量子の海にて行方知れずとなったゼーレ達を探し出す為、同じように量子の海に飛び込む事になったソーマは見知らぬ未知の世界の泡へ入り込む。
そこで無事ゼーレ達を見つけ出すが連絡を取れず行方不明の黒ゼーレがまだ見つかってなかった為、現地人であるヴィタという少女と偶然保護した元地球出身の時雨綺羅という戦乙女の少女達と共に黒ゼーレの捜索と"セント・ソルトスノー"と呼ばれるこの世界についでの調査を行うこととなった。
「ふうん?つまり君たちは訳あってこの世界に迷い込んでしまった挙句、仲間達のひとりとはぐれてしまったんだね?」
「はい、残念ながら私達はこの世界の土地勘には全く疎いのでヴィタさんにはぜひ力を貸してくれると助かります」
「うーん、出来る事なら君達に助けてもらった恩があるから何とかして助けてあげたいけど...この地域でもお仲間さんは見かけなかったんだよね?」
「ああ、ゼーレの感覚だと全く気配を感じ取れなかったらしい。...黒ゼーレのことを全く感じ取れないなんて今まで滅多になかったんだよな、ゼーレ?」
「うん...全く何一つ気配も感じ取れなくて。こんな事なんて今までなかったのに」
「だったら僕では力になれないかも知れないけど、こういうときには僕達の世界の偉大なる賢者様に助けを求める事が最善策だね♪」
「偉大なる賢者様?」
「ほらあそこにすっごく大きな塔があるでしょ?あそこに我らが賢者様が住んでいるんだ」
ヴィタが指す先にはソーマがこの世界に訪れるときに上空から偶々見かけた異様に目立つ巨大なお城のような塔があった場所であった。どうやらこの世界での指導者的立ち位置である"高塔の賢者"と呼ばれる人物が住んでおり、ヴィタから教えてもらったこの世界の文明や常識について聞いた感じでは、街並みの文明レベルやデザインも相まって中世の封建社会を思わせるような世界観だった。
また、この世界にあちこちに生えてるように存在し、あるいは雪のように降り積もっている存在はただの雪ではなく、高濃度の塩でできた沈殿物であり、それらが巨大な氷柱や切り崩された岩盤のようにできておりこの世界が"セント・ソルトスノーと呼ばれる由縁だったりする。
ヴィタからの提案を受け、彼女のいう偉大なる賢者の元へ会いに行く為にソーマ達はヴィタに案内されて目的地である例の巨大な塔のある場所に向かう事にした。
偶々セント・ソルトスノーで賑やかな街並みでのお祭り騒ぎの出し物イベントをやっていたのを見かけたのか、現地住民との交流と情報収集の為とかで昔からアイドルを目指す夢を抱いていた綺羅本人の心の魂に火がつく事になる。スーサナとゼーレは綺羅先輩による指導により恥ずかしがりながらもステージ参加することになり、何とか見事アイドル活動アピールに成功し、現地住民からより好意的な評価を受ける。
参加前、ソーマも綺羅からプリンスアイドルとして参加してみる?と提案されたが目立つのが好きではないソーマは先輩の誘いに丁重にお断りし、とりあえず全部スーサナとゼーレに押し付けた。
ゼーレ達のアイドル公演で白熱している状況の中、ソーマは何か心に引っ掛かるような見覚えのある顔ぶれを目にすることになる。
「...ん?...アレって、何処かで見かけたような...」
「も、もう疲れました...。て、あれ?ソーマ先輩、もしや知り合いですか?」
公演が終わったのかステージから帰ってきたスーサナがソーマの変化に気付き、もしや知り合いかと聞いてみるが本人は流石にあり得ないと否定する。
「いや、そんな筈は...だってここは量子の泡の世界だし...時雨先輩みたいな例外はともかく...」
ソーマが目視する先には、出し物の公演で評価をしている参加ゲストらしき人物がおり、手にした点数プラカードを掲げて採点評価をしていた。
『悪くありません。十点中十点満点です』
「あれって...よく見たら月基地にいた"プロメテウス"じゃ?」
「え、"プロメテウス"⁈何で彼女がこんなところに?」
顔を合わせた期間は短いが昔、聖痕計画の出来事でソーマやキアナ達がケビンによる策略で量子の泡にある別世界の月基地に幽閉されたときに偶然居合わせたプロメテウスという世界を観測しているというAIだったらしいが、あの世界を去ってからは彼女の行方は全く分からなかった。だかまさか偶然にも同じこの世界の泡でまた遭遇することになるとは。
