切嗣主演という珍しいもののため、キチンとした文を作らないと飽きられますよね。
まだ2、3日しか経ってないのに沢山のアクセス、お気に入り登録……皆様に感謝の言葉を送らせていただきます。
視点が変わったりしますので注意してください。
では、第2話をどうぞ。
§side なのは§
この前、切嗣くんの身元を調べてもらうために警察に届け出たのですが、切嗣くんの身元が一切わかりませんでした。どうやら捨て子のようなものらしいです。そして今日の昼、お父さんとお母さんと切嗣くんは養子の手続きのために家庭裁判所に行くことになって、私はアリサちゃんとすずかちゃんと約束していたから、昼ごはんを食べてから出かけることになった。私は友達の家に行きながら危ないとはわかっていたけれどボンヤリと考え事をしていた。頭から離れない、彼の、切嗣くんの目が。
「切嗣くん……なんであんなに寂しそうな目をしてるんだろう」
彼の瞳は常に黒く、鈍く、輝きを持っていなかった。笑っているけど、心のどこかで自分を許せていないような、一人では背負いきれない悲しい事を無理矢理背負っているような、そんな感じがした。
「……でも、そんなこと聞くのはいくらなんでも失礼だよね……いつか私たちを頼って相談してくれるかな……?」
彼が悲しそうにしているのは見ていたく無い、そして自分に出来ることならなんだってやってあげたい。切嗣くんはもう"家族"なんだから。
そんなことを考えていると、私はすずかちゃんの家の前についた。今更ながら、ここのセキュリティのレベルがオーバーテクノロジーなのは何故なのだろう?いくらなんでもマシンガンみたいなものやロボットはやり過ぎだと思う。とりあえずそんなことも切嗣のことも今は置いておいて楽しもう、友達に余計な心配はかけさせたくないから。
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§side 切嗣§
養子になると決まったら高町家の人達はすぐに動いてくれた。養子になるための手続きをどんどん進めてくれたが、その際少しだけ僕はなのはと論争になった。
それはなのはとの兄弟関係だ。とりあえず誕生日は11月11日だが、現在の年齢は大雑把でしか分からないため、忘れたと言ったところ、まあ恭也と美由希とは離れているから弟でよかったが、なのはの兄か弟かで意見が別れたのだ。なのはは弟、僕は兄がいいとの一点張り。なのはとしては弟か妹が欲しかったのだろうけれども僕は精神面だけなら34歳であり、恭也や美由希は見た目的に仕方ないとしても、この年端かもない少女を姉と呼ぶのはどうしても抵抗があった。最終的には桃子の提案でジャンケンで決めるというなんともおマヌケなことになったのだが、結果なのはが勝ち、僕はなのはの弟となった。なのはと見た目がほぼ同学年であることとなのはが一ヶ月後に始業式を迎えて3年生になることをふまえて俺は7歳、つまり2年生となった。僕は妥協案として、なのはを普通に「なのはちゃん」と呼ばせてほしいとお願いした。なのはもそれくらいならとOKをくれた。
そして家庭裁判所に出向き、手続きがはあっという間に完了した。そこで分かったのだが、今自分がいるのは海鳴市というそうだ。その後、士郎さんと桃子さんに頼んで僕はその足で市内の図書館へ足を運んだ。図書館には人が多くいた、学生が勉強のために来ていたり、中には自分と同じくらい歳の車椅子に乗った女の子が本を探している姿も見たが、人間観察が目的で来たわけではない。そして目的である歴史書や伝記、地図などを見つけて読み漁った。そこである程度の情報を入手することが出来た、大きく分けると3つある。
1つ目はこの世界に冬木市と時計塔が存在しないこと。
かつて自分が住んでいた冬木だった場所は完全に別の地名となっており、地形も多少だが変わっていた。それに冬木に該当する地区で大火災が起こった記録もない。
そして2つ目は世界の歴史は前と変化が無いこと。
これに関しては特記すべき点はない。
3つ目は恐らく魔術師が自分以外存在しないということだ。
