ころしやものがたり   作:ちきんなんばん

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基本的に切嗣は裏方になってしまうため、他の人達が主体になってしまいますね。

それでは、第7話をお楽しみください。


第7話 伝わる思いなの。

§side 切嗣§

 

 

 

「……逃がしたか。」

 

 僕はぼやきながら自分の周囲に認識阻害と防音の結界を張る。先程までの結界はフェレットの姿をした魔導師が張っていたものらしく、転移していなくなったため、解除されていっていたのだ。4人の行先を逆探知してみたが、情報があべこべになっており、整理しようとしたがすぐにメチャクチャな情報すら掻き消されてしまった。復元は時間をかければ出来るかもしれないが、それが終わるころにはもうその場にはいないだろう。あのフェレットの姿をした魔導師は優秀だったようだ。僕の目測が甘かったとしか言いようがない。しかし、それよりも。

 

「まさか、なのはちゃんが魔導師になっていたなんてね……。」

 

 この世界での僕の姉、なのは。彼女がこの件に関わっているのは予想外だった。確かに莫大な魔力……推定AAAの大魔力を持ってはいたが、魔法のマの字も知らなかった筈なのに。いったい誰に魔法を教わったのだろうか。どうしてジュエルシードを集めているのか。

 

 ……ここで考えるのは時間の無駄だ。考えるのは横になりながらでも出来る。それにあの謎の多い"Fの遺産"の使い魔には監視の目をつけておいたから情報はその内割り出せるだろう。

 

 僕は変身魔法を解き、小さくなった体を確かめる。そして転移魔法で自分の病室へと転移した。

 

 

 

§side なのは§

 

 

「ごめんね……レイジングハート」

 

Don't worry(気にしないでください)

 

 ユーノくんの転移魔法で、人目のつかない山奥に私達は転移した。レイジングハートはそのままだと折れてしまいそうなほどにボロボロになってしまっていた。謝るわたしに、気にしなくていいと、優しい言葉をかけてくれる。もう一度、ごめんねと謝るとわたしはレイジングハートをすぐに待機状態に戻した。バリアジャケットも解除される。

 

 

「フェイト…!フェイト…!目を開けておくれよ…っ!」

 

 わたしはその声にハッとして振り返った。人間形態になったアルフさんが涙を流しながら意識を失ったフェイトちゃんを抱きしめている。フェイトちゃんのお腹から赤い血がどんどん流れていき、緑の生い茂った地面を染め上げていく。このままじゃ、フェイトちゃんが死んじゃう…!早く…早く何とかしないと…!思考が混乱してしまう。早く、早くと心が焦る。するとユーノくんがアルフさんに話しかけた。

 

「アルフさん!フェイトさんを此方に!僕が治療します!」

 

 そうだ、ユーノくんは治療魔法が使える。効果は治療を受けたことがあるわたしが保障する。ただ、ここまでの大怪我を治すのは想像を絶するくらい大変な作業の筈だ。だけどアルフさんは敵を見る目でユーノくんを睨んでいた。

 

「誰がお前らなんかに……!信用できるか!」

 

 アルフさんは泣きながらも敵意を剥き出しにして吠えた。その威圧感にわたしは思わず一歩後ずさりしてしまった。アルフさんもパニックに陥っていて正常な判断が出来ていないのだろう。このままじゃ……。そう思った瞬間。

 

「強情もいい加減にしろッ!人の命がかかってるんだッ!」

 

 わたしとアルフさんは突然の大声にビックリして体を硬直させてしまった。

 

怒った。あのユーノくんが、声を荒げて。

 

「偽善とでも敵の策略とでも好きなようにとらえればいいさ!だけど……目の前で死にそうな人を黙って見過ごせるほど僕はクズじゃないッ!」

 

 ユーノくんはそう叫ぶと私達がビックリしていることなんてお構いなしに、呆然とするアルフさんをフェイトちゃんから引き剥がして解析魔法をかけ始める。破損部位の特定をしているんだと思う。その時のユーノくんはわたしが今まで見てきた中で一番必死な表情をしていた。そこでわたしはユーノくんの傍に走り寄る。わたしにも何かできることがある筈…なら全力でお手伝いしないと!

