おなか........すいた.......
ごはんは...どこ....
あった....たくさんの....ごはん..
これ.....ぜんぶ.......
王都グリーメン ジュラミュニアン宮殿 王の間
「バルサ王、オルド・セアランドなる人物が王との謁見を望んでいます。」
「オルド・セアランド?誰だそいつは?おいバイカル知っているか?」
「はい、世界中を見て回りそこで見た景色などを本にして売っている人物です。本も結構庶民の間では人気があるそうです。」
「そうなのか?」
「はい、魔王軍がウロウロしていて冒険者などのギルド関係の人間以外街の外に余り出ようとしませんからね。街の外の景色を中々見ることができない国民にとってオルドの本は貴重なのでしょう。」
「そうか、それでパルモ、そのオルドという人物はなぜ余に謁見したいのだ?」
「わかりません、聞いても王に言いたいのであって貴方にいう気はないとの一点張りでして。」
「なるほど、じゃあそいつをここに連れて来い。話を聞いてやろうではないか。」
「わかりました。バルサ王。」
パルモという人物に案内され王の間に辿り着く。中央には玉座に座ったこの国の王であるバルサ王が座っていた。その横には側近衆の1人であるバイカルが突っ立っている。
私に案内が終わるとパルモもバイカルと同じように王の横に突っ立った。パルモが王の横に立ち数秒経ったところで王に跪く。
「本日はこのような者の話を聞いてくださる機会を頂戴し誠に感謝を申し上げます。」
「うむ、それで汝は余に一体何の話をしにきたのだ?」
「はっ、私は世界中を回り見た景色を本としていることを生業としています。そして1週間前に古城マチルダがあるマチルダに訪れていました。」
「ほう、古城マチルダか。」
「はい、そこで私はいつも通りに見たものを日記に記していました。そして古城マチルダのホールであるものを目撃したんです。」
「あるものだと?」
「はい、それは卵らしきものでした。大きさは2〜3メートぐらいでホールの中央ポツンと立っておりました。」
「卵らしきもの?卵ではないのか?」
「最初はドラゴンの類の卵かと思いましたがマチルダ周辺にドラゴンが生息しておらず近くでみると繭のようにも見えてよくわからないのです。」
「バイカル、マチルダ周辺にドラゴンなどは本当にいないのか?」
「はい、ギルドからの情報ではマチルダ周辺で生物は十数年確認されていないそうです。」
「じゃあオルドが言っている卵らしきものとは何だ?」
「私しにもわかりません、実際に見てみないことには。」
「なるほどな、それでオルドよ、汝は我々にその卵らしきものの存在を伝えてどうしてほしいのだ?」
「ぜひ調べ上げてほしいのです。その卵らしきものが一体何なのかを。」
「なるほど。」
「しかしバルサ王、このオルドが言っていることが本当かどうかもわかりません。もしかしたら我々を罠に嵌めようとしているのかも知れません。」
「そんなことするはずがないでしょう!私はただあれの正体が知りたいだけなのです!」
「ではその卵らしきものまでの道案内をオルドにさせたらいいだろう。そうすればこいつが言っていることが嘘か本当かわかりましょう。それでいいですかバルサ王?」
「うむ、バイカルの意見を採用する。オルドよ、汝は我々が派遣する調査隊をその卵らしきものまで案内せよ。」
「わかりました。」
「パルモ、其方はギルドにこの事を話して調査隊を編成してくれるように頼んでおいてくれ。」
「わかりました。バルサ王。」
「ありがとうございます!バルサ王!」
私は跪いた状態で深々と頭を下げる。パルモには疑われてしまったが何とか調査隊を派遣してもらえることはできそうだ。いつ向こうに行くかはわからないが家に帰ったら旅の準備と本の出版用意を済ませよう。
古城マチルダ 水堀
うまい.......ごはん.....
ごはん.....いっぱい.....うれしい...
でも..いない...
おもちゃ....いない...
さびしい...さびしい...
そも..そも...だれ.....ぼくは....?...
かぞく....いない....なかま...いない....
どこに......いるの......?......
