吾輩はエスピナスである   作:RKC

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6話

(吾輩熟睡中 一方)

 

 大陸に居を構えるハンターズギルド。彼らは強大な力を持つ古龍の襲来に頭を悩ませていた。古龍の動向には細心の注意が払われており、ギルドは古龍がわざわざ海を渡り、到達する大陸がある事を把握していた。

 

 古龍渡りが行われるその地を新大陸と呼び、計5回の調査団を派遣する事40年以上。死期を悟った古龍が高エネルギーの地を求めるという古龍渡りの謎は暴かれ、龍のエネルギーが循環する地脈の終着点(全てを越えたその先)で力を蓄え生まれた冥灯龍ゼノ・ジーヴァ、及び成体のムフェト・ジーヴァも1人のハンターによって討伐され、調査は一段落していた。

 

 しかし、ゼノ・ムフェトたちが一時的に地脈のエネルギーを吸い、エネルギーの密度が小さくなったのか、古龍が別の地に渡る現象が現大陸で確認される。

 古龍が飛んでいく方角を調査すると、また新たな陸地を発見。大陸と呼ぶには小さいが、孤島と言うにはあまりにも大きなその地をハルフエと名付ける。

 

 この地も新大陸のように高エネルギー地帯の存在、そのエネルギーを利用するモンスターが居る可能性が高い。そう考えたギルドは調査員や狩人を集め乗せた船をハルフエへと送った。

 

 船は2組。先に発船した組が何とか仮住まいと呼べる調査拠点を構築し、後発が到着する頃。調査隊は異常な嵐に見舞われた。空にはクシャルダオラが確認され、かのモンスターの影響による嵐と考えられる。

 幸いにも拠点はせり出した崖を補強する様に作られていたため、風の影響をあまり受けなかった。

 

 しかし後発船は宙を舞い、陸地を跨いで汽水湖へと着水。乗員は風に飛ばされたり、波にのまれたりでそれぞれ散り散りに。

 船に残れた者は、船が座礁した地点ではぐれた者を探しつつ、どうにか先発隊を見つけようとしていた。

 

 しかし満足な物資も住環境もないため、体力に優れぬ者は体調を崩していった。その中で(たち)の悪い病が流行り、それを治すための薬を作るにはエスピナスの濃毒血が必要であった。

 

 

         ♢

 

 

「まぁ、そんな感じです……」

 

 エスピナスにちょっかいをかけていたランサー。名はフィーと言う。垂れ目で猫背の黒髪。

 

 彼女は調査拠点で偉い人たちが集まるテントで自分の身に起きたことを供述していた。

 

「うむ、報告ご苦労。嵐は災難だったが、はぐれた仲間の居場所が分かったのは喜ばしい事だ。本格的な救助には準備がかかる。それまでは少数の優れたものでそちらに物資を届けよう。君も運べる分は持って行って良い。後で物資係に声をかけてくれ」

 

「わ、わかりました……」

 

「今日はもう疲れただろう。君はひとまず休んでおきたまえ。こちらのマカ錬金術師に薬を作らせておくから、完成次第それを持ってここを経つのが良い」

 

「ありがとうございます、失礼しましたぁ……」

 

 フィーがテントから出ると、外で待機していた3人の狩人と顔を合わせる。

 

「お疲れ。外で聞いてたぜ、物資運ぶなら俺達も手伝うぞ」

 

 やや粗い口調でフィーに声をかけるのは、片手剣を好んで使う狩人。名前はエックスと言う。タッパと胸と尻のでかい褐色白髪。

 

「そうじゃのう。もんすたぁの居る場所を抜けて少数で行くとなると、戦える者が出なければならんのじゃ」

 

 かなり下の方から声のする、小さき狩人。鈍器、中でも狩猟笛を好んで使う彼女の名前はニジィと言う。のじゃロリババア。

 

「困っている人を助けるのは当然ですわ! もちろん私も同行いたしましょう!」

 

 小さな胸を張り、仰け反っているのは太刀を好んで使う狩人お嬢様部。膀胱の緩い彼女の名前はイブと言う。金髪ツインテ―ル。

 

「あ、ありがとうございます……。4人いれば荷車も引いていけるので、とても助かります……」

 

「じゃあ、とりあえず持ってく物資選ぶか。向こうに必要なもんはお前が一番わかるだろ?」

 

 4人は組を為して物資係の方まで歩いていく。道中、互いに自己紹介をしながらの雑談。

 

「へぇ、フィーはメゼポルタから来たのか。この調査団、色んな出身な奴らが集まってるからな。地方によって狩猟スタイルが千差万別すぎて正直困惑するぜ……」

 

「然り、現にフィーが背負ってる槍もあからさまに長いしのう」

 

「リーチがある方が有利じゃないですか? これに関しては長くしない方が頭悪いと思うんですけど……」

 

「言葉強……。それだけ長くて先端に重さが寄った槍を片手で持てるの筋力おかしくないか?」

 

「まぁ、そこはコツがありますから……。脇で固定したりとかですねぇ……。狩猟スタイルで言うと、あの樽は何なんですかぁ……?」

 

「マカ錬金タル。便利だぞ、石ころとか雑草で色々作れるし。……あれ? やっぱり俺の地元以外じゃ誰も使ってないの、これ?」

 

「当たり前ですわよ。誰が好き好んで戦闘中にタルを振るバカがいるのやら」

 