『お久しぶりですね、皆さん。それと...アナタはソーマ・アストラですか?どうやら境界の律者として羽化することに成功したようですね、おめでとうございます』
「あ、うん...あ、ありがとう?...って違う違う、そうじゃない!そもそもなんでアンタがこんな所にいるんだって話!」
『今の私はこの世界の高塔の賢者との協力で使者をやっています。世界の泡を観測し、その脅威を排除する、その役目として今は間接的にこのような行動を取っています。勿論、ウサギもここに来ています』
「ウサギ...えーと、だ、誰だったっけ...」
『ミステルです。ヨルムンガンド幹部で聖痕計画に関わった人です』
「!ああ...確か...キアナとビアンカ姉さんのお母さんに似てる人!」
「ビアンカ?まさかデュランダルの事かしら?」
「え?ああ、そうだよ時雨先輩。アンタの部隊の隊長であるセシリアさんって人の娘さんがビアンカ姉さんなんだ」
「そうだったの...って、待って!アイツがまだここにいるの⁈」
「ど、どうしたんですか綺羅先輩?その人と何かあったんですか?」
時雨先輩の話によると彼女はこのセント・ソルトスノーに迷い込んだ時に自分達がここに来るよりも先にウサギこと...ミステルと呼ばれる人物とプロメテウスに出会っており、事情を知っているソーマ達は兎も角、綺羅からしたら自分の尊敬する故人になったはずの上司とよく似た顔をしたミステルは綺羅からしたら胡散臭い奴が怪しい行動をしているという風に見えた事で警戒心が跳ね上がり、色々とあって一触即発と言ったタイミングで高塔の賢者達に介入されてしまった。
最終的に戦闘を避ける為にミステルが手段として強引に綺羅を世界の泡の外へと追い出したのだとか。
そのせいで長い時間漂流する羽目になり、散々な目にあったと綺羅は恨み辛み語っていた。
「何というか...どっちもどっち...て感じかなぁ」
「ちょっとソーマ、貴方先輩である私の味方をしてくれないの⁈」
「勿論時雨先輩が被害者だっていう事には同情するけど、もう少し相手の言い分や行動を観察する前に先に手を出してしまったらそりゃあ反撃されるでしょ?...まぁ、ミステルの言葉足らずな意味深な言い方も悪いし、誤解を受けても仕方ないというか...そもそも」
「うぐッ...」
「あ、あはは...ま、まあそれぐらいにしてあげましょうソーマ先輩。これ以上ダメ出ししてたら綺羅先輩が本気で落ち込んちゃいますよ」
ソーマによる説教で痛いところを突かれて落ち込む綺羅をスーサナは宥める為に話を切り上げさせ、再び全員プロメテウスへと向き直る。
「それで結局プロメテウス達は何の目的でこの世界に?まさかわざわざセント・ソルトスノーでの賢者の仕事に参加する為だけにここに訪れたわけじゃないだろう?」
『勿論違います。簡単に要約して説明すると私達に目的は量子の海に漂う世界の何処かに潜んでいる"異種聖痕0014"を追跡・確保することです』
「異種聖痕0014?」
どうやらプロメテウス達がこのセント・ソルトスノーにやって来た目的とはかつて聖痕計画によって発動・終結した際、地球の聖痕空間から溢れ出た情報やエネルギーの余波によって、量子の海の「世界の泡」に新たな生命として定着した。
その際に誕生したのが"イデア"呼ばれる明確な姿形を持たない情報思念体のような存在であり、ミステルは正にその成功体であるとも言える。そしてその例のミステルの同族が何らかの要因で脱走してこの地にまで逃げ込んできたという事で何をしでかすかわからない危険因子である異種聖痕0014という個体を捕縛又は確保する為に訪れた際に偶然、ゼーレやソーマ達と鉢合わせしたという事らしい。
その後、プロメテウスの仲間であるミステルに情報を聞き出す為に彼女がいる場所へ訪れると、待っていたかの様に舞台劇じみた登場の仕方でソーマ達の元に現れる。当時ソーマが初めて対面したときに見た白髪と青紫色のメッシュみたいな髪色に自身の姉であるビアンカやキアナの母であるセシリアにそっくりなその姿に間違いない本人であると勘づく。
ソーマがミステルの素顔を見て過去を思い出している最中、ミステルの演技が入った態度に不快感を感じたのか綺羅本人はミステルに対して皮肉を込めた反応を返していた。
