...ソ...ーマ!......ソーマ!しっかりして!!」
「...のわぁっ⁈ちゃ、ちゃんとゴーヤジュース用意するから食べないでくれッ!!...あれ?テリテリは?って、...ここは...」
「あ、やっと目が覚めた!もう、ほんとに心配したんだから!」
「あ...俺どれくらい意識を失ってたんだ?後ここは?」
「そんなに慌てなくてもちゃんと説明するから。えーと、確か...」
月面にてキマイラの力と終焉の力を取り入れた業魔の姿をしたケビンを相手にソーマ達は手も足も出せずに叩きのめされた後、ケビンにソーマ自身に対する真実を告げられた後そのショックで意識を失う。
気を失っていた間、キアナの話によるとソーマを保護しながら月面にて出会ったミステルによって安全地帯に隔離された。その後、今の自分達ではどうあがいてもケビンには勝てない事を突きつけられたキアナ達はミステルから提案してきた試練を受ける事になった。その結果、ブローニャは自身の身に宿す理の律者の力である三十万に及ぶ意識の思想を目にし、その意思を託された事で今のブローニャは「真理の律者」へと目覚めた。
そしてそれとは別に地球へと向かっていたビアンカ達の方はまだ辛うじて完全には聖痕空間に侵食されていない極東支部のフレイア学園を中心にエリアの奪還に成功し、立て続けにネゲントロピーの基地を解放させることにも成功した。今はその場をもとに前線基地を設けて「反・聖痕計画」作戦を立てていた真っ最中だった。
その他にも道中でついさきほどケビンによって警戒されて優先的に聖痕空間に閉じ込められていたキアナの父であるジークフリートを救出したばかりだというらしい。また更に、救出に参加したビアンカが実は本物のキアナ・カスラナ本人であり、本当の意味でジークフリートの実娘であったという事実が浮き彫りになったというのだ。
「...立て続けにそんなことになってたなんて...ごめん、しばらくの間、力になれなくて」
「そんなこと全然気にしてないよ。それよりも...今パパ達が集まっているから、今のうちにソーマの事を話した方がいいと思うの...」
「俺の事について...か。...正直、ビアンカ姉さんやジークおじさんの反応が怖いな...」
「...大丈夫、私がいるから。それに...私はもう絶対にソーマを失いたくないから。だから、メイ博士と話していた時の話を正直に吐いてほしいの」
「...見てたのか。...ああ、分かったよ。もうこれ以上皆を心配させたくないし...ちゃんと話すよ」
フレイア学園内のベットから起き上がり、キアナに手を繋がれてふたりでビアンカ達のいる場所へと移動する。
「...何だか久しぶりだな。以前は当時キアナが悪夢にうなされてここの保健室のベットに寝かされていたな。それで見舞いに来た俺がお前を落ち着かせる為に頭を撫でていたけど思い返せば俺ってよく恥ずかしげもなくあんな行動をとってたな...」
「そうだね。でも、私はすっごく嬉しかったよ。私は決してひとりじゃないって安心できたんだもん。それに今はソーマの方が逆の立場になってるから今度は私がソーマを安心させる番だよ。...私もソーマの頭を撫でた方がいいのかな?」
「やめてくれ。誰かに見られでもしたら恥ずかしさで死んでしまうから」
「え〜いいでしょ?それにソーマの頭に生えている角にも触ってみたいし...」
「そっちが本音かい」
過去の思い出話を懐かしんでいるとようやくビアンカ達が集まっている場所へ到着する。そこには見慣れた仲間とは別に数年ぶりの再会相手であるジークフリート本人の姿もあった。どう切り出そうかと悩んでいると隣にいるキアナが大丈夫と目線を送ってきた。一度深呼吸を済ませるとソーマはジークフリート達へと向き直る。
向かってきたソーマ達の気配に気付いたジークフリートとビアンカはソーマに声を掛ける。
「おお、ソーマ!お前もいたのか⁈無事だ...「ソーマ大丈夫ですか⁈何処か悪い所はないですか⁈」うぉっと⁈」
「ちょっ⁈姉さん⁈」
ひさびさの再会に声をかけるジークフリートの言葉を遮る勢いでビアンカがソーマの元へ真っ先に飛び込み、ペタペタと触られながら身の安全を確認されられるのに思わず苦笑いする。かなり心配をかけていたが大丈夫だと彼女に伝えたあと、再びジークフリートと顔を合わせる。
「ったく、ウチの娘は元気だな。ふぅ、それじゃあ改めてだな...ソーマ、元気にしてたか?」
