飛ぶ理由を探した者   作:Jr.404

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 ケビンとの最終決戦を書こうとしたんですが、まとまりが長くなりそうなので短めに切っています。次回から最終決戦の戦闘に入る予定です。
ここのところモチベーションや気分的な問題でかなりペースが落ちていますが何とか一部完結に持ち込みたいです。ここが終わらないと新たな話の展開が作れないので早く終わらせたいんですがね。(苦笑)


二十九話「真・境界の律者」

 長い時間、虚数空間の入り口前でソーマの帰りを待ち続けていたキアナ達の前に時空の乱れによる変化が現れる。

 

「ッ⁈見て芽衣先輩、ブローニャ‼︎何かが来るよ!」

 

 歪み出した虚数空間から謎のゲートの隙間が開き出し、何かの気配が近づいてくるのが全員から感じ取れる。ついさっき前までに虚数空間から偶然迷い込んできた虚数の怪物が紛れ込んで襲ってきた例もあった為、また迷い込んできたかと警戒するが、いつもと明らかに違う気配と力の波動を感じる。

 

「...いままで襲いかかってきた怪物達とは違う感覚...なんだか懐かしいような...」

 

「キアナちゃん、もう薄々と察してきたんじゃないかしら?間違いないと思うわ」

 

「...うん!彼が...ソーマが戦いに勝って帰ってきたんだ!」

 

「全く、遅すぎます。心配をかけすぎるんですから、兄さんは...」

 

 どんどん距離が近づいてきたのか3人が感じ取った懐かしい気配と感覚が大きくなっていき、ゲートの扉の断面から誰かの手が現れてくる。

 そこから手の主の全体像が現れ、キアナ達の前に姿を現す。

 

 

「やっと...やっと、戻ってきたんだね"ソーマ"ほんとに...無事でよかった!」

 

 

 出迎えて来たキアナ達に対してゲート前に現れた主は彼女達の姿を確認すると静かに微笑えむ。

 

 

 

「ああ、ただいま...待たせたな"キアナ"」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー数時間前ー

 

「もう、お別れになってしまうのか...」

 

「そういう事になるわね...どうあがいても私たちは過去の人だから」

 

 ソーマの器の主導権を取り戻す為、ソーマの助けに呼応してくれたエリシアとヘレナという心強い助っ人がていて来てくれたおかげで操られていた初代境界の律者の人格体に辛くも撃破することに成功した。

 しかし彼女達はソーマの助けの声に呼応はしてくれたものの、元は過去の人でありすでに故人なのだ。だからこそ今の彼女達とは最後まで一緒に行動を共にする事が出来ない。

 

「ソーマと短い間だったけど、一緒に過ごせてよかったわ♪...たしかに私たちはソーマとはいっしょにはいけない。...けどあなたには大切なお友達や仲間が沢山いるじゃない。あなたは前に進むべきよ」

 

「前に進む...か。...ああそうだな、今もこうしてキアナ達が俺の帰りを待っている...」

 

「そうよ。だからいきなさいソーマ、生きて戦いに勝ってみんなと幸せを掴みなさい。それだけで私達も報われるわ。過去に縋るのではなく、今を...未来を掴むの...それが先人の義務よ」

 

「だからソーマ、あなたやあなたのお友達に未来を任せるわ♪何せこのこんなに可愛いらしい人の律者であるエリシアの私が貴方達を応援しているのだから♪...あ、もちろん芽衣の方にもよろしくね?」

 

「そっか...予想はついていたけどやっぱりアンタが芽衣の言っていた大切な新たな友達だったんだな...別れ惜しいけど...元の世界に戻るよ。そしてアンタ達の事は決して忘れない」

 

 

