飛ぶ理由を探した者   作:Jr.404

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 本話で第一部ストーリーは完結となります。その後の後日談もどこかのタイミングで投稿する予定です。


三十話「飛ぶ理由を探した者」

 新たな力を授かり、最後の決戦の舞台に立った彼らは自分達の生きる世界と時代そして未来を守る為、自ら必要悪としての役割を演じる救世の主であるケビンに戦いを挑む。

 

「終わりのない停滞と破滅の道が長きに渡り続いた...幾多もの犠牲が積み重なりそれでもなお崩壊という母なる揺籠から人類は自立することは出来なかった...」

 

 救世のケビンは天使の巨人の姿で武器を振りかざすと無数の数千にも及ぶ槍の弾幕を形成し、抗う者達である四人組にその照準を定める。

 

「...だか、今また新たに世の移り変わりの時代が訪れた...。今この瞬間こそ...停滞し輪廻を繰り返す創世を終える時だ...!この僕を...超えてみせろッ‼︎」

 

 

 ケビンの宣言と共に容赦ない数千もの槍の弾幕をソーマ達に撃ち放たれる。

 

「みんな行くよ‼︎」

 

「「「おうッ‼︎/ええッ‼︎/いきますッ‼︎」」」

 

 戦闘の火蓋が切り落とされたことですぐに戦闘状態に突入する。

 小手調べとして解き放ってきた槍の弾幕を先ずはブローニャとソーマで迎撃を始める。新たに進化した重装ウサギの飛行ユニットを変形させて内蔵されている重火器を一斉にフルオープンアタックによる一斉射撃をブローニャが槍の弾幕に目掛けて放ち、対してソーマは虚数空間ゲートを開いて剣の弾幕弾と呼び出した我が半身であるヴルム(崩壊獣形態)に特大ブレスレーザーを解き放ち、ブローニャと共にケビンの弾幕攻撃を撃ち落としていく。

 その隙にキアナと芽衣が救世のケビンに接近し、互いに手にした剣や刀を人振り落として攻撃を仕掛けていく。

 対するケビンはその巨体な天使の外装に似合わず機敏な動きで手にしたツインメイスで攻撃を防ぎ、圧倒的な膂力で押し返し炎を纏わせてフルスイングするように薙ぎ払う。

 芽衣は受け流すように回避し、キアナは回避しながら左手の専用銃をケビンに向けてお見舞いし、ケビンの動きを妨害する。

 その後もケビンが手にしたツインメイスを二つに分けて双剣を振り回すようにキアナ達に激しく攻撃を繰り出すが彼女達の意気のあった連携技で無効化される。

 

「当たらないよッ!今度はこっちの番‼︎」

 

 虚数空間ゲートを用いた瞬間移動を利用してキアナはケビンに攻撃を全方位に仕掛けて弱らせていく。そこから迎撃を終わらせたブローニャが特大のレーザーカノンをケビンに目掛けて狙い撃ちし、ソーマは手にした白と黒の二つの槍を全力投擲し、そこから質量を巨大化させた槍達をケビンに容赦なく打ち込み、地面に拘束する。

 絶妙なタイミングでキアナがヒット&アウェイ戦法でその場を離れたところで最後に芽衣による神速の多段斬りと巨大な一閃の一太刀でとどめを指す。

 

「...チッ、手ごたえが薄い!」

 

「流石に防がれたわ!」

 

 気がつくとケビンの周りから全身を囲むバリアが現れキアナ達の攻撃を無効化していた。

 

「大した力だ。これならば僕は自分の命を銃口に押し込める...君達が"全て"を越えられるようにッッ‼︎‼︎」

 

 バリアを展開させながらケビンは虚数のゲートを開いて光の矢の弾幕を周りに打ち出す。そこからつかさず手にした武器をツインソードのように変形させながら炎とは別に雷撃を伴った斬撃を繰り出していく。槍を呼び戻したソーマは武器を互いに白と黒の双剣に変形させ、ケビンの猛攻に応戦する。