前2つは本を読んで分かったのだが、3つ目は、この大気中の太源(マナ)の濃度が異様に高いことから予測されたことだ。魔術とは使用する者が多ければ多いほど一人当たりが行使出来る太源(マナ)は当然少なくなる。大昔の魔術師の力が強いのはこのためである。ここまで濃度が高いとなると、過去行使していた人物はいるかもしれないが、少なくとも現在行使する人物が居ないと思っても相違ないだろう。これは僕としては非常にありがたいことだ。平たく言えば世界中の太源(マナ)を独り占めしているようなものなのだ。無いとは思うが、万が一のことがあった場合、基礎魔術でも多大な効果を発揮することが出来るだろう。
ーーそういえばかつて聞いたことがある、"並行世界"を渡ることの出来る第二魔法を行使する"魔法使い"がいるということを。俄かには信じられないがここは並行世界なのだろう。並行世界へ飛ばされた原因、理由など分からないが、現状を説明するのにそれ以外のものなどありはしない、身体が若返ったのは修正力のせいなのだろうか?他にも色々可能性はあるが、図書館だけではいかんせん情報が少ない。しかしまぁ、急を要するような事態でも無い、何かしら情報が入ったら調べようと思い、僕は推論を自己完結して家に帰るため図書館を後にした。
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調べ物を終えた僕はとある一室で士郎さんから渡されたあるパンフレットを見ている。
"私立聖祥大学付属小学校転校案内"
なぜこんなものを見ているのかというと、親2人の計らいだ。士郎さん曰く、「子供なんだからちゃんと学校に通わなきゃダメだよ」とのことだ。だったら負担はかけたく無いし公立の小学校でいいと僕は言ったのだが、子供なんだから親にもっと甘えなさいと怒られ説教された。それに自分の子にはキチンとした教育をさせてあげたいとの意向だそうだ。幸い始業式まで一ヶ月はあるし、その期間に試験を受けて転入の手続きをすれば始業式には間に合うらしい。
それにしても流石私立というところだろう、聖祥大付属小学校は設備が整っていて、勉強するのにはとても快適な空間だ。昔、環境のせいでちゃんとした教育は受けていないが知識はちゃんとある、私立とはいえ小学校。簡単に合格することが出来るだろう、ただ、今更小学生をするのは恥ずかしいが怪しまれないためには仕方あるまい。それに、自分が小学校に行かなければ士郎さんと桃子さんが育児放棄しているのではないかというあらぬ疑いをかけられるため、2人を助けるためと思って行くことにした。
ちなみに僕が居るのは、用意された僕の自室だ。二階に物置のような部屋があったので、そこの荷物を取っ払って僕の部屋にしてくれた。しかし今、小学校の話や部屋の話よりも気になっているものがある。
部屋の隅に黒で塗装されたスーツケースが置かれているのだ。士郎の話によると、自分が倒れていた横に落ちていたそうで、身元を確認しようと中を調べたそうだが中には服一式が入っていただけだったらしい。しかし、僕は違和感を感じていた。それはこれを運んだ際に感じたのだが、服しか入ってない筈なのにスーツケースが僅かだが重い、それにこれは昔自分が魔術師殺しとして世界各国を飛び回っていた時に使っていたものと同形のものだ。
「まさか……ね」
僕はパンフレットを机に置き、部屋の隅に置いてあったスーツケースを開くと、中には下着やら上着が所狭しと入っている。しかし、一目では分かりにくいがスーツケースの奥行きが若干無いのが分かった。僕はスーツケースの奥を"隠している"板を置いていた針金を駆使して取り除く。
予感は的中した。中には箱が二つあり、片方を開くとそこには見覚えのあるバラされた銃器のパーツが入っていた。それを確認した僕はすぐさま部屋に鍵をかけ、カーテンを閉めて中のものを組み立て始めた。そうしてすぐに完成した銃器は改造した自分の愛銃、トンプソン・コンテンダーだった。拳銃としては圧倒的な火力をもつが、装弾数が一発のみなのでイロモノという表現が適切だ。そしてもう片方の箱を開けてみる。すると、そこには21個の弾丸が入っていたこれこそ、僕の魔術礼装であり切り札である"起源弾"である。起源弾には僕自身の第12肋骨を粉上にして封入してある、これにより僕の起源"切断"と"結合"を相手に発現させるのだ。これは人に撃ち込むと傷を即座に"結合"し、血が出ることもなくまるで古傷のように変化する。"修復"ではなく"結合"なので結合された場所は元の機能は失われる。これでも十分に凄いのだが、これは魔術の干渉を受けた時に真価を発揮する。弾丸の効果は魔術回路にまで及び、魔術回路は"切断"され"結合"される。結果、魔術回路に走っていた魔力は暴走し、術者自身を傷つける。その仕様上、相手が強力な魔術を使っていればいるほど殺傷力が上がるのだ。
