最近、スタレのガチャでキュレネが来ました。オンパロス編をあまり進めれてないけど、もうストーリーが終盤に差し掛かっているってマジですか?
虚樹の残骸を解析したプロメテウスの手によって現実の世界と繋ぐ虚数のパスを形成することに成功し、ソーマ達はすぐに行動を開始する。
別世界を繋ぐゲートの門先で侵入者を排除する虚数の守り手に立ちはだかられるが、4人の連携でなんとか撃破に成功する。
ただ道中、ソーマの様子がやや不自然におぼつかなかったが今のところ、問題はなかった。
「...」
「ソーマ君、大丈夫?もしかしてどこか具合が悪いの?」
「え?...ああ、いや、大丈夫...だ。問題ない」
「本当に大丈夫なんですか?兄さん」
「大丈夫だ。ちょっと慣れない環境に疲れているだけかもな。はは...」
明らかに無理している雰囲気を醸し出しているが今は現実世界にいるビアンカ達のいる所に戻ることを優先すべきであると芽衣とブローニャは考えを切り替え、今いる世界の泡の住人であるメイ博士とプロメテウスに別れを告げる。
「貴方達がケビンや終焉に勝てる事を祈っているわ」
【別世界の私にもよろしく伝えておいてください】
その後、全員で虚数のゲートを渡り歩き何とか無事に現実世界の月面基地、ニューアトラと呼ばれる場所に帰還する事に成功する。
現地でキアナやソーマに律者コアを利用した精神パスによる通信テレパシーを送っていたビアンカ本人やゼーレ達とも合流する事が出来たが、まだ例の聖痕計画の首謀者であるケビンの居場所が突き止められずにいた。
「ソーマ‼︎キアナさん‼︎」
「ビアンカ姐さん、よかっ...グエッ‼︎」
「デュ、デュランダルまって‼︎死んじゃう!私達死んじゃうから⁈」
もはや感動の再会のあまり、ビアンカは己のトンデモ怪力で2人分まとめて抱き上げてしまう。しかし馬鹿みたいに力強い為、ソーマとキアナ揃ってビアンカのハグに殺されかけるという間抜けな展開を迎える。
「ちょ、ちょっと落ち着いてデュランダル‼︎あの子達死んじゃうわよ⁈」
「あ、あわわわっ⁈デュランダルさん落ち着いてください!」
「ご、ごめんなさい‼︎私としたことが再会の嬉しさのあまりに...!ふ、ふたり共大丈夫ですか⁈」
「だ、大丈夫...」
「ま、まさか数年ぶりに姐さんにハグで殺されかけるとは...」
「な、何というかデュランダルさんって随分とパワフルな人なのね...」
「まさかキアナだけじゃなく、兄さんごと持ち上げて回すなんて...恐るべし」
「えぇ...何あの怪力?朴念仁の奴といい勝負してんじゃないの...?」
再会に一悶着あったが、お互いに月面基地に連れてこられたビアンカ達の身に起こった状況とソーマ達が経験した別世界の状況の話について情報交換を行った。
やはりというべきかケビン達ヨルムンガント側は聖痕計画の進行の為に地球に住む人類全体を聖痕空間と呼ばれる意識の世界に飛ばす為に事前に聖痕空間を広げる力を持つ聖痕覚醒者を選別して月面にあるこのニューアトラという名のある種のノアの方舟にあたる本基地で彼らを隔離し、対して逆に聖痕空間に悪影響を及ぼす可能性がある律者達を別世界...量子の海を通して存在する世界の泡へと隔離させ、こちらの現実世界に干渉できないようにすることで不穏分子を消しスムーズに計画を推し進める事が出来たというのだ。その為、もうすでに計画はかなり進行が済んでおり、後は代表者であるケビンが自ら終焉の力を奪い取り制御する段階まで進んでしまっているらしいとされている。そしてデュランダル達と同じくニューアトラ基地に飛ばされてきたフカが実は現在進行形でケビンの作戦行動を阻止している真っ最中だというのだ。
「フカ師匠が...やっぱりメイ博士の話で言ってた通り、時間をかければかけるほど俺たちの方がかなり不利になってくるのは本当だったか...」
「でも肝心のケビンと委員長が何処にいるかも分からないのでどうすれば...」