 互いに崩壊エネルギーをまとった斬撃をぶつけ合うがケビンの厄介なバリアの防御壁に攻撃が通らず、今はソーマ側が押しているがいずれはコチラが押し込まれてしまう状況であった。

 

「厄介なバリアだなッ!このままじゃ消耗戦になる!」

 

 空中回避しながら意気のあったタイミングで切り替わった芽衣がケビンの猛攻を刀で受け止め、その隙にソーマが空中から弓にした対極の陰月で対極の陽月の白い長槍の矢を撃ち込むがバリアにはならならヒビが入らない。

 

「ケビンの防御力が私達の攻撃を上回ってる!どうしたらッ...!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【だったら私に任せて〜!】

 

 

 

 

 

 

 

 

「その声は、ラムダか?いったいどうする気なんだ!」

 

 ソーマが疑問に思っているとソーマ達がいる場所の外からエネルギーの弾幕が次々と襲いかかり、それらは全てケビンの防御壁に全弾命中していく。

 

「これは...ハイペリオンから⁈」

 

 戦艦ハイペリオンからの砲撃にしてはかなり強力な威力を伴っており、ケビンが展開していた分厚い防御壁がじわじわと剥がされていくのが見て取れた。

 

【今放っているハイペリオンからの攻撃は聖痕空間や今もなお戦っている皆んなや地球の全ての人達の戦う想いのエネルギーが力になって放たれた想いの一撃なんだよ。一人ひとりは微々たるものでもそれが集まれば大きな運命に抗う力になる】

 

 どうやらハイペリオン・ラムダによる権限の力で聖痕空間に囚われている人々の意思をかき集め、それをケビンの守りを破壊する為の攻撃エネルギーの力に変換して解き放っているのだ。なかなかに気の利いた素敵な援護射撃だなとソーマはその光景を眺めながら思った。

 

「...俺たちだけが戦っている訳じゃない」

 

「今を生きる全ての人が新たな明日を迎える為に...」

 

「みんな戦ってくれているんだ...」

 

「みんな想いは一緒ね...」

 

 数千万数十億にも及ぶ人々の意思が通じたのか聖痕空間の中でも彼ら彼女らによる意思の力が救世ケビンの守りの壁に亀裂を入らせ破壊して見せた。

 

【さあ!今こそチャンスだよ!】

 

「ッ、活路は開いた、これが本当に最後の戦いだ‼︎一気にケリをつけるッ‼︎」

 

 無防備になった救世のケビンへと四人は一気に畳み掛ける。ケビンもすぐに体制を整えてメイスを振り回しながらコチラに近づけさせないように反撃するが、芽衣とソーマによる鋭い剣撃による猛攻で武器を叩き飛ばされる。

 武器を落としたケビンはすぐに残ったもう片方のメイスを巨大化させて芽衣に向けて振りかざすが素早く割り込んだブローニャによるエネルギーシールドの展開で攻撃を防ぎ、シールドバッシュの要領でケビンを押し飛ばす。隙ができたケビンに素早く接近してくるキアナに弾幕とメイスで地面を叩き割った破片でキアナな動きを妨害するがソーマの槍の弾幕でキアナに迫り来る致命弾を次々に撃ち落とし、岩の破片を足場にキアナは崩壊エネルギーでジャンプ力を強化してジグザグに加速し、ケビンの外装の胴体に剣を一閃させて回避しようと上昇しようとしたケビンを斬り落とす。

 

 キアナダメージを決められてゆっくりと落下していくケビンが最後に振り向いた先に見えたのはキアナのすぐ後ろから武器を大弓にして光の矢を此方に狙いを定めて構えていたソーマの姿が見えていた。

 弓を構える彼の姿のすぐ側にケビンはとある懐かしくよく知る戦友であり、仲間であった桃色の髪をした妖精の少女の幻影がソーマを支えるように弓に手を添えていた姿を瞬間的にその眼で見た。

 

 

 

 

 

 

(...そうか...君も彼らと共に戦っていたんだな。..."エリシア"...)