「ふん、相変わらず胡散臭い部分は相変わらずね。貴方には普通な態度で接する常識が無いのかしら?」
「あら、そうなの?私はどうも人類の感情への理解の認識が疎いの。もし気に障ったのならごめんなさい」
「ッ...貴方のやったこと忘れてないからね!量子の海に放り出されてからここに戻って来るまでどれだけ大変だったか...ゼーレ達に出会うまでずっと塩雪に晒され続けてこのせいで今じゃ私はただの塩系アイドルにクラスチェンジなっちゃったのよ!」
「まあまあ落ち着いてください、綺羅先輩!あと、その自虐ネタはあんまり面白くないですから!みんな苦笑いしてますよ!」
「スーサナ貴方私を慰めたいのか貶したいのかどっちなのッ⁈」
「うーん、スーサナって意外と思ったことを素直に口にしちゃうんタイプなんだ?」
スーサナがイラついている綺羅を宥めている?光景を代わり者を見るかのように眺めてるヴィタを他所にミステルはゼーレとソーマの姿に気付きながら久しぶりの再会を喜ぶ。
「ゼーレにソーマ、本当に久しぶりね。月面基地で初めて出会って以来かしら?貴方達も随分と...変わったと言えばいいのかしらね?まだまだ人類の挨拶の交わし方がイマイチよくわからないわね」
「ミステルさん、本当に久しぶりですね。その、多分今の接し方で大丈夫だと思いますよ?」
「何だかアンタを見ているとビアンカ姉さんの親戚を見てるみたいで変な感覚だよ。...やっぱりホントに血縁者だったりする?」
「その認識で間違っていないわ。イデアになる前世の私はシャニアテの聖痕そのものが自我を持って生まれて来たようなものだからある意味血縁者?というものに近いのかもね?ただ...私のことよりも...」
ミステルはゆっくりとソーマの元へと近づきながらまじまじと本人の姿を観察する。今のソーマは境界の律者の姿を晒したままであるのでもしかするとミステルからしたら初めて見る興味深い存在に見えたのかもしれない。
...目と鼻の先まで顔が近すぎたのはたまたま偶然なのだろうと思いたい。
「あの...ミステル?も、もう少し離れてくれると助かるんだけど」
「...あら?ごめんなさいね。確か、今の貴方は境界の律者という存在に羽化したのよね?私も初めて見るものだからつい興味本位で魅入られちゃったわ♪」
「そ、そうなんだ」
「な、なんていうか、ミステルさんって意外と天然な感じなんだね...」
「いや、それ言ったらゼーレも大して変わらないからね?黒ゼーレからもそう言われてたし」
「あれ?ゼーレ、お兄ちゃんに何かしたっけ?」
「うーん...ダメだこりゃ」
先程のミステルの大胆な行動は兎も角、実はゼーレも過去にソーマに対して異性を勘違いさせるような大胆な行動を何度かとった事なんてザラにあり、支配劇場でガッチリ手を繋ぎ合った時はまだ可愛い部類だったりする。そういう意味ではソーマからしたらゼーレがそれを言える立場か?と言いたくなるのも当然である。そんな事だから黒ゼーレが苦労してコッチに愚痴りたくなるのも無理はない。
「それにしても...不思議ね?貴方から懐かしいシャニアテの聖痕の気配をほんのりと感じるわ。貴方の血縁者にシャニアテの者が居たのかしら?」
「シャニアテの気配?...うーん、過去に終焉の繭から聞かされた話じゃ俺には人間みたいな血縁者なんてものは存在しないと聞いたんだけど...関係あるとしたら確か、過去にシャニアテの聖遺物である"黒淵白花"に一回触れたくらい?」
ミステルに黒淵白花のことを話すと信じられないものを見たように驚き、深刻な表情をしていた。
「貴方...黒淵白花に触れた事があったの?...本来ならアレは普通の人間には触れることすらできない代物なのだけど...確かに今の貴方は律者そのものであるとはいえ、触れた時期を考えるとまだ人間に近い肉体だった頃の筈...ますます貴方の存在が謎に包まれているわね」
「え、アレってそんなにやばい代物だったのか?父さん...オットーに触れてみるようにって言われて触ってみたもんだから...。ホントに何考えてんだよ、あの人...」
シャニアテの聖痕の情報を経由して黒淵白花の存在を認知しているミステルからすると彼にわざわざそんな危険な代物を触らせたのは何か目的があるのでは?と勘繰るがもう既にこの世には居ない故人の思惑を考えても拉致が開かないとミステルは考えを切り上げた。