「...一応、私やソーマに委員長から伝授した太虚剣気の力で委員長の気を感知する手段があるから居場所を特定する手段はあると思うよ。その後にみんなでケビンの奴をぶっ飛ばせばいいんだよ」
「...キアナさん、倒すのは構いませんが流石に相手を甘く見過ぎです。あの男とは過去に一線交えたことがありますが私でも倒し切るどころか圧倒すらしてきたのです」
「そうだよ。キアナ、心意気はいいけどもっと慎重に相手の事を分析しないと。今の私達が束になっても勝てるかすら怪しんだから」
「あ、あはは...そうだよね」
「フカ師匠が今でもケビンと拮抗し合っているくらいだからな...ありえるか」
皆ケビンという未知の脅威に対して警戒を気にかけるように対策とどう攻略するかを意見し合っていると、慎重すぎるデュランダル達の考えにウンザリしていた識の律者が口を指す。
「ああもう、貴方達あんな奴にどれだけ過剰に過大評価してるの?ケビンの奴なんて別に私がいれば充分に勝てるんだから考えすぎなんですよ。そもそも私はケビンと同じくらいの強さを持っています!」
「え?お祖師さ...いや、違う。アンタは確か...識の律者?」
「ん?へぇ...貴方、あの朴念仁の一番弟子の...昔は結構威張ってたのにそんなにビビってるんだぁ?」
「だったら何?」
「なになに?喧嘩でもしたいのかな?」
何故か険悪な雰囲気になり、喧嘩腰になり始める識の律者と睨み続ける李素裳のふたり。どうやらこのふたりには過去になんらかの因縁があるらしい。
「な、何だか識ちゃんって素裳に対しては随分と厳しい態度をとるよね?...もしかしてカロスタンでの_ムグッ!」
キアナが何やら爆弾発言をしでかしそうだったので素早く芽衣がキアナの口を手で閉ざす。
(しー、キアナちゃんダメよ!)
(こういう時は痛い所をつかないべきです、バカキアナ)
(え?な、なになに?なんかあったのか?)
(兄さんも余計な事を気にしないください。彼女達の問題なので)
(下手な詮索はしない方が身の為よ、ソーマ君)
(そ、そうか。なら黙っておくよ)
しばらくして識の律者が素裳との睨み合いをした後、飽きてきたのか意識を自分達にも向けてきた。
「貴方達もだよ?ケビンと対峙するからってそんなに自信を無くす必要なんてある?さっきも言ったように私ひとりでもケビンと互角なんだし、こんなに人がいるんだから恐れる事なんてないでしょう?」
「「互角?」」
識の律者自身の過大評価な発言に芽衣とソーマは訝しむ。流石に大口を叩きすぎたのか識の律者はあれこれ言い訳してまだ全力を出してないだの、奥の手があるだのと語り出す。
「識の律者、私達は別にケビンを恐れている訳ではありません。だからこそ事実に基づいてお互いの差を語っているんです」
「チッ...生真面目だね。よく考えてみて、それも恐れて手も足も出ない状況と同じでしょ?ここで私なりに一つアイデアがあるんだ」
「ん?何があるのか?」
「ふふん!よくぞ聞いてくれましたソーマ!まずは...」
識の律者の作戦内容はこうだ。この場にいる全員が抱いているケビンに対する恐れや恐怖を識の律者の力で源を排除することで恐れずに全力でケビンにぶつかれるという『皆でドーパミンを服用してバーサーカーになろうぜ‼︎作戦』を提示してきた。そしてそのどさくさに紛れ込んで背後からケビンを仕留めるという頭がいいのか悪いのか何とも言えない穴だらけな作戦であった。
当然、デュランダル達に無茶苦茶にダメ出されてしまい、識の律者は不貞腐れる。
「ま、まぁ、お前なりによく考えた作戦?じゃないか」
「ふん...どうせ貴方も本当は私のアイデアに不満タラタラでしょ...あ〜あ、みーんなムキになっちゃって」
「めんどくさいなコイツ...」
不貞腐れた識の律者を眺めて呆れていると、ソーマの意識からくる気から何かを感じ取る。
(ん...?何やら負の、感情を感じる...まるで何かに苦しんで苦戦しているような...いや、待て!これは...フカの気?不味い、苦しんでいるって事はっ!)
