ハイスクールD×D 匙ストーリー   作:ヒツジン

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ブラック匙君無双。

……あれ?変だな、どっちが悪役だっけ?


68話 『元』婚約者襲来 4

「くはは……調子に乗るなよ、下級悪魔風情がぁああああああああ!!」

 

クァマセは殴られた顔を押さえながら、怒りの表情で俺に魔法を放ってくる。俺は魔法を掻い潜りながら距離を詰め、クァマセの右腕を≪砕羽≫で切り落とす。

 

「あぁああアアァあああああアアアアアあッ!?」

 

黒炎を纏った拳で何度も何度も殴り続ける。顔が何倍にも膨れ上がろうが、黒炎で火傷を負おわせようが、気が収まらない俺の拳は止まらない。

 

「ゆる……許さんぞ!!貴様如きが私の高貴な顔を殴るなど!!」

 

クァマセが『右の拳』を振りかざしてくるが、それを躱して一時的に距離をとる。

 

「……変だな、その右腕はさっき切り落とした筈なんだけど?」

 

いつの間にか顔も元通りになている。フェニックスでもないクァマセが再生能力を有しているわけでもない。しかし切られた腕をくっ付けたり、即座に回復ができる道具が一つだけある。

 

「『フェニックスの涙』だ。今では貴重になり過ぎて手に入りにくいが、それはあくまで正規のルート。裏のルートならば金と時間をかければ手に入るのさ。……こんな風にね」

 

コートの裏側につけられている大量の『フェニックスの涙』を俺に見せつける。

 

「今ので二個消費してしまったよ。だが、まだまだ有るからね。楽しませてくれたまえよ?」

 

……楽しませる?俺が、お前を?

 

 

「……はは、ははははは!!」

 

 

「どうした?絶望的な状況に気でも狂ったのか?」

 

ああ、思わず笑っちまったよ。

このクズ野郎をタップリ痛めつけることができるんだ。これが笑わずにいられるものか。

 

「龍之炎≪崩≫」

 

天に手をかざし、夥しい量の炎弾を作り出す。当然この程度では終わりはしない。

 

「連式、龍之炎≪虚空≫!!」

 

全ての炎弾を圧縮し狙いを定め、炎のレーザーが放たれる。自分の手で直接放つものよりは威力は弱いが、それでも炎のレーザーの雨は十分強力だ。

 

「ふん、こんなもの!!」

 

クァマセが防御を展開するが、まるでそんな物は存在しないかのように≪虚空≫が防御を、そしてその体を貫いていく。

 

しかしクァマセは『フェニックスの涙』を直ぐに使用したおかげで服はボロボロだが無傷だ。しかし余裕そうだったその表情が早くも焦りに変わっている。

 

「ハァッ……ハァッ!?なんだこの威力は!?どうして私が下級悪魔に押されているのだ!?何故だ……!?オーフィスの力を得たこの私が何故!?」

 

「言っただろう?格の違いを見せてやるって」

 

ラインを伸ばしてクァマセに繋げ、それを強引に引き寄せる。抵抗空しく引き寄せられるクァマセをまた殴り飛ばす。引き寄せる勢いも合わさって顔面に拳の跡がクッキリと残る。

 

「クソッ!!何故この私がこんなにも苦戦しなければならないのだ!!提供されたデータ上では、貴様の勝率は高くなかったはず!!弱かったはずなのに!!」

 

「馬鹿だな。勝率=強さじゃない。そんな簡単なことも分からないから俺との力の差が分からなかったんだよ」

 

一体どれだけ俺の情報が流されていたのかは知らないけど、勝率で俺の強さを決められるのは困るな。

 

「グヘッ!?」

 

立ち上がろうとするクァマセの腹を殴る。パリンッと幾つかの『フェニックスの涙』が割れる音がした。

 

「む……?悪い、何個か割っちまったな」

 

今度は割ることがないように、『フェニックスの涙』がないであろう膝を蹴り飛ばして、骨を砕く。

 

