リアルが忙しくてこれからも不定期になりますが読んでくれると嬉しいです。
※注意
『』は念話、≪≫はデバイスの音声です。
では、第6話をどうぞ。
第6話 邂逅、そして悪夢なの。
見知らぬ真っ白な天井。
別に驚きも取り乱したりもしない。
もう、何もかも終わってしまったことは理解しているから。
何を浮かれていたのだろうか。
期待など、持つべきではなかった。
理想など、持つべきではなかった。
友愛など、持つべきではなかった。
失うのは、結局自分なのだから。
世界は、何もしてくれないのだから。
正義なんかに、人は救えないのだから。
僕は殺す。
九を救うために、一を殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺し尽くす。
それが、大勢の命を救える唯一つの手段なのだから。
魔法少女リリカルなのは/Zero
第一章 "Fate" 始まります。
§Side なのは§
私、高町なのは。私立聖祥学園大付属小学校3年生、それと最近、魔法少女を始めました。
ある日喋るフェレット(?)のユーノくんから貰った魔法の杖"レイジングハート"と一緒に、ユーノ君が事故で落としたというロストロギア"ジュエルシード"を集めるお手伝いをしています。最初はただのお手伝いだったけど、今は自分の住んでる街に被害を出したくないという意思を持ってジュエルシードを集めています。
だけど最近、親友のアリサちゃんと喧嘩をしてしまいました。私が悩み事を話さないことに怒っているのは分かるけれど、言ってしまったら親友を危険に巻き込むことになる。だから話すわけにはいかない。
私以外のもう一人の目の前にいる女の子の魔導師、フェイトちゃんのこと。
何故か分からないけど、とても悲しい眼をしていた。初めて会った私を撃墜するときに「ゴメンね」と言うような子が何故ジュエルシードを集めているのか、本当に分からなかった。
もう一つは、最近私の弟である切嗣くんの様子がおかしくなってしまったこと。
金髪で美人さんのサラウさんに会って一週間程経ってから、大怪我を負ってしまって、病院に搬送されていた。原因は一切不明で体中に包帯を巻かれている姿を見た時は本当に心配してわたしは泣いてしまったけど、切嗣くんは早い段階で目を覚ました。安心したんだけれど目が覚めてからなんだか時折目つきが鋭くなっていた。まるで始めて会ったあの時のような表情をしていることがある。うまく言えないけど、なんだか別人みたいで怖かった。
どうしたの?と聞いたりしてみたけど、切嗣君は表情を切り替えてなんでもないといつもの笑顔ではぐらかしてしまう。大切な弟だから解決出来なくても、一緒に悩んであげたいのに。
ああ、アリサちゃんもこんな気持ちだったんだろうな。
今度会った時にちゃんと謝って話せるところはちゃんと話そうと思った。
でも、どうしてもボヤいてしまう。私は小さな溜め息を漏らしてポツリと呟いた。
「わたし、疲れてるのかなぁ……」
『なのは、どうしたんだい?
やっぱり疲れが抜け切ってないんじゃないのかな?』
『あ、ううん、なんでもないよユーノくん』
『ならいいけど……今日はもう遅いし、そろそろ帰ろうか』
『うん、そうだね』
頭に男の子の声が響く。ユーノくんからの念話だ。
ちなみに今日はジュエルシードがビルが立ち並ぶこの辺一帯の何処かにあるらしいとユーノくんが言っていたので手分けして探していたところです。そろそろ帰らないと家族が心配してしまう。
そう思った矢先、闇に染まった空を更に黒い雲が覆い尽くしていき、辺り一帯に雷音が響き始めた。自然現象にしては不可解すぎる雲行きだ。空を覆う雲からは魔力を伴った雷が辺りに降り注ぐ。
『こんな街中で強制発動……?!