 

 

 

 

 

 

 

 その光景を見届けたのを最後にケビンはソーマによるトドメの光の矢の一撃を受け入れるようにその一撃を貰い、全ての視界が白く染まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...ッ?ここは...」

 

 自身が放った全力の一撃でケビンを仕留めたかと思えば全てが真っ白に染まり、全てが見えなくなっていた。

 目が覚めるとそこには過去に夢で見た...いや、つい最近まで目にした事があった崩壊の繭がすぐ目の前にあった。

 

「また、ここに戻ってきたのか...」

 

「ソーマ!」

 

「キアナか!」

 

 振り向くとそこには同じくさっきまで一緒に戦っていたキアナの姿が確認でき、ソーマの姿を見つけたのかコチラに駆け寄って来てた。

 

「いったい...何が起きたんだ?」

 

「ううん...分かんない。気がついたらここにいたの」

 

「俺たちって...戦いに勝ったんだよ...な?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...ああ、もちろん君達の勝ちだ。ソーマにキアナ」

 

 

 

 

 ふたりが後ろを振り向くとそこには普段着ていたロングコート姿とは違い、学生服のような姿をした格好のケビンが歩いて来ていた。ただ何やら脇元抱えており、受けたダメージが響いているのか随分と痛そうであった。

 

 

「ケビン...その、大丈夫か?」

 

「いや...この程度、この戦いを乗り越えられたのに比べたら安いものだ」

 

「キアナ...」

 

「あ、あはは...ほ、ほら、もしかするとソーマの攻撃のせいかもしれないじゃん!」

 

「...いや、どう見てもあの脇腹の位置、キアナが胴体を狙った場所じゃん...」

 

 

 ジト目でコチラを見るソーマにキアナ気まずそうに笑って誤魔化すがケビンは気にした様子もなく話を続ける。

 

「...とにかく、君達は僕との戦いに勝利したことで完全に地球という星の神になった」

 

「神か...正直、興味ないかな...」

 

「まぁ、いきなり神様になりましたって言われても困惑するしな」

 

「...ただ...最後にだけ、君達にやってもらいたい事が残っているんだ」

 

「やって貰いたいこと?」

 

「ああ。特にソーマ、君が重要な役目だ」

 

「え、お、俺か?いったい何をするんだ?」

 

「安心してくれ、僕が詳しく説明しよう」

 

 ケビンの説明によると崩壊の掌握と終焉の権限を支配した事で崩壊そのものを全てコントロールできるようになった為、以前から異常をきたしていた膨張をしづつけている崩壊エネルギーを変換し、正常な状態まで戻す事が必要でそれにはソーマがもつ境界の権能が必要であり、境界の力によって核分裂のような現象を引き起こしている崩壊エネルギーを沈静化させる事が可能らしく、今のキアナでは崩壊エネルギーをコントロール出来てもそれらを沈静化したり減らしたりすることがまだ不可能なのでその効果をすぐに発揮できるソーマがかなり重要なのだという。

 

「...つまり僕が君の事を重要視する理由がこれになる。どうしても時間との勝負になる以上、すぐに事態を解決させるには君しかいないんだ」

 

「そういう事だったのか...なら善は急げだな」

 

「ねぇ、ソーマ私にもできることはある?」

 

「ならキアナは崩壊エネルギーのコントロール制御を頼む。一箇所に集中させてまとめて沈静化させるぞ」

 

「OK!任せて!」

 

「僕もサポートしよう。残った力は絞りカスもいいところだかまだ役に立てるはずだ」

 

 最後の共同作業ということもあり、敵味方関係なく手を組んで目前の脅威を解決に導いていく。キアナが崩壊エネルギーを制御しながらソーマは境界の権能を行使して膨張を続ける崩壊エネルギーを沈静化させていく。

 ...どうやら彼らの作業はうまく進んでいるようであり、先程まで見えていた赤く膨れ上がっていた崩壊の繭が徐々に小さくなり、色合いも紫に近い色合いに変色していく様子が確認できた。