古城マチルダに向かう日は思ったより早く訪れた。バルサ王との謁見から3日後には家にギルドから2日後に古城マチルダに行くと伝えられた。王都から古城マチルダまで行くには片道5日ぐらいかかる為大量の水と食料を持って行く。
古城マチルダに向かう日、ギルドの集会所に向かうと調査隊がいた。調査隊は10人で構成されており冒険者2名、護衛の騎士4名、学者1名、魔法使い2名、ギルド職員1名であった。
メンバーを紹介するとまず冒険者のウルルとララ、この2人は幼馴染らしく王都では結構有名な冒険者らしい。まぁ私は旅に出ていることがほとんどで王都にいることが少ないから詳しいことは知らない。
次に私たちの護衛をしてくれる騎士のラルフ、ガッツ、ゼナ、シリンダの4人。この4人は王に使える騎士団の精鋭部隊であるインバンブル部隊のメンバーとのことだ。
わざわざそんな精鋭部隊の騎士をこんな調査隊の護衛に抜擢してくれた王には感謝しかない。
次に学者のジュフミ、生物学者で今回の調査に1番必要な人物だ。彼ならばあの卵らしきものの正体がわかるかもしれない。
次に魔法使いのヴェリンダ、チュウカ。申し訳ないが彼女達のことは全く知らない。
最後にギルド職員であるハーブ。調査書をギルドに提出しないといけないためその資料作成のため同行するらしい。
私は旅を暫く共にするから皆さんに「今回はよろしくお願いします。」と挨拶をしたが挨拶を返してくれたのはジュフミとハーブだけだった。それ以外のメンバーは早く古城マチルダに連れて行けみたいな物言いだった。
少し心配だったがそのまま私たちは古城マチルダに向けて出発した。彼等は挨拶は返してくれなかったが強さはあり向かう道中に出会った魔物などは全て彼等が倒してくれた。
そのおかげで古城マチルダまで5日かかるとおもっていたが1日早い4日で城下町まで辿り着くことができた。
マチルダまで辿り着くと私以外の調査隊のメンバーは来たことがなかったのか回りの景色に驚いているようだった。私はそんな彼等を古城マチルダにある卵らしきものまで案内する。
城門を通り城まで続く大通りを進む。進んでいる最中にウルルが軍病院の中を探索をしたいと言ってきたが今回はあくまで卵らしきものの調査の為ダメだと一応釘を刺しておいた。
そんなこんなで水堀に架けられている橋の目の前まで来ると前回訪れた時より橋の様子が違うことに気づいた。前来た時にはなかった爪で引っ掻いた傷跡が大量に橋に残されておりさらに魚の食いかけの死体が水面に浮いていたのである。
私以外の人たち橋や魚の死体を見て不気味に思ったのか「なぁ、これやばくないか?」とウルルが不安そうな言葉を述べた。騎士たちは盾と剣を装備し周囲を警戒し始めた。私は嫌な予感がし走って橋を渡る。みんなも私に続く。
走って橋を渡り切り城の中に入るとホールが私を迎え入れてくれたがそのホールの中央には私が見た卵らしきものがあったがそれは前見た時と違い崩壊しており中から何かが出てきた後で破片が床に散らばっていた。
古城マチルダ 大通り沿いにある軍病院の何処か
えさ....と...ちが...う...にお...いが...たくさん....する.....
もしか..して...なかま...?..
まって....て....
いま.....さがす.....
「嘘だろ....」
オルドは頭を抱えてその場にしゃがみ込む。そこに調査隊も追いつき卵らしきものの変わり果てた姿を見る。
「これがこいつが言っていた卵らしきものだな。」
「でもこれを見る限りどうやら卵であっていたらしいな。もう既に中から何かが出た後のようだ。」
「一体何が出てきたのかしら?」
「さぁな、おい学者、これ孵化してからどれぐらい経つんだ?」
冒険者のウルルに促され卵の状態を確認するジュフミ。ジュフミは卵の中を触ったり破片の状況を見て孵化からどれぐらい過ぎたのか計算する。
「卵や破片の状況を見るとこれは孵化してから2週間以上は確実に経過しているな。恐らくオルドさんがここを去ってから直ぐに孵化したんだろう。この卵の大きさ的にドラゴンの類とは思うがこんな卵を産むドラゴンが存在していたかな?」
「おいおいなんだよ、それじゃこの卵はドラゴンじゃないと?だったらこれは何の卵なんだよ?まだ見つかってない生物の卵とでも言うのか?」