なのは、ごめんけど今日はもうちょっと頑張ろう…!』
どうやらフェイトちゃんが魔力流を打ち込んでジュエルシードを強制発動させようとしているようだ。すぐさまユーノくんが封時結界っていう結界を張ってくれる。詳しくは分からないけど周りの人を巻き込む心配が無くなるということらしい。
「レイジングハート、お願い!」
≪Stand by ready. Set up≫
首から下げている相棒の赤い宝石、レイジングハートに文字が浮かぶと、女性の合成音声が鳴り響き、桃色の光が私を包むと光は魔導師の鎧とも言える"バリアジャケット"を形成する。
私のバリアジャケットは学校の制服を基本としており、純白に青の線が映える服に胸元に真っ赤な大きいリボンがついているという、いかにも魔法少女といったものだ。
バリアジャケットの装着が完了するのと同時に空を貫くような青白い閃光が伸びた。フェイトちゃん達の魔力によってジュエルシードが発動したようだ。
『なのは、発動したジュエルシードが見える?』
『うん、すぐ近くだよ』
『あの子達が近くにいるんだ。
あの子達より早く封印して!』
≪Shooting mode. Set up≫
ジュエルシードの封印方法は二つある。一つは近距離での封印魔法。もう一つは強力な魔力ダメージを与えること。フェイトちゃんよりも早く封印するには遠距離からの砲撃が一番確実。レイジングハートは私の意思を読み取って変形してくれた。
そして遠くから金色の輝きが一直線にジュエルシードへ向かって放たれた。恐らくはフェイトちゃんの砲撃だ。私も急いで砲撃を放つ。桜色と黄色の魔力の奔流はジュエルシードにぶつかって余波の暴風が吹き荒れる。レイジングハートからの情報で、ジュエルシードのナンバーは19だそうだ。私は封印のための呪文を口にする。
「リリカルマジカル!ジュエルシード、シリアルⅩⅨ……封印!」
向こうも同タイミングで封印をしたのだろう。桜色と黄色は全く同じ力でジュエルシードを飲み込んだ。
余波が収まるとジュエルシードは淡く輝いたまま宙に浮かんでいる。急いで封印をしなきゃいけない。後ろからユーノ君が走ってくる。暴走の収まったジュエルシードを見てよしといった表情を浮かべる。
「やった!なのは、早く封印を!」
「そうはさせないよっ!」
突然頭上から女性の声が響く。暗闇の空から現れたのは一匹の巨大な狼であった。オレンジ色の毛並みで額に宝石のついていて、日本……いや、地球では見ない生き物だ。彼女はアルフという名の、フェイトちゃんの使い魔だ。
危険を察知したユーノ君がすぐさま私の上に飛び上がって緑色の障壁を張ってくれたおかげでダメージは一切入らなかった。アルフさんは苦々しい顔をして一旦距離をとると障壁が砕け散り、目の前に黒いBJを身に纏った少女、フェイトちゃんがいた。
聞かなきゃ。この子は何故ジュエルシードを集めているのか。そう思って私はゆっくり一歩目を踏み出して口を動かした。
「この間は自己紹介出来なかったけど、わたしなのは、高町なのは!私立聖祥大付属小学校三年生!」
≪Scythe form≫
「!」
しかし彼女のデバイス、バルディッシュから男性の合成音声が響くと斧のような形をしていたバルディッシュが変形して黄色の魔力によって形成された刃が鎌が姿を現す。話をする気は全くないようだ。
私が慌ててレイジングハートを構えると、フェイトちゃんは鎌を振るって急接近してきた。
≪Flier fin≫
レイジングハートの声が響くと私の靴に桃色の羽が形成され、羽ばたいてその場から宙に離脱する。
その瞬間、ジュエルシードが鼓動を発していたことに私達は気付かなかった。
******
≪Photon lancer≫
「ファイア!」
フェイトちゃんの周りに現れた6つのスフィアがガトリングのように私に向けて放たれた。しかしこのスフィア、速い代わりに殆ど曲がらないためスフィアの進む方向さえわかっていれば避けられる。今の私なら飛行魔法にも慣れてきたから大丈夫だ。
≪Flash move≫
二発のスフィアを左右に避けて躱し、フラッシュムーブを使って一気に上へ飛んで残りのスフィアを回避しつつ桃色に輝くスフィアを形成し、フェイトちゃんの背後へ向けてさらに加速する。
≪Divine shooter≫
「シュートッ!」
今はまだ三個までしか制御ができないけど十分だ。桃色の魔力弾がそれぞれバラバラの動きをしてフェイトちゃんへ向けて飛んで行く。此方のスピードはフェイトちゃんのフォトンランサーには劣るけど自分の意思で操作ができるのが長所だ。
「っ」
≪Defenser≫
避けるのは不可能と感じたのか、フェイトちゃんはすぐさまバルディッシュを突き出して障壁を張った。
フェイトちゃんの動きが止まった今なら話しかけられる……!