「...ああ、元気いっぱいだよ、ジークおじさん」
「はは、相変わらずおじさん呼びか。...いい加減オレの事はお義父さん呼びしてくれてもいいんだぜ?」
「まだ籍どころか結婚すらしていないんだから呼ぶもクソもないでしょ?」
「何だ?てっきりもうキアナとくっついたと思ったんだがな...今も手を繋いでいるし」
「...キアナ、手を離してくれ」
「...ヤダ」
「キアナ?」
「...プッ、アハハハッ、相変わらずあの頃と変わってないなあ。懐かしいな、昔はキアナがいつも一緒にいないとヤダとか言ってたし、俺たち三人で生活してたときは唯一ソーマだけが家事や料理できるもんだからソーマをお嫁さんにする!とか当時キアナが言ってたもんな」
「うっ、あ、あれはその...」
「ジークおじさん...まだそんなこと覚えてたのか」
なんとも言えない恥ずかしい過去の思い出話を思い出し、キアナとソーマは行き場のない恥ずかしさで顔を赤らめながら手で顔を隠して悶絶していた。が、ソーマを安心させる為かキアナは繋いでいた手だけは離さなかった。
「私の知らない所でソーマにそんな過去が...何だかズルいです」
ソーマの隠れた意外な人間関係に少し羨ましそうにビアンカが呟いていると、しばらく談笑した後に、ソーマが真剣な顔でビアンカ達に顔を向けて話を切り出してきた。
「その...ジークおじさん、ビアンカ姉さん、実は大事な話があるんだ。...俺自身の秘密、律者の力、そしていま起こっている聖痕計画にも関わる重要な話なんだ」
「...そうか。詳しく...教えてくれないか?」
「...分かった」
「ソーマ...」
「...」
ソーマは自身の隠された真実を全て話した。自身に宿る聖黒の律者の力そして聖白の律者...。そしてその秘密とその正体を観測した育て親であるオットーからの話、更には世界の泡で出会ったメイ博士からの話から告げられた名前だけしか存在していない境界の律者の真実を洗いざらいに話した。
「...なるほどな、まさか娘達だけでなくお前さんにまでそんな真実があったとはな。...はぁ、つくづくオレたち一家や関係者ってのはいつも特大の爆弾みたいな厄をかかえてる奴ばっかりだよ。全くどうしたものか」
「ソーマ、貴方にそんな残酷な真実があったなんて...。それはどうやっても避けられない運命なのですか?」
「...理論の通りなら、今の崩壊の繭は終焉の力だけじゃ解決出来ないんだ。...時間が足りない、だからこそこの限られた時間で最悪の事態を解決させる為に...終焉の力だけでなく境界の力が必要なんだ」
「ソーマ...」
抱えていた自身の秘密を吐き出した影響か幾分ソーマの顔色は良くはなってきてはいるものの、やはり張り詰めた深刻そう表情はそのままだった。そんな中、ジークはソーマの近くまで近付くと少し乱雑ではあるものの大きな手でソーマの頭をぐしゃぐしゃと撫でる。突然の行動に驚いたのか顔を俯かせていたソーマがジークフリートの顔を見る。
「ソーマ、今までよく頑張ってきたな。...いけ好かないが、今はいないオットーの野郎もここに居たらオレと同じ事をしてだろうな」
ジークフリートから感じたのは確かなる父性だった。不器用ではあるが確かに間違いなく自身の子を愛する親が見せる優しさと愛情を感じた。血の繋がりがあるわけでもないにも関わらず、自身の子のように慰めてくれていた。
「ソーマ、お前にどれだけの過酷な運命が待ち受けていようともオレはお前に絶対そんな辛い想いはさせないし、絶対に死なさせねえよ。たしかに血の繋がりはねえがお前ともキアナに負けないくらいに深い付き合いだ。オレにとっちゃお前さんもオレの息子みたいなもんだ。...何より、キアナの将来の婿さん候補を死なせるわけにはいかねえだろう?」
「っな⁈」
「ソーマ、私もいますよ。苦しんでいる弟を姉が放っておくわけがないでしょう?それに今はネゲントロピーの博士達や天命の研究員もまだ現在です。何か対策を立てれるはず」
「ソーマはひとりじゃないよ。私やパパにお姉ちゃん、それに皆もいるから。ソーマは絶対に死なせない」
そう言いながらキアナはソーマにハグをする。後から遅れて反対側をビアンカがハグをし、最後にジークフリートが3人をまとめて抱き抱える勢いで豪快に抱きしめる。
「ほーら喜べ!オレ達全員からのハグだぞソーマ!今日からお前も家族だ!」
「ちょっとパパ、苦しいって!」
「お、お父さん、流石に重くないですか?」
