目が覚めて数日、ようやく退院できたと思ったら家に帰ることはできず、俺はアザゼル先生にグリゴリの施設に連れてこられていた。今の俺の体に起きている事、神器の状態、その他諸々をしっかり調べるためだそうだ。
「ふーん、前世と思わしき記憶に二つの魂ねぇ……」
「はい、凄く変な話ではありますけど」
既にアザゼル先生には俺の≪記憶≫の事も、『俺』が犠牲になった事で俺が助かった事も全て話している。
「信じがたい話だか、信じるよ。……いやー、長生きはするもんだな。まさか、お前にそんなもんがあったなんて」
アザゼル先生は顎髭をさすりながら愉快そうに笑う。流石に最初の頃は驚いているようではあったが、意外とすんなり受け入れてくれ、俺の頭をクシャクシャと撫でる。
「お前のやっていることに気づきながらも止められなかった俺が言うのもアレだが、……まぁ、なんだ、無事で良かったよ。それに色々と吹っ切れたみたいじゃないか」
「はい、もう俺の命は俺だけの物じゃないですから。それに皆を泣かせるのはもう二度としたくないですから」
「くくく、惚気てくれるじゃねぇか。匙の野郎にいったいどんな魔法をかけたんだ、ソーナ?」
「か、からかわないでください!!」
アザゼル先生の視線が俺と同行してきたソーナに向けられ、恥ずかしそうに頬を赤らめる。
「コホン……ところで元士郎の体は大丈夫なのでしょうか?」
表情は一転、心配そうな顔に変わる。今回ソーナがついてきたのはこれが一番気になっていたからだろう。
「取り敢えず、それに関しては問題ないだろう。アレだけの力を行使すればかなり寿命が減っていただろうが、散々吸収してきた悪魔たちの力を全部消費することで大きな損傷は免れたってところか」
「そ、そうですか。……良かった」
ソーナはアザゼル先生の言葉を聞き安心したらしく、その場にへたへたと座り込む。
俺としても寿命があまり減っていない事にはホッとした。これで後少ししか生きられないと言われたらまた皆を泣かせるところだった。
「んで、次にお前の肉体と神器についてなんだが――」
アザゼル先生は診断結果が書いてあるらしい紙を見ながら、困ったように頭をかきながら笑うとこう言った。
「――サッパリ分からん!!」
思わずガクッと崩れ落ちる。
「いや、スマン。全く分からない訳じゃない。原因もお前の言う『オーバーライズ』が関係していることは間違いないんだが、特に神器の方が異常な状態というか、今までに前例がない事で俺達もかなり戸惑っているというか……」
「分かっている事だけでもいいので、教えてください」
俺としても自分の体がどうなっているのかは気になる。というか自分の体の状態くらいある程度把握しておきたい。
「……分かった。まぁ、お前も分かっているだろうが、今のお前の肉体は非常に龍に近くなっている。それこそ人型の龍と言っても良い」
「近くなっている……ですか?」
「これが分からない事その一だ。ある程度悪魔の要素を残しつつ龍になっている。力も以前よりかは強くなっているだろうが、本物の龍にしては力が弱い。寿命も普通の悪魔程度で、龍みたく長生きはしないだろう」
悪魔も永遠に近い時を生きるんだから大して変わらないだろうが、龍はそれ以上に生きる。というか、そもそも龍に寿命があるのかすら分からない。
「まぁ、これは特に問題はないだろうな。体が今までより頑丈になったと考えればいい。で、問題は神器の方だ」
これは肉体なんかよりもずっと重要な話だ。単純な力勝負では兵藤に勝てない俺にとっては複数の能力は貴重。能力が一通り使える事は確認したが、俺もヴリトラも気づかない問題があるのかもしれない。
「お前は『黒い龍脈』を核にして、残り三種類のヴリトラ系の神器をくっ付けてあった。くっ付けてあるだけでそれぞれが別々な代物だったんだが、今のお前の中に神器は一つしか存在しない」
「……仰っている意味がよく分からないんですけど?」
「つまりだ、お前の中に有った四種類の神器が一つの神器として融合したって事だ。ああ、普通に能力を使う分にはまったく問題はない。これだけは保障しよう」
「神器が融合って、あるものなのでしょうか?」
ソーナの質問にアザゼル先生は頭を抱える。
「そこが一番分からないんだよ!!ありえねぇ……と言いたいところだが、コイツの存在そのものがイレギュラーだからそうだとは言いきれん。そもそも神器をくっ付けて複数持っているのはこの世で匙だけだからな。全てが初めてだから絶対とは言いきれない」
