天命本部にて座を降りたオットー・アポカリプスに変わって大主教の座に着くことになったテレサの仕事を手伝う為にソーマは書類作業に追われていた。
「なぁ〜テレサ〜。...これ、あとどれくらいあるの?」
「まだ...2割くらいしか終わってないわよ〜」
ソーマの質問に答えるテレサの姿はいつもの修道服...ではなく、仕事休みですぐにくつろげるようにした格好で書類作業をしていた。エンゲージワーカーとかいう衣装らしいが、肝心の彼女の目元にはクマができており、今にも過労でぶっ倒れそうな勢いである。
「まだ...2割?冗談だろ...ここは地獄か?夢なら覚め」
「残念ながらコレは現実よ、げ・ん・じ・つ!」
ソーマの育て親のひとりであるテレサがオットー亡き後、大主教の座についてからというもの、忙しさにやられていたのを見かねていままで面倒を見てくれた恩を返す為に仕事の手助けをしに行ったつもりだったが、まさかここまでキツいとは思わなかったソーマはさっそくグロッキー状態に追いやられ、書類作業だけでもう3日たったにも関わらず、忙しさでまともに睡眠ができなかったこともあり、すでにテレサと同じ目のクマが出来上がっていた。
「というかおかしくない?なんでこの時代になってアナログ式の手作業がメインなの?データ化は?」
「崩壊の被害のせいでデータが破損したり抜き取られたりすることがあったから万が一の為に手書きの紙媒体も必要だってことよ〜」
「だからって...タイプライターはねぇよ‼︎」
テレサ達のデスクワークの近くにはいかにもクラシックなデザインをしたタイプライター入力機器がそこにはあった。たしかに天命本部の事務室内の内装は西洋風のクラシック系のデザインを催してたが、まさか作業用の機器まで前時代的な代物に統一されていたとは...事務室ではなくコレクター置き場の間違いでは?。
「天命本部はいつから産業革命時代に戻ったんだ?...業務負担はブラック、しかも効率は悪いし、戦乙女や崩壊戦士の大半は脳筋よりで書類作業はろくにできない...いやほんと、父さ...オットーはよく耐えれたな⁈」
「まぁ、お祖父様は自分の分身体を複数用意してたっていうし、上手いこと采配してたんじゃない?リタの方はビアンカの補佐で引き抜く事はできないし、代わりにスーサナって子がなんとか使えそうだからまだマシよ。ほんとならソーマ、アンタに私の補佐をお願いしたかったんだけどねぇ〜」
「俺、書類作業はどっちかっていうと苦手な方なんだけど...そもそも俺の場合、キアナの手助けもしないといけないからずっと地球で待機するのはムリだし...」
「そこはまぁ、定期的に帰ってきた時に私の補佐をしてもらう感じで...」
「俺には休みすらないの⁈酷くなってない?」
「私なんか大主教についてから四六時中休みなしよ?」
「なんかゴメン」
2人か不満を愚痴り合っているとドアが開き、業務の任務を終えてきたスーサナが帰って来てた。
「テレサ様、ただいま任務を完了して来ました!あれ?ソーマ様も来ていてたんですね!」
「お疲れ様、スーサナ。ソーマはアンタが任務で天命を離れてから3日前に来てたわよ〜。...ずっと書類作業をやらせてたけど」
「ええ!そ、そうなんですか⁈...あの〜ソーマ様、大丈夫そうですか?」
「大丈夫...じゃないな、うん、頼むからそろそろ俺を安眠させてくれぇ...。理性を失いそうだ...」
