ころしやものがたり   作:ちきんなんばん

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編集中に不都合が起きて文の8割が消し飛びました。物凄く心にダメージがきたけど書き上げました。作者の心は硝子なんです。指摘はありがたいけど心が弱いんで見るだけで心拍数が上がります。安西先生、文才が欲しいです。

そんなこんなで第3話、どうぞ。


第3話 友人

 けたたましい音が耳元で響き、意識が呼び起こされる。僕は布団に横になったままその音の発生源の目覚まし時計のボタンを押した後、上半身を起こして寝ぼけ眼で目覚まし時計を見る。現在6時半。子供にしては早い気もするが問題はない。布団を畳み、そして買ってもらったパジャマを脱ぎ、前日から既にスーツケースから出して置いた服を着る。黒を基調とした長袖長ズボンで、そこそこ質はいいものなので今日の用事にも支障は無いだろう。今日持っていくバッグの中身を確認した後、部屋を出て一階へ降りるために階段へ向かう。するとフワッと味噌汁のいい香りが鼻をくすぐった。それに刺激されて腹の音が小粋な音を出し始め、階段を降りるとリビングには新聞を読んでいる士郎さんの姿、台所には朝食の準備をしている桃子さんの姿があった。

 

「おはよう切嗣」

 

「おや、おはよう切嗣。今日はいつもより早いね」

 

「おはよう父さん、母さん。今日は編入試験だから万全にしとこうと思ったんだ」

 

「いい心がけだね、その調子なら問題はないだろうね」

 

「ご飯は出来るまでちょっとかかるから先に顔を洗ってきてちょうだい」

 

「うん、わかったよ」

 

 あの日からもう10日が経った。養子の件は案外簡単に片付いたが、編入の話は少し時間がかかってしまった。なにせ戸籍が存在しないのだから。他の色々な手続きが必要になったわけで、本当に両親には頭が上がらない。

 

 

 僕は洗面所に行き、顔を冷水で洗うと、冷たい感覚が意識を一気に覚醒させた。タオルで顔を拭いた後、簡単に歯ブラシで歯を磨き始めた、口をゆすいで歯ブラシを所定の位置に直して洗面所を後にすると、シャワーを浴びたのか、眼鏡をはずして髪を拭いている美由希の姿があった、ほんのりとシャンプーのいい香りがする。

 

「姉さんおはよう」

 

「ん?あ、切嗣だね、おはよう」

 

 どうやら眼鏡を外していてあまり見えないらしく、声で判断したようだ。まあこの家族でなら年下の男は僕しかいないから特定は簡単だが。

 

「朝シャンかい?髪の毛痛むよ?」

 

「そうはいっても練習して汗かいたんだからしょうがないんだもん」

 

 それならまあ仕方ないかと僕は呟いた。それでもシャワーだけにした方がいいとは言ったが。するとリビングに制服に着替えた恭也が入ってきた。

 

「切嗣おはよう。相変わらず早起きだな」

 

「おはよう兄さん。それでも兄さん達の方が早いじゃないか」

 

「それは切嗣より年が上だからだよ」

 

 精神年齢はこっちが上だと心の中で呟くが、もちろん口にも顔にも出さない。士郎と恭也と美由希は毎朝出かけて何か練習しているようだが、その様子を見ることは今のところ出来ていない。興味をそそられるが何かしら見られたくないものもあるのだろうと切嗣は考えている。それと最近ようやく恭也の視線が緩くなった。こちらとしても気を張らなくてよくなるのはありがたい。

 

 

 そして朝食が並べられるのとほぼ同時にパジャマを着たまま少し寝ぼけ眼のなのはがリビングに入ってきた。

 

「ぉはよ~……」

 

「おはよう、今日は遅かったね。とりあえず顔洗ってきなさい」

 

「ぁぃ……」

 

 気の抜けた声で返事をして洗面所に歩いていく。なんだかすごく可愛らしい。撫でまわしたい衝動に駆られるが我慢する。なのはが顔を洗って目を覚まして戻ってくると朝食と談笑の時間が始まったが、今日は僕の試験の話がすぐに出てきた。

 

「切嗣、今日の試験どうだ?」

 

「まあヘマしなければ大丈夫だと思うよ」

 

「切嗣くん、自信たっぷりだね」

 