「こっちが知りたいよ。こんな卵初めて見たし、そもそも君たちも道中で見ただろマチルダの惨状を。こんな瓦礫しかない土地で生物は暮らしていけないんだよ。現にマチルダに入った瞬間から生物の姿が一切見当たらなかっただろ。」
「それはそうだけど...じゃあこの卵は何が産んだのよ。しかもほとんど荒野しかないマチルダに産んでいる時点で充分怪しいのにその卵があるのは城の中なのよ。一体どうなってるのよ?」
「それは....」
「そんなことはどうでもいいだろ。今は孵化した生物を探す方が最優先事項だろ。そうだろハーブさん?」
「ええ、確かにラルフの言う通りです。ギルドとしてもまずは孵化した生物の捕獲もしくは討伐が最優先事項だと思います。」
「じゃあオルドとジュフミ、ハーブはここに残ってくれ。それ以外は二手に分かれて片方は外、もう片方は中を捜索して孵化した生物を探すことにしよう。」
騎士ラルフの呼びかけによりオルドたち以外のメンバーは4人ずつ2班に分かれて孵化した生物の捜索に向かうことになった。
「俺たちが城内の捜索をするからガッツたちは外の捜索をしてくれ。そして万が一生物を発見した場合は大声で知らせることにしよう。その方が気付きやすいからな。」
「了解だ、ラルフ。」
城内をラルフとウルル、ゼナ、ヴェリンダの4人がララとガッツ、シリンダ、チュウカの4人外を捜索することとなった。
「それじゃあ俺たちは行くがお前たちは絶対にそこからいなくなるなよ。」
「わかってますよ、ラルフさん。」
「よし、それでは捜索開始!」
ラルフが呼びかけた後、一斉にラルフたちは2階へガッツたちは外へと向かいホールにはオルド、ジュフミ、ハーブの3人が残された。
古城マチルダ 水堀近くの森林の中
すみか.....から...でてきた....だれ....?...
なかま...では...ない....
あそんで.....くれ....る...かな...?....
わかれた.....ふたて.....に.....
かた...ほう...ずつ....あそぶ....?....
いま....いく.....
「オルドさん、我々はどうします?」
「どうもこうも、ここで私たちは捜索に向かった彼等が生物を発見してここに連れてくることを待つことしかできません。」
「そうですよね。」
「この卵らしきものが孵化したのを見ると城に入る前に渡ったあの橋の惨状は孵化した生物の仕業だと考えた方がいいですね。」
「ええ、その考えが妥当でしょう。私が以前ここに来た時の橋は引っ掻き傷のようなものは一切ありませんでしたから。」
「しかし魚を食べる生物がマチルダに生息しているなんて情報ギルド職員の私ですら一回も聞いたことありませんが?」
「当たり前ですよ。私も生物学者となってからかなりの年数が経ちますがマチルダはもちろんマチルダ周辺の地域に魚を主食とする生物が生息しているなんて聞いたことありません。」
「ドラゴンなどの爬虫類種も生息していなんですよね?」
「ええそうです。なので本当に謎なんですよ、一体何が産んだにか、なぜこの城の中に産んだのか、謎が多いんです。そういえばオルドさんが以前来た時はこの城の入り口空いてましたか?」
「いいえ、空いたような形跡は一切ありませんでした。」
「そうですか。この卵の大きさ的に産んだ生物は少なくとも10メートル以上はあると僕は思っているのですがそれだとこの中に入って産むことはできないはず、でもなんでホールに産めたんだ?うーん謎ばかりで何もわからないな。」
「今回の調査は孵化した生物が発見されない限り解明できないのが現状ですね。」
「そうですね。探索に行った彼等が発見してくれるといいのですが。」
3人は卵について色々考えたが最後は捜索に行った彼等が見つけてくれることを祈るしかなかった。
古城マチルダ 水堀の中
うごかなくなった.......さっきまで......うごいてたのに......
かみついても.....ふっても....はんのう......ない.....
ひりき......おもしろくない......つまんない.....
こいつら......いらない....もう...いらない...
ぜんぜん....あそび....たりない.....
もう...かたほう..に....いく....
あっち....は......おもしろい.....かな....?....