「フェイトちゃん!」
「!」
フェイトちゃんは少し目を見開き、驚いた様子で私を見た。そういえば名前はアルフさんが言っていたのを聞いただけで本人から聞いたわけではない、いきなり自分の名前を呼ばれたら誰だってビックリするもんね。
でも私は話し続ける。ここで言わなきゃ次がいつ来るか分からないから。
「話し合うだけじゃ、言葉だけじゃ何も変わらないって言ってたけど、だけど、話さないと、言葉にしないと伝わらないこともきっとあるよ!」
フェイトちゃんの目は困惑で揺れ動いている。
きっと、話をしないのと寂しそうな目は少なからず関係がある。この反応である程度確信は持てた。
「ぶつかり合ったり、競い合うことになるのは、それは仕方ないことかもしれないけど……
だけど、何もわからないままぶつかり合うのは、わたし、いやだ!」
わたしの口は募りに募った思いを言葉というものに変えて、次々とダムの堰を切って溢れ出した水のように放っていく。
「わたしがジュエルシードを集めるのは、それがユーノくんの探しものだから。ジュエルシードを見つけたのはユーノくんで、ユーノくんはそれを元通りに集めなおさないといけないから。わたしは、そのお手伝いで。だけど、お手伝いをするようになったのは偶然だったけど、今は自分の意志でジュエルシードを集めてる。自分が暮らしている街や、自分の周りの人たちに危険が降りかかったらいやだから!
これが、わたしの理由!」
「ーーーー私は……」
わたしの理由は一言一句余さず言えた。
あとはフェイトちゃんが教えてくれるかどうか。
フェイトちゃんは俯いて少しだけ無言を貫いたけど、口が少しだけど動いた。やっと気持ちが通じたかな……?
「フェイト!答えなくていい!」
「「!」」
だけどそれは地上で戦っていたアルフさんの一喝で止められてしまった。どうして分かってくれないのだろうか、わたしは理由もなしに戦ったり、誰かを傷つけることなんていやなのに。
「優しくしてくれる人達の所でぬくぬく甘ったれて暮らしてるガキンチョになんか、何も教えなくていい!
アタシ達の最優先事項はジュエルシードの捕獲だよ!」
どうしてそんなことを言うのか、わたしには理解出来なかった。
確かにお父さんやお母さん、お兄ちゃん、お姉ちゃん、切嗣くんはわたしにとっても優しいけど、それがなんで教えなくていい理由なのか。
フェイトちゃんはハッとした表情になり、先ほどまでの動揺が嘘のように無表情に戻ってしまい、戦斧を構えてわたしの動向に目を光らせる。
「なのは!」
「っ!大丈夫!」
ユーノくんの声にハッとして、わたしも慌ててレイジングハートを構えるとその一瞬の隙を突いてフェイトちゃんは一気に加速して急降下していく。その先にあるのは封印済みのジュエルシード……マズイ!
フェイトちゃんはさっきの言葉から、目的をわたしからジュエルシードに変更したのだ。
わたしも飛行魔法を使ってジュエルシードへ向かって飛ぶ。フェイトちゃんよりも早くジュエルシードを取らないと!