「でも油断しちゃだめだよ?もしものことが起きるかもしれないんだから」

 

「ハハ、気をつけるよ」

 

 僕はそう言ってテレビに視線を逸らすと、ちょうどニュースをやっていた。

 

「暴力団の発砲事件……?やだ近所じゃない」

 

「物騒な世の中になったね。なのは、切嗣、2人は特に気をつけてね」

 

 僕となのはは素直に頷いた、そして士郎さんはそのまま言葉を続ける。

 

「さて、なのは、ゆっくりしてるけどバスには間に合うのかい?」

 

「えっ?」

 

 僕となのはは時計を見た。すると、バスが来るまであと10分前後しかなかった。

 

「あわわわわ?!ご、ごちそうさまでした!」

 

「なのは、案内してもらわないと僕まで試験に遅れちゃうから急いでくれるかい?僕は先に玄関で待ってるよ」

 

「わ、分かったの~!」

 

 なのははいつもと違って大慌てで部屋に戻っていった。僕は食器を台所に置いて、バッグを持って玄関へ向かう。

 

「じゃあ俺たちも行こうか」

 

「うん、そうだね」

 

 恭也と美由希も食器を片付けて玄関へ向かった。

 

「いってきます」

 

「いってきまーす」

 

 2人はそのまま僕より先に家を出発した。そして僕が2人が出発したのを見送って少しして、なのはが走って玄関まで来た。

 

「お、おまたせ!行こう切嗣くん!いってきまーす!」

 

「うん、いってきます」

 

 僕達2人はダッシュでバス停へと向かった。

 

 

 ******

 

 

 結論から言うと、僕となのはは何とかバスには間に合った。ただ、同じスピードで走っていたにも関わらず、なのはが凄く息切れを起こしているのでなのはが運動が苦手というのがよく分かった。なのはは息を整えながら運転手に挨拶をする。

 

「お、おはようございまーす」

 

「おはよう。……ん、君が例の子かい?」

 

 運転手の男性の視線は、なのはと一緒に乗ってきた僕に向けられた。

 

「はい、切嗣です。今日はよろしくお願いします」

 

 挨拶すると運転手の男性はニコリと笑って会釈してくれた。

 

「なのはちゃん」

 

「なのはーっ、こっちこっち」

 

 そして奥の方からなのはを呼ぶ声が聞こえた。そこには金色の髪の少女と紫色の髪の少女が座っていて、なのはの名を呼んで手を振っている。金髪は分かるが、紫とはどういうことなのだろうか。よく見たら赤とか青とかの髪の毛の子もいる。これがこの世界の常識なのだろうか?

 

「行こう、切嗣くん。私の友達を紹介するね!」

 

 なのはは僕の手を握って奥に進み始めた。周囲(主になのはと同学年の男子)からの視線が物凄く痛い。やめてくれ、これは濡れ衣だ。

 

「アリサちゃん、すずかちゃん、おはよう!」

 

「おはよ」

 

「おはよう、なのはちゃん」

 

 金色の髪の少女はアリサ、紫色の髪の少女はすずかというらしい。すると、金色の髪の少女アリサが僕をジッと見つめる、どうも気が強そうだ。

 

「……ところであなた誰?」

 

「僕かい?僕は切嗣だよ」

 

「なんか珍しい名前ね。めんどくさいからケリィでいいでしょ」

 

「ケ、ケリィ?」

 

 なのはがそのニックネームに首をかしげた。まさかここでそのニックネームが出てくるとは思わなかったため、僕は少し驚いた。流暢な日本語を話すのに、どうしてそんなニックネームをつけようと思ったのかと問い詰めたかったがこれも我慢する。

 

「で、ケリィはなんでこのバスに乗ってるの?このバスは聖祥のスクールバスなのに」

 

「あ、それはね、切嗣くんが編入試験を受けるからだよ」

 

「ふーん、なるほどね。ならもし受かった時もあるし名前は教えた方がいいかしら。私はアリサ・バニングスよ。すずか、すずかも名前くらい教えときなさいよ」

 

「あ、うん。私は月村すずか、切嗣くんよろしくね」

 

 紫色の髪の少女、すずかは見た目通りの大人しい子だった。僕は一先ず安心する。

 

「ああ、よろしく、アリサちゃん、すずかちゃん」

 

「とりあえず挨拶はこれくらいにしといて、今、物凄く聞きたいことがあるわ」

 