死にかけの顔で眠らせて欲しいと懇願してくるソーマを見てリラックスさせる為、スーサナはあらかじめテレサに用意してた栄養ドリンクをソーマに差し出す。
「まぁまぁ落ち着いてください。そうだ、とりあえずこの栄養ドリンクを飲んで少しはリラックスしてください。...まぁ、ゴーヤジュースしかないんですが」
「あら、気がきくわね」
「ゴ、ゴーヤジュース?前々から思ってたけどテレサってホント味覚どうなってるんだよ...」
「真の大人は甘さよりも苦さを好んで嗜むものよ♪」
「年中幼児スタイルなのに...」
「あ”?今なんて?」
「い、いや何も?」
とりあえず一休みする為にデスクワークから立ち上がってフカフカのソファーに寝転ぼうと移動を始めるがあちこちに散乱した書類の紙が床下にも落ちて散らばっていた事に全く気づかず、そのまま踏んづけてしまった勢いでそのまま足場のバランスを崩して転倒しそうになる。
「あ、ヤバっ」
そのまま盛大にすっ転びながら転倒し、書類の紙が空中に漂う。頭を打ちつけたのか一時的に意識を失うが何とか起き上がる。
「ちょ、ちょっと大丈夫なのソーマ⁉︎」
「あわわ!ご、ご無事ですかソーマ様⁈」
二人が心配して近寄るも、大丈夫だと言って何とか起き上がる。...頭が少しだけヒリヒリするが大事には至らなかったようだ。
「痛ってぇ...あ、ああいや大丈夫だ問題ない。...軽く頭をぶつけたがなんともないよ。...少しぶつけたところを冷やしにいって来るからちょっと席を外すよ」
「わ、私が持って来ましょうか?」
「大丈夫だ、ちょっとずっと座りっぱなしで体が固まって来てたから丁度体を動かしたい所だ」
そう言いながらソーマはヒリヒリする頭を抑えながら事務室を後にして天命の食堂の厨房にて氷枕がないか冷凍庫内を漁る。
「え〜と、氷枕は...と...あ、あったあった」
氷枕をタオルに巻きながら頭を軽くぶつけたところを所を当てていると食堂のキッチンから何やら物音が聞こえて来た。
はて?こんな朝早くに誰かが食堂のキッチンで作業をしているのだろうかと見渡す。
「誰かいるのか?...もしや素裳さんか?」
最近、天命で働いている李素裳という神州出身の戦乙女の人がおり、定期的に厨房を利用して料理開発をやっていると話を聞いているがどうやら肝心の彼女の姿も見当たらないので今日は不在らしい。
改めてもう一度音源の元を辿りながら移動すると、野菜を保管している冷蔵庫にて何かを漁っている謎の生物らしき存在を見つけた。
「え?...な、何あの変な生き物」
見るからに人より遥かに小さな存在であり、何か黒い服の様なものをまとっているのか小人か子供にも見えた。こちらが眺めているのに気付いたのかその生物はこちらに顔を向けて来た。
「テリ?」
「え、て、テリ?」
謎の鳴き声?と共に振り向いて来たその生物の正体はテレサであった。...いや、正確にはデフォルメされたテレサみたいな見た目をした二、三頭身の謎生物であった。目玉焼きかの様な大きな目からは間抜けさとシュールさを感じさせ、その生物はあろうことか冷蔵庫にしまってあったテレサの好物であるゴーヤを何本か盗み出そうとしていたようである。
まさかこんな時間帯に野菜泥棒をしているテレサみたいな見た目の謎生物に出くわすとは...と頭を抱えていると、見つかってしまった事に気付いたテレサモドキはゴーヤを抱えたままその場を逃げ出してしまう。