自分の出せる最高速度で急降下してなんとかフェイトちゃんに追いつき、レイジングハートとバルディッシュは同時にジュエルシードに触れた。
ビシィッ!というわたし達の愛機が砕ける音が響いた次の瞬間、世界から音と光が消えた。
「きゃああああぁぁぁぁぁぁ!」
「っ……!うぅっ……!」
ジュエルシードから荒れ狂う魔力が解き放たれ、閃光は天へ上り、暴風はわたし達を容赦無く吹き飛ばした。それはただの魔力なのに、強大で、暴力的で、そして恐ろしかった。まるで地震が起きたかのように大地と大気……いや、世界が震えた。
封印していた筈のジュエルシードがどうしてこんなことになってしまったのか、私にはわからなかった。
§side フェイト§
やってしまった。荒れ狂う魔力の渦、そして大破してしまった愛機バルディッシュを見ながら私は自分を叱咤せざるを得なかった。
ジュエルシードの危険性を私は分かったつもりでいたが、これは予想を超えたとかそういうレベルの問題ではない、人智を遥かに超えている。
"ロストロギア"
何らかの要因で滅んだ世界で高度に発達した魔法技術の遺産。
怖い。
たった数%であれだけの魔力。あれを前にして恐怖しないのは狂人くらいのものだろう。
でも、私は何としてもジュエルシードを集めなければならない。だって、母さんが必要としてるから。私は母さんを喜ばせてあげたいから。母さんに、必要とされたいから。
「バルディッシュ……ごめん、戻って」
≪Ye…s…r≫
酷いノイズを起こしながらバルディッシュは待機状態へと戻った。私の未熟さに巻き込んでボロボロにしてしまったことを今すぐにでも謝りたかったけどアルフが言っていたことを思い出した。まずはジュエルシードを再封印しないと。
私は白い魔導師の女の子が動き出す前にジュエルシードに向かって飛び出した。それを見たアルフが私が何をしようとしているのかを察して悲痛な声を上げた。
「フェイトだめだ!危ないっ!」
アルフは優しいな。私のことをいつも心配してくれる。確かに封印するのに無傷ではいられないだろう。けど、母さんに必要とされるのなら、私はどんなものだって怖くない。
あと数メートル。ブレーキをかけるために僅かにスピードを落とした瞬間、私の体が何かに縛られてピクリとも動かなくなってしまった。
「っ…?!」
「フェイト!?」
なんだこれは。魔力の生成が出来ない。自分を縛るものを目を凝らして見ると僅かに、魔力で形成された縄が見えた。魔力光とは言い難い、闇に溶け込むような灰色の混ざった不気味な黒のバインドが私を縛りつけていた。この魔力光はこの場にいるどの魔導師のものでもない。私は金色、アルフは橙色、白い魔導師は桃色、フェレットは若草色の筈。なら考えられるのは……。
私はジュエルシードに目を向けた。するとジュエルシードの傍に見たことのない男が立っていた。やはり、そう思った私は男を睨んだ。
第三者の介入。
男の印象は、言っては悪いが平凡だ。手入れされていないボサボサの黒髪に不精髭の生えた少しやつれた顔でそこそこ歳を食っているように見え、くたびれた真っ黒なコートを着込んでいる。例えるのなら社会に疲れたサラリーマンといったところだろう。
「っ!?