「僕の答えられる範囲でなら答えるよ」

 

「じゃあ聞くけどケリィあんた、なのはとどういう関係?手なんか繋いじゃって、付き合ってるの?」

 

 また周囲の視線が一気に僕に向けられた。別に精神はやられないけど勘弁してほしい。するとなのはが慌てて訂正を入れてくれた。

 

「ち、違うよ!切嗣くんは私の弟なの!」

 

 余計に辺りが余計に騒然となる。そりゃそうだろう、答えだけ述べても過程が分からなければ混乱の種にしかならない。

 

「なのはちゃんの……弟……?」

 

「お、弟?!なのはにこんな目の死んだ弟がいたなんて見たことも聞いたこともないわよ!どういうことか説明しなさい!」

 

「あわわわわ?!」

 

 アリサは予想外の解答に混乱し、なのはの肩を掴んで揺さぶる。困惑するなのはを助けようとすずかと俺はアリサを止めようとするも、暴走したアリサは歯止めが効かず、結局バスから降りるまで質問責めは続いた。

 

……別に目のことは気にしてない。

 

 

 ******

 

 

「養子だったのね……ならそうと始めから言いなさいよ」

 

「話を聞かなかったのはアリサちゃんなの……」

 

 アリサは顔を赤くしてうるさいとボヤいた。ちなみに今、なのは、アリサ、すずか、僕の4人で校舎内を歩いている、彼女達が俺を職員室へ案内してくれているのだ。

 

「悪いね、案内してもらっちゃって」

 

「私はなのはが連れて行くって言ったからついて来てるだけよ、勘違いしないでちょうだい」

 

「はは、それでも十分うれしいよ。すずかちゃんも同じ理由かな?」

 

 俺はすずかを見て言うと、すずかはぶんぶんと首を横に振った。

 

「ううん、私は切嗣くんがなのはちゃんの弟だから仲良くしてほしいなって思ったの……迷惑じゃなかった?」

 

 僕は思わず一瞬キョトンとした表情になってしまった。根っこから優しい子なんだなと、感心してしまった。

 

「ハハ、まさか。僕は嬉しいよすずかちゃん」

 

 そう笑いながら言うとすずかはよかったと言い、安心したような笑みを浮かべた。

 

「後はここを真っ直ぐ行けば職員室に着くよ」

 

「ありがとうなのはちゃん、じゃあ僕は行くよ」

 

「うん、頑張ってね!」

 

 なのはの応援を聞き、僕は職員室へ向かった。なのはにはいい友達がいる、なんとなく羨ましいと思ってしまった。とりあえず僕は気持ちを切り替えて職員室に入った。

 

 

 ******

 

 

 試験はやはりこんなものかというものだった。いくら私立とはいえ小学2年生の学力の問題だ、まともな勉学をしてなかった僕とはいえ、簡単に解けた。ただ、英語の問題があったのは少し驚いた。まあ、世界を転々としていたので英語くらいはお手の物だったが。試験は昼前までに終わってしまい、今は家に帰ってきて翠屋の手伝いをしているのだが、平日の昼間なので客は少なくて、楽というか暇だ。今日はそこまでお客はこないはずなので、あとちょっとしたら遊びに行ってもいいと桃子さんに言われた。

 

「……そろそろ来る時間ね」

 

 シュークリームを作る手を止めて桃子さんは時計を見ながら呟いた。

 

「来るって……誰が?」

 

「なのはのお友達のアリサちゃんとすずかちゃんよ、シュークリーム食べに来るってなのはと約束してたから」

 

「ああ、あの2人」

 

 僕が学校へ行くバスで2人と話した事を桃子に話すと、友達が出来てよかったねと言われた。僕からすれば相手は娘くらいの子供なのだが、そういうことを言う相手がいない。シュークリームを作り終えたとき、別の方面から宅配便の人の声が聞こえてきた。

 

「あら……切嗣ごめんけどなのは達が帰ってきたらコレ出しておいてもらえる?」

 

 シュークリームを指差しながら僕にお願いする。

 

「ああ、それくらいならお安い御用だよ」

 

「フフ、頼もしい息子だわ、すぐ戻るからお願いね。あ、切嗣の分も作ってあるから食べてね」

 

