ころしやものがたり   作:ちきんなんばん

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題名も何も捻りがありません。
才能が欲しいと思いました。

では第1話、お楽しみください


第1話 高町切嗣

§side???§

 

 真っ黒な空間に自分が浮かんでいるのがボンヤリと分かった。

 

 

 その空間には無数の顔が浮かび上がっている。

 

 憤怒、憎悪、嫉妬、絶望、恐怖

 

 種類も数も数えきれない悪意が一斉に僕に呪いの言葉をかける。

 

 

■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね

 

 

 やれやれ、とため息もつきたくなった。死してなお呪われ続けるのはどうも面倒だ、死ぬまでじゃなかったのだろうか?と何故かそんなことをボヤく余裕すらあった。

ともあれ、自分の妻に会いたいという考えがのっけから駄目になってしまった。

 

 そして自分の体が暗闇に飲まれていく。体の末端がどんどん食われて行くかのように黒に染まっていくが痛みも恐怖も感じない、コレが自分の最期か、お似合いだなと自嘲するような笑みを浮かべたその時。

 

 

 一筋の光が僕を照らした

 

 

 

 ******

 

 

 

 耳に車の通る音や人が喋る声が聞こえて僕は目が覚めた。意識は覚醒しているが、どういうわけか体に違和感があり体が動かしにくい。とりあえず見れる範囲で辺りを見回すと、ここは自分が記憶している中には全く無い部屋だったが、自分の家や病院の部屋ではなく一般家庭の部屋ということだけが分かった。僕は知らないベッドに布団を被され寝かされており、兎に角疑問が尽きない。そして何より

 

「この世全ての悪(アンリ・マユ)の呪いが……消えている?」

 

 この世全ての悪(アンリ・マユ)

 

 60年以上前に行われた"第三次聖杯戦争"で万能の願望器"聖杯"を汚染し、尚且つ僕の参加した"第四次聖杯戦争"で決戦地の冬木市に"泥"という名の極大の呪いを冬木市に無差別に振りまいた"悪"である。僕が34歳という若さで亡くなったのは、僕が汚染された聖杯に認められたものの、拒絶した際にこの世全ての悪(アンリ・マユ)に呪われたための精神や肉体の摩耗が原因である。それが自分の中に存在しないという異常事態。不可解であるが周囲の情報を全て整理した上で推論を出した。

 

「ーー僕は死んでいないのか?」

 

 自分はあの時、息子である士郎が自分がいなくなっても大丈夫だと安堵して逝った筈だ。しかし、この部屋の風景は正直あの世のものとは思えない、少なくともあの世を車が走っているのは想像出来ない。それに決定的なのは、"体が霊体ではなくきちんと肉がついている"ことである。間違いなく自分は生きている、呪いを一切受けることなく。

 

 何故。そんなことを考えていると、ガチャッという音と共に部屋の扉が開いた。僕はまだ満足に動かない身体を構えて即座に動けるようにする。

 

「あ、起きたんだね!」

 

 部屋に入ってきたのは栗色の髪を左右で纏めている小さな女の子だった。小学校の2~3年くらいだろうか、とても明るい印象を受ける。見た目は害はなさそうだが、僕は仰天した。

 

 "魔力とも霊的な何かとも違うナニカ分からない力"が目の前の年端かもない少女から溢れ出しているのだ。

 

 魔力であれば英霊なのではないかと錯覚するほどであった。そしてコントロールしていないのか、それともわざとなのか圧倒的な"ナニカが"周囲にだだ漏れしている。油断は禁物、死徒にも幼い見た目のものがいるのだ、油断をしたら一瞬で命を喰われる……僕はジッと少女の挙動の観察、脱出経路の確認、魔術回路の起動準備、周囲で利用出来るもの、それらを確認した後、僕は少女に問いかけた。

 

「……君は一体誰だ?」

 

「私?私は高町なのは。なのはって呼んでね」

 

 少女、なのははあどけない笑みを浮かべて僕に名前を教えた。しかし警戒は解かない、決して油断なんかはしない。

 

「なのは……なのはちゃんか。

君は何をしに来たんだい?それと、僕はどうしてこんな所に居るんだ?」

 

「えっと……覚えてないの?