「そのバカのタルでエスピナスに轢かれなくて済んでるんだからな、お前は! そういう話ならお前こそなんだよそのキモイ蟲! というかその蟲に糸繋いで高速移動ってアホか!? 発想がキモイわ!」

 

「回復薬立ち止まって飲むアホに言われたくないですわ! な~にお上品に飲んでいらっしゃるのかしら!? 移動と回復を兼ねるのがスマートってものでしょう?」

 

「うるせぇ! 走りながら液体飲んだらこぼすに決まってんだろ!? 物資の無駄だし防具ビシャビシャでその後に影響及ぼすだろうが! ロアルドロスの海綿体マフラー着たままこぼして窒息してろ!」

 

「ごあいにく様~! 私の回復薬グレートはハチミツの配分が多いので粘度が高く、こぼれたりしませんわ~! それに比べてエックス様の回復薬のしゃばしゃばしいこと!」

 

「てめぇ前にハチミツの配分多すぎて、飲む時むせて死にかけてただろうが! 興奮状態であんな粘菌みたいなドロドロ飲めるか! ブラキディオスみたいに手の甲にでも擦り付けてペロペロ舐めてろ!」

 

「くっ……! そ、そちらこそ砥石の扱いが下手過ぎではなくって!? 武器を研ぐだけで使い捨てにせざるを得ないとはみっともないですわ! ポーチにじゃらじゃらと砥石を詰めて、お馬鹿でいらっしゃるのかしら?」

 

「そういうお前こそ、ここに来た時ペイントボールの存在知らずにドスランポスに逃げられたの知ってるからな!」

 

「あ、あれは仕方ないでしょう! ここに導蟲はいませんし、あの子には危ないと思ってフクズクのフーちゃんも連れてこなかったんですから! そういうあなたこそピッケルと虫あみの扱いも下手でなくって? 採取の時、何本もピッケルと虫あみ背負ってみっともないですわ~!」

 

「逆に全く壊さないお前はどう使ってんだよ!? おかしくねぇか!?」

 

 2人が醜い言い争いを尻目に、フィーとニジィは持っていく物資を選び終えていた。そして永遠に続くのではないかという言い争いを眺めながら雑談。

 

「ニジィさんは何処の出身なんですか……?」

 

「儂はポッケ村出身なのじゃ。他の者に比べると田舎も田舎じゃよ」

 

「ポッケ村と言えば雪山草ですよねぇ……。本来は漢方に用いるものなんでしょうけど、私はよくポポノタンと炒めて食べていました……」

 

「意外と通じゃの。儂は酒に漬けて薬酒で楽しんでおったのじゃ。どうにも年を取ると健康に気を使うようになってのう」

 

「竜人の方は寿命が長いせいか、健康に敏感ですよねぇ……」

 

「若い頃は狩りに行く前に芋酒とチーズばっかりの不摂生をしておったからのう、余計にじゃ」

 

「も、もう少しお腹に溜まる物を食べていった方が良いんじゃないですかぁ……?」

 

「然り。結局狩場で肉を食べておったのじゃ。メゼポルタではどんなものを食べておったのじゃ?」

 

「狩りに行く前はリュウフィレ肉とクイーンパセリのキッシュが人気でしたねぇ……。私はトロフグと七色レタスのパスタを食べていましたけど……」

 

「ほう、それはどちらも美味そうじゃ。どんな味なのじゃ?」

 

「ガッツあふれる秘伝の味と、活力溢れる秘伝の味でしたね……」

 

「……よ、よく分からんが、いつかは食べてみたいものじゃの」

 

 フィーとニジィがお互いの故郷の事を話す中。

 

「大体そっちは調合技術が進化してねぇんじゃねぇのか!? 刃薬の種類が重撃しかないとか遅れすぎ! こっちにはプラス3種類の上、全部盛りした混沌の刃薬まであるかんな!」

 

「四つの刃薬ポーチに詰めてガチャガチャガチャガチャ瓶のうるさい事! どうせ混沌の刃薬もポーチの中でビンが割れて全部混ざったのが偶然そうなったとかいう発見の経緯があるのではなくって!? それに調合技術の事をいうなら、調合書見ないとまともに調合できないおつむの悪い方には言われたくありませんわ! あー、ビンが割れても大丈夫でしたわね! ポーチの中の調合書が吸ってくれますもの!」

 

「やかましいわ! そっちこそ鍛冶屋の腕が悪いんじゃねぇのか! レギオス武器の切れ味が回復しないとか素材の味を生かし切れてねぇだろうが! それに砥石の扱いが下手とか言ってくれたが、回避と同時に武器を研ぐ技術がこっちにはあるんだよ! お前はせっせこ時間かけて研いでろよなぁ!」

 

「コロコロ前転してたら切れ味が回復するへんてこりんな武器なんてこっちから願い下げですわよ! 絶対回避[臨戦]でしたっけ!? 前転と合わせてクルクルあほのように回転しながら好きなだけ研いでれば良いじゃありませんか! それに鍛冶屋の腕を言うならガンランスの爆風で飛べないような欠陥設計してる地方の技術力もお里がしれますわ~!」

 

「ガンランスで飛ぶのはそれを要求する狩人の頭が湧いてんだよ!! こっちだってやろうと思えばそういう仕様にぐらいできらぁ!」

 

 イブとエックスもお互いの故郷の事を話していた。

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