ではお楽しみください
§sideなのは§
「おいしい……」
「ホントにうまいよ!毎日でも食べたいくらいさ!」
「こ、こら、アルフ。」
フェイトちゃんはわずかに頬を緩ませて、アルフさんはもう三杯目を食べている。喜んでもらえたなら作った甲斐があった。
「にゃはは、いいですよ。食べたくなったら何時でも呼んでください」
「本当かい!?」
アルフさんはよっぽど嬉しかったのか、目をキラキラさせてわたしを見てきた。そこまでだとは流石に予想外だったけど嬉しかった。
なんでこんなことになっているかというと、あの話の後、フェイトちゃんの家にいったんだけど、何気なく見たゴミ箱に何かの袋とかしか入っていなかったから、おかしいと思って普段どんな食事をしているのかを聞くと、二人とも料理の仕方を知らないらしく、楽なコンビニ弁当などですませていたみたいだ。極めつけに、アルフさんはドッグフードを食べていたらしい。小学校三年生のわたしでも栄養が偏りすぎだって分かる。だからフェイトちゃんとアルフさんに無理言って今日のお昼ご飯を作らせてもらった。これでも喫茶翠屋の娘だもん、料理は作れる!
……簡単なものだけだけど。
今回はシチューを作った。多めに作っておけば何日かは食べられるのと、野菜がいっぱい入っているから、栄養もバツグンだからだ。
買い物はフェイトちゃんと一緒に行った。周りからは優しい視線をもらっていたから、仲のいいおともだちに見えたんだろう。フェイトちゃんは慣れない視線なのか、若干オロオロしていたのがまた可愛かった。
「……ご馳走様でした。」
「はー、うまかった!」
「おそまつさまでした。」
二人は満足したらしい。アルフさんが沢山食べたのには少し驚いたけど、とりあえずあと1、2食分はあるから大丈夫だと思う。
「じゃあ私達、ちょっと母さんの所に経過報告しに行くから……。」
食器を流し台に置いた後、フェイトちゃんはそう言った。私もついて行っていいかと聞いたけれど、流石に無理らしい。
「ゴメン、大したことできなくて……。
それなのに、ごはんも作ってもらって……その上、母さんへのお土産まで貰っちゃって。」
フェイトちゃんはそう言ってシュークリームの入った袋を持つ。家を出る前にお母さんが持たせてくれたものだ。きっとフェイトちゃんのお母さんも喜んでくれる。
「ううん、気にしないで。フェイトちゃんのお母さんによろしくね。」
「うん。」
私とユーノくんは部屋を後にすることにした。フェイトちゃん達が帰ってくるのは少し遅くなるらしいから。
フェイトちゃん達は屋上から転移するらしいので玄関までは一緒に出た。フェイトちゃんがそのままスタスタと歩いていったから私は手を振りながら言った。
「じゃあね、また明日!」
フェイトちゃんは振り返って驚いたような表情をしていた。少しもじもじしたけど、ちょっとだけ微笑んでくれた。
「うん……また明日」
その言葉を聞き、わたしも笑顔になれた。
でも、それは長くは続かなかったんだ。
病院から、弟が消えていたから。
******
§side 切嗣§
Fの遺産が本拠地へ報告のために向かうようだ。放った使い魔を通してその様子を見ている。彼女達は屋上へ上がり、転移魔法の準備に入った。
正直言って潜入するのは今しかない。何故ならなのはちゃんとFの遺産が一時的だが同盟を結んだ事だ。これにより、ジュエルシードを探すスピードが格段に上がる。操作範囲がかぶる事が無くなるし、戦闘による消耗も無くなる。今潜入しておかなければ、恐らく次潜入した時はジュエルシードは集まり切っている……つまり手遅れだ。今座標軸を知って、後から潜入すればいいなんて甘い事は絶対に不可能だ。Fの遺産を使っている相手は時空管理局に見つからない為に定期的にアジトの位置を変更している筈だ。もしも僕が後から潜入する方法をとって転移した場合、アジトが無くて別次元に放り出される可能性が極めて高い。
だからこそ今
しかし、何もせずに潜入すれば確実にバレるだろうが、ちゃんと対策は考えてある。それはこの世界で僕だけが使える技術……魔術だ。
以前、魔術による認識阻害の結界を張って、魔法のサーチャーで結界を外から見て中身が見えるかどうか。反応はどうか。それを試してみたことがある。
結果は"反応は無く、目を凝らすとぼんやりと何か白いものが見える気がする程度"のものだった。まるで"心霊写真"のように。
結論から言うと、魔術は魔法による干渉をほぼ受けつけない。
それが何故かと言うと、案外簡単に分かった。力の方向性の問題だ。
魔法は発展をしていく
魔術は原初の一へ遡る
分かりづらい人もいるだろうが、簡単に言えば魔法は科学、魔術はオカルトなのだ。オカルトを科学で実証するなんてはっきり言って不可能だ。もしもそんなこと出来る奴がいたとしたらそれは天才とかいうレベルではないだろう。世紀の大発見だ。
話を戻そう。
当然感知されにくくはするが転移反応は間違い無く検知される。主犯の大方の予想はついている。大魔導師相手に急増の魔導師が拵えた妨害など意に介さないのはは仕方のないことだろう。しかしその後の魔力反応さえ隠せればこちらのもの。本拠地内で行動を取れる。