私の家の前で昨日の夜、君が倒れてたんだよ?」

 

「それを証明するものはあるかい?」

 

「しょ、証明?え、えぇっとぉ……」

 

 少女はうろたえる。そんなことを聞かれるとは思っていなかったようで、うんうん唸り始めた。僕は相手が嘘をついているかどうかは表情、仕草などである程度分かる。そうしなければ戦場では生き残れなかったから。そして目の前の少女、なのははとても嘘をついているようには思えない。本気で悩んでいるし、若干泣きそうだ、これは非常にマズイ。なにせ女の子に涙は流させたらいけないということを信条にしているこの身だ。

 

「ゴメンゴメン、僕も色々不可解でね、困らせたのは謝るよ。

……それにしてもどうやら迷惑かけちゃったみたいだね」

 

 いいのいいのとなのはは手を振って笑っている。これだけ見ても、明るくてとてもいい子だというのがよく分かる。先程まで自分を困らせていた人を簡単に許してあげるのはそう簡単なことじゃない、親の教育の賜物だろう。

 

 しかし、倒れていた?見知らぬ人の家の前で?僕はあの家の縁側にいた筈なのに。色々考えていると、なのはが声をかけてきた。

 

「ところで、あなたの名前は?」

 

「僕かい?僕は衛宮切嗣、切嗣と呼んでくれればいいよ」

 

「うん!よろしくね切嗣くん!」

 

 衛宮切嗣、それが僕の名前。正義を目指し悪を背負って悪をを貫いた壊れた男。全てを救おうとして全てを失った"正義の味方"の成り損ないだ。

 

 ここで僕に一つの疑問が浮かんだ。

 

「なのはちゃん、そういえばかなりフレンドリーに話しかけてくれるけど、どうしてなんだい?僕、君に会ったことあったっけ?可愛い子なら忘れる筈ないんだけど」

 

 そう、彼女の気軽さだ。歳が20以上離れているというのに、まるで友達感覚で話してくれている。単純に考えればそういう性格なのだろうと思った。

 

「え、えっと……だって切嗣くん、私と多分同い年くらいでしょ?」

 

「…………」

 

 予想の範疇を軽く超えていた。さっきのカワイイ発言でなのはが恥ずかしそうに頬を染めていたことがどうでもよくなった。彼女が30代なのだろうか?いや、流石にそれはない、彼女に失礼過ぎる、合法ロリなんて存在するわけがない、あるはずないんだ。それに自分で言うのも何だが、僕は老け顔だ。呪いで消耗して34より年上に見えるのに同い年?そんな筈は無い。そう思って手を頭にやろうとして目に入った。

 

 まるで子供のような柔らかそうで小さな手が

 

 僕の思考が停止した。その様子をなのはが不思議そうな表情を浮かべて僕を見ている。

 

「切嗣くん?」

 

「……なのはちゃん、鏡持ってるかい?」

 

「鏡?

ーーはい、これ」

 

 なのはは少しキョロキョロと辺りを見回すと、棚の上に置いてあった手鏡を拾い僕に手渡した。僕はそれを受け取り、恐る恐る自分の顔を写す。そして目に飛び込んできたのは、目が黒ずんでいるのは変わらないが、かつてとある孤島に住んでいた子供の頃の自分の姿だった。

 

「…………」

 

 本当に驚いた時は声が出ないのだと僕は改めて実感してしまった。これは一体どういうことなのか?死んでなかったかと思えば今度は自分の年齢が7~8歳くらいまで下がっていたなんて魔術的な観点から見ても無茶苦茶だ。色々推測は出来るが、情報の少ない今、いくら悩んでもここでは解決しない。とりあえずここは怪しまれないように自分の見た目相応の対応をするべきだと考えた。……もう遅いのかもしれないけれど。

 

「あ、ああ、ありがとう」

 

「どうしたの?何処か痛むの?」

 

 なのはは心配そうに僕の顔を覗き込む。本当にいい子だ、士郎やイリヤもこう育ってくれると嬉しい。

 

「いや、大丈夫だよ。とりあえず君の家族にお礼の挨拶しなきゃいけないね」

 

「うん。切嗣くん、立てる?」

 