数分後城内を捜索していたラルフ達がオルド達がいるホールに帰って来た。
「ラルフさん、どうでした?」
「いいや、全く。1階・2階にある全ての部屋を探して回ったが生物らしき物体は何もいなかった。」
「魔法で生物探知も試してみたけど何も反応はなかったわ。」
「くそ、一体どこにいるんだ孵化した生物は。」
「城内にいないとなると外にしかいないだろうな。ただ生物がこの城周辺にいるとも限らないんじゃないか?」
「生後2週間ならまだ赤ちゃんぐらいだろうからマチルダ城周辺には必ずいると思うよ。」
「でも何の生物かわからないんでしょ?そいつがもし急成長が可能な生物ならとっくにここから離れてもっと豊かな土地で暮らしてるんじゃないの?」
「それはあくまで可能性の話であって本当かどうかは定かではないだろ?」
「確かにそうだけど.....」
「わからないことを今話していてもしょうがないでしょ。とりあえず城内で見つからなかった以上生物は外にいる可能性が高いわ。私たちは外で捜索しているガッツ達と合流して外の捜索を手伝いましょう。」
「了解だゼナ、オルドたちはまたホールで待っててくれ。」
「ああ、わかった。」
「そういえばゼナ、お前らは城内捜索中に水の音聞こえなかったか?」
「?いえ、聞こえなかったけどそれがどうかしたの?」
「いや、1階の捜索中に外から何かが水に落ちたような音が2回聞こえたからそっちも聞こえたのかどうか気になってな。」
「私たちの方はなかったわそんな音。ねぇヴェリンダ?」
「うん、そんなのなかった。」
「そうなのか?」
「ええ、ガッツが石ころでも水堀の中に投げたんじゃない?」
「石ころを投げた割にはかなり大きい音だった気がするんだよなぁ。」
「外にでっかい石ころが2個あって2個ともガッツが水堀に投げたんだんでしょ。アイツ昔大きい石ころで水切りしようとしたことあるから。」
「うーん、そうなのかな?」
「あのーすいません、ちょっといいですか?」
「ん?ああ、どうした?」
「さっきの話を聞く限りラルフさんとゼナさんは別々で城内を捜索していたんですか?」
「そうだよ、オルドさん。2階の捜索が終わった後4人で全部屋回るのは効率が悪いと言うことで1階の左半分を俺とラルフが、右半分をゼナとヴェリンダは捜索することにしたんだ。」
ラルフに聞いた筈なのに何故かウルルが答えて少し面食らったオルド。
「そうでしたか。でもなんでウルルさんが答えるですか?」
「いいじゃん別にそんな細かいことは。それより早く外の捜索に行こうぜ、そろそろ日が暮れちまう。」
「確かにそうだな、よしそれじゃあ外にいるガッツたちの元へいくk
「うわぁぁぁぁ!!」
「「「「「「「!」」」」」」」
外に行こうとした直前に外から聞こえて来た悲鳴にホールにいた全員が反応した。
「この声はガッツか!」
「もしかして生物に出くわして襲われたんじゃないか!?」
「急いで助けに行くよ!!」
「おう!!」
ラルフとゼナが真っ先に飛び出し「あー!待ってくれよ!」とウルルとヴェリンダが後に続きホールにはまたオルドたち3人がまた残った。
「一応私たち3人はここに残っておきますか?」
「ええ、そうしましょう。戦闘要員ではない私たちが行っても足で纏いになるだけです。」
「ラルフさんが言ってた通りホールで待ってましょう。」
オルドたちは外には向かわずホールで待機しておくことにした。
時間はガッツ達が外に捜索しに来たところまで遡る。
「外に捜索来たはいいが、広いな!!」
「流石に私たち4人で全て回るのは限界があるわね。」
「城内の捜索組が終わるまで俺たちは水堀の回りを捜索するのはどうでしょうか?それでウルルたち城内組と合流してから本格的に外に捜索をしにいくことに行くことにしませんか?」
「いいねそれ。」
「それでいいんじゃね?どうだシリンダ?」
「それを採用しよう。では二手に分かれて私とチュウカが左回りでガッツとララが右回りで水堀をそれぞれ一周することにしよう。その方がお互いの見落としがないか確認できるからな。」
「うんその案でいこう。ララ俺についてこい。」
「はっはい!」
「行くぞ、チュウカ。」
「はい。」