 ソーマのお別れを最後に彼女達は微笑みながらながら妖精のように光の粒子となってソーマの周りを舞いながらお別れを告げて遥か空高く飛び去っていく。

 彼女達が飛び去った先には出口の光の道が見え、そこから出れるのを示唆している。おそらく出口を出た時には同時に自身の姿も大きく変わっているのだろうと予想づく。何せ境界の律者を倒した瞬間から自身の体が不思議なほどに軽くなり、心が揺れひとつない水面のように安らかだからだ。まるで意識が覚醒したように感じる中、ソーマは光の道標を辿りながら待ち続けいるキアナ達の元へ足を歩ませる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...とまぁ、俺が体験した話はここまでだな」

 

「まさかエリシアがソーマ君の声に応じてくれたなんて...それにヘレナも貴方の助けに来てくれたのね。やっぱり彼女達はまだ私達のことを見てくれている...ふふ、エリシア達らしいわ」

 

「ねぇソーマ、今のところなんともない?なんだかすごく雰囲気が変わったもんだからちょっと心配で」

 

「大丈夫だキアナ。それにこの力は託されたものだからな、心配はない。それにそれを言ったらお前こそすごい変わりようだと思うぞ。...芽衣もそうだけど、なんというか...2人とも白いドレスの花嫁衣装みたいだ」

 

「え?そ、そう...その、似合ってる、かな?」

 

「ああ...似合ってる。ホントに...すごく、可愛いらしいと思う」

 

「え、えへへ...ありがと」

 

 照れくさそうにしながら褒めるソーマに満更でもなさそうにモジモジしながらにやけるキアナ。

 

「ね、ねぇソーマ、私にも...いってくれないかしら?」

 

「え?あ、ああ...もちろん、芽衣も似合ってる。本当にすごく綺麗だぞ」

 

「フフ...ありがとうソーマ君」

 

 彼女達の衣装姿を褒め称えながら自身も同じように変わりきった姿を改めて眺める。

 

「俺も力を受け継いてからは随分姿が変わったな...。後は俺がどれだけこの力を扱いきれるか...」

 

 キアナと芽衣の目の前にいるソーマの姿は蒼炎の律者のときの鎧にマントと言った騎士風の格好から解放され、白と黒が織り交ぜる神を彷彿とさせる衣装となっていた。特徴的な体のラインがハッキリとする服装に腰元に伸びるコートの尾にやや透き通る透明なダークカラーの外套を身につけていた。

 

「こうやって見るとなんだか今のソーマの姿、神様みたい。...それにしてもソーマ、いつのまに髪が伸びたの?」

 

「ん?...アレ、ホントだ」

 

 ソーマが自身の髪に触れると後ろ側に随分と長めな三つ編みの髪が流れていた。

 

「あら、髪型まで変わったのね?よく似合ってるわ」

 

「なんか男に長髪は似合わなくないか?」

 

「大丈夫じゃないかしら。元々ソーマ君はかなりの美形だし、綺麗な長髪の美男子って感じよ。それに、貴方の養父の人も同じ長髪だったでしょ?」

 

「...言われてみたらたしかにそうだったな。まぁいっか、じゃまになったら切ればいいし...」

 

「ええ〜勿体ないよ!こんなに綺麗な髪だし!ていうかソーマが三つ編みしてたなら私も合わせれば良かったなぁ〜。そうしたらお揃いになるし...」

 

「そういうのはやる事を終わらせて帰ってからねキアナちゃん?」

 

 キアナが駄弁っているタイミングでブローニャともうひとりの人物が一緒にこちらへとやってくる。

 

「兄さん達お待たせしました。"ハイペリオン号"の戦闘態勢は万全です、コレで邪魔してくるだろう敵側もイチコロにできます」

 

「ご苦労さまブローニャ。...それにしてもブローニャ、随分と張り切ってるな?」

 

「いつも兄さんとは別行動が多かったので久々に兄さんと共闘出来るのが楽しみです。今ならケビンも勢いのまま倒せる自信があります」

 

【あはは、ブローニャちゃん、張り切るのはいいけど慢心しすぎちゃうのはダメだよ?】

 

「あ、アンタもご苦労さんえーと..."ラムダさん"?」

 