教えの師であるフカきら伝授した太虚剣気から感じ取ることのできる気の気配からフカがかなりピンチに追い込まれているのを感じ取れた。それは同じくフカから生まれてきた識の律者が感じ取れないはずがない。振り向くと識の律者はすでにフカからの異変をすぐに感じ取りすぐにその場を去り始める。
(ソーマ、私はあの朴念仁の元に向かうので後は任せます。貴方達じゃ間に合わないからね)
(え?ちょっいきなり⁈)
ソーマに念話で事を伝えた後、すぐに識の律者は消えてしまった。
その後、遅れて素裳とキアナもフカの気を感じ取ったのか同じく険しい顔になる。
「キアナ、貴方も感じ取った?」
「うん、私達のような太虚剣気の習得者だけが感じ取れる気で委員長が苦戦している感覚が伝わっているよ。...識の律者がいきなりこの場を離れたのも私達じゃ間に合わないからだと思う」
「ならば急がないといけないわね」
「急ぐのは分かりますが基地の守りも必要です。ヨルムンガントの灰蛇という存在がいつ襲ってくるか分かりません」
「なら、ゼーレが残ります!この基地に詳しいのですぐに対応できます」
「ああ、助かる。俺たち律者組はそっちの状況がまだ分かってないからな」
人員を整理して待機班とケビンとフカがいる元へ向かう班で分かれて行動を開始するが、その時例の2人が戦っているのか、巨大な爆風と隕石の残骸が近くで降り注いでいた。付近の地盤が抉れ巨大なクレーターが出来上がっており、想像以上にケビンの強さを全員身に感じ取った。
「...アイツはいつから隕石を落とせるようなヤバい技を手にしたんだよ。...キアナ、お前ならあの攻撃は避けられそう?」
「...分からない。でも分かったことはケビン本人がもうすでに終焉の力を手にしていて私達が思っているよりもかなり危険な状態なのかもしれない」
「厄介ね、でも今なお委員長がその場で戦っている以上急がないと手遅れになってしまうわ。おそらく彼女はケビンとの過去を知っているから自らケビンの元へ向かったのかもしれないわね」
「そうだね。委員長を助けないと...ケビンに聞かないと分からない崩壊の真実もあるはず」
「...そうだな。ケビンに...真実を聞かないと...」
元凶であるケビンがいる場所は地下に続いているのか施設のエレベーターを使わないと向かえない仕様となっていた。終焉のエネルギーの影響を受けているのかエレベーターの動きに不調をきたしていたがその場にいるブローニャの手腕でエレベーターの電子制御なんとかコントロールして見せた。
お互いにこれから向かう先にいるであろうケビンや未知の敵との戦いに気を引き締める。
「あーもう!何なんだよこれ⁈」
「これはまた...変な空間にたどり着いたね」
「まるでゲーム内の迷宮ダンジョンのようですね」
悪態ついているソーマが見える先には電子的な空間にブロックのように張り巡らされた迷宮が続いており、上下感覚すら狂っていた。デジタルな無機質な世界な為か同じようなものに見えてきて感覚が狂いそうにもなる。
「まさかあの男にここまでの力があったなんて...」
「おそらくケビンが創り上げた虚数空間の一種なのかもしれませんね。皆さん、くれぐれもはぐれないように。特にソーマ、貴方の場合はぐれたら最後、本気で永遠にこの空間を彷徨ってそうなのでしっかりと私の手を繋いでてください」
「怖いことを言うな‼︎っていうかやめてくれ!もうそんな歳じゃないんだぞ、みんなが見てるし...!」
事情を知っている芽衣やブローニャは何故か生暖かい目でこちらを見ており、素裳は何故そこまで大袈裟に手を繋ぐのか不思議そうに眺めていた。いつもならここでキアナが私が代わりにやる!と率先してくると思っていたが今はいつもと違って不思議と静かだった。
「ねぇ、なんでデュランダルはそこまでソーマに過保護に対応するの?ちょっと疑問に思っちゃって」
「そういえば素裳さんは知りませんでしたね」