ガッツ、ララが右回り、シリンダ、チュウカが左回りで水堀をそれぞれ回ることとなった。
回り始めて暫くはお互いの姿が確認できたが暫くすると城によってお互いの姿が見えなくなった。
シリンダとチュウカは水堀から少し離れて水堀沿いを歩き生物の捜索を行っていた。最初は2人とも黙ったまま捜索していたが暇だったのかチュウカが途中からシリンダに世間話をし始めた。
シリンダもそれに乗っかり2人は話しながら歩いて捜索を行なっていた。やがて話題は今回の調査となる。
「チュウカ、お前は今回のこの調査をどう思う?」
「どう思うってくだらないとしか私は言えません。ダンジョン調査だと思って参加しましたから。」
「そうか.....私も調査と聞いて志願したらまさかのこれだからな、てっきり魔王軍の偵察調査だと思っていたよ。」
「私は集会所でヴェリンダと依頼を探している時に丁度応募していたので参加してみたんです。そしたら卵らしきものの調査って個人でしたらいいものをわざわざギルドまで引っ張って来て調査させるなんてめんどくさい男ですねオルドという人は。」
「私はオルドのことは全く知らないがお前はオルドについて詳しいのか?」
「いいえ、別に詳しいわけではありません。ただオルドが本を出版していることは結構有名ですよ。」
「アイツ本を出版しているのか?」
「そうみたいですよ。世界中で見た景色を本にして売っているみたいで私も一回友達にお薦めされて読んで見ましたけど見た景色を詳しく書いているだけの本でしたよ。なのになんであんな人気なのか理解できません。」
「そんな内容なのか?アイツの本は?」
「ええ、当たり障りのないことをひたすら文章にして書いているだけの本です。」
「ははは!逆に興味が湧いて来たな。王都に帰ったら本屋に行って買って読んでみるか。」
「やめた方がいいですよお金の無駄です。そんなのに使うぐらいならギルドに募金した方がまだいいですよ。」
「それは私が読んでから決めることだ。まぁアドバイスとして受け取っておくよ。.....少し世間話をしすぎたなちゃんと捜索しようk
ドボンッ!!
「「!?」」ばっ!
シリンダとチュウカの後ろから何かが水堀の水の中へ飛び込んだような音が聞こえた。一気に2人の回りにはさっきまでの和気藹々とした空気は消え静寂と緊張が急速に広まる。
「シリンダさん...」
「大丈夫だ、チュウカお前は魔法攻撃の準備をしててくれ。私が水堀の様子を見てくる。」
シリンダは剣と盾を構えて水音がした方までゆっくり歩いて向かっていく。チュウカはその場で魔法陣を展開して攻撃準備をしておりさっき音がした水堀の水面には波が立っていた。
(まさか生物か?さっきまで陸上にいて水中に入ったのか?でも足音は一切していなかったぞ?さっきまでチュウカと話していたからそのせいで聞こえなかったのか?くそ、失態だ。でも今は悔いるより確認の方が大事だ。)
シリンダはゆっくりと水堀に近づきそして水面を覗く。
「........」
じっくりと見渡すがそこには魚以外の生物はおらず魚がただ悠々と泳いでいるだけであった。
シリンダはふぅと息をつき、そして水堀から目を離してチュウカの方を振り向き「チュウカ、大丈夫だ魚以外何もいない。恐らく魚が水面から跳ねただけだろう。」と言った。
シリンダに言われたチュウカは安心して魔法陣を解き水堀近くのシリンダの元へと駆け寄る。
「では早く行きましょう、ガッツさんたちが先に半周してこっちに来てしまいますよ。」
「ああ、そうだな。早くいこう。」
そういい2人が水堀に背を向けた。
その瞬間、
バシャァァン!!
「「!?」」
2人が目を離した水堀の水の中から突如生物が出現した。余りにも突然の出来事に彼女たちは困惑し身動きができなかった。
出現した生物は細長い腕を伸ばしこっちに振り向いた彼女達の身体をガシッ!!と力強く掴んだ。
ボキッ!!
生物が2人の身体を掴んだ瞬間に鳴ってはいけない音が身体中に響き渡った。
「い!
2人は助けを呼ぼうとしたが
バシャーーン!!
叫び声を上げる前に生物は彼女達を水の中へと引き摺り込んでしまった。2人が立っていた場所にはシリンダが持っていた剣だけがとり残された。
バシャーーン!