「ああ、問題ないよ。ありがとうなのはちゃん」

 

 僕は布団からゆっくり起き上がりニコリと微笑む、するとなのはは再び少し顔を赤くしてしまう。この歳だとまだ耐性が無いのであろう、僕も色々犯罪に手を染めたが流石にこの手の犯罪は犯したことないので流石に焦る。

 

「早く行こう、うん、今すぐに」

 

「う、うん!」

 

 二人揃って部屋を出る。僕は、女の子への優しさはある程度で自重しておこうと心に決めたのだった。

 

 

 ******

 

§side三人称§

 

 

 

 朝7時

 

 綺麗な栗色の髪の毛を腰まで伸ばした女性が台所で野菜スープを作っていた。スープを少し掬って一口味見をする。

 

「うん、バッチリ」

 

 満足のいく味だったのか、ニッコリと微笑むと鍋にかけていた火を止めた時、玄関から声が聞こえてきた。

 

「あ、帰ってきたのね。じゃあよそっちゃいましょうか」

 

 彼女は楽しそうに朝食の準備を進め、朝食の準備が完全に終わったと同時に三人が部屋に入ってきた。

 

「恭ちゃん容赦ないよ……」

 

「訓練なんだ、当たり前じゃないか」

 

 メガネをかけた長い黒髪を三つ編みにして纏めている少女がブツブツ文句を言うも、黒髪の青年は取り合おうとしない。

 

「桃子、今帰ったよ」

 

「おかえりなさい朝食出来てますよ」

 

 長身で黒髪の男性は朝食を作った女性と微笑み合うと席につき、そして思い出したかのように周りをきょろきょろ見て女性に話しかけた。

 

「そういえばなのははどうしたんだい?まだ起きてないのか?」

 

「ああ、なのはにはあの子のタオルを変えに行かせましたよ」

 

 その言葉を聞いた瞬間男性陣の表情が一変した。

 

「なのはを同い年とはいえ男の子の元に一人で行かせただって?!」

 

 男性の発言に青年は一瞬ポカンとした様子だったが、何かに気が付くと同じように叫んだ。

 

「えっ……そ、そうだ!冗談じゃない!男は狼なんだ!そんなところになのはを一人にしておけない!」

 

 男二人がギャーギャー騒ぎ出したのを三つ編みの少女はそれを苦笑いしながら見つめる。そして二人が二階に上がろうと振り向いたところに、愛娘のなのはと昨日倒れていた少年が階段から降りて来た。

 

 

 ******

 

§side切嗣§

 

 

 下の階が異様に騒がしい。なのはの家族が暴れているのだろうか?とりあえず階段を降りるながら周りを見てみると、物がキチンと整理されていてとても気持ちがいい。自分が住んでいた家は整理されているというより物が無かったため、整頓されているというより物寂しいという印象なので、こういう感覚は久しぶりだ。

 

 一階に降りると、二人の男性がなのはに迫った。

 

「なのは!なにもされなかったかい!?」

 

「へっ?う、うん、大丈夫だよ?」

 

 なのははビックリしながら答える。僕が何かをしたのかと疑われているのが分かったため、僕は思わず苦笑いした。

 

「娘さんには手は出してませんよ、ご安心ください」

 

「なに!なのはに魅力が無いと言いたいのか?!」

 

 ならどう答えればいいんだ。まあ、父として気持ちは分からなくも無い。僕だって士郎やイリヤにはいい人と結婚させたい、いやむしろ士郎とイリヤを結婚させる手もある。あ、これは名案だ、そうだそうしよう。

 

 まあ今はそれはおいておくとしよう。すると、敵意剥き出しの二人の頭に綺麗な肌の手が置かれた。栗色の髪の毛の女性のものだ。どこかなのはに似ている、なのはが成長するとこの人のようになるのだろうと思った。彼女は素敵な笑顔をしているが何故か背筋が凍りそうな悪寒がした。

 

「二人とも、ちょっとおはなししましょうか」

 

 のちに僕は今まで生きてきた中で戦場でもこんな恐怖を感じたことは無かったと語ることとなった。

 

 

 

 7時30分

 

 

