李信に桓騎とオルドは『邯鄲の守護神』と呼ばれた趙の大将軍である扈輒を討ち取り、戦に勝利した。
そして……。
「では、一度本国に扈輒の首を届けに戻る」
翌朝、オルドは燕において長年、侵攻を妨げられた上に幾人も燕軍の者を戦にて殺されるだけでなく、拷問などでも殺された事から怨敵となっている扈輒の首を届けるために本国に戻る事になった。
「ええ、貴方達にとっての怨敵を討ち取った事を祝ってください」
「そうさせてもらう。だが、それが終わればお前の力になる事を約束しよう。お前も約束を実際に守ってくれた訳だからな」
「ありがとうございます、オルド将軍」
「ふふ、それに扈輒を破った以上はあの男が戻ってくるだろうからなぁ」
「ええ、俺もそう思っています。間違いなく、これから趙は李牧を戻さざるをえないでしょう」
そう、李信もオルドも趙は今後、李牧を戻すと予想していた。もしかすれば楚にいる廉頗が戻ろうと連絡をするかもしれないし、それは有効な手ではあるのだが廉頗の性格上、今の趙の王に奸臣などに反感を抱くのは予想できる。
故に廉頗が戻る事は絶対に無い。ならば消去法で李牧を戻さざるをえないのだ。
それに万が一の際は色々、責任を押し付けて取引のための生贄にも出来るからだ。
「そういうわけでその時を楽しみにしているぞ」
「分かりました。必ず声をかける事にします」
「ああ、ではさらばだ」
そうしてオルドは一旦、本国へ帰還するためにこの場を離れたのだった……。
その後……。
「では、約束通り解放します」
『心より感謝します』
李信は降伏した龍白公とその息子たち、そして数万の趙兵たちを解放した。
武装や馬は流石に没収しているが、食糧と水だけは提供している。
「さて、どう来るかな……」
現在の自軍の戦況においては扈輒を討ち取るために必要だったとはいえ、桓騎はかなりの犠牲を出しているし、李信にオルドが来る前に『影丘』で戦っていた玉鳳もまた無視できない犠牲をしていた。
よって龍白公達が先に平陽などに逃げた兵たちを纏め上げ、再戦を挑む可能性が高かった。無論、返り討ちにする事は容易いが『飛信隊』で受け持つ以上、多少なりとも損害が出てしまうのが困る要因だった。
そして、兵站からの補給などで軍の再生に桓騎軍と玉鳳が務めている中、平陽地帯における前線にて李信は龍白公の軍と睨み合っていたが……。
「……成程、中々に義理堅いな龍白公将軍」
様子を見続けても龍白公の軍が攻めてこなかった事から、こちらの準備が終わるまで待ってくれているのだと李信は察した。
親としてでもあるが、武人として命を助けた借りを最大限出来る範囲で返してくれたという訳だ。
「これなら、決着のつけ方においても話が出来そうだ」
そして、龍白公とはまた一度は戦わなければならないが、勝った後は上手く取引し、良い決着の形を取る事が出来ると確信するのだった……。