「なんだ?シリンダたちの方から水の音が聞こえたぞ?」
「向こうで何かあったのかも。」
「もし何かあればやばいな、急いで向かうぞ!」
「はい!」
左回りで水堀周辺の捜索を行なっていたガッツたちはシリンダ達の方から水音を聞き何かあったのではないかと思い走って向かっていった。
「おい!シリンダ!いるか!いるなら返事をしろ!」
「シリンダさーん!チュウカさーん!」
ガッツとララは走りながら声をあげて2人の名前を呼ぶが一切返事は返ってこなかった。
そして本来ならすれ違う筈の半周の地点に辿り着くがそこにはシリンダたちの姿はなくその先を見ても2人の姿は見当たらなかった。
「ララ、もしかしたらあの2人は生物にあって襲われたんじゃないか?」
「え....」
「アイツらがどこにも見当たらない以上そう考えるしかない。生物にあって捕獲もしくは討伐しようとしたが返り討ちにあって水中に引き摺り込まれたんじゃないか?」
「そしてさっき俺たちが聞いた水音は生物が2人を丁度水中に引き摺り込んだ音なんじゃないか?」
「そんなこと.....あ!ガッツさんあれ!!」
「ん?」
ララに少し先の方を指をさされ見てみるとそこには太陽の光でキラキラと反射している物があった。「まさか!」といいガッツはその場へと急行する。ララも続き先についたガッツはしゃがみ込みその反射している物を見る。
反射している物の正体は剣であった。剣の近くには盾と魔法の杖も落ちていた。ガッツは剣を持ち上げ剣全体を隈なく見る。
後からついたララはそんなガッツの様子を不安そうに見守る。
「ガッツさん?」心配になったララがガッツに話かけると「間違いない!」と言いガッツは突然立ち上がった。
ララはいきなり立ったガッツに驚きビクッ!と身体を揺らす。「え?」とララが不安そうな声で言うと「これは間違いなくシリンダの剣だ。こんな研ぎ澄まされた剣を持っているのはアイツしかいねぇ!」と言った。
「俺の言ったことがあってたんだ。アイツらは生物と出会ってそれで.....は!」
ガッツは背を向けていた水堀に振り向き水面を覗く。ララは水堀から離れてガッツを見守る。しかし水中にシリンダとチュウカらしき人物は確認できなかった。
「くそ!とりあえず中の奴らと合流してこのことを知らせよう!」
「はい!!」
ララは先に城に向けて走り出しガッツも覗いていた顔をあげ水堀に背を向けララのあとを追おうとした。
しかしその瞬間、
バシャァァン!!
「「!?」」
再び水堀の水中から生物が出現したのだ。生物はシリンダたちを捕まえた時と同じように細長い腕を伸ばしガッツの身体を掴もうとした。
「ガッツさん、危ない!!」
「ちくしょう!」
ガッツは掴まれないように逃げようとしたが叶わず生物に身体をガシッ!っと掴まれてしまった。そしてボキっ!!と言う音が身体から鳴った。
「うわぁぁぁぁ!!」
突如身体中に走った激痛によりガッツは大きな悲鳴を上げる。ララはいきなりの出来事で頭が真っ白になりただその場に立ち尽くしているだけだった。
生物はそんなララには目もくれずガッツを水中へと引き摺り込もうとした。しかし「引き摺り込まれてたまるかぁぁ!!」ガッツは手に持っていたシリンダの剣を自分の身体を掴んでいた生物の手にグサ!っと勢いよく刺した。
生物は反撃されると思っていなかったのかガッツの行動に驚きガッツを手から放り投げ水の中へと姿を消した。放り投げられたガッツは地面に叩きつけられた。
「いて!!」ドサッ!
「ガッツさん!」
生物がガッツから離れた為ララはすぐにガッツの元へと駆け寄る。
「ガッツさん!!大丈夫ですか!」
「あぁ...身体中がいてぇ...いてぇよぉ...」
「大丈夫ですよ!今回復魔法で痛みを和らげますから!」
ララはガッツの痛みを少しでも和らげようと回復魔法を唱える。しかしいくら回復魔法を唱えてもガッツの痛みは和らがず寧ろ悪化していく一方であった。
「いてぇ....いてぇ....俺はもう....死んじまうのか....」
「大丈夫です!!助けます!!絶対に死なせませんから!」
ララはガッツにそう答えるが内心ではもうガッツは助からないのではと言う考えが占め始めてきていた。
「死にたくねぇ....俺はまだ死にたくねぇ....死にたくねぇよぉ.....」
(ダメだ!何回もガッツさんに回復魔法唱えてるのに一向にガッツさんの様子が変わらない!このままじゃ本当にガッツさんが死んじゃう!)
