李信は元々、様々な情報を得るために各国へと諜報部隊や商人を雇って情報収集をしているし、可能な場合はその国の小役人と繋がるなどしている。
無論、『趙』にも元々、情報収集できるようにしているのだ。そうした事から李牧が今の趙王や佞臣、あるいは奸臣の類と仲が悪い事も知っていた。
それが故に李信は李牧が国門である『列尾』を策のためとはいえ、弱く作り替えたのを把握すると秦国と李牧が繋がっている風な文を幾つか用意した。しかも重要そうなところを塗り潰してもいる。
そうして『邯鄲』へと繋がりのある小役人文を届けさせつつ、時期を見計らって王に発見させたりするように仕向けたのだ。
こうした事をしたのは李牧自体が国の王に重要な地位にある者達と仲が悪い事もそうだが、なにより秦国のあまりに早過ぎる侵略速度も踏まえれば李牧が秦国と繋がってわざと侵略されようとしているようにこじつけ出来なくも無い。
なにより疎んでいる連中からすれば策略を感じ取ろうとも李牧始末のために乗っかる事も十分に考えられる。根拠であり、証拠となるものがあるからである。
もっとも李牧を慕っている者や忠を誓っている者、一派は多数いるので処刑となれば最高な結果であるが、李牧を処刑させないように対立するだろう。
無論、趙王たちもそれは把握するだろうからまず李牧一派の力を削ろうと動いていく。秦国で呂不韋らと権力争いを経験しているがゆえに李信はそうした事の厄介さは十分に理解している。
「どう転がるか、どうなっていくか見ものだな」
故に今、李信の手によって李牧は邯鄲から放たれた王都軍によって今いる戦場から連行されてしまった。その情報を李信は聞いたのだ。
そうして軍に攻める準備をさせていく。確実に李牧は自軍に対して静かに素早く子の戦場から撤退させようとするからでその暇なく、大打撃を与えるためだ。
「全軍、突撃だぁぁぁっ!!」
『うあああああ!!』
撤退の準備を始めていた趙軍へと『閼与』から包囲している楊端和軍とも連絡を取りつつ、一気に攻め込んで蹂躙していく。
こうして鄴を侵攻しようとする邪魔をしようとしていた李牧軍を本当に小規模だけは逃げ延びたが壊滅といえる状態にしたのであった。
また、趙北部の軍も扈輒将軍の軍も妨害を受けると今後の事も考えて軍を素早く撤退させたとの事である。
「良くやってくれた、楊端和将軍」
「ふっ、李信将軍の準備と策あっての事だ」
閼与にて李信は楊端和と再会し、互いを讃え合う。
「曹波広将軍趙西部の攻略お疲れ様です。本当に良くやってくれた」
「李信将軍から受けた訓練、軍略や準備あっての事です」
閼与から列尾まで兵站として使えるように整えていた曹波広将軍とも接触し、互いを讃え合った。
そうして防備のための準備を整えていると鄴から王翦による連絡が来た。予定より二日ほど早いが、鄴の内部の兵糧庫を軽く焼いたり、それに伴って流言を流して混乱させながら城門を開いた潜伏部隊に乗じて王翦軍が侵略した事で鄴は陥落したのである。
「王翦将軍、ご苦労様です。燕呈も本当に良くやってくれた」
「李信将軍も素晴らしき、お手並みでした」
「ありがたきお言葉……」
李信は王翦達を労いながら、鄴へと入っていく。
「俺なんかに言われるのは不本意だろうし、嫌だろうが言わせてくれ……あんたは王としては立派だった。ただ、甘すぎたんだ」
陥落の責任を取って鄴の城主であった趙季伯は城の上から飛び降り、自殺していた。
その亡骸へと李信は黙祷を捧げつつ、言葉を送った。
ともかく、李信たち秦軍は趙西部に列尾に橑陽、閼与に鄴までの趙王都圏の重要なところを取った事で趙に対する侵略まで王手をかけたのであった……。