ブローニャは素裳にソーマの事について話すとその後納得した様な顔をこちらに向ける。
「まさか、デュランダルとソーマが義理の姉弟だった事にも驚きだけど、方向音痴の話を聞くとそりゃそうだと納得しちゃったよ。ソーマ、悪いことは言わないから絶対にデュランダルの手を離しちゃダメだよ?」
「ア、アンタまでそっちの味方をするのか⁈」
結局、ソーマの反対の声も虚しくこの空間を脱出するまではしばらくの間、仲良く姉と手を繋いで移動する羽目になった。道中で人形の刺客が現れたりもし、移動、接敵、と言った感じで探索で同じ繰り返しが続くがいつまで経っても全然出口らしきものが見当たらなかった。それどころか景色が変わらない、又は引き換えそうとするとさっきまで通った場所の位置が変化していたりとかなり厄介な状態に陥っていた。
「何だか進めば進むたびに迷宮が変わっていってない?あまり進んでいるようには思えないんだけど...」
「昔遊んだことがあるローグライク形式のダンジョンゲームを探索してるみたいだね」
「というより、何だか空間が少しずつ広がってないかしら?」
進めば進むほど迷宮の空間が大きくなって行ってるように感じるという違和感にさすがに全員が感じはじめてきていた。
「...まるで宇宙空間のように膨張し続けてますね。もしかするとこのまま永遠に膨らんでブローニャ達の移動速度より上回ってしまう可能性も...」
「やめろやめろ、恐ろしい事を想像するな!ほんとにそうなちゃったらどうすんだ」
「むう、宇宙理論というのは結構浪漫のある話なのですが...」
「はぁ...せめてタイミングを考えろ。余計にみんなが不安になってしまうから」
その後も探索を続けるがいつまで経っても終わりが見えなかった。その後、別の策としてキアナやソーマが持つ空の律者と聖黒の律者の力を利用して空間操作を利用してこのエリアを脱出しようにもうまく力を発揮出来ないことに今の状況に違和感を覚え、デュランダル達は一旦探索方法を変えてみる事にした。
「あくまでも私の想像ですが私や素裳さんのような聖痕覚醒者と貴方達律者の力を持つ者同士が集まっているせいでお互いの力が相殺されてしまっているのではないでしょうか?」
「そういえばメイ博士やプロメテウスの説明でお互いがプラスとマイナスのような存在だからなんか力を打ち消しあっちゃうとか...?」
「多分それだな」
「うーんなら、一旦私とデュランダルで別れて別行動を試してみる?」
少し不安だったが、一旦ソーマ達はその場に待機してビアンカと素裳だけでその場を離れる。その後、しばらくするとそんなに時間が経ってもいないのに彼女達はソーマ達の元へ帰ってきた。
「え、はやっ⁈まだそんなに経ってないはずなのに...」
どうやらソーマ達がいる場所、又は律者であるソーマ達の間では時間が流れておらず、ビアンカ達の方では移動中それなりに時間が経過してたというのだ。そしてビアンカ達は道中にて地球に向かう入り口らしき道を発見したらしく、聖痕覚醒者の特別な能力というべきか聖痕計画が発動している最中の地球にビアンカ達が向かう事で直接聖痕計画を阻止することができる人間を助け出し、無力化された地球から少しでもケビンや終焉の律者に対抗する戦力を構築するつもりらしい。
「それにしてもまさか帰ってきてそうそうに地球に向かうために歩いていくって聞いた時は、素裳さんアンタも姉さんと同じ人種か、と疑ったよ」
「私が何ですって?ソーマ」
「いえ何でもないですビアンカ姉様!」
「あはは、まぁそう思われるのも仕方ないけどね。けどこれで私達の方で聖痕計画を妨害する手段と戦う為の戦力を手に入れられるのだから」
「そうだよね。聖痕計画を発動されて後手に回りっぱなしだったけどようやくケビンに反撃する手段が取れるよ」
「ここでしばらくはデュランダル達とはお別れね」
「どうかふたりともご無事で」