 

「ユーノくん!わたしに出来ることってない!?」

 

「なのは……。じゃあ綺麗な布と包帯、それから消毒液と熱湯を準備出来るかい?それとその後でいいから僕に魔力を渡してほしいんだ。この子を解析して分かったんだけど、臓器の損傷が酷くて僕の魔力だけじゃ全然足りなくて…」

 

「わかったの!」

 

 本当にちょっとしたことだったけど、わたしにも出来ることがあった。デバイス無しでの魔法行使は少しぎこちないかもしれないけどレイジングハートにこれ以上負担はかけられない。走るよりも飛んだほうが速いのでわたしは飛行魔法を使おうとした。

 

「ま……待ってくれ!」

 

 アルフさんが声を荒げてわたしを呼び止めた。いったい何なんだと思って振り向くと、アルフさんは何匹もの苦虫を噛み潰したような表情をしていた。そして少し躊躇しかけたが地に手をついて口を動かし始めた。

 

「……水ならアタシが汲んでくる。そんなもの準備するのに時間がかかったらいけない。アンタはその使い魔に早く魔力を渡してやってくれ……。

 

 暴言とか言いまくったことは謝る!差し出がましいことかもしれないけど、アタシに出来ることならなんだってする……!お願いだ……アタシのご主人を、フェイトを助けてくれ……!」

 

 アルフさんは地面に頭を擦り付けて必死に懇願してきた。アルフさんはフェイトちゃんに愛しているんだなと思った。でなければ、よくわからない敵のわたし達の手に渡ることは拒絶しなかっただろうし、助けてくれると目の前で証明された時、プライドをかなぐり捨ててまで頼み込まない。だけどユーノくんは使い魔じゃないと言いたかったけど今は緊急事態。

 

「もちろんですっ!」

 

「絶対に……助けます!」

 

「ありがとう……!」

 

 アルフさんは感謝を述べるとすぐさま転移魔法を使って指示されたものを取りに向かった。わたしも、やれることをしないと。

 

 

 

******

 

 

 

「フェイト……」

 

「フェイトちゃん……」

 

 あれから何時間たっただろうか。少なくとも2時間以上であることは間違いない。ユーノくんが治癒魔法をかけているが、アルフさんは指示されたものを持ってきた後はずっとフェイトちゃんの傍にいて、無事を祈るようにフェイトちゃんの手を握っている。そしてわたしはその隣にいる。アルフさんがフェイトちゃんの隣にいることを許してくれたのだ。これもそれも全部ユーノくんのおかげだ。あの時怒鳴っていなければフェイトちゃんは死んじゃっていたし、アルフさんとも和解出来なかった。そう思ってユーノくんを見ると、ユーノくんは汗を流しながら辛そうにしていた。ユーノくんから聞いたことがあるが、治癒魔法は非常に難易度の高い魔法に分類されるらしい。緻密かつ繊細な人体を修復するためには高度の演算能力と知識と集中力、そして繊細さが必要だそうだ。下手な人がやると余計に悪化する危険性が極めて高いらしい。一昼一夜で習得できるものではなく、数年の研鑽が必要なのだ。だからわたしは魔力を渡すくらいしか出来ることがない。何も出来ない自分の無力さをここまで呪ったのは初めてかもしれない。すると、ユーノくんの治癒魔法が解除された。ユーノくんは長い溜息をつくと、わたし達を静かに見た。

 

「フェ、フェイトの容体は……どう……なんだい……?」

 

 アルフさんの声からは不安がひしひしと感じられた。自分の大切な主人の無事、それを心の底から願っているのが顔に出ている。ユーノくんは咳払いをしてアルフさんを見ると破顔一笑、優しい顔をした。

 

「ちょっと血を流し過ぎたからここばかりは活性化による自然治癒に頼るしかないけど、もう大丈夫。命の危険はないよ」

 

 わたしとアルフさんは一瞬固まったが、互いに見合って嬉しさのあまり抱き着いた。勿論ユーノくんも抱き寄せる。ユーノくんが顔を赤くして慌ててじたばたと抵抗するが、今はそんなことにかまってられないくらいに嬉しい。フェイトちゃんが命をとりとめたんだから。

 

「な、なのは!アルフさん!お願いだから離してーっ!」

 

「にゃははは!やったぁ!」

 

「うあぁぁあぁぁぁ!フェイドが無事でよがっだぁぁあぁぁぁ!」

 

 アルフさんは色んな感情から解放されて、まるで子供のように泣き始めた。それを見てわたしは微笑みながらユーノくんを見るとユーノくんは諦めたように苦笑いしながら溜息を吐き、アルフさんが泣き止むのを待った。数分も経つとアルフさんも流石に泣き疲れたようだ。涙も止まっている。

 

「……落ち着きましたか?」

 

 赤く充血した瞼をこすって涙を拭くアルフさんにユーノくんは話しかけた。溜まっていたものを全部吐き出したようで、顔はスッキリしていた。

 

「ああ……情けないとこ見せちゃったね」

 

「ううん、アルフさんにそんなに思われてるフェイトちゃんが羨ましく思えたくらいですから」

 

 わたしの言葉に、そんなに褒めるなよとアルフさんは恥ずかしそうに頬を掻いた。初めて会った時の印象とは全く逆だ。怖くて強そうなイメージだったけど、今のアルフさんはどこにでもいる、家族思いで優しい女性だった。

 

「なのは、話に水を差すようで悪いんだけど、なのはの部屋に僕達以外の人を2,3日泊めても大丈夫?」

 

「え?たぶん大丈夫だと思うけど……」

 

