吾輩はエスピナスである。名前はまだ無い。
2Gの密林に似た所に住んでいることは見当が付く。吾輩はエリア3のようなところで初めて狩人というものを見た。それはロリババア竜人という狩人の中でも一番ニッチな性癖に刺さる種族であった。
このロリババア竜人というのは時々、年長者の大人っぽさを見せて青少年の性癖を壊すという話である。しかし、吾輩は畜生になり果てたから別段珍棒にくることはなかった。
ただ、彼女の
しかし、そのポカポカとした気持ちとは裏腹に、その日の夜は大きな嵐であった。日中あれほど晴れていたにもかかわらず、風と雨が吹きすさんでいた。まるでマッチョが振るプロテイン容器の中にいる様だ。
厚い甲殻越しにも、だぱだぱと雨が打ち付ける感触を覚える。そんな嵐の中、雷に驚いて目を開いた時があった。空に大きな竜の影が見えたが、吾輩関せず。
再び目を閉じた。
♢
嵐の翌日。今日はいつにもまして密林が騒がしい。
ランポスが群れで駆けていくかと思えば、ダイミョウザザミが地面にも潜らず、背中の身をむき出しでカニ走り。果ては夜行性のナルガクルガまで日中に動き回る始末。
まるで師走のような忙しさだ。大変な嵐で生態系に影響がでたのだろうか。
だが、目の前を食料が通り続ける限り吾輩に関係はない。ランポスの群れの最後尾で腹を膨らませ、眠りにつこうとした。
しかし、木々が折れる音と人間の声が。
「きぃーっ! 何でこんな所にライゼクスが出てきてますの!?」
「昨日の嵐だろ! くそっ、調査のつもりが面倒なのに目ぇ付けられちまった!」
「どうしますの! 対策とか何もしていませんが!?」
「俺もだよ! それでもやるしかねぇだろ! こんなイカレストーカー、調査拠点に持って帰れるか!」
小道から飛び出してきたのは2人の狩人。金髪ツインテールのお嬢様風な狩人は太刀を、乱暴な口調の褐色白髪は片手剣を背負っている。
太刀使いはカムラ装備に身を包み、そのバストは平坦である。一方、片手剣使いはベルダー装備に身を包み、そのバストは豊満であった。
2人が開けた所で武器を構えるのと同時に、小道から雷の反逆者が姿を現す。
「カォ”オ”オ”ォ”オ”ンッッ!!」
帯電した翼とトサカを猛然と震わせ、2人を怒鳴りつける。威嚇などという生易しい物ではない。彼の中では殺害対象と最高裁判決が下っているようだ。
翼膜が擦れる度に発生する電磁波が矮小な甲虫を気絶せしめる。丁度、頭に落ちて来たランゴスタをおやつにした。
他方、ハンターたちはライゼクスの咆哮をそれぞれ見切りとガードで凌いでいる。
……咆哮を見切るとはこれ如何に。ゲームではなくリアルで見る違和感に浸る暇もなく、太刀使いが大回転切りからの特殊納刀。
「お覚悟!」
ライゼクスの叩きつけに対して居合抜刀鬼人切り、からの桜花鉄蟲気刃斬で後ろまで一気に切り抜ける。
カムラ装備といい翔蟲使いといい、カムラの里の出身だろうか。
一方で片手剣使いはライゼクスが叩きつけた翼を踏み台にして、跳躍。背中に剣を突き立てて乗り状態へ。
「キュルルルルァ”ッ”!!!」
「ぐっ……やべ、飯食ってねぇから、きちぃ……!」
ただしスタミナ不足。やたらめったら暴れるライゼクスに5秒とて騎乗していられない。
吹き飛ばされた片手剣使いは地を転がり、吾輩の頭に衝突。流石に邪魔なので頭を振って押しのけた。
「何だって岩が動いて…………あぁ!?」
目と目が合う瞬間、モンスターだと気が付かれた。
「うおぉおおっ!?」
きりもみ回転しながら納刀。あっという間に距離を取られたあれは絶対回避。ベルダー装備といい狩技使いといい、ベルナ村の出身だろうか。
「こ、こっち! 何かやべぇのいるって!!」
「語彙力! 一切情報が入ってこないのですが!?」
「知らねぇモンスターなんだよ! テメェは知ってんのか!?」
「知る前に見れねぇですわ! 邪魔してこないヤバそうなのより、目の前のヤバいのが先でしょう! 早く加勢してくださる!?」
「あぁクソッ! 分かったよ!」
「キィ”ァ”アアッ”!!」
近くで騒ぐ1匹と2人。吾輩としてはどれだけ騒ごうが、危害を加えられなければ良い。
死合いを他人事のように観戦。密林コロッセオの観客である吾輩が首を伸ばし、近くで気絶しているランゴスタをつまもうとした時。
「気炎、万丈ッ!!」
太刀使いが吾輩の頭を足蹴にした。恐らく飛翔切りの土台扱い。
そのまま宙を舞う金髪ツインテールの兜割りがライゼクスの翼膜を絶つ。
「カオ”ォ”オ”ッ!!」
ただ、彼は怯むどころか反対の翼で太刀使いにお手を被せる。
「おかわりいっとけ!」
そこに割り込むようにして片手剣使いの回転切り。お手の軌道をずらし、狩技ラウンドフォースによって生じた上昇気流が、再び金髪ツインテールを宙に舞わせる。
「容赦しませんわぁッ!!」
二撃目の兜割りが反対の翼膜を絶つ。これにはさしもの反逆者も堪えたらしく、翼を地面に付けて怯む。
「良く見ておくのですわ! 短期間の留学で猛き炎とまで呼ばれるようになったこの私が、乗りというものを教えてさしあげてよ!」
そして太刀使いが蟲と糸を使ってライゼクスの背中に飛び乗った。背中で竜を操る、まさに操竜。
「そして当然! こっちに乗り継ぎですわぁ~!」
そのまま暴走機関車が吾輩に突進。
…………は?
避ける暇はなく、ライゼクスと正面衝突。一時、自分の身に何が起こったか見当がつかなかった。
「カ、カォ”……ッ!」
大質量同士のぶつかり稽古から生まれる圧倒的な力は、吾輩の頭頂部にある角のような棘を折ったらしい。そこから漏れ出る濃毒血がライゼクスを侵し、勇猛な彼に膝をつくという屈辱を与えた。
「……ばっ、バカヤロウ!! 何をわざわざ眠る竜の逆鱗に触れるようなことをしたぁ!?」
「カムラじゃあこの程度、日常茶飯事でしてよ? モンスターにはモンスターをぶつけるんですわ!」
流れる血に呼応して、秒で血管が怒張する。心臓の激しい伸縮が甲殻と翼膜を濃毒血で赤く染める。
「エスピナスとは中々良い乗り物が近くにいましたわ~!」
恰好だけはうなだれたままの吾輩に鉄蟲糸が巻き付く。そして外敵が吾輩の背に乗るよりも先に、音響兵器を喰らわせる方が先。
「ビィィィィイイイィンッッ!!!」
音の衝撃だけで地にひっくり返っているランゴスタの羽が砕ける。太刀使いは空中で耳を塞ぐのが間に合った様子だが、空中での制動を失い、尻もちをついた。
こいつだけは殺す。
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