「あ、ちょ、おいこら待て‼︎」
「テリテリ‼︎」
思ったよりもすばしっこく、いつの間にか食堂の厨房を抜けて曲がり角の先へ逃げられてしまう。
「クッソ素早いな!あのちびテレサ!っていうかゴーヤ盗まれてるし‼︎」
必死に手で掴もうと手を伸ばすが小動物のような俊敏さですり抜けていき、逃すたびにまた別の施設部屋へと逃げ込まれていく。
まるでさながらどこぞの有名なカートゥーンアニメのネズミ並みの逃げ足の速さである。
必死に後を追い続けると、なんだかよく分からない地下施設のような設備の部屋にまでたどり着く。
「はぁ、はぁ...徹夜明けで走り続けるのキッツいなぁ...ていうかあのちびテレサモドキどこ行った?」
部屋を探索してると丁度扉のような所の前にある装置の台の上によじ登っている例の謎生物を偶然発見した。ソーマは絶対に逃すまいと息を殺して気を見計らって捕縛する。
「とりゃ!捕まえた‼︎」
「テリ⁈テ、テリテリテリッー‼️」
「ちょっ、コラ暴れんな‼︎後でテレサにお前のことを問い詰めないといけないんだからさ!って、ちょ、バカ!装置のレバーを引っ張るな‼︎」
テレサモドキは絶対に離すまいと装置のレバーにしがみつき、引き離そうとした勢いで誤ってレバーを誤作動させてしまう。
「あ...ヤバッ、ああもう‼︎お前のせいだぞチビ助‼︎」
「テリ、テリリww〜‼︎」
怒られてるはずのテレサモドキはまるでしてやったぜ!、と言わんばかりに勝ち誇った表情をしていた。
「なーに勝ち誇ったような顔してんだ!...いや勝ち誇ってんのか?この顔。...ていうかやばい、施設の装置を勝手に作動させてしまったしテレサになんて説明すれば...‼︎」
ソーマがテレサモドキを手に抱えながらどうすればとあたふたしていると装置の作動に連動して目の前の巨大な扉のゲートが白い煙をはいて開き出す。
「うぇっ⁈ゲホッゲホッ‼︎な、なんなんだよ一体っ⁈」
煙に咳き込んでゲート先を見上げる。ゲートの大きさからもしや天命機密のタイタン機甲みたいなスーパーメカやアラハトみたいなスタイリッシュなロボでも待機してるのかと身構えるが見えて来たシルエットを見た途端に思わず絶句してしまう。
「え...?」
そこにいたのはタイタンやアラハトみたいな秘密メカですらなかった...。そこにいるのは、手元に抱えているテレサモドキと瓜二つの謎生物であった。
「テリ...」
「え?チビ助と同じヤツ?ったく、なんだよ驚かせやがって...」
と、安心したのも束の間、煙の霧が完全に晴れたそこには...大量のテレサモドキがいた。しかも、さっきまでの小さいヤツだけでなくソーマの身長に差し迫るほどの馬鹿デカいテレサモドキも居た。そんな大中小と多種多様なテレサモドキがゲート先の部屋にうじゃうじゃと居たのだ。
「で...デカ過ぎんだろ...‼︎」
「テリテリッッー‼︎」
「「「テリテリッッッー‼︎‼︎」」」
その場にいた先頭のちびテレサモドキが合図するとともにその場にいる全テレサモドキ達が突然雄叫びをあげてこちらへ向かって突撃して来た。
「うわあああああぁぁぁぁーッ‼️コッチくんなぁぁぁっー‼️」
もはや、手元のちびテレサも盗まれたゴーヤの事もどうでもよく、ただひたすら悪夢で出て来そうなこの光景から逃げ出す為にソーマは振り返らずにただがむしゃらにその場所から逃げ出した。
バタンッ!!