「とにかく、貴方の話はまだ今度にすることにしましょう。本当ならもっと貴方のことについて深く確認しておく必要がありそうな事が沢山あるけども、今はこのセント・ソルトスノーの問題と異種聖痕の確保を優先させておかないとね」
「もしかしてやばい問題になりそうな予感だったりする?」
「どうでしょうね。ただ貴方が量子の泡世界に来てくれたのは思わぬ収穫ね。貴方が持つ境界の権能が異種聖痕を探し出す為の強力な捕縛装置として利用できるかもしれないわね」
「そう上手くいくのか?」
「状況に任せましょう。ダメだったらその時はその時よ」
ミステルの危機感のない発言に呆れるも、ミステルの会合を終えたソーマ達はヴィタからの高塔の場所を案内してもらう事にした。
道中、何故かセント・ソルトスノー内でこの世界には存在しない筈であるネゲントロピー製のタイタン機甲達に出会ったり、何故か再び量子世界に漂う怪物達に遭遇して戦闘に巻き込まれたりとこの世界の治安の悪さや歪さに徐々に違和感を抱き始める。
「それにしても...本当に偏っているというか...何ともルールや成り立ちが歪というか...」
「何故か文明レベルにものすごく偏りがあるしな。中世レベルの文明に何故か白砂糖が出回っていたりとなかなかに変わっているし」
「しかもこの世界でタイタン機甲に出会って尚且つちゃんと機能してるとか、驚きしか出て来ませんよ!いったい何処から流れ出たんでしょうか?」
「おまけに怪物達の動きまで活発化してきてるわね。もしや賢者の秩序体制が崩壊してるのかしら?」
「たしかにここのところ怪物達の出現頻度が多くなってきてるけど、ここまでは...何だか僕まで心配になってきちゃったかも」
お互いにこの世界の不安定さと謎に疑問を感じながらもようやくして例のセント・ソルトスノーにある中心部である高塔の城に到着し、遂に高塔の賢者本人と対面することになる。
「...ようこそ、異世界の旅人さん方。私はこのセント・ソルトスノーの高塔の主である賢者をやっている者だ。お客人として貴方達を持てなそう」
塔から使者を複数人引き連れてやって来たのか黒いローブと外套を纏ったいかにも聖職者らしい服装をした女性が現れたフード元から隠れて見える黒髪の隙間から覗き込む瞳がこちらを捉えているが、見た目のせいでコイツもしや黒幕なのでは?とつい失礼な事を考えてしまうソーマではあったが、気を取り直して賢者の案内を受け入れてゼーレ達と共に塔の中へと向かう事となった。
「では貴方達が求めているこの世界の事について知りたいことを教えて差し上げよう。遠慮しなくても構わない」
「そういう事なら...」
ゼーレあたりから率先して賢者からこの世界についての深い情報を詳しく聞いていく事にした。
その結果、この世界について知る事ができたのはどうやら今ゼーレやソーマ達がいるこのセント・ソルトスノーとは別に隣り合う裏世界的な空間である"鉄砂の国"が存在しており、鉄砂の国と呼ばれる世界はこのセント・ソルトスノーの認識では死者が最終的に行き着く黄泉の国のようなものであり、この世界の民たちはそれらを信じて賢者を敬っているらしい。
そして実はこの二つの世界は、当然量子の泡で合成された不安定な世界な為に世界が存続するのに必要なエネルギーをまるで一つの天秤のように、互いのエネルギーを食い合いながらバランスを保っており、どちらか一方が栄えれば、もう一方が滅びるという危うい状況であったというのだ。
その為、賢者である彼女はその座につく器として何とか互いの世界が滅ばないようにうまく歪なルールや秩序を利用して世界の均衡を保っている。
「...予想はついていたけど思ったよりかなり危なっかしい状況なんだなこの世界は。後は...この例の"鉄砂の国"と呼ばれる裏世界にもしかすると中々見つからない黒ゼーレが迷い混んでいる可能性がありそうだな」
「うん...でも、確か賢者さんの話だと鉄砂の国は死者が行き着く世界だっていうからもしかして...」
「俺はゼーレ達の関係や仕組みをまだ理解して無いからなんとも言えないけど、要するに今のゼーレは間違いなく魂と肉体を持っていて、黒ゼーレはほぼ魂だけの存在で鉄砂の国を彷徨っている可能性が高いって事だよな?」