 

「ようやく...長かった崩壊との戦いが終わる...これで彼らに胸を張ってただいまと言えるな...」

 

「ケビン...もしかしてその彼らっていうのは"火を追う十三英傑"の人たちの事だったりするか?」

 

「ああ、事が終われば僕は彼らが生きる世界線に帰るつもりだ。互いに違う未来を歩んでいるがまた君たちと会う事も可能だ。もし縁があれば君達を彼らに合わせたい」

 

「それは楽しみだね♪」

 

「僕達は敵対こそはしたものの、世界が違えば良き友人になれたかもしれないな...」

 

「何を言ってるんだケビン?今こうして関わり会えたんだからもう友達みたいなものだろ?」

 

「そうそう!それにケビンと私は同じカスラナの人間なんだから考えていることも同じように通じるでしょ?」

 

「ッ!...はは、そうだな。...確かにそうだ」

 

 

 戦いを得てお互いの本音を交えた事で和解し、ソーマやキアナはケビンとは敵ではなく友人として受け入れる形で良い雰囲気ができる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?...どういう事だ...?」

 

 和解の雰囲気の中、何やらソーマから何か異変があったような反応を見せる。

 

「どうしたのソーマ?」

 

「...何故か、崩壊エネルギーの膨張活動が再開してるんだ...」

 

「えッ?な、なんで...」

 

「分からないッ...俺の権能で完全に活動を停止させたはずなのに何故かそれを無視して勝手に抗ってるんだ!なんでだ?キアナも俺も崩壊エネルギーの主導権はこっちにあるはずなのに...!」

 

 ソーマが必死に進行の悪化を防ごうと力を押さえ込むが、それでもなおソーマの力に抗うように暴れ回ってくる。

 

「グッ、このッ...!大人しくしろっての!お前達は俺たちに負けたんだから受け入れろって‼︎」

 

「ッダメ!コッチも制御が効かないよ!」

 

「そんなバカな...まさか僕達が時間をかけすぎたせいかッ...ここまで来たのにッ‼︎」

 

 必死に沈静化を図ってもまるで網にかかった魚の大群が力づくで網を食い破ろうとする勢いで崩壊の力がソーマの権能を上回ろうとする。

 "まるで何者かが意思に介入したかのように不自然な力"が働いたような感覚であったが結局原因は分からないままであった。

 全身全霊で押さえ込む中、ソーマは見覚えのないものを感じ取っていく。

 

(...なんだ、これ...何か知らない力?いや、生命体の気配?...いったい何処からッ)

 

 そんな最中、一瞬ソーマの脳内意識に何者かの存在と姿がノイズが混じったように記憶に現れる。"それは本来存在しないはずの記憶"であった...。

 ソーマの脳裏に映るのは宇宙空間のように広がる景色に時空の割れ目から見える人型らしき姿が見据えるようにコチラを見ていた。

 その姿は長い銀髪の長髪であり、褐色肌をした体に黄金の傷が切り裂かれたように刻まれた肉体をした男性らしき姿が写っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(...壊...滅...ナ...ヌー...ク...?)

 

 

 

 

 

 

「ッ‼︎ガハッ...‼︎ハァ...ハァ...」

 

「ソーマ‼︎」

 

 突然苦しみ出したソーマをすぐにキアナが近寄って助けるが、冷や汗をかいた顔で張り詰めていたソーマはキアナとケビンに見たものを語る。

 

「...キアナ、ケビン...俺たちは...ヤバい奴に...目をつけられたのかもしれないッ...」

 

「いったい何が見えたんだソーマッ...」

 

「分からない...ただ俺たちを滅びに誘おうとしている者がいるってのが分かっただけだ...」

 

「そんな...それじゃあそいつのせいでッ」

 

 自分達が認識出来ない辛うじてソーマが気配を感じ取れたような未知の存在に自分達の運命を捻じ曲げられてしまうという理不尽な存在に絶望する中、ソーマは必死に何か策はないかと頭を回転させる。

 いくつか策を考案する中、なんとか思いついた唯一の最適解を見つけたソーマは覚悟を決める事した。

 

(確証はないし成功するか分からない...だがもうこれしかないッ...)