さあ、時間だ。
Fの遺産が指定した座標軸を記録し、すぐさま僕は認識阻害の結界を維持したまま転移魔法を発動させる
「次元転移、次元座標。
876C44193312D6993583D1460779F3125
開け、誘いの扉。時の庭園、テスタロッサの主の元へ。」
足元に黒い魔方陣が展開される。転移魔法独特の感覚にももう慣れたものだ。
身体が一瞬フワリと浮かぶと、景色は一変した。なんというか、まるでありきたりなRPGゲームのラスボス……大魔王でもいそうな雰囲気の建物だ。これを作った本人は一体どんな趣味をしているのだろうか?そんなことを考えていると警報が鳴り響いた。やはり転移反応だけは捕捉されたようだ。地面のあらゆるところから機械で出来た兵士が出現した。数はおよそ20といったところか……それにしてもこの機械兵の魔力の高さが正直予想外だ。大雑把に言っても機械兵の全てが僕の魔力ランクBを超えている。こんなのを一々相手にしていたら確実に僕はやられてしまうだろう。まあ、戦えばの話だが。
機会兵は僕を認識出来ていないのか、周囲を徘徊している。誤作動と思われたのなら上々だ。機会兵は庭園の中へと進んでいった。中にいないか確認しようとしているのだろう。
さて、情報を集めよう。僕は機械兵が居なくなったのを確認してから使い魔を放つ。勿論魔術の方面での使い魔だ。知らない者からすればただの小鳥。気に留めることはないだろう。
探すのは資料室。そこならば色々な事がわかる筈だ。この庭園の詳細な構造、主犯が何をしようとしているのか。それさえ分かれば対処のしようは幾らでも見つかる筈だ。利害が一致すれば交渉だって出来る。
視界を共有していた使い魔の一羽がミッドチルダ語で資料室と書かれたプレートを目に捉えた。どうやらロックがかかっているようだが、機械兵も資料室へ向かっているようで、それに便乗すれば暗号が分からなくとも侵入は可能だ。移動は小さな結界と大きな結界を交互に使う事でバレずに前に進む事が出来る。勿論消費する魔力は馬鹿にならないが、戦闘するよりは遥かにマシだ。僕は結界を何度も張り直しながら慎重かつ迅速に資料室へと向かった。
******
§side プレシア§
「確かにジュエルシード……本物ね」
私の目の前には三つの青い宝石が浮かんでいる。私が今何よりも欲しているもの。ロストロギア、ジュエルシード。
コレは他のロストロギアより純度が高い。ジュエルシードならば、あの約束の地への道筋を作れる。そしてあの子を……あの子との時間を取り戻せる。
「よく頑張ったわ……と、褒めてあげたいところだけど。」
そう言って私は立ち上がると
「母さんはあなたになんて伝えた?」
「あっ……あの……」
人形は顔を青くしながら小刻みに震えていた。なんとか言い訳をひねり出そうとしているのだろうか。それを見て私の腹の虫の居所はさらに悪くなる。私には時間が無いのだ。
「あれは母さんの研究……夢のためにどうしても必要なの。21個のジュエルシード、全てを集めてきなさいと伝えた筈よ。それなのに、あんなに時間をかけてたった3つ?」
そこまで言って私は、人形が手に何かを持っていることに気がついた。
「それは?」
「あ、あの……母さんに……」
私は胸の奥からドス黒いものが溢れ出てくるのを感じた。こんなものを買ってくる時間があるのなら何故その時間をジュエルシード捜索にあてないのか。怒りを抑えきれなかった私は人形の持っている箱を叩き落とそうと手を振り上げた。人形は恐怖から耐えるためなのか、キュッと目を瞑った……が、その瞬間、警報が鳴り響いた。
「…………え…?」
人形は警報が鳴り響いたのと、いつまでも叩かれないことを不思議に思ったのかビクビクしながら此方を片目でチラと見る。ああ、本当に忌々しい。私は悪態をついて私はパネルを開いた。警備は基本的に管制システムが行っている。警報の原因を検索すると赤い文字が表示された。
≪INVADER≫
インベーダー…要するに侵入者のようだ。
しかし、もう時空管理局が此処を突き止めたのだろうか?いや、いくらなんでも早すぎる。恐らく奴等は次元震を感知してから此方へ向かっている筈。ならまだ第96管理外世界にすら到着していない筈だ。私は一旦思考をやめて監視映像を見てみた。
しかし、そこには肝心の転移してきたものが何も見当たらない。こんな時に故障か……ああ、忌々しい。
「フェイト、母さんはやることが出来たわ。貴女は早くあっちに戻ってジュエルシードを集めてきなさい」
「……はい……母さん」
人形はそう言うと静かに部屋を去っていった。似ているけれど、やっぱり別物。嫌でもそう感じる。あの子ならきっとワガママを言ったりする筈だから。あの子は自分で創り上げた中で間違いなく一番の失敗作だ。
愚痴っていても仕方が無い。私の目的を邪魔する連中が来れないように、警備は徹底していなければならない。私は手早く機能の修正を始めることにした。