「伊達に戦士をやってないさ!お前さん達3人分くらい...あ、すまん、ちょっとキツいかも」
「えっ、ちょっとパパ⁈」
「......プッ、...アハハハハ!」
この場でのやりとりに面白おかしくなってきたのか思わず笑いが出てしまう。それに釣られてキアナやビアンカ、ジークフリートも賑やかに笑い出す。
ソーマがこの世に生まれて今まで関わってきた繋がりは間違いなく彼に大きな愛情として本人を愛し、大事にしてくれていた。過酷な運命から始まった人生ではあるがそれと同時に彼を心の底から愛してくれる大事な人達に沢山出会えた。彼はこの世界の人達にしっかりと愛されているのである。だからこそ、ソーマは自身に待ち構える運命とは別にこの愛してくれる人達が住むこの世界を終わらせたくないという想いも強く膨らんでいく。
その後にあとから合流したアインシュタイン博士やヴェルト達、音信不通のまま安否が分からなかったテレサとも出会うことができ、お互いに再会を喜ぶ。
ジークフリート達に話した境界の律者の事に関しても博士達に伝えると、実は彼らもキアナが持つ空の律者の力を制御する為の対策を考案していた時と並行して水面下で密かにソーマの聖黒の律者の力とその正体を突き止め、対策案をいくつか作っていたというのだ。
「まぁ、正確に言えば僕達ネゲントロピーの技術だけでなく、オットー...君のお義父さんがこっそりと作っていたものを僕達が完全に実用化できるようにアレンジしたものだよ」
「俺達は、あの男には散々な目に遭わされた過去があるから素直には喜べないが、君のことを本当に愛し、大切に思っていたのはたしかだソーマ」
アインシュタイン博士やヴェルトから見せられた境界の律者への対策として用意されたデータを目にし、あの人死後の事すら見越してこんなものまで用意していたことに驚きと呆れを感じる。しかし、それは決して不快なものではなく素直に嬉しい感情と感謝の感情で溢れていた。
「父さん...まったく、あの人は」
境界の律者化計画を推し進める為、しばらく時間が必要な為、博士達とは一時的にお別れを告げてソーマはキアナとブローニャ、芽衣と合流することにする。
その後、メンタルケアを済ませたソーマはジークフリート達と共にフレイア学園と天命、ネゲントロピーによる共同作戦による「反・聖痕計画」作戦に参加することになり、本格的にヨルムンガントとケビンへの反撃を開始する事になる。
「え?意識だけを虚数空間に飛ばすだって?」
【ええ、そうよ。厳密には貴方の自我意識を侵食されないようにする為の対策になるわ。その間に中身のない貴方の肉体を境界の律者に作り変える工程を進める、その間に貴方は迫り来るかも知れない外敵からキアナ達と協力して撃退して欲しいの。間違いなく敵は終焉の力だけでなく貴方の境界の力も狙ってくるわ】
テスラ博士からの提案にソーマは驚きと感心を感じた。
テスラ博士との通信の前までは作戦が始まってからお互いに聖痕空間に侵入しながら夢の世界に意識を持って行かれている人々の意識をうまく誘導し夢から目覚めようとする自立心を促す形で聖痕空間の維持を崩壊させる方向性に舵を切ると言った作戦を展開した。
そしてその間に芽衣は新たな律者の力、「起源の律者」の力を継承する為に崩壊の繭に繋がる虚数空間へのバックドアを探し当て、何とかして新たな力の継承とアクセスに成功する。そして芽衣が繋げてくれた事で崩壊の繭への繋がる道が出来上がり、ソーマの聖黒の力と聖白の力を宿した肉体を崩壊の繭の元へと送り込み、その間は意識だけを一旦切り離すという幽体離脱のような方法を編み出した。
しかし、肉体が境界の律者に置き換わる事に成功しても、体の主導権はソーマにある為、崩壊側はなんとしてもソーマの意識を殺しにかかる可能性が高い。そこでソーマの身体が完成するまでにキアナ達と共に行動して敵を追い払って欲しいとの要望がテスラ博士から通信で届いたのだ。
【いい?ソーマ。今アンタがここでやられてしまうのは私達の敗北を意味するわ。だから絶対に何が何でも生き残りなさい。アンタの生存が人類の存続を意味するの、分かった?】
「分かってるよ博士。だからこそキアナ達と共にこの難関を乗り越えないといけないからな。絶対に負けないさ」
【はあ...相変わらずキアナに似てきたわね。もうこれ以上言うことはないけどちゃんと無事に全員で帰って来なさい。いいわね?】
