「此方はハイペリオン、宇宙巡航ルートは規定通りに進んでいるわ。そちらはどうかしら?」
【此方の観測数値も正常だ、特に異常はなさそうだね。どうだい?ウチのネゲントロピーが手掛けたムーンライト・スローンの性能は】
「すごいわね、地上での航行だけでなく、あまりガワを変えずにそのまま大気圏外でも飛行出来るようになるなんて...」
暗闇が広がる空間から地球がよく見える光景の中で宇宙巡航するハイペリオン号の艦橋内でテレサは本艦の運用テストをネゲントロピーのアインシュタイン博士達とともに共同で行っていた。
【...かつての人類は太古から宇宙に憧れと希望をもち、そしてついに母なる地球から旅立つ手段を持てるような成長と発展を遂げた。...しかしその過程でいくつもの苦難の試練や犠牲があった。ある意味、僕達は空を高く飛び続けたイカロスという先導者のおかげでここまで発展してきたと言えるね】
「そうね...昔の人達も崩壊の脅威の中成長することを諦めなかったわ」
テレサはハイペリオンの艦橋の窓から見える月を眺めながら感傷に浸るように眺めていた。
天命で起こった元大主教の脱退によるカロスタンの騒動が治ったあと、天命はテレサ・アポカリプスが時期大主教の座に正式に着く事でようやく事態は落ち着きを見せた。
しかし、事件の解決が治ったものの、前大主教のオットーが健在だった頃に同盟を結んで共同路線を取っていたはずのヨルムンガントがオットーの退位の後しばらくして前触れもなく同盟契約を切り、組織ごと連絡が途切れてしまう。
それと同時に地球から観測できる月から不可解な現象や変化が近頃から観測され始め、同時に月と地球の衛星軌道上に未知の浮遊衛星が出現していたりと明らかに異常事態が明確に現れはじめていた。そこで天命はテレサを筆頭に未知の現象の調査と原因究明、事態の解決を進める為にネゲントロピーとの共同連携で宇宙での巡航軌道を可能にした改修されたハイペリオン号を試験運航し、移動手段の計画を進めていた。
ピピッーピピッー
「あら誰かしら?」
テレサが持つ通信端末から電子音が鳴り、その画面を確認すると自身の養息子であるソーマからであった。
【もしもし、テレサ元気にしてる?】
「大丈夫よ。自分から電話してくるなんて珍しいわね?何々もしかして私が恋しくなったかしら♪アンタもかわいい所があるじゃない♪」
【いや違うからね?勝手に人をマザコンみたいに扱わないでくれ。って、そうじゃなくてテレサって今宇宙にいるんだろ?宇宙ってどんな感じかすっごく気になるんだよ!】
「なーんだ、つまんないわねぇ。まぁそうね...とにかく暗〜い夜空のような空間が無限に広がっているって感じね。一応無重力を体験することも出来るらしいけど」
【おお〜!さっすがハイペリオン‼︎つぎに乗る時が楽しみだなぁ♪」
「楽しみっていってもアンタの場合、律者の力で空を飛べるじゃない。そんなに変わらないんじゃないの?」
【いやいや、確かそうだけどやっぱり飛べても無意識に重力というものを感じちゃうんだよ。う〜ん、こう、何というか重力そのものが魂を縛り付けられているような感覚が...】
「はあ...抽象的すぎてよく分かんないわよ」
【何々?ソーマ、誰かと通信してるの?】
【ちょっ、キアナいきなり背中に飛びつくな!ビックリするだろ】
どうやら、通信中のソーマにキアナが飛びついて通話に入り込んできたようである。
【あはは、ごめんごめん〜】
「誰かと思ったらキアナね。そっちの様子ばどうかしら?」
【うん、順調だよ。勉学は...まぁ、アレだけど、鍛錬はしっかりとやっているよ】
【コイツ、勉学をさせるたびにすぐに眠りにつくから全然課題が終わらないんだよ。テレサからもなんかいってやってくれよ】
【あっ!ちょっと余計なことを言わないでよ!人が気にしてるのに!】
【うっさい!だいたいなんだよあの課題の感想文の内容は!"おもしろかったです"とか"いっしょうけんめいがんばりました"とか小学生の読書感想文か‼︎内容を確認していたフカがかわいそうなものを見るかのような目で呆れていたぞ?】
