李信は紀彗と共に趙東部を攻略しようとするオルド軍に加勢し、趙東部を守っていた趙北東部長官の趙泊を討った。そうして元から王都にまで迫っていた東の防衛線を突破するとそのまま、オルドと共に飛信隊との集合場所とした前線まで向かう。
自分達が合流するまで飛信隊には前線を維持し、趙軍と渡り合うように言っていたのだ。
「……そういう訳で今回、共闘する事となった燕国のオルド大将軍だ」
「ふふ、流石は李信が率いる『飛信隊』。とんでもなく精強だ。共闘できる事を嬉しく思うぞ」
オルドの事を『飛信隊』に紹介すると満足気にオルドは頷いた。
こうして『飛信隊』とオルドは桓騎が激しく攻めた事で桓騎に対し、狙いを定めて本陣から動き出した扈輒軍十五万の裏に回って、中央と右翼の秦軍と挟み撃ちできる左の戦場へと向かう事にした。
左の戦場というのは攻めるに適さず、守りやすい険地である『
「オルド大将軍、影丘はかなり厳しい戦場ですが突破すれば扈輒を追い詰める事が出来ます」
「ふ、あの憎き扈輒の間抜け面が拝めるなら願っても無いわ。それに激しい戦いというのは望む所でなぁ」
オルドに方針を伝えれば彼は特に迷う事もなく、承諾した。
こうして桓騎の軍として先に王賁軍が向かってもいる『影丘』へと向かう。
「くくく、何だあの程度……大した事無いではないか」
『影丘』の地形を見ながら、オルドは笑う。
彼は山岳地で生まれ育った身であり、北の五十の山岳族の王となった者。故に眼前の山を見てその奥に広がる山々の地形を読み取る『山読み』の力に優れている。
転じて丘読みも当然出来るし、それを登る事もオルドや彼が率いる山岳族にとっては容易い。
「それは心強い。ではこの戦いの戦略を任せても?」
「ああ、次は俺の番という訳だな……」
そうしてオルドからこの戦場の戦略と戦術を聞き、そうして李信もオルドもそれぞれの軍を配備していく。
「では、いくぞっ!!」
「始めるぞっ!!」
そうしてオルド軍と共に進軍を開始し……。
『オオオオオッ!!』
まず敵本陣にある丘を守る趙軍を李信は麾下千の騎馬隊と一つの大きな獣となって蹂躙していく。その武威と勇姿を目にしたのも当然だが、なにより李信が傍にいる事で『飛信隊』の戦意に士気は激増している。
よって他の『飛信隊』の部隊も次々と趙軍を蹴散らしていき……。
「道は開いた。後は任せます」
「おう、任せろぉぉっ!!」
李信と飛信隊が丘を守る趙の防衛線を蹴散らした事で次々と丘へと向かっていき、素早く登っていく。
趙軍も抵抗するが、なによりオルド軍が登るのが早すぎる。しかも様々な場所をから登ってきているので対処が追い付かない。
勿論、飛信隊もオルド軍に続いて崖を登る。
「ホウ、ヤルデハナイカ」
「激しい鍛錬をしているからな」
オルドが率いる山岳族は飛信隊の歩兵たちが崖を登っている事に賞賛の言葉を送った。
飛信隊は元は歩兵であるが故に特にその能力は他の秦軍より高い。その強みを活かすために激しい鍛錬も当然、している。
険しい崖だろうと登り切る事は可能である。しかも李信がいるなら余計にだ。
そうして、容易くオルド軍と飛信隊は『影丘』の険しい丘を登り切り、趙軍を蹴散らしていく。
李信も麾下の騎馬隊を率いて駆け上がれる緩い丘を登っていった。
「ふふっ、この趙を貪ろうとする極悪人の侵略者どもよ。扈輒様が側近、三公の一人、
丘を登り切るとかなりの巨漢で恰幅の良い体格をした頭の上で髪を三つの輪に結い、手には大きな錘を持った将が李信の前に立ちはだかった。
彼こそ岳白公である。
「やれるものなら、やってみろ」
馬には乗っていないので李信も紅飛から降りると『政の剣』を抜く。
「やってみせましょうっ!!」
そうして、岳白公は李信の言葉に応じて踏み込むと共に李信も動き……。
「頭を潰されるのはお前の方だったな」
岳白公は頭から股下まで李信が放った雷が如き振り下ろしの一閃で切断されたのだった……。