しかしこの世界では魔術師はいないだろうし、普通の弾丸を撃った方が遥かに低コスト……無用の長物だ。
「起源弾は使わない方向でいこう。しかしそうなると、弾丸が無いな。何しろ今の僕は子供で一文無しだし、買えるわけがない……」
平和なここ海鳴市でこんな悩みはしなくてもいいのだろうけれども、どうしても過去の癖が抜けない、万全には万全を期すタチなのだ。
「とりあえず今はこのままでいいだろう、使うことにならないことを祈るばかりだね」
僕はコンテンダーを再びバラして箱に入れて起源弾と一緒に押入れの奥に入れた。ある意味封印と同義である。そして高町家の人々にバレないように簡易の認識阻害の結界を張っておくことも忘れない。
自身だけでなくコンテンダーと起源弾まで一緒にあったのは驚きだった。本当にわけがわからない、誰が準備したのだろうか?……今日は驚きすぎて体がもたない。とりあえずリセットして夕食を食べようとカーテンを開けて部屋の扉の鍵を開けて廊下に出る。今日は桃子さんが僕にリクエストを求めて来たため、ハンバーグをお願いした。朝食も美味しかったし、昼のサンドイッチも頬っぺたが落ちるかと錯覚した。そんな人がつくるハンバーグは本当に楽しみだ。そんなことを考えながら僕は階段を降りていった。
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「ーー本当に美味しい、こんなに美味しいハンバーグは食べたことがないや」
「うふふ、そう言ってくれると嬉しいわ」
僕が本当に美味しそうに食べる姿を見て、桃子はニコニコ微笑む。夕食のメニューは僕がリクエストしたハンバーグにご飯と卵スープ、付け合わせにクレソンとグラッセが添えてある。ハンバーグは口にいれた瞬間、溶けたんじゃないかと思うほど柔らかく、それでいて油はしつこく無い。
「なんでこんなに美味しいですか?」
「食材がいいからでもあるけど、桃子は昔フランスやイタリアでお菓子作りの勉強をしていたんだ、その時に料理も覚えちゃったらしくてね」
士郎が簡単な説明を入れてくれると、桃子はそんな大層なものじゃないわと笑いながら答えた。そんなことを言ってはいるが味は一級品だ。僕は食は幸せということを実感した。そんなことを考えていると、恭也が話しかけてきた。
「なあ、切嗣、どうしてそんなに堅苦しい話し方なんだ?」
「え、いや、どうしてと言われても」
「うん、そうだよね
もう家族なのに敬語なんておかしいよ」
「そうは言われても、僕も急には……」
美由希も、僕をさも当然のように家族として扱ってくれる。まだ出会ったばかりなのに、本当にこの家の人々は優しい、僕の胸が苦しくなるくらいだ。それを見かねた士郎が僕に向けて言葉を発した。
「じゃあこうしよう、今はまだ敬語でもいいから私のことを父さんと呼んでくれ」
「へっ?」
「じゃあ私は母さんって呼んで欲しいわ」
「いや、あの」
「俺は何でもいいぞ」
「無関心ですかそうですか」
「うーん、なら恭ちゃんは兄さん、私は姉さんって呼んでね」
勝手に決めるなよと言って恭也は美由希の頭を両方の拳で挟んでグリグリしたため、美由希は奇妙な悲鳴をあげながら拳から逃れようとする。その様子がおかしくて、僕は思わず笑い出してしまった。
「ふふ、はははは。
分かったよ、父さん、母さん、兄さん、姉さん、なのはちゃん」
5人が僕を見て、ニコリと微笑んだ
「さあ、食べよう。折角桃子が愛情込めて作ってくれた料理が冷めちゃうよ」
「やだもう、士郎さんったら上手なんだから」
「あーあ、また始まったよ」
「いいじゃないおしどり夫婦で、恭ちゃんもああなるかもしれないんだよ?」
「ね、ねぇ、切嗣くん、ニンジン食べる?」
「ダメだよなのはちゃん、母さんが作ってくれたものはキチンと食べないと」
こうして幸せな夕食の時間はは過ぎていく。僕はこういうのを少しだけ望んでいたのかもしれない、その笑顔と感情は本物なのだから。
はい、第2話でした。
日常に移るための準備回ですね。
これで名実ともに切嗣は高町家の子となりました。
コンテンダーと起源弾の導入はなんだか無理矢理な気がするけど、こうでもしないと入手って無理なんですよね、特に起源弾はナタリアが作ったものだし。
次回もお楽しみに。