あ、危ないです!そこから離れてくださ……っ!?」
「なのは!?」
白い魔導師が男に警告をかけた瞬間、彼女もバインドに縛られたようだ。彼女からは私の体を覆っているバインドは見えなかったのだろう。男のことを一般人と勘違いしていたようだ。これであの男は白い魔導師の協力者ではないことがはっきりした。
時空管理局の人間かと思ったが、その可能性はかなり薄い。管理局の人間ならばまずこちらに対して身分の証明、及び警告をしてくる筈。だがあの男は何の警告も発さずに私を捕えた。ならば現地の魔導師だろうか?だがその線も薄い。ここは管理外世界、魔法の存在は知られていない世界なのだ。唯一白い魔導師というイレギュラーがいるが、それは先ほどの話からあのフェレットが原因だと分かっている。ならば考えられるのは……次元犯罪者。次元世界を行き来し、様々な犯罪を犯す犯罪者。確かにこれなら合点がいく。どこから情報を仕入れたかは知らないがこれほどのロストロギアならば裏では高く取引されるだろう。
男はそんな私達に目もくれずに、先程から不安定な状態のジュエルシードに静かに手を翳した。
「妙(たえ)なる響き、光となれ。赦されざる者を、封印の輪に。封印すべきは忌まわしき器、ジュエルシード」
男は封印をするつもりのようだが私は気が付いた。
あの男はデバイスを持っていない。
私や、そこの白い魔導師くらいの魔力を持っているのだったら、ダメージを考慮しなければデバイス無しでも力尽くで封印といったことも可能だが、封印のための魔力放出の準備段階で、あの男の魔力量は多く見積もってもBに満たない程度の、私と比べて遥かに見劣りするものだった。こんな見事なバインドを使うような立派な魔導師なのにこんなことをするのは意外だった。結局は金に目が眩んだ愚かな犯罪者というわけか。
「
しかし信じられない光景が私の目に映った。闇に紛れる魔法陣が展開され、そこから同色の光の帯が男が言葉を告げる度にジュエルシードを包み込んでいき、黒い帯はジュエルシードから溢れ出す魔力を一欠片も逃さない。
封印している。デバイスが無いのに。魔力量は多くないのに。大した魔力を込めていないのに。有り得ない、しかし目の前で起こっている事象をどうやって説明する?何をしているフェイト・テスタロッサ。目を背けるな。現状を受け入れろ。
「ジュエルシード、シリアルⅩⅨ……封印」
大声を出しているわけでもない男の宣言が辺りに響き渡ったような感じがした瞬間、ジュエルシードの暴走した魔力は遂に男の魔力によって抑えつけられ、完全封印されたジュエルシードはゆっくりと男の手に収まった。
そこで私の意識は現実へ引き戻された。バインドはいつの間にか解けていた。封印に集中するために余分な魔力消費は抑えたかったのだろう。私はすぐさまアルフにジュエルシード奪還の為の念話を送る。アルフもハッとした様子で構え直すのが見えた。わたしは男に動揺を悟られないように無表情で話しかけた。
「……そのジュエルシードを渡してください」
「駄目だ」
男は即答した。そこは想定していたが、「嫌だ」ではなく「駄目だ」とはどういうことだ?似ているような単語だが、この二つの単語の差異は大きい。この場合の「嫌だ」は、"自分のものにしたい"というニュアンスが込められている。しかし、男の発した「駄目だ」というのは自己の願望ではなく、"危険だから渡せない"というニュアンスが込められている。管理局の人間ではない筈なのにどうしてこんな言い方をするのだろう?次元犯罪者の線まで薄くなってきた。
「……何故?」
「そんなの簡単だ、これがロストロギアだからさ。
これ単体で中規模とはいえ、次元震を引き起こすようなものを見ず知らずの人間に渡すほど僕は馬鹿でもお人好しでもないからね。」
「駄目だ」と言った理由はこれだけでは推測は出来ないが、私達が何でジュエルシードを集めているかなんて、初対面であるあの男は知らなくて当然。悪用する可能性は捨てきれないだろう。私が男の立場でも同じことを言うだろう。それに、もし私が話すとしても"母さんが集めている"では到底渡してくれるとは思えない。
私は話し合いでの解決が無理と判断し、アルフに念話でカウントダウンを開始した。
……3
……2
「そうですか……なら」
……1
「力尽くで奪い取らせてもらうよッ!」
……0!