【呼び捨てでいいよソーマ。また会えたね、無事試練を乗り越えられて何よりだよ♪】

 

 ブローニャの隣にいるのはソーマが崩壊の繭に入り込んだ時に現れ助言をしてくれた緑髪の特徴的なツインテールが印象に残る長身の女性、"AI・ハイペリオン・Λ(ラムダ)"本人であった。

 彼女の正体はなんとソーマ達が今まで搭乗しお世話になってきたハイペリオン号の搭載AIそのものであり、聖痕計画の影響で進化したのだというのだ。そのため聖痕計画に巻き込まれる前にハイペリオンごと行方不明になっていたテレサと合流できたときにはハイペリオンの艦そのものは聖痕空間という空間の海を漂っていたままだったという。そこからキアナやソーマ達が反聖痕計画作戦を実行し、聖痕空間の影響が弱まったタイミングでラムダ本人が自身の力でハイペリオンとソーマ達ごと現実の宇宙空間へと送り戻せたのである。

 そして聖痕空間から脱出したハイペリオン号とソーマ達が向かっているのはケビンがいる場所である。今もなお彼は自身の玉座でソーマ達がくるのを待ち侘びている。

 新たな力を受け継いだ真理の律者、起源の律者、終焉の律者、そして境界の律者の4人が目的地へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺たちの力を受け継ぐ試練が終わってから随分と事態は進み始めたな...いい流れだ。けどもう時間がない、俺たちもケビンも...。俺たちが早く終焉の権能を掌握できるようにしないと地球どころかこの太陽系そのものが終焉を迎えてしまう」

 

「大丈夫、私達がいる限り絶対に防いで見せるから」

 

【みんな、早速敵がお出ましだよ。自動迎撃はしているけど精度は高くないから誰かが対空砲主役をお願いね!】

 

 敵のアジトに迫っているためか敵側もワラワラと現れ、ハイペリオン号に取り憑こうと襲い掛かる。

 キアナや芽衣がハイペリオンの艦内にある対空制御パネルで操作しながら対空砲のレーザーわミサイルをバンバンと撃ち出すが何体か浮遊しながらハイペリオンの死角に取り憑こうとして来たために射線がなかなか通らない。

 

「仕方ない、俺が撃って出る!」

 

「え⁈さすがに宇宙空間に出るのは危ないよ⁈」

 

「ハハ、大丈夫だ!以前ならともかく、今の俺は正真正銘の境界の律者だぞ?真空の宇宙なんて平気さ。それじゃあいってくる‼︎」

 

 

 

 ハイペリオン号の甲板に降り立ったソーマは手にした愛武器を変形させ、銃火器のように形を変える。右手に対極の陰月をガトリングガンにし、左手には新たに白い対極の陽月をミサイルランチャーに変形させる。

 

「...まったく、何でもありだなこの武器。たまたまゲームしてたときに見たデザインを活かせたぜ」

 

 手にした新たな遠距離武器を迂回しながら迫り来る花のような形をした怪物達に銃口を構え、発砲を開始する。

 

「オラ掛かってこいッ‼︎フラワーモドキのバケモノども‼️」

 

 

 迫り来る怪物を圧倒的な崩壊エネルギーを凝縮した弾頭の弾幕の雨で勢いよく撃ち落としていく。さすがの怪物達も闇雲に攻めるとやられると理解したのか散開しながら散らばり始める。

 

「チッ、意外と知恵がまわるなッ...逃すか‼︎」

 

 ソーマの弾幕の雨を掻い潜り、ハイペリオン号のエンジンブロックに怪物が取り憑こうとするが第三者からの迎撃によって怪物が撃ち落とされる。

 

「ッ⁈レーザービット...ブローニャか!」

 

「兄さんだけにMVPは取らせません。ブローニャも加勢します!」

 

「ハハッいってくれる!ならどっちがより沢山撃ち落とせるか勝負だ!」

 

「面白い、受けて立ちます!」

 