「テレサ!!スーサナ!!ち、地下に、テレサ...テレサの化け物がぁっ‼️」
「いきなり私のことを化け物呼わばりなんていい随分と度胸ねバカソーマ?しばくわよ!」
「ち、違う違う‼︎今天命の施設でテレサにそっくりな謎生物がたくさん現れて暴れ回っているんだよ‼︎」
「はぁ??」
「え〜と...ソーマ様?もしや頭の打ちどころが悪かったせいで幻覚を?」
ふたりに頭の心配をされるが、なんとか必死にこの目で見て触れたことを伝え続ける。
「なーんか信じ難いけど、もしかするとお祖父様が変なモノを残していたかも知れないわね。っていうか私にそっくりな見た目だなんてさぞかし可愛らしい見た目だったんでしょ?」
「いや、可愛いを通り越してバケモンみたいなデカさだった」
「はあ⁈何よそれ!頭にきたわ‼︎ソーマ、すぐに案内しなさい!そんなブサイクな偽物なんて私が許さないわ‼︎」
「あ、あわわ...な、なんか嫌な予感しかしないんですが」
徹夜明けという事もあり、意識がハイになっているテレサはそのままの勢いで自分の偽物を懲らしめにソーマとスーサナを引き連れて部屋を飛び出していく。
「さぁ出て来なさい偽物‼︎制約の十字架で叩きのめしてやるわよ‼︎」
「あの〜ソーマ様?テレサ様のそっくりさんが全く見当たらないんですけど...」
「おっかしいな、あんなに大量にいた奴らが短時間で失踪するなんてあり得ないし...」
必死に探しまわるが例の地下施設のゲートを覗いても気配ひとつもなくもぬけの殻だった。
「ソーマぁ...やっぱアンタの幻覚じゃないの?悪い事は言わないから後で医療室で頭を打ったところを見てもらいなさい。連れってってあげるから」
「えぇ...やっぱり幻覚だったのか...?...しっかりと触れていたはずなのに...」
「だいぶ疲れてんのよ。悪かったわねアンタにいきなり徹夜まで手伝わせのは良くなかったわ。まぁ今日はもう休んでゆっくりと....」
テレサがいい終わる前にテレサに顔向けていたソーマが口を開けて固まったように呆然として顔を青ざめながらテレサを必死に指差して来た。後から遅れてスーサナも口元を抑えてソーマと同じような驚いた恐怖の顔でこちらを見て来る。
「テ、テレサッ‼︎」
「テ、テレサ様ッ‼︎」
「何?ふたり共、私ことを指差して。なんかあんの?」
「テレサ後ろ、後ろッー‼︎」
「テレサ様早く逃げてくださいぃー‼︎」
「あん?後ろ...」
テレサが後ろを振り向いた頃には彼女の視界は真っ黒に染まっていた。気がつけばテレサは後ろに潜んでいた馬鹿デカいテレサモドキにそのまま口の中に飲み込まれていた。
「テ〜リッ!」
「⁉️ッッッ〜‼︎‼︎」
パクリッ
「「く、喰われたッッー⁉️」」
もはや声を発する暇もなしに呆気なくテレサがデカいテレサに喰われてしまった。見た目も相まってその光景はさながら共食いにしか見えない。
もうテレサは手遅れだと悟ったふたりは急いでその場から逃げ出す。あの光景を見たら嫌でもわかる。捕まれば次は自分たちの番だと...。
「ひぃぃ〜⁈食べられてちゃいましたよ⁈テレサ様が...テレサ様が‼︎」
「余計なことを考えるなスーサナ‼︎ここで落ち込んでたら次は俺たちの番だぞ‼︎」
「な、なんなんですかアレ⁈あんなの知りませんよ⁈いつの間に天命にあんな生物が住み着いていたんですか?」
「知るか‼︎多分、前大主教が残した呪物的何かじゃないのか⁈」
彼らが逃げている間にも天命施設内にて勤務していた戦乙女達や従業員が偽物のテレサモドキに襲われていた。
ーうわ!なんなのいきなり⁈ー
ーえ?テレサ様にそっくりな生物⁈うわ、こっち来た!ー
ー誰か助けて!厨房を荒らされて手をつけられないの‼︎ー
ーひぃぃ‼︎デッカい子が私を食べようとして来るんたげど⁈ー
ーギエピィー‼︎ー
「...なんか最後、変なのがいなかった?」
「な、なんだか死屍累々な状況ですね...」
天命が別の意味で混乱に陥っているのをよそに眺めているとソーマの携帯端末からキアナからメールが届いていた。どうやら今臨時で話題になっている注目動画を送って来たようで、これを見てとメッセージも送られていた。
端末で動画の画面を開くとニュースキャスターの人が臨時ニュースを報道している内容だった。