「ギャアアアアアアアアアアアアア!?--ガッ!?」

 

砕けた膝を抱えて転げまわるクァマセの頭を踏みつける。

 

「ほら、どうした?使えよ、『フェニックスの涙』。まだ残ってるんだろう?」

 

「こ、この外道が!!」

 

怯えと恐怖に染まった表情で俺を見上げる。

 

「ははは、面白い冗談だな。だって好きなんだろう?圧倒的力でねじ伏せ、相手を絶望に追い込むのが。ああ、悪い。それをやる方が好きなんだっけ?」

 

別にこいつを殺そうと思えば簡単に殺せる。でもそれをしないのは俺の気が収まらないからだ。ソーナを、皆を物扱いした。そのクソみたいな視線で汚したんだ。

 

踏みつけている足に黒炎を纏わせ、それと同時に足に力を入れる。

 

「俺も好きだよ。そういったクソ野郎の足元をすくってねじ伏せるの」

 

「グァアアアアアアアアアアアア!?」

 

焼鏝のごとく押し付けられた足は、ボロボロになった髪を燃やし、後頭部に火傷を負わせる。その後、ボールを蹴り飛ばすように頭を蹴る。

 

「ヒグゥ!?……おのれ、おのれおのれおのれおのれ!!この私をゴミのように扱うなど、万死に値する!!」

 

なんだ、まだ戦意は残ってるのか。意外としぶとい奴だな。

 

「ご、がぁああああああああアアアアアアアアア!!」

 

獣のような雄叫びとともに、クァマセの体が何倍にも膨れ上がる。おそらくこれが切り札か何かなんだろう。

 

既に『仕込み』は終えているが、もう少しだけ付き合ってやるか。

 

「グギュルアアアアアアアアア!!」

 

巨大な体には似合わず、思いのほか早い。そして、それを迎え撃つために右腕に纏った炎で巨大な龍の腕を形作る。

 

「ぶっ飛べ!!」

 

「グリュアアアアアアアアアア!?」

 

俺との力勝負に負け、その巨体が吹き飛ぶ。ピクリとも動かないし、もしかしたら死んだかもしれない。

 

クァマセに背を向け、歩き出す。アザゼル先生に連絡を取って転移出来るようにしないと帰れないからな。

 

「油断シタナ、コノ時ヲ待ッテイタノダ!!」

 

 

「ああ、だろうと思った」

 

 

パチンと指を鳴らし、『仕込み』を発動させる。

 

「ガッ……グッ!?体ガ……動カナイ……!?」

 

「蓄積型の呪いだ。最初っからずっと呪詛を込めてお前を殴ってたのさ。最後の最後で抵抗されたら面倒だからな。光栄に思えよ?俺が初めて『赤龍帝』を倒した時と同じ手段を使ってやったんだ」

 

倒れているクァマセに背を向けたまま言い放つ。ただし、呪いは兵藤の時よりもずっと強力なものだが。

 

「マ、マサカ……最初カラ……コレヲ狙ッテ!?」

 

「あのまま大人しく寝ておけばほんの少しだけ長生きできたのに、馬鹿な奴。まぁ、既にお前の中には火種が有るから、いつでも殺せたんだけど」

 

『仕込み』は一つだけじゃない。ヴリトラの黒炎は呪いの要素が強い。一度黒炎を浴び呪いを受ければ、水をかけようが呪いさえ解けなければ一生消すことは出来ない。

 

そして逆に呪いだけを打ち込んで、蓄積することで纏めて強力な炎として発火させることもできる。

 

自分の命の危機を感じ、呪いを受けてもがき苦しむクァマセが更に焦りだす。

 

「マ、待テ!!貴様……ナベリウス家ヲ……敵ニマワスツモリカ!!」

 

「知らねぇな。俺の前に立ちふさがるのなら叩き潰すだけだ」

 

『禍の団』に通じていた時点で、お前を助けてくれる奴はいない。仮にナベリウス家全体が通じていたとしても身代わりとして捨てられるだけ。

 

