「聖剣の破壊に協力して欲しいだって?」
「ああ、頼むよ!この通り!」
ここは学校近くのオープンカフェ。
手を合わせてお願いしてくる目の前の男は、生徒会の悩みの種の変態三人組の一人であり、自分と同期の悪魔であり、同じ『兵士』である兵藤一誠。
何故こんなことになっているかというと、さかのぼること数日前。
この地に二人の少女が訪れた事から始まった。
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「なるほど、聖剣の破壊に一切介入しないように釘を刺しに来たわけですか」
「ああ、先ほどグレモリーには言ってきたが、魔王の妹はグレモリー一人ではないからな」
生徒会室の客室に生徒会の全メンバーとそれに向き合う形で座っている二人の少女。
一人はやたらと威圧的な青い髪で緑のメッシュの入った少女。
もう一人は明るい茶髪のツインテールで活発そうな少女。
どちらも同じ年ぐらいだろうか。
「言われずとも関わる気などありません。もちろん協力もしませんが」
二人の少女は堕天使に奪われた聖剣を取り返すためにこの地に訪れたらしい。
そして破壊の邪魔をしないように要請してきた。
こんな細い体でそんな事が可能なのかと思うが、二人とも聖剣使いでそれなりの訓練もしているようだ。
なにより、悪魔の世界に関わってから人は見かけによらないことがよく分かってきた。
「ふ、まぁそうだろうな。グレモリー同様そこまで馬鹿だとは思ってはなかったさ。しかし、世の中何が起こるか分からないからな」
「ほら、言ったでしょゼノヴィア?それよりも早く戻りましょうよ。お腹すいちゃった」
緊張感がないな、この子は。青髪の少女と違って警戒感もまるでない。
悪魔に囲まれていても何も感じていないのは、天然かそれだけ実力に自信があるかだ。
正直、前者の方にしか思えないが。
「そうだな、それでは失礼する」
立ち上がった二人は生徒会室を出ていく。
「貴方たちも聖剣に関わってはダメですよ?特にサジ、以前も話しましたが聖剣は悪魔にとって脅威でしかありませんから」
出ていく二人を確認した後にソーナが念押しをしてくる。
「大丈夫ですよ、そんな面倒事に首を突っ込むように見えますか?」
「そこまで心配はしていませんが、念のためです」
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「と、思ってたのになぁ」
まさか面倒事が舞い込んでくるとは思わなかった。
「何言ってんだ?」
「何でもない。で、なんで俺に相談してくるんだよ」
「部長達は関わるなって言ってたし、正直頼るのも嫌だけど・・・ああ!待てよ!もうちょっと話を聞いてくれよ!頼れるの、もう匙しかしないんだよ!!」
席を立とうとした匙の袖をつかむ。
「ならハッキリ言ってやるよ。そんな事お断りだ」
「なぁ!?クソ野郎だとは思ってたけど、見損なったぞ!!」
「お前だけには言われたくないクソ野郎!!会長から関わるなって言われてるんだから、絶対に断る!!」
普段のソーナは凄く厳しい。優しい一面もあるが、今回は間違いなく説教コースだ。
すぐさまこの場を離れようとした匙だったが、
「え?あれ!?進めない!?」
それが叶うことはなかった。
「やはりそんな事を考えていたんですね」
グレモリー眷属の『戦車』塔城子猫が匙の服をつかんでいたから。
完全に捕まってしまった匙は服をつかまれ逃げ出さないようにされてしまった。
「俺は帰る!「逃がしません」……うう」
逃げ出そうとしても、塔城の怪力には逃げるすべがない。
どうにも由良と同じく『戦車』のクラスの奴とは相性が悪い。
話を聞く限りでは行方をくらませた木場に何か事情があり、聖剣の破壊に協力したいということは理解できた。
しかし、これは非常にまずい。
ソーナは、手出しはしないとは言っていたが、絶対に監視を放っている。
そんな事は当然だ。彼女ほどの人物が自分の膝元で起きている出来事を把握しようとしないわけがない。
それはリアスも同様。この地の管理者ならなおさらだ。
この二人は知られなければ問題ないと思っているようだが、絶対に知られる。
もしかしたら、この会話もきかれているかもしれない。
そんな風に考えていたら話がまとまったようで動き出した。
これを機に逃げ出そうとするが、そんなこと許されるはずもなく聖剣使いの少女二人を探す羽目になってしまった。
「ああ、もう。塔城がいるんなら俺はいらないだろ?」
「戦力が多いに越したことはないだろ?しかし、簡単には見つからないだろうな。こんな街中に白いローブを着た女性なんて……」
その通りだと思う。そして見つからなければこれ以上関わらなくてすむ。
見つからないで欲しいが、今日に限って匙の願いはことごとく潰される。
「えー迷える子羊にお恵みをー」
「天の父に代わって、哀れな私たちにご慈悲をー」
白いローブを着た女性二人がいた。間違いなく先日の二人だ。
「「……普通にいやがった」」
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「「あむ、はむ、もぐもぐ……ごくん」」
目の前には白いローブを着てファミレスの料理をがっつく二人。
余程腹が減っていたのだろう。出された料理が全部彼女たちの腹に収まっていく。
腹がいっぱいになり落ち着いたのか、二人は現状を理解する。
「なんということだ……信仰のためとはいえ悪魔に救われるなんて!」
「私たちは悪魔に魂を売ってしまったのね……!」
「よし兵藤、こいつ等置いて行こう」
「奢ってくれるんじゃないの!?」「奢ってくれるんじゃないのか!?」
「誰が奢ってやるなんて言った?悪魔相手とはいえ人に頼む態度じゃないしな」
「匙先輩!」
「おい匙!!怒らせちゃまずいだろ!?」
立ち上がり伝票をヒラヒラさせる匙。
「甘い!甘いぞ!!いいか?こいつ等の生殺与奪の権利は俺たちが握っているんだ。お願いする立場じゃなくて、既に交渉に入っているんだよ!!」
もうここまでくればヤケだ。聖剣に関わるしかない。
そしてやるなら徹底的に、だ。
「あ、悪魔だ……」
「イッセー先輩、私たちも悪魔です」
そうだ、悪魔だよ。
だからこれくらい構わないだろ?
「な、なにが欲しいの?まさか私たちの体!?そんなのダメよ!!」
「落ち着けイリナ。交渉と言ったな、何が望みだ?」
慌てふためくイリナと呼ばれた少女を落ち着かせる青髪の少女。
「エクスカリバーの破壊に協力したいそうだ」
「なに?」
兵藤が事情を説明する。
まともに話を聞いてなかったから初耳な話もあったが。
「事情は分かった。一本ぐらいなら任せてもいいだろう」
「本当か!?」
「ちょ!?ゼノヴィア!?」
隣に座っていた兵藤が喜ぶ。
もう一人は反対なのだろう。コソコソ話を始める。
ここで断ってくれたらある意味楽だったが、今日の流れからして自分のささやかな望みも叶わないだろうと思っていたよ。
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その後、木場を見つけ出し聖剣破壊の協力を取り付けた。
最初は関わらないでほしいと言われ少し喜んだが、木場の過去話を聞かされ、どうにも断りにくくなってしまった。
ここまでくれば協力しないわけにもいかない。
腹を括ろう。
匙はある一点を見つめる。
そこには先ほどから自分たちを見つめている鳥が一羽いた。
間違いなく気づかれている。
あれほど言われたのだ、下手すれば怒られるどころか何らかのお仕置きがあるかもしれない。
もういいや、怖いし、考えるのは止めよう。
匙はすべての思考を停止させた。