完全に神器の話にはいった、アザゼル先生は止まらない。
「かといって、今後匙と同じような奴が現れるとか言われたら、それも難しい。神器をくっ付けることが出来たのも、イッセーとの接触でヴリトラの意識が覚醒しかけていたからだ。匙と同じことをしてヴリトラの意識が覚醒するのか分からないし、その後の神器をくっ付ける事自体にリスクがある。ある意味奇跡のような存在がこれから先に出ることは無いだろうから比較も出来やしない」
今更だが、俺も十分運のいい方だったんだな。簡単に神器をくっ付けられたら、グリゴリでヴリトラ怪人が量産されてしまう。それはそれでおぞましい光景だな……。
「やはりもっと調べないと何とも言えないな。仕方ない、匙!!」
「お断りします」
「まだ何も言ってないだろうが!?」
言わなくても分かるよ。もう二度とグリゴリにこの体を預けてたまるか。今度は改造手術じゃなくて、俺を解剖しそうな勢いじゃないか。
「神器が一体化したのは分かりました。普通に四つの能力は使えるみたいですけど、何が違うんですか?」
能力が以前より若干強くなっているのは分かったが、それ以外はいつも通りだ。四種類全部に明らかな変化は見られなかった。
「分からん」
分からん分からんって、分からない事だらけじゃないですか……。
「逆に俺に教えて欲しいくらいだ!!なんだよ、神器が融合するって!!ンなもん分かるか!!」
俺の思った事が分かったらしく、アザゼル先生がキレて俺に掴みかかってくる。
「落ち着いてください、アザゼル先生。融合した事による違いはこれから調べていけばいいじゃないですか。それよりも元士郎の左目はどうにかならないのでしょうか?右腕ならともかく、このままでは私生活に支障がでます」
ソーナはすぐさま俺とアザゼル先生の間に入り、話題を変える。確かに能力云々はこれから調べていけばいい事だ。
「ハァ……ハァ……。そりゃあ無理だ。どうにか出来るなら匙だってやってるだろ?」
「そうですね。ヴリトラからもこれが限界だと言われました」
変化した左目を撫でる。
今は通常で以前は変化しなかった右目も神器を発動すれば変化する。これはヴリトラとの繋がりが強くなったためらしい。変化すれば見た目だけじゃなくて視力も少し良くなるから意外と便利なんだけどな。
「だと思ってちゃんと準備してるぜ。匙、お前にコレをやろう」
「……普通の眼帯じゃないですか」
アザゼル先生に投げ渡されたのは怪我人が使うような白い眼帯。コレを俺に付けろと?片目だと距離感掴みづらいから嫌なんだけど……。
「騙されたと思ってつけてみろ。ただの眼帯じゃねぇから」
「……?」
アザゼル先生がここまで言うのだ。きっと何か特別な仕掛けがあるに違いない。
疑い半分に渡された眼帯をつけてみると――
「……おお!?」
眼帯に隠され、見えない筈の左目が何故かしっかり見える。
「ふふん、凄いだろ?内側に特殊な術式を付加してあるんだ。外から見ると普通の眼帯だが、装着して内側からなら見えるようになってある。昔ある事に利用しようとして創りだした術式だが、まさかこんな所で役に立つなんてな」
一体何の目的なのかは知らないが、これは凄い。装着している違和感はあるが、視界はクリアだ。
『……』
「何ですか?」
眼帯を装着した俺を見て、ソーナはやや顔をひきつらせ、アザゼル先生は口を手でふさいで笑いをこらえている。
「わ、私は気にしませんよ?ええ、貴方であることには変わりないもの……」
「スマン、つい笑っちまった。大丈夫、右腕の包帯を含めて『普通』に怪我しているように見えるぜ」
なんだかよく分からないけど、左目が隠せて俺は見えているのだから問題ないだろう、と思っていた。
そう、この時は特に気にしてはいなかったんだ。
匙は片腕に黒い龍のアザが出来た!(永続)←Level Up
匙は両目が邪眼(龍眼)に目覚めた!←Level Up
匙は邪炎が使えるようになった!
匙は邪龍に変身できるようになった!
匙は邪眼(龍眼)を隠す為に眼帯を装着した!←NEW
匙はアザを隠す為に包帯を巻いた!←NEW
匙の厨二レベルが最大になった!
匙は称号『中二病の塊』を手に入れた!
遂に匙君の中二レベルが最大になりました。自分の中では最大ですが、何かアイデアがあれば是非メッセージまでお願いします。それによっては匙君が限界突破します。