 最初は数の暴力に追い込まれたハイペリオンだったがそこからソーマとブローニャによる銃火砲による弾幕攻撃が追加された事でハエの如く叩き落とされ、2人のキルスコアに加算されてくのだった。

 

【あーあ...もしもし?2人とももうすぐ目的地まで着きそうだから帰還して来てね】

 

 無我夢中で迎撃をしているとどうやらケビンのいる所に近づいて来たようでラムダに帰還するように指示を受ける。

 

「そろそろ着く感じか。ブローニャ〜船内に戻るぞ。ちなみに俺は53体だ」

 

「分かりました兄さん。ちなみにブローニャも53体です」

 

「む、同数か。なら引き分けってことで」

 

「次は勝ちます」

 

 船内に戻ってくるとキアナと芽衣が真剣な顔で目的地の画面を眺めていた。

 

「今帰還したぞ〜って、もしかしてここが目的地?」

 

「ええ、あそこでケビンが待っているわ。最後の決戦よ、みんな気を引き締めるわよ」

 

「今の私達がケビンどこまで通じるか...」

 

「そんなに俯瞰にならないで、ブローニャ。私達なら勝てるよ。何せここには私と芽衣先輩、ブローニャ、そしてソーマもいるから!」

 

「ああ、絶対に勝つぞ。そして全員で無事に地球に帰るんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来たか...」

 

 ケビンが振り返ると自身が待つ舞台近くにハイペリオン号が待機しており、ケビンに向かって歩いてくる4人の姿が見えて来た。

 最初に4人がケビンに対面した時よりも姿が変わり、以前とは違う力を身につけ強くなっていた。そしてなりよりも...

 

「そうか山場を乗り越える事ができたんだな...」

 

 ケビンがそう呟きながら見つめる先にはソーマの境界の律者へと新生した姿が視界に映っていた。ケビン自身も境界の律者は過去にデータ上でしか見たことがなく本物を目にしたのは初めてであり、今こうしてケビンと対立しているのにも関わらず頼もしさと安心感を感じていた。

 

(ヘレナ...エリシア、見ているか...間違いなく僕達の崩壊に勝つための決して諦めない皆の願いが彼女達が...そこにいる彼が受け継いでくれた...もう舞台は揃ったんだ)

 

 ケビンはこの戦いに全てを賭けていた。だからこそこの決戦で彼らがケビンという崩壊を集約した厄災として必要悪となって演じ、自身を打ち倒し、明日を乗り越えらるようにここまで計画を進めて来た。

 後は彼らがケビン自身を倒すのみ、である。

 

 

 

 

「本当に...よく乗り越えて来た。...だからこそ僕も、君達の努力に報いて全身全霊を持って戦いに応じよう!全ては君達が新たなる明日を乗り越えられる為に‼︎」

 

 ケビンの姿が変わり、その図体も元のケビンの身長よりも2倍以上に及ぶ巨大になる。現れたその姿は白い外装の鎧を着込んだような人型の獣にも見えるキマイラの如く無表情な無機質な怪物の姿だった。イカロスの蝋の羽を思わせるふとましさのある大きな羽にツインメイスのような大武器を手に構える。

 

「選択も、存亡も関係なく...今、万人の理想が大いなる願いとなる...

来るがいい、これがーー『救世』の銘!」

 

 救世のケビンとして新生したケビンは手にしたツインメイスをソーマ達へ構える。

 

「やっぱり最終ボスだけあって以前の姿なままで挑ませてくれるわけないよな...」

 

「みんな構えて!ここからが最後の戦いだよ!」

 

「ここからは正念場ね...!」

 

「戦闘を開始します!」

 

 

 長年に及ぶ崩壊との戦い...幾つもの犠牲を重ねた歴史が終盤を迎え、自身が終盤力を取り入れることで必要悪を演じたケビン。そしてキアナ達による崩壊との決着を決める最終決戦が今始まろうとしていた。

 

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