【だ、だってそれしか思いつかなかったんだもん!だいいち筆者の心理を述べよなんて分かるわけないって‼︎】
【いやだからってキアナ、お前、もう少しもっとこう...】
ーガヤガヤ、ガヤガヤー
「ハァ〜まったく何やってんのよこの子達は...」
テレサは呆れながらもやれやれと苦笑しながらも微笑ましく自分の身内や教え子の様子を通信画面越しに眺める。
いろいろと大変な事が続き、苦難の道が続いていたがこの世界の事態も段々と終盤へと差し掛かってきていた。いくつかの律者と闘い討ち勝ち、もう残りの脅威は形や姿もほとんど知らない終焉の律者という最大の敵をどう相手するかが自分達の崩壊との闘いの最終地点であると言える。
しかし、天命との同盟を突如脱退したヨルムンガントの存在がまだ気がかりである。そもそも彼らは彼らで独自に崩壊に打ち勝つ為の計画を長い時間を立てて推し進めているのだ。いったい何をやり出すのかすら予想はつかない、油断は禁物である。まだヨルムンガントのリーダーであるケビンの居場所すら掴めていない。
「聖痕計画ね...内容は確認したけど、あれほどの計画、いったいどうやって...」
【だからキ...(ザッー)おま...しはもっと(ザッー)】
【わた...だって(ザッザッーー)】
「ん?あら、ソーマどうしたの?ちょっと、キアナも返事しなさーい!...ハァ、電波障害かしら?太陽フレアの発生は観測はされてないはずだけど...」
テレサが通信端末から発生した電波障害を確認するためにコンソールを確認していたころ、ハイペリオンのAIシステムの観測センサーとレーダーが計器に異常数値を叩き出していたがテレサはすぐに気づく事が出来ずに時間だけが過ぎていった。
「もしもーし‼︎テレサ聞こえてるー⁈おーい‼︎...うーん、ダメだこりゃ...」
「全然繋がらないの?」
「そうみたいだな。通信が届かないとこまで移動しちゃったか、あるいは宇宙線か太陽フレアのせいかなぁ」
「ふーん、なんかよく分かんないけど回線エラーって事?」
「まぁそんなとこじゃないか?」
テレサとの通信が途切れてしまったため、諦めて通信端末をしまっていると見回りをしていたフカとビアンカ、リタが此方へやって来ていた。
「ソーマ、キアナ、ちゃんと鍛錬はサボらずにやっていますか?いっておくけどこれは貴方達の為に必要な修行なのだからサボらずに...」
「ああー、ハイハイ分かってるからちゃんとやっているってフカ師匠。ちょっと休憩してだんだよ」
「え〜?さっき適度に息抜きしないと、とかいって通信端末でテレサと雑談してなかったっムグッ」
「ア、アハハ〜。全くこの腹ペコ娘はなにを言い出すんだか!」
「ハァ...まったくソーマ、貴方までキアナみたいになってどうするのです?このままだと貴方の今後のあだ名がキアナ2号になってしまいますよ?だいたい...」
「まぁまぁ、落ち着いてくださいフカ様。私達はただソーマ様達の様子を見にきただけなのですから」
「いやちょっとまって‼︎私の名前をあたかもサボりの代名詞みたいに活用しないで‼︎」
「...そうか。ごめんフカ、俺が間違っていた。キアナ2号はあまりにも不名誉なあだ名だな。俺、ちゃんと昇進するよ」
「フフ、分かればいいのです。さぁ堕落した自己を捨て己を高めてキアナ(サボり魔)の称号から離脱できるように頑張りましょう」
「ちょっと委員長もソーマもボケ倒さないでよッ〜‼︎」
「フフ...ソーマにも笑い合える友人ができたのですね。姉として誇らしいです」
「前々から思ってたのですがデュランダル様は時たまズレている時がありますね」
「何か言いましたかリタ?」
「いいえ♪」
聖フレイア学園の広場前で合流してきたフカ達と雑談を繰り返したあと、ソーマは現在キアナと共に学園の中庭にある大きめなベンチに腰掛けながら自由時間を過ごしていた。
「それにしてもビアンカ姉さんたち、せっかく極東に来てくれたのにすぐに仕事でトンボ帰りとは...家族水いらずで遊びに行く余裕もないな」
「それで弟のソーマの事が恋しいから帰り際にデュランダルから長時間ハグされたってこと?」