その後はビアンカ達、聖痕覚醒者チームとソーマ達、律者チームに別れて別行動を開始する。
互いに離れたおかげか、無事全員で月の地下遺跡の出口に辿り着くが出口のすぐそばで見知らぬ新たな来客が訪れる。パチパチと手を叩きながら此方に訪れるのは長い白髪をした特徴的な衣装に身を包む女性だった。ソーマはその人物を見た時、不思議と既視感を感じた。
「こんにちは、勇敢なる英雄さん達。少しここで休憩していかないかしら?」
「あれ...?あの人、なんか...姉さんやキアナのお母さんに似てるような...」
「あら、なかなか見所があるわね、君」
「誰なのあの人?」
「...知ってるわ。貴方、ヨルムンガントの計画実行者である、"ウサギ"でしょ?」
芽衣に"ウサギ"と呼ばれた彼女は以前芽衣がヨルムンガントに所属していた時に一度だけ目を合わした事があった為に存在だけは認知していた。
「あら?知っているのね。一応礼儀として自己紹介しておくわ、私はヨルムンガントに所属する幹部の担当、コードネームは"ウサギ"。本名は"ミステル・シャニアテ"よ。今の聖痕計画の状況と私の事について話しておきましょうか」
「...シャニアテ?」
「キアナのお母さんと同じ姓、だな...」
彼女、"ウサギ"の話では今回起こした聖痕計画で地球上にいる人類を聖痕空間という夢の世界へ誘った実行者の張本人であり、ドリームキャッチなる方法で人間達の意識をかき集めて精神のアダムという存在を創り上げたという。そして肝心の彼女は人間ではなく、"イデア"と呼ばれる新人類に該当する存在として生まれてきた。つまり、"ウサギ"は聖痕計画によって意識を聖痕空間に統合されて消滅した後の地球に降りてくる予定の次なる人類種のベース体のような存在なのであった。
そしてもうすでに計画はかなり進んでおり、どのみちキアナ達がケビンを倒さない限り、計画の進行をストップさせることは出来ないのだという。
「一通り説明したけど、改めて警告するわ。今の貴方達ではケビンに勝つ事は出来ないわ。それでも行くのかしら?」
「当たり前だ。もとよりケビン本人に会わないといけないこともあるからな」
「私達はただ戦うだけじゃなくてケビンと話を事も大事なの」
「キアナちゃんの言う通り、私達は戦うというよりも対話に近いわ」
「ブローニャ達はここで立ち止まるつもりはありません」
「...分かったわ。なら貴方達を尊主の元へ案内してあげる。そこで貴方達の思いをぶつけ合うといいわ」
キアナやソーマ達の話を聞いたウサギ本人は彼らの話を受け入れ、ケビンの元へ案内する。
幻想的な遺跡の広場にてひとりだけその場に佇む男の姿があった。しかしその男は人間にはない大きな二対の角に巨大な翼、長い尻尾といったキメラのような又は竜人のような姿を彷彿とさせる異質な姿をしていた。そんな人ならざる姿をしている彼こそが例のヨルムンガントの尊主であるケビン・カスラナ本人であり、そしてかつて前文明にて崩壊を相手に戦った火を追う十三英傑の元生き残りである。
その彼が片手に大きな大剣、オリジナルである「天火聖裁」を手にしながらただ静かに何かを待っていた。
「...来たか」
彼がそう口にすると複数人の足音とともに遺跡の広場からケビンに対抗する者達が現れてきた。ようやくソーマ達がここまでやって来たのだ。ケビンの姿を見た本人達はその変わりきった姿に驚くが警戒を崩さなかった。
「...来て早々確認したいことがあるだろうから先に伝えよう。...フカはここにはいない」
「いない...?」
「彼女は僕が尊敬する同胞の生き残りの1人だ。今は別のところで休ませている...」
来ていきなりこっちの気になる要件をケビンは先に伝えてきた。分かってはいたがやはり彼は此方が来るだろうという事をすでに予測していた為かケビンの元までやって来たソーマ達に何ひとつ表情を変えずに質問に応じてきた。