 

 キアナとケビンへ顔を向け、彼らに協力してもらう為に現状を解決する方法を伝える。

 

「ふたりとも、一つだけ策がある。...ただぶっつけ本番だからうまくいくかも怪しいが...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...え...でも、それって...それじゃあソーマはどうなるのッ⁈」

 

「...多分、ほぼ片道切符の作戦になる」

 

 ソーマが考案した策は今暴走状態の崩壊の繭を強引に沈めるのではなく、直接崩壊エネルギーをキアナとソーマのふたり分の総量に分割し、制御出来ない部分の大半をソーマが境界の権能で抜き取り除くと言ったものである。

 例で例えると手術で人体の悪性腫瘍を除去するようなものであり、抑えられないなら取り除けばいいという思い切ったソーマだからこそ出来る方法であった。

 しかし、問題は取り除いた残りの崩壊エネルギーの残骸であり当然ほっといておくと規模は小さくとも地球や月を巻き込んでの超新星爆発を引き起こしてしまう為、この残骸を何処か遠くへ隔離しなければならないのだ。ソーマはそれを自分自身がその役割を担当するといったのである。

 

「しかしいったいどうやってこれだけの巨大なエネルギーの残骸を運び出すんだ?」

 

「自分の権能を扱ってみて分かった事なんだが、俺の境界の権能には物理的な距離の境界線を操る事もできるみたいでこの方法ならコイツを抱えて一瞬で太陽系外に運び出す事ができるんだ」

 

「そんな事が可能なのか...だが...「でも...そんなことをしたら...ソーマだけ犠牲になるんでしょ...」キアナ...」

 

 俯いたままのキアナはそのまま駆け出すとソーマをこれ以上行かせまいと強く拘束する。ソーマを見つめる彼女の顔には悲しみと絶望、止まることのない大粒の涙が溢れ出ていた。

 

「ダメッッ‼︎‼︎絶ッッ対ダメッッ‼︎ソーマだけが犠牲になるなんて許さないだからッ‼︎」

 

 心のうちに秘めた彼女の本音と現象の理不尽に対する嘆きが現れソーマの服が皺くちゃになるほどにしがみ付き、絶対に大切な人を失いたくないという必死な強い意志が彼女を突き動かす。

 

「せっかく...せっかく、ここまで...戦って生き延びてきたのにッ...!最後に一緒に全員で生きて帰る約束を破るのッ...⁉︎」

 

「キアナ...」

 

「私、ソーマの事を誤解してたッ...!」

 

「キアナ、話を聞いてくれ」

 

「ソーマは私と違って自分を犠牲にする人じゃないって思ってたッ」

 

「キアナ、聞いてくれ!」

 

「でも、あなたも同じ人の為に命をいとわない人だったッ...‼︎だから...」

 

「キアナッ‼︎」

 

「ッ...‼︎」

 

「キアナ...聞いてくれ。俺は別に死ぬつもりは無いし、約束も破る気もない」

 

「ソーマ...」

 

「お前に...コレを渡す」

 

 そう言いながらソーマがキアナに差し出したのは一輪の花だった。それはこの世には存在しないような非現実的な美しく、青白く淡い光を放っている月下美人によく似た花であった。

 

「...初めて聖痕空間に迷い込んだときに初めて訪れた場所で見つけたんだ...。触れた者の力を花そのものに溜め込んで発光させることができる不思議な花なんだ...受け取ってほしい」

 

「ソーマ...何でこれを...?」

 

「確かに崩壊エネルギーの残骸を太陽系外に持ち出しても爆発に逃れる事は出来ない...けど純粋な律者である俺なら...爆発に呑み込まれても死ぬ可能性はかなり低い...ただどのみち片道移動しか出来ない以上、爆発に巻き込まれた後に自力で地球に帰るのは多分不可能だと思う...」