「おーい!!ガッツ大丈夫かぁ!!」
「!?」
そんなララたちの元へガッツの叫び声を聞いたラルフたちが駆けつけてきた。
「みんな!早くきて!ガッツさんが死んじゃう!!」
「なんですって!?」
「おいララ!ガッツの状況はどうなってるんだ!」
「生物に身体を掴まれてその時にボキッ!!って音鳴ったから恐らく身体の骨が何処か折れてる!!」
「なんだと!?そんなに深刻なのか!」
「ララ、私がなんとかするからあなたは周囲を警戒しててくれる?」
「はい!ヴェリンダさんお願いします!」
ララの代わりヴェリンダがガッツの治療を試みる。
「まず透視魔法を自分にかけてガッツの何処の骨が折れてるか確認するわ。」
「おう頼んだ。」
治療されているガッツとヴェリンダをラルフとゼナが守るように立っておりウルルは水堀を覗いて生物はいないかを確認している。
「くそ!水底は真っ暗で何も見えない!」
「ウルル!気をつけて!生物は水堀の中に逃げていったから!またいきなり出てくる可能性もあるから油断できない!!生物は水堀から背を向けた瞬間に襲ってくるから!」
「マジ?それでガッツやれらたのか。」
「ところでララ、シリンダとチュウカは何処だ?辺りを見渡す限り姿が見えないようだが?」
ゼナがシリンダたちの姿が見えないことに気がつきララに何処にいるか聞くが聞かれたララは無言で顔を下に俯く。
「おい......まさか...あの2人もやられたのか!?」
「........」
「答えろ!ララ!!2人はどうなったんだ!?」
(いつもクールで冷静沈着なゼナがこんなに取り乱すとは....)
ラルフはいつもと違うゼナの様子を神妙な面持ちで見ていた。
「まぁ落ち着けゼナさんよ、今は冷静になるべきだ。......ララ、あの2人は生物にやられたのか?」
「........」
「ララ.....」
「....私もガッツさんも直接見たわけじゃないからわかんないけど生物に水の中に引き摺り込まれたと思う.....水に落ちるような音をガッツさんが聞いてそれでこっち側に来たらシリンダさんのものだと思う剣が水堀近くに落ちてたから。」
「こっち側に来た?分かれて捜索してたのか?」
「うん、シリンダさんが二手に分かれて捜索しようって....その方が見落としがなくなるからって....その案にガッツさんも乗って分かれて捜索してたの。」
「それで分かれた所を生物に襲われたってわけだ。結構狡猾なんだな生物は。」
「許さない.....絶対に私の手でシリンダの仇を取る!!」
「ヴェリンダ、ガッツの骨は何処が折れてる?」
「見た所、肋骨が2本ほど折れてる。ララがいくら回復魔法をしても和らがないのはこれが原因。一刻も早く適切な治療をしないと余計に悪化して死んでしまうわ。」
「思ってたより深刻だな。とりあえず城内までガッツを運んで簡単な治療をした後に王都まで帰還するぞ。」
「ちょっとラルフ!何を言っているの!?」
「おけ、ラルフ、ガッツ運ぶの手伝うぞ。」
「ちょっと!!」
「ありがとうウルル、じゃあガッツの脚の方を持ってくれるか?」」
「ラルフ!!」
自分の言葉に聞く耳を持たないラルフの首元にゼナが剣を向ける。
「おいおい、ゼナさん勘弁してくれよ。ここで仲間割れしてる場合じゃないだろ。」
「ゼナ、一体どういうつもりだ?」
「どうもこうもないわよ!王都に帰還?...何甘ったれた事言ってるのよ!今私たちがやるべきことはシリンダたちの敵討ちでしょ!」
「いいや違うな、今俺たちがやるべきなのはガッツの救助、そしてこのことをギルドや王に伝えることだ。」
「どうして!?そんなの敵討ちの後でも出来ることじゃない!」
「お前はガッツを死なせたいのか!!今ならまだガッツの命だけは助かるかもしれないんだぞ!!」
「肋骨が折れて回復魔法の効果が全くないのにどうやって助けるの!王都まで帰還するのに最低でも4日はかかるんのよ!その内にガッツは亡くなってしまうわ!」
「いえそうとも限りませんゼナさん。回復魔法は確かに余り効果はありませんでしたが痛覚を暫く遮断させる魔法ならガッツさんの痛みを和らげることができます。現に私は今その魔法と睡眠魔法をガッツさんに施し今は落ち着いて眠って頂いています。」
そう言われて皆がガッツを見てみるとガッツは寝息を立ててスヤスヤと眠っていた。そんなガッツほっぺをウルルはツンツンとつついた。