「まぁそんなとこだ。ただなぁ...姉さん、馬鹿力がすぎるから危うく絞め殺されないかとずっとヒヤヒヤが止まらなかったからな?」
「ふーん...いいなぁ、デュランダルは気にせずにスキンシップが取れて...」
「む、どうしたキアナ?」
「何でもないよ」
「それにしても今日は天気がいいせいなのか、やたらと眠気を感じるな。ちゃんと睡眠は足りてるはずなのに」
「あれソーマも?なんだか私も同じ気分。う〜んどうせならやる事ないし、2人で昼寝でもする?」
「たまにはそれもいいか。じゃあキアナ、お先におやすみ」
「あ、ちょっと!...もう、先に寝ちゃうなんて!」
どこからともなくアイマスクを取り出すとそのまま目元に装備してキアナより先にささっと眠りについてしまう。
「...私も寝よっと」
後から遅れてキアナもソーマの肩にもたれかかるようにして眠りにつく。
「ふぁぁ...おやすみ」
ー人である事を望み、人として生きたその者はいずれは自身が愛した人間達にとっての敵になったとしても愛することをやめなかったー
ー終焉の落とし子は自身の母に逆らうことを選び、触れ合い愛する者たちを救う為に人身御供となる道を選ぶ。全ては愛した人々と愛した世界を守る為に...ー
「う...ん...ふああぁ〜...あ〜よく寝たなぁ。なんか変な夢を見たような気がするけど...そろそろ動くか...ん?アレ...?俺、たしか中庭のベンチで座って寝ていたはず...」
目を覚ましたソーマが見る先には一面に白い花が咲き乱れる草地が視界いっぱいに広がっていた。とても美しく、見飽きることのない風景であったが同時に切ない気分にもさせられた。まるで孤独になってこの地を彷徨っているかのような居心地の悪さである。
「...まだ夢を見ているのか?なんだか現実味がないはずなのに現実にいるような...いででで!...や、やっぱり現実なのか。ああもうまだ厄介ごとかよ!寝るだけで迷子になるとか俺をここに攫ったやつ何者だよったく...」
自分の頬をつねり、痛覚を感じ取ったあと、現実だと言う事を把握し、体を起こして状況に困惑しながらも周りを見渡して見ていると後ろから生き物らしき気配を感じ取った。外敵かと警戒し振り向くとそこには見慣れない存在がいた。
「誰だ!...って、え?こ、子供...?」
視線の先には空中をふわふわと漂いながら漂っている小さな子供...いや、小さな幼女のような生き物がいた。モノトーンを思わせる白と黒の髪色と体の半分近くにも迫る大きな尻尾に角、長いお下げのツインテールをした可愛らしい幼女であったが明らかに人間の女児のサイズ感ではなくどちらかというと武装人形達のような小動物感があった。
「ッ⁈...う、うわああああァァァァンッ〜や、やっと目が覚めてくれたのだー‼︎」
「うわおっとッ‼︎えっ⁈な、なになに⁈というか君誰なの⁈」
此方を見て衝撃を受けて驚いたあと大泣きしながら飛びついてきた謎の空飛ぶ幼女に混乱し、フリーズしてしてしまうがとりあえず落ち着いて本人の身元を確認する。
「グスッ...ア、アタイは"ヴルム"なのだ。いっつもそーまといっしょに戦ってきたのだ。もう忘れちゃったのか?」
「え、ヴルム?ウソッお前、あのバカでかいドラゴン本人だったのか⁈いや、で、でもお前はあの時の戦いで...」
「別に死んだわけじゃないのだ。...でもからだが痛くて痛くて...そーまに伝える余裕もなかったのだ...ごめんなさい」
「...いや別にいい。でも...お前が生きてて本当に良かった。...ごめんな、こんな情け無い相棒で。危うくヴルムを死にかけさせた」
「大丈夫なのだ。大事な家族のそーまが死んでしまうほうがイヤなのだ。だから自分を責めないでほしい...のだ」
この子が身を挺して守ってくれたおかげで今の自分はここにいると言ってもいい。ソーマは随分と姿が変わり果てしまった自身の半身を優しく抱きしめながら心の底から感謝する。
「ありがとう...。それにしてもヴルム、気になってたんだがその姿はいったいどうしたんだ?いつもの姿と違うし...というか今さらだけどなぜか会話ができてるし」