 

 ソーマの差し出した発光する花と彼がキアナに伝えようとしている事がキアナには何となく分かってきていた。

 

「この花を目印に探し出して迎えに来て欲しいって...事なんでしょ...?」

 

「かなり無茶苦茶なことを言っている事は自覚してる。...まだ人類が到達した事すらない太陽系外の外なんて無理もいいとこ「探すよ、絶対に」キアナ...ありがとう」

 

「私に遠慮なんてしないで。お互いにいつも引っ張り合ってたでしょ?...どれだけ時間がかかっても...ソーマを見つけだすからッ...!」

 

 涙を流しながらもキアナはソーマに約束をし、彼を抱きしめる。

 

「...ねぇ...やっぱり...こうするしか方法は、ないの...?」

 

「ごめん...もうこれしか方法が思いつかなかった。...確かに時間を掛けれ俺やキアナが力をうまく扱える様になって完全に制御出来たかも知れない。けどそこまで待ってたら俺達全員が滅ぶことになってしまう...」

 

 ソーマはキアナを抱きしめる力を強める。

 

「俺は嫌だね...そんな終末なんて。俺にとってこの世界は俺の生きた証であり、宝物だから...だからこそ俺はキアナ達が生きるこの世界を心の底から愛しているんだ...」

 

「そう、だったんだ...」

 

「...自分で言っといてなんだけど随分と恥ずかしい事を口走ってるな...忘れてくれ」

 

「...フフ、忘れてあげな〜い♪」

 

「弱みを握られたなこりゃ」

 

「だって忘れないよ...私にとってソーマは私の生きる世界そのものなんだから。だから絶対にまた会いにいくから...絶対に。でもその前に...」

 

「んグッ⁈」

 

 最後の最後に彼女はソーマに向かってとっておきの愛の印を彼の口元に授けた。キアナからの不意打ちにソーマは顔を赤らめ取り乱す反応を見せるが、つかさず彼の耳元へ囁く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「絶対に離さない...愛してる...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう耳元で愛の告白を伝えてくる彼女から見えるその瞳はハイライトが消えかけ、妖艶で危険な雰囲気を感じるが耐えがたい魅力を放っていた。

 ソーマは最後に見せてきたキアナの顔を見てこう感じ取った.........なんかヤバい感情を目覚めさせてしまったかも知れないと...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その様子を傍ら蚊帳の外で静かに眺めていたケビンは静かに心の中で呟く。

(青春だなぁ...)...と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、ネゲントロピーの前線基地やフレイア学園の観測場では月の衛星軌道上付近に現れた謎の球体の星らしきものに現場では混乱していた。

 

「どういう事だ?確かに聖痕空間を通してキアナ達はケビンとの戦いに勝利したはずだ...。だがあれは..."崩壊の繭"だったものが膨れ上がっているだとッ?」

 

「不味いね...観測した結果、崩壊の繭は年老いた恒星のように中心核の崩壊が始まっている。ここままでは...」

 

「そこまで言わなくても分かっているわよボサ頭!要するに私達皆巻き込まれるってことでしょ‼︎」

 

 ケビンとの戦いに勝利した事を聖痕空間を通して観測出来た後にジワジワと膨張を始める崩壊の繭にどう対処するべきか、宇宙側にいるキアナ達にも連絡を取れないかとヴェルトやテスラ博士達が確認を取ろうとしていたタイミングである変化が訪れる。

 

「ッ⁈皆あれを見てみなさいッ‼︎」

 

「おいおい...なんか二つに割れたぞ。どんなってんだこりゃ⁈」

 

 テレサが指差さした方向を眺めた光景の先にはジークフリートが言葉で表した通りの光景が現れていた。

 そこには宇宙に漂う崩壊の繭が細胞分裂したようにあるいはまるで脱皮するかのように二つに分離する光景が見られた。離れた方の片側は赤く光り、対するもう片方は紫色を帯びていた。