「確かにさっきまでずっと痛い痛いとうるさかったガッツが今は落ち着いて寝ているな。」
「ああ、ヴェリンダがその魔法をしてくれてるおかげだな。」
「ですがこれはあくまでガッツさんの負担を減らしているだけなので骨折そのものは治っていません。なので直ぐに王都で治療する必要があります。」
「どうだゼナ?まだガッツが助かるかもしれないんだ。すまないが諦めて王都まで
帰還しよう?」
「いや!私は帰還しない!!」
「ゼナ....」
「どうしても帰還したいならお前たちで勝手に帰還したらいい!私は1人でシリンダたちの仇を討ってから帰還する。」
(これは折れてくれそうにもないな)
「.....わかった。そこまで言うならお前の好きにしろ。ただしお前がどうなっても俺たちはお前を助けには来ないからな。」
「別にいいわ。」
「.......ウルル、ガッツを運ぶぞ。水堀に背を向けるなよ。」
「了解。」
ウルルは水堀を見たまま後ろ歩きでガッツの近くまで近づきヴェリンダが水堀を見て警戒していた。幸いにも生物は水堀から出てくる気配はなかった。
「よし、掴んだな?」
「おう、しっかり掴んだ。」
「じゃあ持ち上げるぞ。いちにのさん!!」
ラルフの掛け声に合わせて同時にガッツをラルフとウルルが持ち上げる。
「じゃあこのまま城内まで運ぶぞ!」
ラルフとウルルがガッツを運びヴェリンダとララが生物が来ないか周囲を警戒していた。ゼナはその場に残り生物を探し続けていた。
古城マチルダ 水堀の水底
こうげき....された.....つまり.....あれは....
てき.....あそび...あいて....じゃ...ない...?..
なんで...?.....こうげき.....された....?....
ただ....あそぼう....と....つかんだ....だけ....
なんで.....?....なんで....?....でも....
もう.....かんけ....い..ない....てき....は....
いらない.....いらない.....いらない....
ぼく...に...こうげき....してくる....のは....
すべて....てき....そんなの....いらない.....
古城マチルダ 城内のホール
「一体何があったんだよ!?」
オルドたち3人はラルフたちの帰りを待っていたのだが帰ってきたラルフたちがガッツを運んできて「王都に帰還するぞ!ガッツに包帯で圧迫固定をするからお前たちは棒と布で簡単な担架を作ってくれ!」と言われて混乱した。
「ちょっと待ってくれ、いきなりなんだよ?ガッツに何があったんだ?ガッツとララ以外の外組いないしシリンダさんは何処へ?」
「それはあとで説明するから今は言われた通りにしてくれ!」
ラルフたちの気迫に押されオルドたちは渋々棒と布を用意し担架を作った。担架ができるとラルフたちは直ぐに固定圧迫が済んだガッツを担架の上に乗せ「直ぐに王都に帰るぞ!」と言い走って城内を出た。
ラルフたちが走り出した為オルドたちも走ってあとを追う。あとを追いながらオルドは「おいおいあんたたちどうしたんだ!?外で何があったんだよ!」とラルフたちに聞いた。
しかしラルフたちは答えず無言で走り続けていた。それでもオルドたちがしつこく聞いていると「ガッツたち外組は生物に出会って襲われたのよ。シリンダとチュウカは多分死んだ。ガッツは肋骨を数本折って重傷、ララは無傷、ゼナは仇を討つって聞かないから置いて来た以上よ。」とガッツを運んでいるラルフとウルルの代わりにヴェリンダが答えた。
「おいおい!ゼナさん置いて来たっていいのかそれ!?」
「いいんだよ、あの頑固女ずっと仇を討つって言って聞かないんだから。」
「だからって...」
「俺たちは仇討ちよりも人命を優先したそれだけのことだ。今はガッツを助けることに集中してくれ。」
「.....わかったよ。」
ラルフに言われオルドはもうこれ以上聞かないことにした。そして橋を渡りきり大通りに入ろうとした時、
「いやぁぁぁぁ!!離して!!離してぇぇ!!」
「「「「「「「!?」」」」」」」
自分たちの右斜め後方からゼナの声を聞き走っていたラルフたちは立ち止まった。そしてそっちを見てみると、
「〜〜〜〜〜〜!!!」
ゼナを片手でガシッ!と掴んでいる10メートル以上はある巨大な生物がそこに立っていた。