「この度はこんな見知らぬ上に怪しい僕を助けていただきありがとうございます。名前は衛宮切嗣です、好きに呼んでください」

 

 おはなしという名の説教が終わった後、朝食をとり終わって僕は挨拶と感謝を言葉にした。朝食までいただくのは申し訳ないと思ったのだが、どうしてもと勧められたたのでいただくこととなった。

 

 感想を一言で言うと、兎に角美味しかった。家で士郎が作ってくれた料理もとても美味しかったのだが、これは次元が違う。高級レストランで出されても遜色無いクオリティだった、というかアインツベルンで食べた物より美味しかった気がする。ちなみに今は服装はノースリーブに短パンというラフな服装である、そこまで昔と同じであるとなると本当に不気味だ。

 

「礼儀正しい子だね。

私は高町士郎、そこの三人の父親だよ」

 

 黒髪で長身の男性、士郎さんがなのはと黒髪の青年と黒髪三つ編みのメガネをかけた少女を差して言った。先程の鬼気迫る表情から一変、温和な表情をしているが、その佇まいや目つきはまるで隙が無い、何かしら武術を嗜んでいたのであろうと推測する。しかし、自分の養子と同じ名前だったとは、士郎という名とは縁があるのだろうか?

 

「妻の桃子です、よろしくね切嗣くん」

 

 栗色の髪の毛の女性、桃子が笑顔で言った。彼女は体内に全て遠き理想郷(アヴァロン)でも入れているのだろうか?とても三児の母親には見えない。

 

「長男の恭也だ」

 

 黒髪の青年、恭也は他の人より落ち着いた声で言った。父親と遜色ない静かな闘志のようなものを感じ取れる。長い間戦場にいた勘が告げているのだから間違いない。しかし、妙に見られている。何か粗相をしてしまったのだろうか?

 

「あたしは長女の美由希、なのはと仲良くしてあげてね切嗣くん」

 

 黒髪を三つ編みにして、メガネをかけた少女、美由希が笑顔で言う。彼女からも恭也ほどでは無いが、闘志のようなものを感じるが、それでいて物腰が柔らかで大人しい雰囲気がある

 

「一度紹介したけど、次女のなのはだよ。よろしくね切嗣くん」

 

 最後になのは。最初の印象から変わらないが、明るくていい子だ、見ていて和む。何かしらの力をを持っているのはどうやら彼女だけのようだ。まあ、あんなのがホイホイいたら冗談ではないと思ったが。今度調べてみる必要があるだろう。

 

 全員の自己紹介が終わると、士郎は居住まいを正して問いかけてきた。

 

「さて、いきなりで悪いんだけど、どうして私達の家の前で倒れていたんだい?」

 

 表情に出さなかったとはいえ、僕はしまったと思った。そこの理由を考えていなかったのだ。魔術の事など話すわけにはいかないし、なにより、死んで目が覚めたらこうなっていたなど言える筈も無い、言えたとしても子供の戯言だと聞き流されるだろう。当たり障りの無い程度で本当の事を話すか?いや、駄目だ、そうすると大部分を隠すことになって不信がられる。このような状態がイレギュラーなのだから、多少大きな嘘でもバレはしないだろう。

 

「……実は何も思い出せないんです。自分の名前と、自分に身寄りがいないということだけは分かっているんですけど……」

 

 当たり障りの無いどころかかなり大雑把になってしまった。これでは信じてもらえないだろう。

 

「そうだったのか……すまない、辛いことを聞いてしまって」

 

一ミリも怪しまれることもなく簡単に信じてもらえた、それでいいのか家主。

 

「これからどうするつもりなんだい?」

 

「……一先ず宿探しですかね。それから先は今のところ何も考えてませんし、のんびり時間をかけて考えていこうと思ってます」

 

 野宿でも僕は大丈夫だ。だが問題は資金調達だ、この肉体年齢で雇ってくれる場所などある筈もなく、昔のように戦場に出ようともこの身体では死ぬのがオチだろう。

 

「子供にそんなことはさせられないよ。とりあえず警察には連絡は入れておくよ。」

 

至れり尽くせりとはまさにこのことだ。騙してる此方としてはありがたいことなのだけれど、ここまでだとなんだか不気味な程だ。

 

