私の血筋、カスラナ家の意思を受け継いでこの姿になりました。」

 

 そう言ったビアンカの隣には黒い全身装甲のような角を生やした馬?に、彼女自身は黒と青を基調としたバトルドレスに変わっていた。

 

「とにかく、これでみんななんとか全員集まれた!さっきブローニャちゃんのおかげでオットーのいる虚数のゲートが開けたの。さっそくアイツの元へ急ごう!」

 

「ああ、俺もあの男に一言申したい事があるからな」

 

「兄さん達、準備はできましたか?ブローニャも虚数のゲートを開くだけで限界です!急いでください!」

 

「悪いなブローニャ。よく頑張ってくれた、あとは俺たちに任せな」

 

「さぁ、ソーマ急ぎましょう」

 

 律者コアの力で開いた虚数のゲートをキアナとソーマ、ビアンカが突入していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゲートを抜けた先は以前見たことがあった支配劇場の空間そのものだった。キアナの律者コアの力による反応だとオットーの居場所はこの支配劇場の高い塔のような遺跡の底に潜んでいるらしい。虚数空間という現実世界とは異なる法則の世界の為、地上のような決まった重力の方向性がないのでソーマ達はそのまま塔の上側からそのまま侵入していく。

 

「ここは私に任せてください。私のクリシュナで速度を稼ぎます。早くこの子に乗ってください!」

 

 キアナとソーマはクリシュナと呼ばれる馬の生物に跨るが流石に三人も乗るのは難しかった為、仕方なく唯一飛行能力を持っているソーマ本人がクリシュナの首元の手綱を掴みながら移動することになった。

 

「...なんか俺だけ馬に触れて浮かんでいるからなんともシュールな光景だな」

 

「ごめんなさいソーマ。この子のサイズ的に三人乗りは流石に無理だったので...」

 

「これ、もしソーマが飛べなかったらその場で走って追いかけるハメになったんじゃない?そう考えちゃうと...ぷっ、く、くくくw」

 

「おいコラ、なーに変なこと想像してんだバカキアナ。絶対ロクでもないこと考えてるだろ」

 

「だ、だってw何となく想像したらすっごいシュールになっちゃってw全力疾走するソーマの姿ww」

 

 移動中にキアナのしょうもない想像の話を聞いたせいか、クリシュナを制御してるビアンカも僅かに体をピクつかせて笑いを堪えていた。

 

 

 

「...やれやれ、様子を見てみれば随分と余裕そうだね君達?」

 

 移動中に何処からともなく、オットーの声が聞こえてくると塔の遥か奥から空中を浮遊してるオットーらしき姿を見つけた。

 

「キアナ、ビアンカ、そしてソーマ、やっと来てくれたね。待ちくたびれたよ、試練を突破した君達を盛大に歓迎しよう」

 

 そう言い終わるとオットーは取り巻きの虚数空間から呼び起こしたソーマを攫ってきた怪物達によく似たクリーチャーがいくつも襲いかかる。

 

「面倒な!姉さん、俺とキアナが敵を撃ち落とすから姉さんは障害物を回避してくれ!」

 

「お願いします!ソーマ、キアナさん!」

 

「私に任せて!」

 

 迫り来る怪物を迎撃する為、キアナは薪炎の爆炎の弾幕を大きな敵に撃ち放ち、対するソーマは弓に変質した対極の陰月を構えて崩壊エネルギーの結晶の矢で小型の取り巻きを次々と撃ち落とす。その間にビアンカは塔の中にある崩れてきた遺跡の柱を回避、あるいは手にした槍で破壊しながら突き進んでいく。

 

「そろそろ地面が見える!」

 

「着地の準備をします!重力が大きく変わるので気を付けて!」

 

「了解だ!」

 

 塔の最奥地に着くのと同時にタイミングよく三人とも着地を成功させる。

 

「ふう、何とか無事に着いたな」

 

 彼らが着いた先には巨大な聖堂のような礼拝室が見え、先に見える装飾の壁には天井に吊るされてる不思議な聖遺物のような物が近くで灯火のように燃えていた。

 

「...アレは一体?」

 

「おそらく虚無の種と呼ばれるものです。先程の敵達がなかなか倒れなかったのもアレが原因かと」

 

「ならアレを壊せば...!「待ちたまえ」⁈」

 

 声がする先を見ると戦闘途中から姿が見当たらなくなっていたオットー本人が目の前に現れていた。

 

「ここからはこの場の主人である僕が持てなそうではないか!」

 

 そう言い終えるとオットーは自身の姿を変える。彼の周りから膨大な虚数エネルギーが溢れ出し、本人自身を取り込んで一体化したような巨人のような外装を纏い、背中からは計六枚の黒い羽と巨大な車輪のようなヘイローが現れた。仮面型の外装で覆われたオットーの表情は見ることは出来ないものの、その姿と見せる仕草からは傲慢さが現れており、まさに唯我独尊と言った感じの神の使いと言った風貌であった。

 

「おいおい、いつの間にそんな力を使えるようになったんだよアンタ」

 

「真の黒幕はこの様な時に備えて真の力を隠し持つものだろうソーマ?勇者達と魔王の戦いでもよくある展開じゃないか。これは常識だぞ?」

 

「やかましい!アンタには子としていろいろと文句を言いたいことが沢山ある、覚悟しておけ‼︎」

 

「フフフ、初めての親子喧嘩というのもいいものだね。いいよ、かかってきなさい。子が反抗期を迎えるのもおかしなことじゃない」

 

 変身した影響かいつの間にか増して傲慢なオットーはソーマに何を言われようとも何事にも肯定的に捉えてくる。

 

「キアナ、姉さん、この傲慢道化野郎を倒すぞ。力を貸してくれ」

 

「言われなくても力を貸すよ。私もアイツには散々な目に遭わされたし!」

 

「ふたりとも気を付けて‼︎彼のあの姿は初めて見ます。どれほどの力かまた未知数です。注意を‼︎」

 

 遂に天命で五百年に及ぶ長き支配を続けてきたオットー・アポカリプスと呼ばれる黒幕を演じた男とソーマ達との対面決戦が始まった。

 

 

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