【臨時ニュースをお伝えします。今現在、イギリス方面天命本部区域にて原因不明の謎の生物が近隣の街や都市にて暴れ回っています。近隣住民の皆様は不用意に近づかずに自宅などに待機して身を守ってください。生物の特徴は現天命大主教トップであるテレサ・アポカリプス様に酷似しており、専門家によれば天命による何らかの余興パレードの前振りなのではと考えられております。また...】
「...な、なんかすっごく不味いことになってませんか?これ...」
「やばいな...下手したらテレサの折角の今の地位がパァになるかも」
「ど、どうするんですか」
「う、う〜ん...ってヤバ‼︎」
こちらに気付いたのか巨大なテレサモドキが襲いかかって来ていた。こっち今まで事務作業しかしていなかったので戦う手段を持っておらず、素手で対処するしかないかと考えていたら、横から別の戦乙女の人がドロップキックでテレサモドキを蹴り飛ばした。
「とりゃぁッ‼︎...大丈夫?二人とも」
助けに入ってきたのは元天命のS級戦乙女の一人である"李素裳"。かつて昔の精衛仙人だった頃のフカの弟子の一人であり、数少ない太虚剣気の担い手のひとりでもある。
「あ、素裳様‼︎」
「た、助かった...ありがとう素裳さん。でもなぜここに?」
「丁度、料理開発をしようとしていつも通りに厨房に入ってったら冷蔵庫あたりでテレサさんにそっくりな生き物が徘徊して人を襲っていたから撃退してたの。そしたらまさか貴方達まで襲われていたからちょうど助太刀に入ったってところかな」
「そうだったんですね。あ、いけない!素裳様!実はつい先ほどテレサ様が大きなテレサ様に食べられてしまってッ!!」
「テレサさん?彼女ならそこに...」
素裳が指差す方向に目を向けるとそこには喰われたはずのテレサが手にした制約の十字架の性能をフルに生かして巨大テレサモドキを片っ端から叩きのめしていた。
「オラァ‼︎くたばりなさい‼︎私の姿で悪さした以上、タダじゃおかないわよ‼︎」
「テ、テレサ⁈く、食われたはずじゃ...!」
「あん?別に喰われたわけじゃないわよ。アイツら中身はタイタン機甲と同じような機械人形よ、消化機能なんて無いわ。そのまま体の中から蹴破ってやったわよ」
「うっわぁ...エグい」
「とりあえず、天命の戦乙女達は緊急出動よ!後で出所と原因を探らないと...」
その後、テレサ率いる戦乙女の部隊を中心に街中で暴れているテレサモドキを何とか片っ端から鎮圧していった。幸い、このテレサモドキ達は暴れ回っているだけで人間側に死傷者を出しているものは一人もいなかったのが救いだった。
「...でこれが大量に増殖したテレサモドキを生み出した元凶か?」
ソーマが見ている先には縄で頭以外ぐるぐる巻きにされて天井にぶら下げられている最初に見たちびテレサと...隣にはその元凶元である天命の科学者である長光と呼ばれる人だった。
「テ、テリ...テリッ!」
「いやぁ...その、まさかこんなことになるとは思わなくって...」
長光本人は何とも居心地の悪そうな申し訳ない顔でキョドキョドしていた。対面する向こう側には威圧感全開な足組をしてソファーに座るテレサとその後ろに護衛のように立っているリタとビアンカの姿があった。尋問してつもりなのだろうと思うがどちらかっていうとヤクザかマフィアのような光景である。
「ゔ、ゔうぅ〜...ほ、ほんとにごめんなさい。元はと言えば私の後始末が甘かったせいで...」
「話してみなさい」
「じ、実は...」
話を要約すると、ことの真相はどうやら天命やネゲントロピーで開発されている武装人形(模造十字架:ほーよーや、暗影の十字架:あんえー達みたいな子達の事)の研究開発中にまだ人格の論理コアだけを先に搭載した状態で、そのまま保管室にしまわれ、人格を芽生えさせたこのちびテレサは自身が捨てられたと勘違いし、人間に復讐する為に天命の兵器製造プラントに侵入して自分に似た姿の機械人形を大量に生産して逆襲をはかろうとしたのである。
つまり、この長光って人の管理不足とちびテレサのとんでもない勘違いによる茶番劇であったのだ。やられた側からしたらたまったもんじゃ無いし、いい迷惑である。
「ごめんね、テリテリちゃん、私のせいで貴方に辛い思いをさせちゃって」
「テ、テリ...」
なんか心なしかぶら下がっているテリテリが涙を流しているようにも見えた。疲れすぎて幻覚でも見えてきたのだろうか?