「うぅ〜わかんないのだ。なぜかいつのまにかここに迷い込んで目が覚めたらこんな姿になってしまったのだ」
ヴルム、彼女?の話によるとソーマと同じくこの訳の分からない景色の場所に迷い込んでからいつのまにか体が小さくなってしまい、一緒に迷い込んだ目覚める様子がないソーマを心配して必死にここを出る手段はないかとウロウロとしていた真っ最中だったのだというらしい。
「ならちょうどいい、お互い動けるようになったんだからさっさとこの場を離れるぞ」
「分かったのだ!」
大きく姿が変わり果てた半身の相棒を引き連れてこの現実や夢かよく分からない場所を離れる。
移動していくと不可解な景色と電子世界を思わせるような上下感覚のない空間の世界を渡り歩く。
「この景色...何処かで...ああ思い出した‼︎たしかちょっと昔、姫子先生たちと共同任務に参加してたときに入ったことのある量子の海?とかいう所だったはず...なら俺たちはその中に迷い込んだっていうのか?」
「量子の海ってなんなのだ?」
「う〜ん、簡単に言うと俺たちが認識できない平行世界に繋がる虚数に似た異世界のゲート?みたいなものか?」
「う〜んよく分かんないのだ」
しばらくして量子の世界を渡り歩き続けると、自分達以外と同じ人らしき存在が見えてきた。よく見ると何やら量子の海にいるよく分からない怪物に襲われているブローニャらしき人物とキアナ...そして長らく会えていないはずの芽衣らしき人物もいた。
「ッ⁈キアナ、ブローニャ‼︎えっ?芽衣もいる⁈と、とにかく加勢に入るぞ‼︎」
「ま、待ってなのだ〜!」
彼女達を見つけたソーマは気がつくと迷いなくすぐに加勢に入る。できることなら彼女達が本物であることを信じて...。
「ハァァッ‼︎」
手慣れた手つきで崩壊エネルギーの槍を複数形成し、戦闘を続けているキアナ達を支援するように怪物達を次々と串刺しにしていく。
「ッ⁈あっソーマ‼︎」
「ソーマ兄さん⁈」
「ソーマ君...!」
迫り来る残りの敵を四人がかりで全て掃討したあと、一息ついて全員で合流しお互いを確認し合う。
「ソーマ、良かったッ!気がついたらみんなわからない世界に飛ばされちゃって...」
「兄さんも意識を失ってここにきたのですか?」
「俺はキアナと同じ一眠りしているタイミングで気が付いたらここに来てたって感じだな。ただそれにしても...」
ソーマが会話を止めて振り向く先には忘れようがないキアナと同じく長い付き合いである芽衣本人の姿があった。彼女はソーマに会えたことに嬉しそうに柔らかな笑みを浮かべており、ソーマも驚きながらも思わず再会に笑みを浮かべてしまう。
「ほ、ほんとに...芽衣...なんだよな?」
「ええ、大丈夫よ。キアナちゃんにも同じ反応をされちゃったけど、紛れもなく雷電芽衣本人よ。言ったでしょ?絶対に近いうちに会いにいくって」
「ハハ...たしかに約束通りだな」
「ふふ、これで私達四人チーム全員がようやく集合を果たせたね!」
「お互い昔と比べてずいぶんと変わりましたね」
「逆に言えば俺たちはその苦難を乗り越えて人として成長してきたって事だ」
「ええそうね。本当に...みんな変わったわ」
四人がお互いに再会の喜びに和ませていると遅れてきたヴルムが小さな体で必死に飛び続けながらソーマの元に追いつき疲れたのか、手元に落ちてきてソーマに受け止められる。
「うへえ〜...つ、疲れたのだ〜。この体、いろいろと不便なのだ〜」
「ああっと、ごめんごめん。ヴルムのこと忘れてた」
疲れ切ったヴルムをよしよしと宥めていると、そばにいたキアナが信じられないものを見たようなショックを受けた顔で此方を見つめていた。
「ソ、ソーマ...その子は...」
「ん?ああごめん、まだみんなに紹介していなかったな。この子は...」
「そんな...ソーマ!いったい誰との子なの⁈」
「...はい?」
「ま、まさか私の知らないところで相手が...ねぇソーマ、私じゃ...駄目だったノ?」