なによりソーナに実害がなかったとはいえセラフォルー様を敵にまわしたくないだろうし、まず俺がお前を許さない。

 

 

「――散れ、龍之炎≪刹那≫」

 

 

「―――――――――――ッ!?」

 

 

強力な黒炎が一瞬で燃え上がり、クァマセの体を包み込み、声にならない叫びがあたりに響き渡る。

 

「もし残っているのなら『フェニックスの涙』を使ってもいいけど、俺が解呪するか自力で解呪しなければその黒炎はお前を燃やし続ける。いくら再生しようが、死ぬまで永遠にな」

 

声が徐々に小さくなっていく。クァマセの命が尽きるのもあと少しだろう。

 

『貴様は己と他人から与えられた力を過信し過ぎていた。たかが悪魔如きが我等にたてつこうなど愚かにもほどがある』

 

「せいぜい苦しめ。己が一体誰に喧嘩を売ったのか、その後悔の念を抱きながら……な」

 

そのまま歩き出す俺の足元に転移魔法陣が光始めた。アザゼル先生が俺だけ転移で戻してくれるようだ。

 

光が強くなり、景色が一転する。

 

「元士郎!!」

 

「うおっ!?」

 

「大丈夫ですか?どこか怪我はしていないですか?」

 

元の場所に戻るや否やソーナが抱き着いてきて、体をペタペタと触ってくる。怪我があるかないかなんて映像を見てれば分かるだろうに……。

 

「貴方が相手の『女王』と衝突したときに突然映像が切れて、凄く心配したんですよ?」

 

……映像が切れた?

 

アザゼル先生に視線を向けると、声に出さずに念話で内容を伝えて来る。

 

「(アレをソーナ達に見せるわけにもいかんだろう)」

 

「(……ありがとうございます)」

 

どうやらアザゼル先生なりの気づかいらしい。俺も少し頭に血が上り過ぎていた。確かにアレは皆に見られたくないな。

 

「大丈夫だよ、どこも怪我なんかしてないから」

 

「そう、ですか。良かった……。なら気にしなくてもいいですね」

 

そう言うとソーナは俺から離れ、ムギュッと俺の両頬を掴む。

 

「私たちの為に戦ってくれたのは嬉しいですが、一人で無茶したことは別です。……あまり心配をかけさせないでください」

 

「ふぉめんなふぁい」

 

「まったく、本当に反省しているのかしら!?」

 

「いふぁい!!いふぁいふぉ、ふぉーふぁ」

 

なんだかんだでその場で説教をしばらく受け、一度解散してから再度皆からお叱りを受ける事になった。

 

 

「しかし、まさかこんな所で『禍の団』が出て来るとはなぁ……。関わってる奴等がどっから出て来るかわからんな」

 

皆からの説教から解放された後、俺はアザゼル先生に呼び出されていた。

 

「ええ、最近色々あってすっかり忘れていました」

 

「どこかの馬鹿が俺たち巻き込んで大暴走したからな」

 

「それは……ごめんなさい」

 

アザゼル先生の呆れた目線が突き刺さる。それについてはちゃんと反省しているのだから、あまり掘り返さないでほしい。

 

「それで、どうだ。何か掴めたか?俺だけはお前の戦いを見ていたが、会話までは拾えてないんだ」

 

アザゼル先生の問いに、俺は首を横に振る。

 

「まったくですね。今回ちょっかい出してきたのは『旧魔王派』の可能性が高そうですが……」

 

「ふむ、カテレアは死んだし、クルゼレイも死んだ。残るはシャルバか?『覇龍』のイッセーに殺されたかと思っていたが、生きている可能性が高そうだ……」

 

それに『英雄派』には曹操がいる。

 

何だか胸の中のモヤモヤが晴れない。

 

凄く大きな何かが起きそうな、そんな予感がしていた。

 




目には目を、歯には歯を、悪には悪を……

悪を正義の一発で倒すのがイッセーなら悪を悪でお返しする。それがこの作品の匙君です。
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