ケビンの元へやって来たソーマ達に対して語ったケビン達が行う聖痕計画の正体...それは今を生きる現人類の意識を統合し、ひとつの生命体に統一する事で人類の文明を何度も滅ぼし輪廻させてきた存在と同類のレベルに昇格することであった。それは正に崩壊というシステムを生み出した存在が望んでいる目的そのものであり、いつその輪廻から外れて滅んでしまうかもわからない瀬戸際である現人類の文明の滅亡を回避する為に用意された策であり、同時に大きな犠牲の代価が前提の計画でもあった。
「...僕達が生きる星はある種の終焉の力を創り出した存在によって何度も文明は滅び、輪廻の道を繰り返している。...どんな生き物も「絶滅」と「停滞」、どちらか一方しか選べない。...それが人類でも例外ではない」
かつて太古の地球で恐竜が栄えて滅び、生き残った個体がのちの鳥類へと進化を遂げて生き延びてきたように人類も大多数が滅ぶ事でウサギのような"イデア"と呼ばれる生命体や聖痕覚醒者のような例外が生き残る事で彼らが人類の文明の存続を担うことになる。つまりは今の人類を全員物理的に助ける事が不可能なので代わりに存続に必要な文明という火種だけを残して残りの人類は肉体を捨てて代わりに聖痕空間という世界で存続してもらうというもので、それを人工的に行うのが聖痕計画の正体なのである。
「それでその運命を回避する為に聖痕計画を選んだの?」
「そうだ。代価を支払って崩壊に勝つ。しかし、それこそが今の人類の課題だ」
「...本当にそれが正しいことだと思っているのですか?」
「もちろん違う。だからこそ君たちにはそれを否定して見せてほしい。聖痕計画は最低な計画であるという事を...僕は君達が障害に打ち勝てる事を期待しているんだ」
ケビンは言い終わると自身の持つ天火聖裁を構えて剣先をソーマ達に向ける。
「これはあいさつ代わりだ。これから君達が戦うことになる相手の実力をその身にしっかりと刻むといい」
気がついた時にはその場にいたケビンが一瞬で加速し、一番先頭にいたキアナに目掛けて炎の力をまとった天火聖裁を振り下ろして来ていた。
「「キアナ‼︎」」
咄嗟に動いた芽衣とソーマがキアナの前に入り込み、お互いの得物を盾にしてケビンの一撃を受け止める。
「ッ⁈」
「前より強くなってる⁈」
律者であるふたりがかりで防いでいるのにも関わらずケビンは単独でじわじわと芽衣とソーマを押し飛ばしていた。
拉致が開かないと判断したふたりは受け流す形でその場を離れる。そのタイミングで体制を持ち直したキアナがケビンに目掛けて同じく薪炎の力をまとった大剣でケビンと剣技を斬り結ぶ。激しく爆炎と剣同士の金属音がぶつかり合う音と火花を散らすがキアナが苦戦気味なのに対してケビンは片手のみで振り回すという余裕ぶりを見せる。つかさず後方からブローニャがレーザービットを大量に建造しながらレーザーの弾幕でケビンの動きを妨害するが同じくケビンは氷の力を凝縮した氷の槍の弾幕を生み出してブローニャのレーザービットを相打ちする形で槍の弾幕を飛ばして次々と撃ち落としていく。
手の空いた芽衣とソーマは隙をついてケビンに斬りかかるが、ケビンは迎撃をいなしながら片手間に2人がかりの連携攻撃を苦しげもなく受け流す。芽衣が神速の雷撃の剣撃を放ち、続いてソーマがその隙間を埋めるように聖黒のエネルギーの力をまとった必殺の槍の神速の連続突きをかます。流石に隙のない練撃にケビンも防御行動を取るが攻撃だけでなく防御力まで強力なのか攻撃をガードしている巨大な翼にすら傷が通らないという有様であった。それどころかケビンから感じ取れるそこが全く見えない無尽蔵な根源の力がより強く感じられた。
「全く攻撃が通らない...!まさかコレが、"終焉の力"‼︎」
ソーマはケビンから感じ取れる底知れない力が終焉そのものであると勘付いた。同時に初めての筈なのにその力に不思議な懐かしさと既視感を強く感じた。