「さて切嗣君、ここで君には選択肢は2つある」

 

 突然そんなことを言い出した士郎に全員が注目する。彼が一体何を言い出すのかは誰も予想出来ない。

 

「一つは孤児院に預かってもらうこと」

 

 まあ、当然の手段であろうが自分は行くつもりは無い。孤児院でやれることは限られているし、なにより、見た目は子供でも中身は34歳の大人だ、自分より歳の低い者に管理されるのはゴメンである。

 

「もう一つの選択肢は

 

……切嗣くん、私の家の養子にならないか?」

 

 あまりにも予想外過ぎた。自分を冷静な人物だと思っていたが、訂正しなければならないようだ。ここまで予想外の事態だと思考を落ち着かせるのに精一杯のようだ。

 

「いや、あの、話の流れが見えないんですが」

 

「倒れていた君の第一発見者は私達だし、何も覚えていないとなると放っておけないだろう?生活面では心配することは無いよ、衣食住は保証するし、見返りなんて求めない。それに、なのはには仲のいい男の子の友達がいなくてね、出来れば仲良くしてあげてほしいんだ」

 

 士郎は笑顔で俺に言った。その優しさはとても嬉しいが、いくらなんでも迷惑になるだろう。それに、見返りはいらないなんて、そんなことは許されることでは無いだろう、なにより他の人達が反対なりなんなりする筈。

 

「家族が増えるの?!やったぁ!」

 

「いいんじゃないかな?あたしは歓迎するよ」

 

「……父さんが決めたのなら俺は反対しないさ」

 

「息子が増えるなんて、嬉しいわぁ」

 

 そんなことはなかった。何で恭也以外みんな乗り気なんだろう。子供とはいえ、見ず知らずの子を養子にしようだなんて物好きだなと思ったが、よくよく考えると自分もそうだったことを思い出したため、特に何も言えなくなった。

 

「ウチの家族は大賛成みたいだけど切嗣くん、どうする?」

 

 士郎の言葉に高町家の全員の視線が僕に集まる。こうなってしまった以上、断る理由もない。だけどせめて恩返しくらいはしたい。

 

「……わかりました、お願いします。ですけど恩返しくらいはさせてください、でないといくらなんでも目覚めが悪いですから」

 

「うん、君が無理しない範囲でなら喜んで受けるよ」

 

 わっと家族に歓声が沸き起こる。随分と楽天家な家族だと、ため息をつきたくもなった。

 

 詳しいことは調べなければ分からないが、今は第二の生を受けたと思おう。なら今まで戦いに費やしてきた時間を子供の間だけでも平和にのんびり過ごそう。守れなかった命のためにも、守れなかった愛する人のためにも、この命は寿命まで全うしたい、それが彼等に出来る唯一の償いだから。

 

「うん、今日から君は"高町切嗣"、私の息子だ」

 

 士郎は僕の頭を撫でた。人に頭を撫でてもらうなんてこと、今まで生きてきた中で一度も無かった。むず痒さを覚えながら黙って撫でられる。頭を撫でられる34歳のおっさんとはこれいかに。

 

「ズルいよお父さん!私にも撫でさせて!」

 

「ここはまずお姉ちゃんに譲るべきだよなのは」

 

「あらあら、私にも撫でさせてちょうだい」

 

 僕は士郎と女子陣にもみくちゃにされる。恭也が少しムスッとしているがとても平和なひととき。

これから"衛宮"ではなく、"高町"として平和な日常が始まるのだと思うと、俺は自然と笑みが零れた。

 

 

 

 

 見ているかい、アイリ。

 

 たくさんの人を殺し、愛する君を僕の理想の生贄に捧げ、愛娘を取り返せなかったこんな汚れた僕に親が、兄弟が出来たよ。

 

 だけどこれは本来、君が受けるべきものだ。僕なんかが享受していいものじゃない。

 

 でも、今この瞬間だけはこの人たちの無条件の愛を受け入れようと思う。

 

 それくらいなら、罰はあたらないよね。




展開も急な気がしますが、これが私の限界です(・ω・`)
こんな駄文でも面白いって言っていただけたら嬉しいなぁと高望みしてみます。

では次回をお楽しみに。
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