いつも元気いっぱいで陽気なキアナが見たことないようなハイライトの消えた目を此方に向けており、負のオーラを漂わせながらじわじわと此方に向かって詰め寄ってきていた。
ソーマはキアナに初めて恐怖した。よくケンカする事はあってもこんなに明確に威圧感と恐怖を感じたのは初めてだった。まるで底がない沼に足を取られて沈んでいくような不気味さである。
「お、落ち着け‼︎お前なんか勘違いしてるぞ‼︎」
「そ、そーま、な、なんかこの人怖いぞ...」
さすがの元ドラゴン型崩壊獣のヴルムでもキアナから感じる負の威圧感に勝てなかったようだ。なんとか周りにいる芽衣とブローニャに助けを求めるが本人達もキアナほどではないがハイライトを失ったような瞳で此方を詰め寄っていた。
「ねぇ、ソーマ君?どういう事か説明してくれないかしら?」
「ブローニャにも教えてくださいソーマ兄さん」
「わ、分かったからまずはキアナを抑えてくれ‼︎これじゃあ説明も出来ないって!」
ー説明中ー
「な、なーんだ、それなら最初からそう言えばいいじゃん!」
なんとかソーマの腕の中にいるヴルムの事を説明するとようやくキアナ達は正常な目付きに戻り、揃いも揃って心底安心したようにホッとしていた。
「そもそもお前が人の話を聞き終える前にいきなり勘違いし出したのが原因だろーが」
「うっ...だ、だってヴルムちゃんがあまりにもソーマと見た目がそっくりなんだったもん!こんなの絶対勘違いするって!」
「ほらほら、ヴルちゃん〜♪私の事をママって呼んでみて♪」
「え、え〜と...マ、ママ?」
「あーもう可愛い♪これは必然的にソーマ君がパパになりそうね」
「ヴルムちゃん、ブローニャのことはブローニャお姉ちゃんと呼んでください」
「おいコラ、しれっとウチのヴルムに何呼ばせてんだ。というか芽衣、お前ってそんなキャラだったか⁈」
「あらあなた、再会のハグはしてくれないの?」
「これ以上ボケ倒すんじゃない‼︎事態がややこしくなるっての!」
「あ、芽衣先輩!抜け駆けなんてずるい‼︎だ、だったら私は芽衣先輩のお婿とソーマのお嫁さんでいくから‼︎」
「お前はお前で何訳の分かんないことを言ってんのッ⁉️」
謎の世界に飛ばされているのにも関わらず、揃いも揃って危機感のないふざけたグダグダに巻き込まれながらも何とか四人と一匹?は何やかんやでこの厄介な量子の世界の一端から抜け出す事に成功する。
その道中で芽衣はヨルムンガントにいた時の話をし、最終的に組織のやり方に賛同できなくなった芽衣がヨルムンガントを抜けるときに聖痕計画による影響で意識を奪われてソーマ達と同じようにこの量子の海の世界に迷い込んでしまったというのだ。
しかも話によればヨルムンガントが実行している聖痕計画はもうすでに進行しており、すでにじわじわと地球に住む何割かの人々の意識が夢の世界に誘われており、最終的には人類の意識が集合して"精神のアダム"と呼ばれる巨人の生命体へと進化するというらしい。
しかし、今現在ソーマ達は量子の海に迷い込んだままであり、計画を阻止する手段がない為に一刻も早くこの世界から抜け出すことを急いだ。
その後、芽衣の説明やブローニャの考察などを交えながら出口を探して行くと、出てきた先には無機物な草木も生えてない高原とクレーターの残骸が見え、見慣れない遺跡や、オーバーテクノロジーで作られたような機械装置も確認された。
そして同時期にソーマ達と同じような形で量子の海に迷い込んだ識の律者とも遭遇する。
「...ようやく地上らしき場所を出たと思ったらなぜか一面空が宇宙空間になってるし、なぜかここから地球が見えちゃってるし。そしたら今度は前に一戦交えて別れたはずの律者の友人に出会うし...もう訳が分かんないな」
「それはこっちのセリフです。まぁ、こんな形であれソーマに会えたのは喜ばしいけど...まさかキアナ、貴方にも会うなんてね。う〜んこれを機に貴方達にリベンジを申し込みましょうか?」
「おいおい、こんな所で仲間割れを始めるなっての。それで識、今どんな状況になっているのか教えてくれるか?コッチは量子の海に迷い込んだままで何が起こったのか全体像がよく把握できてないんだよ」