テスラ博士からの通信を切り、その場にいるキアナと芽衣、ブローニャに向き直る。
「もう後戻りはできないな。これからタイミングの関係上、俺の境界の律者化とキアナの終焉の律者化の計画が同時進行で始まる。すごくハードな作戦になるな」
「もうここまで来たんだから今さらハードな作戦でも私達ならやっていけるよ。だからソーマは私達に任せて自分の戦いに集中して」
「私も沢山の大切な人達ができた。アナタはその中でもっと大切な人よ、ソーマ。だから絶対に生き延びて帰りましょう」
「...」
「ブローニャ...?」
俯いたままダンマリとした様子のブローニャが心配になり、彼女の側に近寄るとブローニャは突然ガバッとソーマに抱きつき、静かに啜り泣く声が聞こえてくる。突然の行動に全員驚き、ブローニャの行動に困惑と心配を感じるが彼女は自身の本音をぶちまける。
「...ごめん、なさい...。でも、心配で...兄さんにこうして触れ合えるのもこれが最後になりそうで...そんなことないのに...怖くて」
「ブローニャ...大丈夫だ、俺はここで終わるつもりはない。それに...俺にはブローニャ達だけでなく帰りを待っている大切な人達いる帰るべき場所がある」
不安を感じているブローニャを優しく抱き止め、頭を撫でながら彼女を安心させてあげる。しばらく慰めてからブローニャは落ち着きを取り戻したのか、泣き止んだ顔を上げる。
「ごめんなさい、ソーマ兄さん。そしてありがとうございます。やっぱり兄さんのハグは落ち着きます。その...やっぱりブローニャは兄さんの事が...いえ、何でもありません」
「...?何か言いたいことでもあったのか?ブローニャ」
「...大丈夫よ、ソーマ君。アナタがそこまで気にすることじゃないと思うわ」
「...うんそうだよ。ソーマは無理に気にしなくてもいいの」
何故かブローニャが横目で芽衣とキアナを見ていたが、対する芽衣とキアナも釘を指すような目でこれ以上は言わせないと言いたげな視線をブローニャに送っていた。彼女達の間に不仲な何かがあったという話は聞いてはいないが何か女の子特有の事情があるのだろうとソーマは深く追求することはしないことにした。
「あ、でもこれからの戦いで途中から離れ離れになることになるから皆で最後の...は縁起が悪いけどいってらっしゃいのハグをしてみない?」
「フフ、キアナちゃんらしいわね。悪くない案だと思うわよ?」
「ブローニャは先程兄さんにハグした後なのでもう一回できるのはお得ですね」
「そ、そうか。...で、でも俺も男だから出来ればほどほどに...」
「えい!」
「ちょッ⁈」
そのまま有無を言わさずキアナに飛び付かれたソーマは驚きながらも仕方なくやれやれと彼女達のハグを受け入れた。ただ本人的には慣れて来たはずの異性の耐性をひさびさに刺激されて堪えるのにそれどころではなかったが...。
テスラ博士からの話の通り、ソーマの自我意識を狙ってくる怪物達をキアナ、芽衣、ブローニャという戦乙女最強のチームで蹴散らしていきながら時間を稼いでいき、遂に博士達からの通信でソーマの器の肉体が境界の律者化に成功したことが伝えられ、ソーマはさっそく芽衣が起源の律者になる為に繋げた崩壊の繭へと繋がるバックドアの道を通ることになる。
終焉の力を手にする予定のキアナ達と別れを告げ、彼女達に絶対に生きて会おうとしっかりと約束を交わした後、崩壊の繭へと続くゲートの道を通っていく。
「...ここは...駅か?...」
ソーマが見渡す先には空間の中を浮遊する先の見えない無限のように続く駅のホームであった。人気ひとつも感じない無人の世界の中ただひとりだけソーマがそこに佇んでいた。
「本当にここが繭の中なのか?うーんよく分からん」
とりあえず駅のホームを歩き続けるが全く前進している気配がなくもしや無限ループに陥っているのではないかと不満を抱いてしまうが、ふとすると誰か近付いてくる気配を感じ取る。
「誰かいるのか?」
【やあやあ、君がソーマ・アストラ君だね?初めましてかな私は「AI・ハイペリオン・Λ」。ラムダって呼んでくれたらいいよ♪】
振り向くソーマの目の前に現れたのは緑髪とふたつの団子型ヘアにツインテールを伸ばした近未来衣装姿の長身な女性であった。
「え?あ、ど、どうもソーマです。えーっと...元崩壊戦士だけど今は律者をやらせてもらってま...す?」
(AI...ハイペリオン?...どこかで聞いたような...ただの偶然か?...)