合図とともに私達は同時に男へ襲いかかった。いくら優れた魔術運用技術を持っていたとしても、ロストロギアの封印をした後に、まともな量の魔力は残っていない筈。現に男は何の魔法行使の予兆も見せない。これならいける…そう思い、私は男の目を
ゾワリ、と私の背が凍るような心地がした。その男の目はまるで、いろんな色をグチャグチャに掻き混ぜて出来た不出来な黒でビー玉を塗りつぶしたかのような不気味な目をしていた。これは普通の人間のものではない、この男は間違いなく"狂っている"。だが、いったい何に絶望すればこんな目になるのだろう。そう考えた私に一瞬、ほんの一瞬隙が出来てしまった。男の無機質な闇を宿した目は私の使い魔を向き、右手には月に照らされた黒光りする"ナニカ"を突きつけていた。私はそれを見た瞬間、何も考えずに大切な家族を守るように手を伸ばした。
パァンッ!
乾いた火薬の破裂音。鼻腔をくすぐる硝煙の香り。私の意識は妙にハッキリしていた。腹部に走る激痛も要因の一つかもしれない。
「フェイトッ!」
アルフが私を抱きかかえて男から距離をとる。どうしたのアルフ?離れたらジュエルシードを手に入れられないよ?そう考えながら痛む腹部に手を当てるとピチャリという音が聞こえた。不思議に思って手を目の前に持ってくると、手は真っ赤に染まっていた。なんで。どうして。思考がどんどん鮮明になり、だんだん理解していった。
私は、撃たれたのだ。
男の持つ黒い質量兵器"拳銃"で。
喉から熱いものが逆流してくる。抑えきれずに少し零してしまった。苦い、鉄の味がした。
視界の端に映る男は、私を撃った拳銃を懐にしまい別の少し大きめな銃を取り出して私達へ銃口を向けた。あれは確か……マシンガンという銃弾を連射することができる銃だ。アルフが私を庇うように抱きしめる。ああ、私はここで死ぬのかな?せめて最後くらい、母さんの笑った顔が見たかったな……。男はしっかりと狙いを定めてマシンガンのトリガーに指をかけた。
≪P…te…ion≫
連続する発砲音と共に、酷いノイズを出しながら目の前に桜色の防壁を張る少女とデバイスがいた。白い魔導師だ。何故……そう思った瞬間、足元に若草色のミッドチルダ式魔法陣が展開されたのが見えた。いつの間にか白い魔導師と私達の間に入ってきていたフェレットが術式を起動させているようだ。
「レイジングハートごめん……持ちこたえて……!」
≪……No……problem≫
フェレットの魔法が展開されるまでの時間稼ぎと言ったところだろう。壊れかけのデバイスでは強固な防御など期待できない。どれだけ時間が経ったのだろう。数秒にも、数時間にも感じられるような、そんな奇妙な時間を過ごした。すると、ビキッという嫌な音とともに白い魔導師のデバイスの罅が広がり、障壁にも亀裂が入り始めた。そのタイミングでフェレットは叫んだ。
「逆探知阻害術式構成完了!長距離転送用意!
なのは!目眩ましお願い!」
「分かった!レイジングハート!」
≪Barrier Burst≫
フェレットの声と共に白い魔導師が私達の前に張っていた障壁が爆発を起こした。本来は鍔迫り合いになった時に敵と距離をとるための迎撃魔法だが、爆発は彼女の愛機の破損と引き換えに男の目から私達を眩ますのに十二分な役割を果たした。
次の瞬間、ふわりと私の体が浮くような感覚に襲われた。これはここ最近よく使うようになった転移魔法のものだ。その感覚によく分からない安心感を覚えてしまい、私の意識は若草色の光に包まれ途絶えてしまった。
切嗣さんハッスル回でした。
本日使用した銃はコンテンダーとキャリコM950です。まあ、聖杯戦争のときに使っていたものですね。
ちなみになのはとフェイトのバリアジャケットや、レイハさんやバルディッシュはTV仕様です。
前回からいきなり話が飛んで「ハァ?」となった人は大勢いるでしょうけど、こうするのは前々から決めていたことなので、お許しください。