「別にいいけどコッチも訳の分からない状況になっているからあまり期待しないでよ?一応私が見た状況は...」
識の話をまとめるとソーマ達と同じように場所は違えどこの月面基地のような場所に飛ばされてきており、彼女もここから出る手掛かりを探している最中だったようだ。そしてその過程でこの月面基地にいる人間と何人か遭遇したが皆、時が止まったように静止まっており、自我も長い年月で摩耗してるのかほとんど存在していない状態であったという。おそらく聖痕計画の影響で肉体だけを残して意識が持って行かれている可能性があるが、そもそもここ自体が自分達のよく知る世界ではない平行世界であると言う真実が出てきた。
「つまり俺達は何者かによって無理矢理平行世界の月に意識も体も連れてこられたってことか。いや、もう無茶苦茶で訳がわからん」
「それだけではありませんよ?何故か私達のような律者の力を持つ者たちばかりがこの地に一箇所に集まっているんです。明らかに私達がいると都合が悪いってことがあるんでしょうね」
「う〜ん、とりあえず事態は飲み込めたけど結局はこの並行世界から脱出しないといつまでもここに閉じ込められたままってことだよね?」
「おそらく何処かに出入り口になるゲート的な物があるはずですが...」
「多分、探し出すだけの簡単な方法では済まないと思うわ...」
「このようなことを仕掛けてきたケビンは絶対に後でボコボコにしてやるのは確定として...一応この世界で唯一生きている人間がいるのでソイツを当てにしたらいいと思います。...まぁ、アイツを頼るのは癪に障りますが」
どうやら識はこの月面基地を探索した道中に生きている人間を発見していたらしい。どうにかしてその人物に会えないかと確認してるとその当の人物が現れる。
「初めてましてね、別世界の英雄さん達。私のことは"メイ博士"って呼んでちょうだい」
施設前から現れたのは理系の白衣と衣装を身に包んだ芽衣にびっくりするくらい瓜二つにそっくりな女性が現れた。
「ウソ...芽衣先輩にそっくり...」
「もしかして芽衣の親族の人?芽衣やキアナといい、そっくりさんが多すぎない?」
「ちょっと違うけどあり得るかもしれないわね。存在は知っていたけどこうして対面すると変な気持ちね...」
「名前まで同じだと余計にややこしいですね」
メイ博士はこの世界に閉じ込められた自分達を元の世界に返すキッカケと手段を教えると言ってくれた。その為には自分達の協力も必要なのだという。ソーマ達はようやくこの平行世界から出て行く為の手段を得る為にこの世界の唯一の人間であるメイ博士と行動を共にする事になった。
・メイ博士
五万年前の火を追う十三英傑と共に闘い、貢献してきた陰ながらの実力者であり、科学者でもある。神の鍵や融合戦士など崩壊と戦う為の対抗手段や技術を生み出した功労者であり、実はかなり早い段階で当時のヘレナもつ聖黒の律者の力の正体を見抜いており、聖黒の律者と聖白の律者がもつ力が終焉の律者に影響を与える切り札にもなる得るという事実を把握している。
・精神のアダム
聖痕計画によって形成されたある種の人類という集団をひとつに統合した巨人の生命体。この状態では人類の意識は生物で言う所の細胞体でありそれらが集まって巨大な生命体として完成を遂げる。しかし、集団ではあるが一人一人の個は存在せず、細胞と同じ自我のない存在として成り立っている為、人としては死んでいるのと変わらない。
内容は異なるがイメージとしては他作品であるエヴァンゲリオンシリーズに出てくる人類補完計画のリリスみたいな巨人の姿?に共通している。
・ヴルム(人形?形態)
聖痕計画による影響の余波でによる変質した姿で登場。元のドラゴンのような姿から小さく小柄な体型に変身した事で言語能力や体を小さくできるようになった。ただし疲れやすい体になってしまったのが唯一の不満らしい。
可愛らしい女の子の姿になっていた事から性別的にメスだったという事実が最近になって判明した。