「ハァ...ほんっと、やってくれたわね。ひと通り仕事を終わらせてようやくひと息ついたそばから...長光さん、あなたの処分はもちろん下すけど同時に今回の騒動の後始末の為にバンバンこき使わせてもらうからね!」
「は、はい...とほほ、こんな事ならちゃんと安全管理しとくべきだった〜」
その後は後始末の為に壊された建造物や物資の回収と修復を行い、その労働力をまさかの巨大テリテリ達にやらせる形で対応する事となった。テレサ曰く、せっかく作られたのだから有効利用しないとということであり、タイタン機甲と同じような性能をしているので十分に使えるとして判断された。おかげで天命本部あたり一帯にタイタン機甲と巨大テリテリが共に防衛と警備をしているという何ともシュールな光景が広がり、ちょっとした観光名所となった。おまけに見た目がテレサの姿をしている事も相まって、結果的にテレサの知名度が大きく広がるきっかけになったともいう。ただテレサ的には素直に喜べないようで、自分の顔はそんなに間抜けな顔をしていないと不満だらけであった。
ちなみになぜ長光博士本人がわざわざテレサをモデルにした武装人形を開発しようとしたのかというと、どうやら前大主教であるオットーが抜けてから業務と地位の引き継ぎの為にオットー側もいろいろと事前に手配してくれていたようだが、それでも今のテレサには余りに負担が大きすぎる為、彼女なりの良心でアシスタントしてくれる存在を用意してあげようという彼女なりのサプライズのつもりだったらしい。...まぁ、その結果は実に散々なものであったが。
「ほい、テリテリこれをお願い」
「テリ!」
今現在、テリテリは当初の長光博士の目的通り優秀なアシスタント人形として働いている。テリテリしか喋れないが、きちんと言葉は理解してるし、地頭の良さはウチのほーよー達より賢い。
「いやぁ、ホントに優秀だなぁテリテリは、うちの子達とは大違いだ」
「テリリッ♪」
「ちょ、ちょっとぉ!せっかくアタシ達がソーマに会いにきてやったのにひどくないかしら!」
「そりゃあお前らよく問題を起こすし、それに比べたらテリテリは大人しいし、仕事できるし...」
新しく現れた自分達と同じ武装人形であるテリテリに脅威を感じているのかほーよーが対抗心を燃やしていた。
「く、くうぅ〜っ、だ、だったらアタシも仕事?の手伝いをしてやるわよ!」
「やめろやめろ、お前がやり出したらむしろデスクワークの現場が更に地獄絵図なるっての...ってコラ、あんえー!書類の紙に落書きするんじゃない!こっちのノートを使え!」
「え?でもこの円盤の絵柄なんか魔方陣みたいで使えそうなんだけどな〜」
「それは魔方陣じゃなくて円グラフってやつだ!」
あんえーとほーよーがやからさないように何とか見張っていると、テレサがいつも以上ににヨレヨレな雰囲気で入室してきた。
「ソーマ...私、いつになったら安眠できるのかしらね...」
「え、ど、どうしたんだよテレサ。まさかまだ問題事が?」
「うわぁ〜、テレサってばすっごいクマができてる〜♪」
何やらほーよーに目の隈を言われているようだがそんな事もお構いなしに死んだ目付きでテレサは問題事の内容を説明する。
「ソーマ、ちょっと前までにテリテリが起こした騒動を覚えているわよね?...あの騒動で天命のデータバンクにダメージを受けたみたいでデータをサベージしないといけないんだけどしばらくコンピュータが一部使えないからその分を手書きで再現しないといけないみたいよ」
「え?て、手書き?でもアレ、かなりの情報量あるんだけど...マジ?」
「...マジよ。ハァ...おめでとう、今日もまた徹夜コース突入よ...」
「ああ...終わった...」
どうやら騒動が片付いても自分達には安らかな安眠はしばらく訪れないらしい。