「そうだ。これこそが終焉の力...僕達人類が戦い破れ去った最大の天敵ともいうべき存在だ。終焉からすれば僕達はそこらの草木や小石のような存在に過ぎない...」
ケビンはそのまま氷の力を纏いながらその場を一瞬にして氷結の世界に作り変え、ケビンを除く全員を一瞬にして氷漬けにしてしまう。
「律者も僕の前ではその程度か...」
全員が氷漬けにされたことで満足に動くことが出来ずに時間だけが経過してしまうが薪炎の力と蒼炎の力を持つキアナとソーマが力任せに必死に炎を纏わせながら氷結した氷を融解させる。
「炎の力は...みんなの炎はまだ、消えない‼️」
キアナは薪炎の力を最大限に解放しながら大剣を構える。後から遅れてキアナが氷の柱から解放されるのと同じくソーマも氷柱からの脱出に成功する。対してそれに気づいたケビンは空へと浮遊しながら最大級の氷結した氷の大槍を上空を埋め尽くすほどに創り出し、隕石の投下の如くふたりに容赦のない弾幕攻撃をかます。
「ソーマ‼︎」
「ああ!合わせるぞ‼︎」
互いに側に並びキアナが薪炎の力を最大限解放しているのに続いてソーマも蒼炎の力を最大出力で展開させる。手にしている対極陰月を天火聖裁・模倣へと形を変え、キアナとともに大剣を振るうタイミングを図る。
数と質量の暴力とも言える氷の弾幕が射程範囲内まで飛んでくるのを確認したキアナはソーマに心で合図を送りながらふたりで同時に最大の一撃を放つ。
「今だ!...「天火...聖裁‼️」」
キアナとソーマが叫ぶのと同時に互いの大剣を氷の弾幕に目掛けて振るう。膨張した紅い炎と蒼い炎が混ざり合いながら氷の弾幕とぶつかり合い、限界を迎えたエネルギー同士の衝突で大規模な大爆発を引き起こし、まるで小さな太陽熱源の如く上空を照らし続ける。
うまく引き付けたおかげで全ての氷の弾幕を迎撃し、その熱の余波から結果的に氷柱から脱出に成功した芽衣とブローニャも戦線復帰し、今こそ反撃の時と隙を見せている上空にいるケビンにキアナとソーマが跳び上がりながら攻撃を仕掛けていく。そのままケビンを地上にまで叩き落とすことに成功し、そこから芽衣やブローニャも加勢に入りながらその場にいる全員でケビンに同時攻撃を仕掛ける。
「...やはり、まだこの程度か」
「「ッ⁈」」
ケビンから溢れ出す膨大な終焉の力に恐怖を感じ取ったキアナとソーマが一瞬身を怯ませると同時にエネルギーをまとった強烈な衝撃波が発生し、その場にいたソーマを除く全員が吹き飛ばされる。
「なッ⁈キアナ!芽衣!ブローニャ!」
想像以上に強力だったのかそのままキアナ達は遺跡の岩盤に叩きつけられように吹き飛ばされてしまう。かろうじてソーマは咄嗟に手にした対極陰月を地面に突き刺してその場で堪えたことでその場に留まる事に成功していた。
「やはりまだ君達では終焉を乗り越える事は出来ない。だか、戦いはまだ始まったばかりだ」
ケビンはそう告げたあとソーマに視線を向ける。ソーマはケビンに武器を向けて警戒をするがケビンは特に攻撃を仕掛けてくる様子は無かった。
「ソーマ...君はその力を受け継いだとはいえ様々な困難に対面しただろう。よく耐えてくれたと思っている。ヘレナ...彼女もおそらく喜んでくれているだろう。だか...今は、世界は滅亡の危機に迫っている。崩壊を生み出した存在が残したイレギュラーに...」
「イレギュラー...?ケビン、アンタはいったい...」
「...聖痕計画が成功しても失敗しても、滅亡の運命を抱えている。だからこそ君が必要だソーマ」
「俺が?どういう事なんだ?教えてくれケビン、いったい何を隠している?」
ケビンはソーマの疑問に素直にことの真相を話す。人類の文明を滅ぼす形で残されていた終焉の律者からの置き土産である"崩壊の繭"。本来は崩壊の繭は人類に敵対的な存在である崩壊獣や上位的存在である律者を産み落とす母体のような存在であり、それらには明確な自我や意識はない。