「そっか。ならアルフさんお願いがあるんですけど、彼女の容体が改善されるまではなのはの家にいてくれませんか?勿論危害は一切加えないことを約束します」

 

 ユーノくんはそう言うと頭を下げた。ユーノくんは責任感が人一倍強い。だからこそ事故で落としたジュエルシードを集めようとしたり出来るのだ。今回の件もきっと、治療した身として完治するまで責任をとりたいのだろう。アルフさんはジッとユーノくんを見ると、フゥとため息をついた。

 

「そこまで言われたら断る理由なんか思い当たらないさ。あんた達は敵とはいえ信頼できるし、それにお礼だってしなきゃあたしの気が晴れないよ。」

 

 こういう返事が貰えたのは全部ユーノくんのおかげだ。あの時怒鳴っていなければ、フェイトちゃんは助かってなかったし、アルフさんともこうやって笑いながらおはなしなんて出来なかっただろう。

 

「じゃあ、あんたの家の座標を教えてくれ。あたしが転送してやるからさ」

 

 アルフさんはわたしを見て言ってくれた。魔力が全く無い今、その提案はすごく嬉しい。だけど、その前に言っておかなきゃいけないことがある。

 

「なのはです」

 

「?」

 

「わたしは高町なのは。親しい人はなのはって言います」

 

 アルフさんはポカンとした表情になっている。わたしには、お父さんとお母さんから貰った大切な名前があるんだ。ここだけは絶対に譲れないんだ。少し静寂があったが、何が可笑しかったのか笑い始めた。ムッとしたがアルフさんは惚れ惚れするような無邪気な笑顔を向けてくれた

 

「あっはははは!ご存じだろうけどあたしはアルフだよ。よろしくね、なのは」

 

「……!はいっ!」

 

 わたしは驚き、嬉しくなってアルフさんの手を握って何度も何度も上下に振った。やっと、やっと分かり合えた。これならきっとフェイトちゃんともきっと仲良くなれる。わたしはそう確信できた。

 

「ところであんたの名前は?」

 

 ビクッと体を震わせたユーノくんは分かりやすいほど動揺していて、ちょっと可笑しくてわたしは笑ってしまった。

 

「えっ?ぼ、僕はユーノ・スクライアです。アルフさん、よろしくおねがいします」

 

「堅苦しいのは抜きだよ。使い魔同士、仲良くしようじゃないか」

 

「わわっ!?だ、だから僕は使い魔じゃなくて……!」

 

 アルフさんはユーノくんを肩に乗せてぐりぐりと強めに撫でながら笑っていた。ユーノくんとも仲良くなれて嬉しい。わたしはあふれる気持ちを抑えきれなかった。ユーノくんは痺れを切らしたのか、大声を出した。

 

「それよりもなのは!早く帰らなきゃ親が心配するよ!」

 

 その言葉でわたしの思考は一気に冷めた、思い出したようにポケットからケータイを取り出して時間を確認した。深夜12時過ぎで、もう日付が変わってしまっている。わたしの顔から、血がサーッと引いていくのが分かった。

 

「にゃあああ!怒られちゃうのぉぉ!!」

 

 わたしは思わず悲鳴をあげてしまった。フェイトちゃんのことでいっぱいいっぱいになっていたとはいえ、こんな時間になっているなんて思ってなかった。帰ったら間違いなく怒られちゃうの!そんなわたしをアルフさんは苦笑いしながら見ている。

 

「あははは……あたしも原因だし、色々フォローするからさ、とりあえず行こうか?」

 

「は、はいぃ!」

 

 そしてアルフさんの転移魔法でわたし達は家の近辺に転移しました。家に帰ると、入院している切嗣くん以外の家族全員に怒られてしまったけど、アルフさんがカバーしてくれたおかげでお説教は30分で終わりました。そしてその間にユーノくんがこっそり私の部屋にフェイトちゃんを転移させてくれたみたいです。色々と考えることはあるけれど今日はもう遅いから早く寝ようと思います。それでは、おやすみなさい。

 

 

 

 

§side ???§

 

 

 

 

 まっくらで、しめきったへやにわたしはいる。

 

 あのひからずっと、ひとりでいる。

 

 

 あたまがぼーっとする。

 

 からだがふわふわする。

 

 このままくらやみのなかにとけてしまいそうだった。

 

 

 けれど、ぜったいにきえるわけにはいかない。

 

 いわないといけないから。

 

 つたえないといけないから。

 

 とめないといけないから。

 

 

 だいすきな、たいせつな、あのひとに。




第7話でした。

最後のあれは今後の展開に必要なのでぶっこみました。詰め込み過ぎかなぁ……。


なんとこの作品がデイリーランキング8位に入りました!読者様には感謝の気持ちを伝えきれないくらいです!ありがとうございます!これからも、ころしやものがたりをどうぞよろしくお願いいたします!

では、第8話で会いましょう。
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