「よく分かったねソーマお兄ちゃん。うん、その通り。私達の身体にはゼーレ達二人分の意識が一緒に共存して過ごしているの。だから状況に合わせて入れ替える事も出来るんだよ。...でも今はもう1人の私が居ないから不安定なの」
「心配するな。今回の情報でセント・ソルトスノーの秘密や黒ゼーレのいる場所を絞れるようになって来たからゴール先が見えて来たようなもんさ。...まぁ、その前にどうやって鉄砂の国へ移動するかが問題だなぁ」
「もうひとりのゼーレさんがいる場所を絞れて良かったですね!うーんでも、そもそも私達の生きてる人間がどうやってその砂鉄の国に入れるんでしょうかね?」
「そこなんだよ、問題は」
「あら、ならそこは私がいるから大丈夫よ」
「ミステルが?なんか策でもあったっけ?」
「もう昔のことを忘れたの?貴方達を夢を介して聖痕空間へと誘ったのはこの私自身なのよ?」
「聖痕空間...あ!聖痕計画のときのやつか!」
『解決策があるのならば早く行動に移しましょう。準備を始めてくださいミステル』
「あらあら、気が早いわよプロメテウス。少しくらい下準備させて頂戴、さすがにすぐ展開できるものじゃないのよ?そうね...ソーマ、貴方の力をさっそく借りさせてもらってもいいかしら?」
「俺の力か?ああ構わないよ、黒ゼーレを助ける為にも急がないとな」
鉄砂の国と呼ばれるもうひとつの世界に介入する為にミステルがもつ夢に誘う力を利用し、ソーマがその力を補助する為に自身の境界の権能を行使する形で作戦の実行が計画される事となり、ゼーレ達もその作戦に協力することが新たな行動方針となった。
しかし、本人達の行動とは他所に明確に何かを狙っている第三者なる存在が静かに彼らを遠巻きに観察していた。
ーあの者が、例の終焉を持つ者か。...人形にしては随分といいものを誘い込んで来たな。さっそく人形達に働いてもらうとするか...ー
色素が抜けたような不気味な色合いと誰かと良く似ている容姿をしているその女性は遠巻きに不思議な力で映し出したビジョンのような映像に映る白髪のモノトーンヘアの少年に視界を向けていた。
彼らはもうすでに彼女が支配するセント・ソルトスノーという名の餌の狩場に誘われてしまっていたのだ。
・黒淵白花
崩壊3rd原作にて登場した前文明の第六律者(死の律者)のコアを用いて作られた、分解と創生の力を一体化した強力な神の鍵である武器の一種。当時の所持者は火を追う蛾の一員であるエリシアが所持していたが、その後の前文明滅亡により新たな人類史時代を迎えてからはシャニアテ家が聖遺物として歴代の最強の戦乙女が扱うようになり、現時点ではデュランダルが所持している。
過去にソーマがオットーの実験によって直接、黒淵白花を手にした時期があり、一時期はソーマがこの神の鍵を所持していた。その為、ソーマが数年ぶりに聖黒の律者として羽化したときに手にしていた開花神槍は正に黒淵白花のレプリカのような存在であり、同時に中身に埋まっている対極の陰月を封印している拘束具的な役割を果たしていた。
ソーマの持つ陰月と陽月の性質と黒淵白花は幾つか酷似している要素があり、実は黒淵白花は二つの形態に分離する機能を持っているとされている。現時点では互いの関連性は不明。(つまりは陰月と陽月にも分離以外に合体統合する機能がある可能性がある?)
・ソーマの血縁関係
ソーマ自身の血縁関係は結果をいうとほぼ存在しないとされる。しかし、崩壊関連を血縁関係に照らし合わせるのなら彼を生み出した建造主(太陽系の星神と思われる存在)が親または始祖であり、初代境界の律者やヘレナ達はご先祖、その過程で生まれて来たそれ以外の律者達は兄妹あるいは姉弟的な存在に当たる。(人の律者であるエリシアはソーマの実姉に当たる感じ)
ただソーマの場合は血縁がいなくてもかつての養父であるオットーやその後を継いだ現養母に当たるテレサ、義姉であるビアンカなど彼をひとりの家族として愛してくれる者達がいる為、本人自身は孤独感を感じてはいないようである。
余談ではあるが、彼の姓名はかつて幼少期のソーマを孤児院で保護してくれていた天命関係者のシスターから贈られたものであり、ソーマが連れて行かれてからはシスターの安否も不明となっている。(逆にソーマという名を名付けたのはオットー本人)