 時間が経つにつれて赤い片側は球体から形を変えていき、その姿はつい最近まで見た事のある救世ケビンによく似た巨人天使の姿に変わりだす。

 左右の巨大な翼を広げ、その天使は分離した崩壊の繭の片方からゆっくりと離れていく。

 

「...あの姿はまるで...イカロスの行動を見ているようだ...」

 

「キアナさん...ソーマ...どうか無事に...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ケビンとの戦いに勝利し、聖痕空間の間に放り出された芽衣とブローニャは今目の前で起きている現象に目を囚われていた。

 

「崩壊の繭が...2つに...」

 

「赤い方が天使の形になって離れていきます...いったい何が?」

 

「あのふたりは...無事、なのよね?」

 

「分かりません。でもあのふたりなら...」

 

 変化しづつける今の現象に誰もついて行けずただただ取り残されているであろうキアナとソーマの安否を祈り待つしか無かった。

 後にこのとき相方の方が自らこの地を離れようとしていた真実を知るのはキアナが彼女達の元へ戻って来た時になってからであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 赤く光る救世の天使の中身で自身の槍を崩壊の繭に突き立てながら移動目標を定め、地球圏をゆっくりと去っていくのを眺めていく。

 

「...やっぱり地球は綺麗だな...。改めて恵まれた所に生まれてこれたな俺は」

 

 ソーマは遠くなっていく地球と月に別れを惜しむように感傷に浸りながら眺めていると背後から声をかけられる。

 

「すまない...本来なら先人である僕達がなさらなければならない事を君に押し付けてしまった...」

 

「別にいいんだよケビン。...アンタも充分に戦った。だから残りのひと仕事は俺達の世代に任せてくれていいんだよ」

 

「だが...」

 

「...ならケビン、友達であり先人のよしみとしてキアナ達の事を見守ってほしい。いざとなったら助けてあげて欲しいんだ」

 

「それは...もちろんだ。だがそれには君も含まれている。君が揃わなければこの戦いの物語は本当に終わりとは言えない...君が彼女達の元に帰る事で物語は終焉を迎える」

 

「うーん、ケビンって意外とロマンチストだったりする?」

 

「そんな事はない...と思う。ハァ...おそらく昔エリシアやグレーシュが描いていた漫画の読み過ぎのせいだな」

 

「ハハ、結構毒されているな」

 

 大分地球圏を離れ出したのかジワジワと巨大な天使は加速を始め出す。それは目にも止まらぬワープじみた速度で地球へと離れていく。

 

「さぁ、ケビンそろそろ帰った方がいいぞ。これ以上いると俺と運命を共にする羽目になる」

 

「ああもう時間か...なら最後に。ソーマ、君に会えて本当によかった。だからまたどこかで絶対に会おう。僕達の仲間たちを紹介したい...おそらくエリシアもヘレナも君に会える事を楽しみにしてる。...だから、また会おう"ソーマ"」

 

「ああ、また会おう"ケビン"」

 

 微笑みながら光の粒子のように消えていくケビンを見送った後、ソーマは向き直り、離れてゆく地球とそしてキアナ達がいるであろう月に向けて最後の言葉を放つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあな、俺の故郷(地球)...また今度だ」

 




 
 私の素人小説を最後まで読んで下さった読者の皆様ありがとうございます。初めて小説投稿してなんとか形上の完結に持ち込んだ感想としてはなかなかに大変だったという気持ちでたくさんです。正直自分の小説の出来栄えには駄作とまでは言わないけどなんだか微妙で不十分だなという感じで所詮は素人が書いたものだからこんなものかと考えています。ただ、完結になっていますが本小説自体が完全完結したわけじゃないのでちょっとした話やストーリーを書いていくつもりです。書く気力があればになってきますがね(笑)
 次なる分岐ストーリーなどを考えている予定もあるのでもし良かったらアンケート投票お願いします。
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