 手をヒラヒラ振ると桃子さんは小走りで電話の鳴る居間へと向かった。シュークリームはちゃんと4個ある。自分の分まで作ってくれた事に僕は素直に感謝した。するとタイミングを見計らったかのようになのは達が入ってきた。

 

「なのはお帰り、早かったね」

 

「ただいま切嗣くん!終業式が近いから授業がお昼までだったの。またお手伝いしてるの?」

 

「うん、今の時間帯はやる事がないからね。兎に角3人とも席に座って、シュークリームを持って来るから」

 

 分かったと言い、なのは達は空いてる席に座る。そして僕は置いてあった4つのシュークリームをトレイに乗せて運び、3人の前に置いた。3人とも座って話そうということなのでお言葉に甘えさせてもらってなのはの隣に座った。彼女達はシュークリームを一口食べると本当に幸せそうな表情をした。やっぱり女の子は甘いものが好きなのだろう、僕はそう思ってシュークリームを口にした。

 

 刹那、僕の身体に衝撃が走った

 

 なんなんだこれは。美味いとか甘いとかそういうレベルの問題ではない。言わば革命、味の革命だ。このシュークリームにはこれまでの常識が通じない。表面がサクサクの生地の中に満たされたクリームは余計な甘さを抑えられており、後味はしっかりしていて甘さの余韻を楽しめる。全てにおいて絶妙、まさに頂点、甘味の絶対王だ。

 

「ちょ、ちょっとケリィどうしたのよ?!」

 

「泣いてる?!何で切嗣くん泣いてるの?!」

 

 騒ぎ立てるアリサとなのはの言葉に疑問を抱いた僕は手を目にやると、その手が濡れることが分かった。

 

「ーーああ、全て遠き理想郷(アヴァロン)はここにあったのか」

 

「あゔぁ……なにそれ?」

 

 すずかの疑問もスルーして僕は暫く感動に浸っていた。

 

 

 ******

 

 

「いやあ、取り乱してごめんね」

 

 僕は頭を掻きながら笑って言ったが、なのはとアリサはむすっとしていた。

 

「突然泣き出して何事かと思ったわよ」

 

「お願いだから心配させないで欲しいの……」

 

「まあまあ、もう切嗣くんも反省してるんだから許してあげようよ」

 

 ブツブツと文句を言う2人をすずかが諌めてくれ、なんとかその場はしのぐことが出来た。ちなみに僕がシュークリームに感動してる間に桃子さんは戻ってきていて、僕が一口食べるたびに感涙を流していたので可笑しそうに笑っていた。そして話は僕の試験についてのことに変わる。

 

「で、どうだったのよ?」

 

「どうだったって……何が?」

 

「何って、編入試験よ編入試験」

 

 僕がキョトンとした表情をしたため、アリサはため息をついて呆れたような声で言った。なるほど、これがツンデレというやつか。

 

「ああそのことか、結果は明日出るけど問題はないと思うよ、十中八九合格してる筈だから」

 

 僕が淡々と述べたところ、すずかが何故か僕をちょっとした尊敬の目で見ていた。どうしたのだろうか?

 

「合格しただなんて、切嗣くんすごく強気だね」

 

「いや、単に客観的な視点で考えた結果を述べてるだけだよ」

 

「……ケリィ、あんたちょこちょこ難しい言葉を使うわね、本当に私達と同い年?」

 

「ん、間違いはない筈だよ」

 

 ハハと笑う僕にアリサは胡散臭いと、納得がいかないという表情を浮かべてた。

 

 

 ******

 

 

§side なのは§

 

 

 この後暫く話して、私達は私の部屋で遊ぶことになっていたのだが、切嗣くんは少し用事があると言ってバッグを持って出かけてしまった。切嗣くんは夕食前にホクホク顔で帰ってきたので、私はどこに行っていたのか聞いたが図書館だと言っていたのでそれ以上は追求しなかった。

 

 ちなみに今日の夕食のメインは酢豚だった。切嗣くんはどうやらハンバーグとかの大味なものが好きらしい。ちゃんとバランスよく食べるようにとお母さんに叱られたりしたが、いつも通り楽しい夕御飯になった。




はい、第3話でした。
なのはの友達、アリサとすずかの登場ですね。
魔法に関わることがほぼ無い彼女達を頑張って影が薄くならないようにしたいです。

では次回をお楽しみに。
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