王都である『邯鄲』から『武城』に『平陽』など王都周辺を守るために防衛網を築いた趙軍であるがその防衛網はゆっくりと押し込まれていた。
なにせ『秦軍』の連携は凄まじく、たとえ別の戦線で押し込んでもすぐに他の戦線から援軍を送る事で押し返してくるのだ。
そして一番厄介なのはやはり、大将軍である李信率いる『飛信隊』。
自分達が布陣する戦場だけでなく、他の戦場も見通しているその戦略と戦術眼を持って幾つもの戦場駆け巡りながら、趙軍の前線を崩していく。
「ルアアアア!!」
今回も対峙する戦線において麾下千の騎馬隊と共に一つの巨大な獣と化して縦横無尽に駆けながら、矛を振るいて趙軍を討ち取っていく。
「くっ、ならば囲うまで」
速度は速く、迫るのも一苦労ではあるがそれでも包囲し尽くせば良いと兵を動かすも……。
『はあああっ!!』
李信に意識を向いていた隙を衝かれ、横腹から飛信隊の者達が奇襲を仕掛けてきた事で蹂躙されていく。
そうして、また趙軍は戦線を押し込まれてしまう。
下手にこちらからは攻めれないので陣を固めていたが……。
『いくぞおおおおっ!!』
すると他の戦線から送られた秦軍の援軍と共に結集して攻め込んでくる。そうしてまた戦線を押し込まれていく。
とにもかくにも趙軍の防衛網は秦軍の連携戦術によって次々と崩されていく。その侵略速度は速くはなく、ゆっくりとしたものではあるがしっかりとした機を狙って動いていた。
故にどんどんと趙軍は追い込まれ始めていたのだ。
「そろそろ、準備を始めるかな」
李信は今、秦軍が布陣している戦場だけでなく、趙の東を見ながら呟く。
「信、準備って?」
李信の呟きに河了貂が尋ねる。
「扈輒を滅ぼす準備だよ。丁度頼りになりそうな奴らもいるしな」
「頼りになりそうな奴?」
「ああ、『邯鄲の守護神』である扈輒大将軍を絶対に討ち取りたくて仕方ない奴らが丁度、いるだろう。東にな」
「……信、まさか……」
「そのまさかだ……ある程度、交渉する必要はあるし、手助けしてやる必要もあるけどな」
河了貂は信の言葉にとある者達の存在を頭に浮かべ、それを信は肯定する。
「でも、話にのるかな?」
「のるさ……なんせ『守護神』になる前の扈輒大将軍は相当、東で大暴れしていたみたいだからな。俺も人の事は言えないが、敵対する国からは恨まれている。その首を獲るのに協力するって言えば頷いてくるさ。一応、前の話にものってきたからな」
李信はそう言って立ち上がり……。
「そういう訳で燕のオルド大将軍に贈り物と文を送る」
扈輒大将軍を討ち取るため、李信は燕のオルドと交渉を始める事にしたのであった……。