しかし、その繭からなんらかの異常事態が確認されるようになり、ヨルムンガントや前文明からの観測では、それは崩壊の繭から想定外の崩壊エネルギーの膨張、肥大化が進んでいたという。それらの変化の様子はまるで年老いた星に起こる特有の現象..."赤色巨星"に似たような状況であり、このままでは崩壊の繭は腫瘍のように肥大化を続け小型版の超新星爆発を引き起こすことになるという結果の計算が引き出されているというのだ。それらは終焉の力を取り入れたケビンを持ってしても制御しきれない程に溢れており、終焉の力を完全に取り込んで使いこなせた頃にはもうすでに崩壊の繭からの超新星爆発...もとい、"崩壊爆発現象"を引き出した後になったあとの未来を迎える事になる。
「それだと...どうあがいても俺たち人類は滅びから抜け出すことができないってことになるんじゃ...でもアンタは俺が必要って...」
「ああそうだ。だからこそ僕達ヨルムンガントは君の持つ聖黒の力...そして聖白の力を目に付けた。君も知っているのではないか?"境界の律者"という存在を」
「ッ⁈それは...」
「...その様子だと誰かからことの真相を話されたようだな」
境界の律者の話を持ち出されたソーマはひどく怯えていた。まるで死刑宣告を受けた人間のような顔をしており、冷静では無かった。
「...ま、待って‼︎ソ、ソーマに...手を出さないでッ‼︎」
声のする方へ振り向くとそこには満身創痍で剣を杖代わりについて此方までやってきたキアナと遅れてやってきた芽衣、ブローニャの姿があった。
「ぐッ...ソーマに手を出したら...絶対に...絶対に、許さない...からッ‼︎」
「ソーマ...君、下がってッ...‼︎」
「兄さんは...やらせませんッ...‼︎」
絶対に彼の身に何かあったら絶対に許さないというキアナの強い信念と意思がケビンを強く睨んでいた。明らかにケビンの方が圧倒しているにも関わらず、そのケビンが思わず気圧されるほどに強い想いの力を感じていた。それはキアナだけでなく、同じように睨む芽衣やブローニャからも同じ気迫を感じ取られた。
だからこそか、ケビンは彼らに一瞬だけ哀しげな表情をした後、その場にいる全員に告げた。
「...この戦いは人類の存亡と、そこにいるソーマというたったひとりの人間の命を天秤にかけた戦いでもある。ひとりの命を引き換えに人類の滅亡の危機を回避するか...それとも彼ひとりの命の為に人類を捨てるか...それが今君達の選ぶ選択だ。僕もこんな残酷な現実を望んではいない...だか君達がその決断を取れなければ、僕が直接彼の命をもらう...。僕を全力で恨んでもらっても構わない、結果的に殺されても切り裂かれても構わない...それで人類が助かるのなら僕ひとりが恨まれるなんて安いものだ。...だが君達なら、あるいはそれらの解決策があるのかも知れないだから君達には期待いるんだ。誰一人犠牲になく崩壊に打ち勝てる術を...その時が来ればまた僕の元へ来るがいい」
そう言いながらケビンはもう一度大剣を振い、衝撃波で今度こそ全員を吹き飛ばすが、そのタイミングで意識空間で待機していた識の律者とフカが現れ、ソーマ達を逃す為にケビンの攻撃を妨害している間に、彼らの戦いの様子を眺めていたウサギことミステルが現れる。
「...やはり、こうなってしまったわね。...アナタも随分と厄介な運命の歯車に巻き込まれたわね、ソーマ。今は静かに眠りなさい、大丈夫...皆、無事よ」
受けたダメージと精神的苦痛からソーマはミステルに目をそえられ意識を闇に落とす。これから自分は死とどう向き合えは良いのかと思い続けるがソーマの意識が無くなるまで自身に問いかけ続けた。
ー貴方の苦しみ...しっかりと感じ取ったわよ。この素敵なピンクの妖精さんが助けてあげるわ。近いうちにお会いしましょう、ソーマ♪ー
ソーマの意識の視界に一瞬だけピンク髪の少女の姿が見え、囁き掛けるように此方を見ていた。