【うんうん、自己紹介ありがとう♪...出会って早々悪いんだけど、実は私はあまり長い時間ここには止まれないんだ。だから君の安否とこれからの事態を伝える為に無理矢理この崩壊の繭に意識を飛ばしているんだ】
「という事はアンタも俺と同じく肉体がない状態って事?」
【私の場合は肉体っていう表現は適切じゃないんだけど...ってこんな事を言ってる場合じゃなかった!...いい?今からいう事をしっかりと忘れないでね?アナタがこれから先に待ち構える戦いの重要な鍵になるんだからね?】
ラムダから伝えられた話の内容はそろそろ近いうちにソーマを迎えにくる存在がやって来る事と自身の意識は想像や想う力次第でいくらでもピンチを乗り越えられるというものだった。結局彼女が一体何者だったかは分からずじまいだったがソーマに大事な要件を伝えきった後、ホログラムのようにラムダは消えてなくなってしまった。
【...それじゃあ、頑張って生き残ってね?大丈夫、アナタという特異点がいる世界線は流れこそ違えど、間違いなくいい方向に世界は動いてくれている。だから、諦めないで!アナタのいる...崩壊3rdの世界はこれ...らも...ザザーーザーー】
「あっ...消えちゃった。けど...近いうちに迎えにくるって一体誰が?」
疑問を抱いているうちにソーマの耳元から電車が走ってくる騒音がどんどんと近づき、そちらに目線を送るとソーマが歩いて来た側から追い抜くように電車が横切り、ソーマの近くにある駅のホームで停車する。
「迎えにくる存在って、この電車のことか?」
停車した電車から白い煙が拭きながら自動ドアが開き、電車の入り口から人らしき存在が見えてくる。
電車の中から現れた存在に目をやるとそこには見覚えがないはずの姿なのに懐かしさと出会ったことのあるような既視感を感じ取った。
「...ご機嫌よう、今代の聖黒の律者さん、ソーマ・アストラ。多分今の私と出会うのは初めてになるのかしら?改めて、私の名は「ヘレナ・フォルトナ」。多分最初で最後の出会いになるかもしれないわ」
ヘレナと名乗る少女は美しく着飾った淑女のような衣装姿でソーマによく似た模様の青色の色違いの瞳に青紫のセミロングに後ろから見える大きなリボンが特徴の美しい女の子だった。
かつて月面にて出会ったもうひとりの
「へ、ヘレ...ナ?ア、アンタが...いや、アンタが本来のオリジナルの...」
「その様子だと分身体の私に出会ったのね。ええ、そうよ、私が本来の...」
「ハァーイ、我慢できなくって来ちゃったわ♪」
「はぁ..."エリシア"、話の邪魔をしないでちょうだい。貴方の事は後で紹介するから...」
「だって話が長くなりそうだったし!」
ヘレナの背中から乗り出すように抱きついて現れたのは桃色の髪とエルフ耳が特徴的なイメージカラーがいかにもピンクと言った感じの風貌をした妖精みたいな美少女だった。
「えーと、どちら様?」
「あら、ごめんなさい♪私は火を追う十三英傑の第二位、"エリシア"。貴方の心からの声が聞こえてきたから貴方を迎えに来たの。ソーマ、貴方を歓迎するわ♪」
新たな来客に期待を寄せ、ピンク髪の少女が楽しそうにソーマに手を差し伸べながら勧誘してくる姿がソーマの瞳に映った。